角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

イ草縄を持った少年。

2014年08月19日 | 実演日記
角館草履の「骨」に相当する芯は、イ草を手綯い(てない)した縄を用います。一般の布草履はこれをビニールロープで代用するのですが、その強さは比較になりません。おおむね2㍍の縄で片足を作ると、最後に20㌢ほどの端材が2本生まれます。これはもう使い道がないので捨てるわけですが、ときにこれを欲しがるお客様がいます。それは草履をお買い上げの方がご家族に素材を見せたい場合と、もうひとつに多いのが子どもなんですね。



東京都青梅市からお越しのご家族旅。小学生の男の子とご両親の三人が、興味津々草履実演をご覧でした。試し履きのうえご両親がそれぞれオーダーとなり、男の子の20cmは在庫の中からお選びです。ご家族の中で最も草履実演に関心が高かったのは男の子、『なんか作り方を覚えたぞっ!』。ご両親は苦笑いでしたが、興味を持って見ているとそういう気になるのかもしれません。

男の子に『記念にこれをあげようか』と差し出したのが、イ草縄の端材でした。男の子ははちきれんばかりの笑顔で『ほしーい!』。手元にあるゴミ箱の中からもう一本見つけ、『これももらっていい?』。相当気に入ったようです。さらに男の子は、『次はいつ捨てるの?』。片足を編み上げるのにおおむね一時間と教えると、さすがのご両親も苦笑いで次の目的地へと出発されました。

それから二時間ほども経ったでしょうか。武家屋敷通りの散策を終え駅に向かう途中、男の子がどうしてもまた寄りたいとご両親を説得したようです。そうしてそこまでに出た今日の端材は、すべて男の子が東京へと持ち帰りました。カメラを向けるとちょっと緊張気味の男の子でしたが、角館の良い想い出になってくれたでしょう。



この端材、これからは草履をお買い上げの方にすすんで差し上げたいと思っています。

コメント (2)
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