角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

一番知らないのは?

2008年12月01日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
黒地の花柄プリントをベースに、合わせは紺です。花柄が白というのがお洒落ですねぇ、合わせにエンジも考えたのですが、シックさならやはり紺でしょう。文句なし、お洒落な草履と思います。
平生地はこちらです。




『自分のことって、案外自分が一番知らないんだよねぇ』なんてことがよく云われます。対して、『自分のことなんだから、自分が一番知っているだろう』なんて言葉も聞きます。
私が自分自身になぞらえると、やはりどちらも一理ありそうですね。おそらくすべての人がそんなもんじゃないでしょうか。

日々の実演で出逢う方々から、『角館はとってもイイ街ねっ』とか『こんな綺麗なところとは思ってなかった』なんて言葉が聞かれます。もちろん素直に喜びますが、生まれたときから住んでいる我々こそが、案外その「良さ」を分ってないのかも知れません。

秋田市からお越しのおばさまお二方、共に草履を気に入ってくださりお買い上げくださいました。
おひとりはご実家が角館で、もうおひとりは横手市だそうです。横手市生まれのおばさまが割と最近になって角館という町を知り、『もうすっかりハマってしまって、今年は今日で六回目なんですぅ』。
角館生まれのおばさまは、『あたしは生まれた町だから、そこまでは思わないものねぇ』。
案外そんなものだと思います。

横手市生まれのおばさまはご実家に「蔵」をお持ちで、その蔵を観光のひとつとしている角館に興味を惹かれたと言います。現在跡をお継ぎの兄上様を連れて角館へ見えたとき、兄上様もいたく感動していたとか。
私にしてみれば、自宅に「蔵」があると聞いただけで羨望の眼差しです。『じゃあなにか商いでもしていたんですか?』とお訊ねすると、『そう、四代前が質屋さんで、貴重なものをしまってあったみたい。でも今は物置なのよぉ』。

四代前と云えば百年モノでしょう。そんな蔵が「物置」とは、おばさまのご実家もご自分を知らな過ぎやしませんかねぇ。

コメント
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