HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

わかってもらえるさ

2013-05-11 06:23:51 | 日本のロック・ポップス

今年のGW後半はCSで放送された忌野清志郎の特集をぼんやりと見ていた。なんというか、
「KING」とか「GOD」とか持ち上げられた状態のトリビュートは、個人的にはトゥー・マッチで
故人を貶める気は毛頭ないのだが、自分が好きだった時代のRCサクセションは遠い昔の話に
なってしまったことを痛感した。

30時間に及ぶ特番の中で圧巻だったのは7時間にわたってCMをいれずに、フジテレビに
出演した映像を流したことであった。80年の『トランジスタ・ラジオ』からスタートしたのだが、
ここらからタイマーズ辺りまでが私が気に留めていた時代。ダビングの限界に挑戦したかのような
滲んだ画質のVHSで見ていた映像が、綺麗な画質で再放送されたのは嬉しい限りであった。
タイマーズとして出演した際に、予定にない歌を歌ってスタジオと茶の間を笑いと驚愕の渦に巻き込んだ
ことがあったが、流石にあの曲だけは放送されなかった。(笑)

私がRCサクセションを聴きだしたのは16歳くらいの頃で、FMから流れてきたアルバム「シングルマン」
「EPLP」「PLEASE」から選ばれた曲の数々は衝撃的であった。「何で中学の頃は、俺を含めてクラスの誰も
RCを聴いていなかったのだろう?。」という、さして意味の無い疑問と新しい宝物を見つけて有頂天になる
高揚した気分とが入り混じって、録音したカセット・テープを夢中で聴いたものだ。

入口が解りやすい「ロック仕様」だったのが、良かったのかもしれない。当然ながら遡って「ハード・フォーク
時代」も聴くのだが、嫌いではないもののそれほど好きにもなれず。それでも他のミュージシャンの
「代表作」とされる盤よりは多くの回数を聴いたかもしれない。

以前、日本のロックのライブ・テープを集めていた時期があったことは何度か書いた。当然のように
RCサクセションも収集の視野に入れていたが、こういうものは集め始めると古い物ほど有難がる傾向が
私にはあるようで、80年代よりは70年代を優先して集めたように記憶する。しかも「ハード・フォーク時代」
の音源はそれほど数が見当たらなかったので渇望していた。(因みに私の手元にあるダビングを重ねた
ライブ・テープは45回分あり、そのうちハード・フォーク時代は3回分しか無い。)

そんなものだから、02年に雑誌ロック画報の付録でRCサクセションのライブCDが世に出た時は
「こんなものが手軽に買えていいのか。しかも本のオマケだぞ。」と興奮したものだ。あれから10数年。
72年から73年にライブをカセット録音した21曲が世に出た。ジャケットのシンプルさがシングル
『わかってもらえるさ』を思い起こさせるのが良い。

録音場所と日時の明確なクレジットは無いが、録音そのものが貴重であるのは間違いないし、
後にレコーディングされて世に出る曲の数々の原型を知ることができるのは興味深い。
清志郎の声の説得力は勿論だが、林小が弾くベースの音の豊かさに改めて驚かされる。

今の耳で聞きやすいようにトリートメントが成されているのだろうが、もしかしたらカセット本来の音は
もっとまろやかな感じではなかったか?という気がしないでもないが、78分を超えるボリュームに
感謝しながら聴くのが正しい在り方というものだろう。

個人的にはモップスのアルバム「モップスと16人の仲間」に収録されていた『マイホーム』の
RCバージョンを聴くことができたのが、一番嬉しかった。

このCDを聴くとき、間違いなく感じるのは(今もそうだが)忌野清志郎の不在である。
清志郎が生きていたら、このCDが今の時点で世に出たかどうか、ということを同時に考えるわけだが
歴史は確実に歩を進める。不在の悲しさと存在の嬉しさを、同時に天秤にかける愚かさに
私は気づくべきなのだろう。


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