アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

新聞が権力に屈服するとき

2013年10月22日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 19日のマスコミ労協の集会(「狙われる憲法-沖縄からの警鐘」)で大変興味深い新聞が紹介されました。新聞労連新聞研究部が発行している「しんけん平和新聞」の第9号です。「権力の番犬」であるべき新聞ジャーナリズムが、権力に屈服し、そのお先棒担ぎに成り下がるのはこういうプロセスなのかと、あらためて気づかせてくれました。
 「破滅への万歳」として取り上げたのは「大政翼賛会」(1940年設立)。太平洋戦争へ向けた「挙国一致体制」の基盤として知られていますが、編集者が注目したのは「むしろ翼賛体制に向かう社会の動き」。新聞は「戦前の右傾化・集団化を推し進めたことを真摯に反省しなければならない」(山下修毅部長)という問題意識です。作家の半藤一利さんが「戦争への流れとジャーナリズムの関係」についてのインタビューに答えています。ポイントを紹介します。
 満蒙問題と世界的大恐慌が重なり東条英機らが軍部・日本改革に乗り出した。それまで新聞が「反軍部」だった教訓に学び、新聞社幹部を「時局を語る」「満蒙問題を語る」などの形でどんどん呼んで飲ませながら仲間に引き込む方法を覚えた。それでもまだ現場が強かったのか、反軍だった。ところが満州事変(1931)でいっぺんにひっくり返った。
 一つはラジオができて、ニュースの速報競争で対抗するために号外を出す。そのために軍部の情報をもらわねばならないということで、「寝返った」。大阪朝日だけが満州事変から1カ月近く頑張った。その間に在郷軍人会の影響などで部数がガタガタ減った。これは大変だということで役員会議を開き、「国家重大時ニ処シ・・・軍部及軍事行動ニ対シテハ絶対批難批判ヲ下サス極力之ヲ支持スヘキコト」を決定。結局日本中の新聞が全部軍部支持になった。ジャーナリズムの戦いは満州事変で50%ダメになり、国際連盟脱退で90%ダメになった。2・26事件で99%終わった。
 今後何を注意したらいいか。政治権力への言論の屈服、屈従。教育の国家統制。情報の国家統制。政治家と民衆が一緒になってのナショナリズムの高揚にも注意した方がいい。不景気というのは大きい。満州事変が国民に支持され新聞もいい気になったのは、戦争が金儲けになったからだ。日本人は失敗をきちんと残して後のために考えることをしない。言論の自由は国家を平和にしておく一番の根本だ。上からの統制で新聞が一色になるのが一番おっかない。
 半藤さんが言う戦前のラジオは今のインターネット、世界恐慌はグローバル経済の行き詰まり、中国敵視、教育・情報統制、新聞経営の危機、偏狂ナショナリズム、そして報道の一色化。なんという酷似でしょう。今はまさに「戦前」。「新聞の屈服」をなんとしても食い止めねばなりません。

 <今日の注目記事>(22日付沖縄タイムス1面トップ)※琉球新報も同じ記事を1面トップ

 ☆<武器輸出三原則見直し 国家安全保障戦略に明記 有識者懇 中国と北朝鮮警戒>

 「安倍晋三首相が設置した有識者のよる『安全保障と防衛力に関する懇談会』(座長・北岡伸一国際大学長)は21日、外交と安全保障の包括的な指針となる『国家安全保障戦略』の概要をまとめ、武器や関連技術の輸出を原則的に禁じる『武器輸出三原則』の見直しを明記した。中国や北朝鮮の軍事力を脅威と位置付け、領域保全強化や海上安全保障の確保を打ち出した」
 ※まさに「戦争で金儲け」という戦前回帰です。「有識者」という言葉も安易に使うべきではありません。いかにも立派な懇談会のような印象を与えます。実際は御用学者らによる権力のお先棒担ぎ会にほかなりません。


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