角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

おばあちゃんの草履。

2013年10月14日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
深い黄色は秋を連想させる色のひとつと思います。同系色の辛子色と組み合わせることで、尚一層の「秋色」を表現してみました。
さらにベースには「招き猫」がプリントされています。黄金色に小判ですから、縁起担ぎとしてもベストでしょうか。
平生地はこちらです。



今日の草履をお持ち帰りは、英国在住の邦人女性。20代半ばと思しき女性は、ご主人とお見受けする英国紳士と共に初角館をお愉しみでした。体格の良いご主人も29cm草履をお選びです。
角館草履の健康効果をお話しするうちに、女性の頭に浮かんだのはおばあちゃんの存在なんですね。90歳というおばあちゃんは、足取りがややおぼつかなくなった今も、室内でスリッパを履かれるとのこと。草履の安定性を考えれば、おばあちゃんに履かせてあげたいと思う女性の心理も極自然でしょう。

「旅の空から何センチ?」は、実演席でよくある光景です。おばあちゃんの靴サイズを訊くためお電話した先は、東京のご実家にいるお母さんでした。『おばあちゃんって何センチの靴履いてるか教えてっ』と訊ねる女性に、なぜかお母さんは素直に教えてくれないご様子。どうやら履物は無駄になることを心配しているようです。執拗に訊ねる女性に対して、とうとうお母さんは電話を切ってしまいました。丸八年を迎える実演生活で、私も初めての経験でしたね。

意を決した女性は、『じゃあいいわ。勝手に選んじゃうわよっ』。おばあちゃんの身長を訊き、まずは無難な23cmをお勧めしました。そして選んだ草履は定番配色③赤の唐草にエンジ。おばあちゃんの足元で、きっと可愛らしく活躍してくれることでしょう。

お母さんも意地悪でおばあちゃんの靴サイズを教えなかったのではないと思うんです。やや足が不自由になりかけている高齢者に対して、履物のプレゼントはリスクが高いと感じたのでしょう。仮にお母さんも今日の現場にいたなら、女性と同じように「おばあちゃんにも…」と思っていただけたかも知れませんね。

コメント
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