角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

とある相談。

2010年05月22日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紫基調の桜花プリントをベースに、合わせはエンジです。
角館草履としては典型的な配色でしょうか。エンジという色はたいがいの色に良く合います。お洒落で可愛い草履に仕上がりました。

月日の経つのが早いのか、季節の移ろいが早いのか。つい一ヶ月前は遅い桜の開花に気を揉んでいたのが、ここ数日の角館は初夏を想わせる陽気です。今日の最高気温は26℃、朝から快晴の一日でした。散策のお客様も半袖シャツに汗を拭き拭き、『こっちも暑いんですねぇ』。それこそ一ヶ月前は、『やっぱりこっちは寒いんですねぇ』と言われたものですよ。

『あのぉ、教えて欲しいことがあるんですけど…』。ひとりの女性が私を訪ねてお見えです。私に訊きたいと言えば草履のこととは思いながら、なんと言いますか表現は難しいのですが、ちょっとした深刻さが女性の顔に見て取れました。丸太椅子に招くとあらかじめ説明を考えていらしたかのように、実に分かり易くお話くださいました。

女性は秋田市で、障がいを持つ方々の生活支援をされていると言います。目や耳が不自由な女性3、4名を担当されていて、実務のひとつに手作り品の指導があるそうです。
そんな方々が「今作ってみたいモノ」、それが布草履だったんですね。女性がどうやって私の所在を知ったかまでは訊きませんでしたが、どこへ相談したら良いか分からないままとりあえず私を訪ねたというのが、最初の印象だった「深刻さ」に表れたのでしょう。

事情は理解したのですが、私としてはなかなか難しいご相談でした。そもそも私は布草履を編んだことがありません。7年前に角館草履の原型を思いついたときから、布だけで編む布草履は頭にありませんでした。
そしてこのブログでもたびたびご紹介する布草履経験者ですが、健常者でさえ『一足だけでやめちゃったぁ』という人が実に多いです。これを目や耳が不自由な方々がどこまでやり切れるのか、私には想像すら困難な部分がありました。

私が知り得る情報をお伝えすると、女性は『なんかとっても甘く考えてましたぁ』。たとえば半日も教えれば編めるようになるというものでないことは、すぐにご理解いただけたようです。
ただしだからといって、すぐにあきらめることもないと思っていました。大きく条件は二つ。ひとつは数日間のスタンスで臨むこと、もうひとつは理解ある指導者と巡り会うことでしょう。この話をすると、女性はひとまず満足されたかのようにお帰りになりました。

幸い県都である秋田市は人口が多いです。布草履指導者あるいは経験者が多いことは、日々の公開実演で私もよく知るところです。そんな中で一肌脱いでくださる指導者が現れることを、角館の地から願いたいと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 素直が一番! | トップ | お金の話。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

実演日記」カテゴリの最新記事