角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

面白いお客様。

2013年11月04日 | 実演日記




今日の草履は、秋田市からお越しくださったおじさまのオーダー草履です。
同じ配色の23cmを編んでいたときにお立ち寄りくださり、『その色いいですね』と24cmでご注文と相成りました。明日の便で出発します。早速履いてくださいね~。

こうして『今編んでいる草履は買えますか?』というのが、日常にあります。予約品でなくサイズもピッタリの場合はお持ち帰りいただけますが、サイズ違いとなれば布地在庫が問題です。こちらの草履は幸いもう二足分の材料があったため、すんなり承ることが叶いました。これもまた「ご縁」と思うわけです。

ところで23cmで編んでいたときは、中高年のおばさまをイメージした配色だったんです。紫ベースで金色が神々しいですから、お洒落なおばあちゃんという印象でしょうか。でもそのおじさまもなかなかお洒落な出で立ち。おそらくなんの違和感もなくお似合いになりますよ。
老若男女を色で区別することなどなにほどの説得力もないことを、あらためて感じた次第です。

それをさらに思わせたのが、編んでいた23cmをお選びのお客様。東京から初角館を愉しんでいた女性は、おそらく20代後半でしょう。またもや私のイメージがキレイに否定されたわけです。そして女性とこの配色を照らしてみると、やっぱりお似合いなんですね。
秋田市にお住いの70代の男性と、東京にお住いの20代の女性が同じ色の草履を履く。なんとも面白い現実です。

こちらの女性が、もうひとつ面白いことをしてくれました。お代をいただき草履を手渡し、『ありがとうございました。また遊びに来てくださいね~』『は~い、ありがとうございま~す』と言って草履コーナーを立ち去ろうとした瞬間、足元を見てビックリ。まだ試し履き草履を履いたままじゃありませんか。

『なんか足元が涼しいとは思ったんですよねぇ』と苦笑いの女性。一年に一千人を超える人々が試し履きをされますが、そのまま帰ろうとしたのはこちらの女性が初めてです。

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ミニ草履と泣き笑い。

2013年11月03日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
暖かそうな優しい和柄がベースですから、ピンク色を組み合わせてみました。ほのぼのとしたあったか草履になったと思います。
秋の深まりは即ち「冬近し」、せめて草履配色くらいは暖かさが欲しいところですね。

今日の草履をお持ち帰りは、秋田市からお越しのご家族。70歳ほどのご夫婦にその娘さんなんですが、ご夫婦は昨年からご愛用者です。ご両親の草履姿を日々見ている娘さんが、こちらの草履をお選びくださいました。と言っても、22cm草履の今日の在庫は2点のみ。配色選びを愉しんでいただくのは、もうしばらく先になりそうです。

対して『選ぶのがタイヘンねぇ』とお客様を笑顔にさせるのが、カミさんが専門に作っているミニ草履です。小さい分だけ生産力が私の草履より高いですから、在庫が空っぽになることはまずありません。「トイレに飾るおまじない」のポップを読んだお客様が、『あらっ、それいいわね』とお買い上げくださいます。

高齢者介護の経験は多くの人がしていますから、ミニ草履を巡ってのおしゃべりには泣き笑いが日常です。先日ツアーでお越しの大阪のおじさまは、このポップを読むなり『しまったぁ、遅かったわ~』。聞いてみると、90歳になるお父上が先ごろ車いす生活になられたとか。「遅かった」の意味はそこにあったわけです。

昨日お越しの秋田市のおばさまは、『ずーっと歩かれても困るんだけどぉ…』。こちらも聞いてみると、80代後半のお舅さんがときおり徘徊するんだそうです。確かにご家族にしてみれば、寝たきりとどっちがいいのか考えてしまうのでしょう。

おともだち三人でお越くださった別のおばさまは、『お嫁さんに世話かけないように買って行こうかしら』。するとおともだちのひとりが、『お嫁さんにその草履をちゃんと見せないとダメよ。面倒かけないように買って来たって教えるのっ』。
三人で大爆笑していました。この手の話題はずいぶん盛り上がるんですよ。最後は、『これでもし寝たきりになっちゃったら、きっとうちのお嫁さんここへ文句言いにくるわよっ』。

今度は私が標的にされてしまいました(^_^;)
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