角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

地味な応援。

2010年06月02日 | 実演日記


今日の草履は、神奈川県厚木市からお越しくださったおばさまのオーダー草履です。
同じ配色の24cm草履を編んでいたところ、『その色がイイわねぇ』と21cm、22cmの2足をご注文でした。ちょっと洋風な明るいおばさまでしたが、こちらの和柄草履もきっとお似合いと思います。届いたらすぐに履いて欲しいですね。

とっても良いお天気が続いています。最高気温は23~25℃ほど、風が心地よく感じられ、湿度が低くカラっとしています。週間予報を見ると、こんな天気がしばらく続くようです。当地にしては案外珍しいと思いますね。散策のお客様もとても気持ち良さそうで、お迎えするこちらとしても天気だけで笑顔になりますよ。

先日メールでご注文いただいたのは、千葉県八千代市のおばさま。三年ほど前からの常連さんです。ご自分用のお買換えと共に、このたびはご友人へのプレゼントとして3足のご注文でした。
ホームページからの注文フォームには、「草履職人へ一言欄」を設けています。みなさんいろんな言葉をお届けくださるのですが、こちらのおばさまからもメッセージが寄せられていました。

『今回の注文で三回目になります。大切に履いているので一年間に一足、三年間履き続けています。今回は、親友二人にプレゼントする予定ですので宜しくお願いします。地味に応援と宣伝しています。今後も良い草履を作り続けてくださいね』。

「地味な応援」、私にはなんとも嬉しく響く言葉でした。

宮崎県からお越しのご家族旅。87歳とおっしゃるおじいちゃんを筆頭に、三世代6~7名の楽しそうな旅です。米蔵ショッピングを愉しむ中、おじいちゃんひとりが実演席に残りました。
宮崎県といえば、豚や牛の口蹄疫が社会問題になっています。『やっぱり地元はタイヘンな騒ぎなんでしょ?』と訊いてみると、少し間を置きゆっくりとお応えです。

『ときどきこういうふうに人間が困ることが起こるでしょう。私はねぇ、人の欲に対する戒めなんじゃないかと思ってるんですよ』。
さらにご自身の人生を振り返るようにおっしゃるのは、『親が子どものためにいつまでも生きるのは、結局子どものためになりませんねぇ。私の親父は早くに死にましたから、それ以来お金はとても大事なものになりましたよ』。

人生経験の長いご老体の言葉は、いつも重く響きます。そしてそうした方々が人を憂う、社会を憂う、国を憂う心というのは「本物」と思うわけです。

とうとう鳩山総理がお辞めになりましたね。「同罪」として小沢さんも辞めるようです。それ自体は時間の問題と思ってましたが、これからどうするかが最大の焦点でしょう。
「たちあがれ日本」が結党されたとき、世間はその「年齢」を嘲笑しました。そのとき石原東京都知事が記者団に言い放った言葉が、しっかりと頭に残っています。
『年寄りを笑うのはイイよ。でもね、君たち若い人たちに分からない危機感を、われわれ年寄りは持っているんだ』。

現代社会が忘れかけている「日本人」を、私は地味に応援しているんです。

コメント
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