角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

震災のご縁。

2016年01月10日 | 実演日記





今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[五阡二百円]
紺基調の十二支プリントをベースに、紫を組み合わせてみました。シックと可愛いと綺麗の要素が感じられる配色と思います。かねてからプログに書いておりますように、こうした配色ほどお若い女性に好まれるものです。「今日の草履」は千葉県からお越しの、二十代とお見受けする女性がお持ち帰りです。

今年いただいた年賀状の一枚に、仙台市在住の知人男性からのものがありました。何度かプログにも綴った、福島県南相馬市で被災されたご夫婦です。仮の住まいを角館に設け、私の実演席にも週に二、三度お立ち寄りでした。角館を引き揚げてから息子さんが暮らす仙台市を住処とし、私も二度ばかり男性の元を訪ねています。わが家の次女が仙台市を引き揚げるときは、ずいぶんご心配やらご迷惑をお掛けしたものでした。

その男性の賀状に記されていたのは、息子さんのマンションを引き揚げ、ご夫婦だけの終の棲家を仙台市に設けることで決めたとのことです。旧知の人々と共に故郷南相馬市へ戻ることを夢見ていたのですが、状況とご自身の体調も鑑みての結論と推察しました。断腸の思いであったでしょう。
引っ越しが済んだらご連絡をくださるとのことでしたから、必ずお訪ねする旨を綴り、年賀のご返信を差し上げました。

数日前に佐賀県の男性から、ご注文フォームによるオーダーをいただきました。20cmでしたから子ども用か、もしくは足の小さな女性用と思ったものです。やがて草履が完成し送り状発行のため男性の電話番号を入力すると、過去の発送履歴が出てきました。しかもそのときのご住所は宮城県です。よくあるケースではないので思い返してみると、一つの出来事が頭に浮かびました。そして送信したご注文確認メールへの男性からのご返信で、その日のことが鮮明に思い出されることとなります。

私は一年半ほど前に復興支援で気仙沼に行きました。その時にそちらへお邪魔して草履を買いました。佐賀に帰っても使っていたところ、4歳の息子が欲しいと言いましたので、今回注文した次第です。
息子が草履を気に入ってくれて嬉しい気持ちです。草履が届きましたら、一緒に履きますね。
いつの日か、息子とそちらにお邪魔したいと思っています。
お体に気を付けて、いつまでも頑張ってください。


日本中に悲しみと衝撃を与えた東日本大震災。あれから五年という月日には、人知れずいくつものドラマがあったでしょう。私が知る部分など耳かき一杯分にも満たないわけですが、震災で生まれたご縁は生涯大切にしたいと思います。
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2 コメント

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㈱わらび座造園 (山田みき)
2016-01-11 11:39:50
和の物に”雪”が似合う。少ないながらも降る雪に今年はつい、足を止めて、掌に雪を乗せて見入ってしまいます。レオナールフジタの妻、マドレーヌの残した”ネイジュ”。たった一つのセリフに、凝縮されたドラマが蘇ります。震災も雪でした。時が止ったあの日。過ぎて行く記憶と消えない記憶。
被災地からの受け入れをホテル全面で開けたものの、実際非難された方は僅か。来られた方も、社員の関係でした。忘れられない方があります。片目を失明されている相馬の男性。家族の説得の下、避難。しかし、ここで沢山の仕事をして下さいました。福島の、人間の誇りを見た日でした。
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忘れない災害 (草履職人)
2016-01-11 18:11:38
みきさん

あの災害から間もなく五年です。直接の被害がなかった
秋田県とはいえ、娘二人が就学のため青森と仙台へ引っ越す
矢先でしたから、わが家にとっても大きな出来事でした。
五年や十年で薄れる記憶ではありません。

角館には被災地から訪れる旅人が少なくありません。
するとどうしてもときにその話題が出てきます。西宮家で
草履を編み続けるうちは、あの災害が日常からなくなることなど
ありませんね。
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