角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

おせっかいお母さん。

2011年10月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔4,000円〕
【2012年1月1日より4,600円】
深まり行く秋をイメージしてみました。比較的色の濃い配色は、夏場よりも今くらいが似合うと思います。
緒に使用している紅葉を想わせる布地は、これにてほぼ終了となりました。行きつけの生地屋さんに在庫があれば、また仕入れてみたい布のひとつですね。

わが家と同じくらいの年齢の子を持つ女性で、角館草履の常連さんがいます。自分たち夫婦はもちろん、お世話になっている方へのお礼と言っては、これまで10足に近い草履をお買い上げじゃないでしょうか。その女性から先日電話がありました。

『東京にいる娘の友達に草履をあげたいんだけど、色を決めて、次の日東京へ戻る娘に持たせられる?』。
つまり注文の翌日まで編んで欲しいという話なんですね。未だ在庫はほとんどありませんが、オーダーもたまっているほどではありません。快諾すると、今日の夕方ふたりでお越しでした。

草履を差し上げたい娘さんの友達と言うのは、同じ高校から同じ都内の大学へ入学した、陸上部に所属する男性なんだそうです。お母さんは、『陸上選手だから、足が疲れると思ってね』。
なかなか優しい心遣いなんですが、娘さんの様子がちょっとヘンなんです。希望の配色にも発言が消極的で、どうしたんだろうと思っていたら、『お母さん、どうして草履あげたいの?』。

やがて謎が解けました。つまり娘さんにしてみたら、大勢いる友達の中のひとりでしかないその男性に、たとえ同郷とは言えなにゆえ母親がプレゼントをするのか。その意味が分からないわけです。
私が娘さんに、『お母さんは優しいって言うより、おせっかいってことだ』と言うと、『そうなんですよぉ』。

結局お母さんの希望に沿い、草履をオーダーすることになりました。娘さんが男性に草履を渡す際、どう説明するのかちょっと楽しみな草履職人であります。

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