角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

郷に入れば郷に従え。

2010年11月30日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紺基調の麻の葉&うさぎプリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。
明るい紺とシブい紺、さらにプリント柄の麻の葉まで揃えてみました。先日今冬の新柄が届いたばかりで、「今日の草履」もその中の二種類です。東京の仕入部長にこのたびお願いしたのは、「うさぎプリント」でした。来年は卯年、角館の草履職人が48歳の年男となります。そんなわけで、これからうさぎプリントの草履をいくつも編んでいきます。

「今日の草履」が編みあがってすぐのこと、横手市からおふたりのおばさまがお越しです。おひとりが二年前に角館草履をお買い上げで、今日はお買換えにお訪ねというわけでした。
24cm草履を探していたおばさまは「今日の草履」を見つけ、『あらっ、その草履の色いいんシな~』。手を付けたばかりの新柄ですから、生地在庫はまだ充分あります。『この色で24cm編んで、送ってあげるんシよ~』と言うと、おばさまは大喜びでお帰りでした。
来年用のうさぎプリントが、早速活躍しましたね。

冬らしい寒さになってきた角館、今冬初の積雪です。水分をいっぱい含んだ重い雪が10cm超えで積もりました。明日からもう師走ですから、ことさらに騒ぐ必要はないんですけどね。
天気が悪いと、夕方暗くなるのが早いです。西宮家閉店時刻の17時はもう真っ暗ですよ。夏場でさえ午後4時を過ぎれば人影が少ないのに、この時季の夕方ではお客様の姿は皆無に近いですね。

夏場の観光シーズンにこれまで2、3人から言われたのが、閉店時刻の早さでした。西宮家は4月から10月まで18時、11月から翌3月までが17時です。そのお客様が言ったのは西宮家に限ったものではなく、町全体のお店が案外早くに閉まってしまうことだったんです。ひとりのお客様は、逆に朝の開店が早いことと併せてお話でした。

つい先日のこと、冬場の17時閉店が早すぎることを、切々と訴える女性二人がいらしたそうです。お歳の頃は還暦ほど、ご同伴のお若い女性と母娘さんペアかどうかは分かりません。私は草履コーナーにいましたから、お話の内容は聞こえませんでした。あとから聞かされた、こちらのお二方がおっしゃる要旨はこんな感じでしょうか。

「秋田市から角館はとても良いドライブコースである。しかしいつも明るい時間帯に来られるとは限らない。せめてもう少し閉店時刻を遅く出来ないものか。遅くまでお店が開いていれば、夕方以降も来客があるのではないか」。

至極ごもっともなご意見と思いました。せっかく遊びに来たのに、自分の意思に反して退店させられる。私がその立場であっても、多少不機嫌になるのは否定できませんね。夜の8時や9時ならいざ知らず、まだ夕食にも少し早いくらいの時刻ですから。
お二方は夜間営業の費用対効果の話までされたそうですが、私は独自店舗を持つ身ではないのでその点には触れません。そういう「お金」とは無関係の部分で、私は現在の閉店時刻に賛成の立場なんです。その理由は、「古き良き時代」ですね。

角館を訪れる方の多くは、漠然とでもこの「古き良き時代」を夢見ています。懐かしくも美しい街並み、温かい人情、癒しの空間。これらの中に、「遅くまで開いている店舗」が含まれているのかどうかですね。
日常生活をそのまま考えれば、夜遅くまで開いているお店はありがたいですよ。でも角館には非日常を求めて訪れるのですから、私はこのままで良いと思うんです。

誤解を恐れず言わせてもらえば、「郷に入れば郷に従え」。都会へ遊びに行くなら深夜までブラブラしましょう。田舎へ遊びに行ったのなら、遅くならないうちに宿(家)に入りましょう。そういうことだと思うんですがねぇ。
コメント
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