アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「大田昌秀×知念ウシ」が問いかけたもの

2013年10月15日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 元沖縄県知事の大田昌秀さん(88)と、「カマドゥー小の会」でライターの知念ウシさんという異色の公開対談が12日、沖縄国際大学でありました。「いま問う『戦争と平和』」というテーマで、「沖縄が育んできた『平和力』の源泉と現在について世代間対話」し、「『世代』という断層を新たな政治のベクトルを引き出すための<勾配>に転換」したいというのが主催者の意図でした。その狙いは必ずしも成功したとはいえませんが、別の意味で興味深かったです。
 大田さんは年齢を感じさせない記憶力で、「民主主義の名における沖縄に対する構造的差別」を告発。沖縄の若い世代に対し「日本国憲法を大事に」と訴えました。対する知念さんは、「沖縄は日本の植民地ではありませんか?」「植民地なら具体的にどうしたらいいですか?」、「日本が憲法を変えたら、沖縄は変えられた憲法に従わねばなりませんか?」と再三問い掛けました。大田さんは「沖縄はもちろん二重の意味で植民地」としながらも、「国家体制に組み込まれている以上、(改正憲法に)従わねばならない」とし、「自分の運命は自分で決める主体性を確立したら、自ずと独立の方向へ行くと思う」としながらも、「独立」については「データを整理中でまだ結論を出していない」とついに明言を避けました。
 知念さん、そして主催者はおそらく、沖縄政界・学会の重鎮である大田さんから「独立」への積極的な言質を引き出し、それこそが今日求められている「平和力」だとし、世代間の「断層」を埋めて「新たな政治のベクトル」を引き出そうとしたのでしょう。その一歩手前まで行きながら、大田さがそれに完全には同調しなかったのは、大田氏の深謀遠慮かもしれませんが、そこには皮肉にも「独立」に対する戦前戦中世代の慎重さ、拙速を避ける思慮深さが反映されていたのではないでしょうか。そうだとしても、それは独立論者の人たちにとっても決してマイナスなことではないと思います。
 しかし、会場の女性が「沖縄のことを一生懸命考えている本土の人たちとも連帯したい」と述べたのに対し、知念さんが「本土の人とはポジショナリティが違う。身近なヤマトンチュが変なことを言ったら、ちゃんとものを言うことが自分たちの力になる。日本人の言うこのにはあまり中身がない」と答えたのは、ウチナーンチュを励ますためだとしても、やはり違和感は拭えません。
 ウチナーンチュとヤマトンチュの相互理解と連帯は、沖縄の「平和力」の重要な構成要素ではないでしょうか。

 <今日の注目記事>(15日付琉球新報1面トップ)

 ☆<しまくとぅば教育進まず 「実施」80小、32中校 指導者不足が課題>

 「しまくとぅばの教育について県文化協会が2012年度に県内の国公立小学校(274校)・中学校(154校)を対象に実施した調査で、授業やクラブ活動など何らかの形でしまくとぅばを教えている小学校は80校(29%=引用者)、中学校は32校(21%)にとどまっていることが分かった。ただ、調査に対し、小学校は169校(61・7%)、中学校は112校(72・7%)が無回答で、専門家は、無回答の学校はしまくとぅばを教えていない可能性が考えられると指摘、学校現場にしまくとぅば教育が浸透しきれていない実態が浮き彫りになった。/小、中学校ともに、自由に記述する『その他意見等』の項目では『教師がしまくとぅばを話せない』など指導者不足を指摘する意見が30校と最も多かった」
 ※しまくとぅば教育の推進が教師の負担をさらに重くするなら逆効果です。行政の責任で指導者を配置するなどの援助措置を講じる必要があります。


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