HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

白石かずこ / DEDICATED TO THE LATE JOHN COLTRANE

2005-05-17 21:03:01 | 日本のロック・ポップス
(株)ブリッジが昨年復刻した幻のアルバムで、
「男たちよ!」シリーズの1枚。
詩人「白石かずこ」が77年にサム・リーバスらが
演奏するフリー・ジャズをバックに朗読を
くりひろげるアルバムである。

今回の再発で初めて聞いたのだが、恐るべき「怖盤」
とでも言おうか・・・。
題材はジョン・コルトレーンであるが、これぞ
ボイス・パフォーマンス!。

言葉で勝負するからには、リリックに意味性と芸術性が
欠けていては話にならない。その言葉を「音」で発するには
それなりの情感と抑揚がなければならない。
いまどきのレゲエやラップ、テレビ番組「詩のボクシング」で
展開されるそれらは、私にとってはほとんど忘れ去られるべきものだ。
文字であれ、音であれ、対峙するものにイマジネーションを喚起させる
ものでなければ、発表する価値はない。

難解なのは、当たり前。羅列される言葉や行間から100人が
100通りの意味のある受け止め方が出来ることこそが「価値」である。
このアルバムでの朗読はその声質もあって、恐怖すら感じる。
バックに流れるジャズも朗読にマッチしている。
私はフリー・ジャズがどういうものか理解できていない。
コルトレーンや、アーチー・シェップ、アルバート・アイラーなどは
いくつも好きなアルバムがあるが、コアなフリー・ジャズ・マニアから
すれば、そんなのはまだ入り口のドアに手をかけたにすぎないだろう。
この先、そういったジャンルに深く踏み込んでいくというもの
でもないのだが、抑制された、つまりフリー・ジャズに「朗読」が
かぶるという前提での録音でのここでの演奏は、ここで詠まれる
長編の詩と同じく、イマジネーションを喚起させるのは間違いない。

マスターがないのか、針音が所々聞こえるが、些細なことだ。
CDの帯には「詩のロック・スター、白石かずこ」とある。
私にとって格好いいものはすべて「ロック」である。
帯の叩き文句に偽りなし・・・・。
「男たちよ!」は第一弾の秋吉久美子はもはや製造中止である。
このアルバムもそれほど長くカタログに載っているとは思えない
ので、興味のある方は早めの購入をおすすめする。

「ここには雑音はない。すべては純粋に勃起する音楽である。」
          再び、聖なる淫者の季節 / 白石かずこ

コルトレーンで一番好きなアルバムは何か?これは難しい。
私は「フリー・ジャズ」の伝承儀式?のドキュメントという
意味でアーチー・シェップとの「NEW THING AT NEW PORT」が
好きなのだが、皆さんはいかがだろうか?。




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7 コメント

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Unknown (TK)
2005-05-19 07:19:50
このアルバムは聴いた事はないんですが、ハリーさんの言葉。



>100人が

100通りの意味のある受け止め方が出来ることこそが「価値」



これって私がフリージャズとかに接する時、その面白さを語る時に使う言葉と同じです。

それ+ひとりが100回聴いた時に違うイメージが湧く「価値」というのもあるんです。



決してフリー・ジャズは難しい音楽でなく、相対した時に演奏者が体から出す音を、頭で考えず自分の体で受け止め、楽しめるか楽しめないか、むしろ単純な音楽だと思うんですよ(俺だけかもしれないけど)。



私は5年間程ロックを全く聴けない時期があり、その間はジャズばかり聴いてました。

最も好んだ人がジョン・コルトレーンです。

コルトレーンが全盛期から最後期まで所属したインパルス・レーベル、ブルー・ノートなどと違い、オリジナル盤も比較的安価で買えたんで結構揃えました。

ドルフィーも好きなんで、共演したビレッジ・バンガードのライブも好きなんですが、一番好きな作品は「クレッセント」です。

比較的これを一番に出してくる人は少ないと思いますが、非常に感動的な演奏です。



インパルスの音ですが低域が非常に曖昧な音で、「クレッセント」のベース音をしっかり聴いてやろうといくらお金を使った事か(笑)。

ベースをしっかり聴ける状態にすると、シンバルの音が細くなったりね。

ジャズ喫茶のオヤジの書いた本を読んでいると、オーディオ煮詰めていったら、ある夜スピーカーの前にコルトレーンが降臨、目の前でサックス吹いていったそう。

そんなアホなと思いながら、自分とこにもこないかなと考えたり(笑)。



最近のジャズ、特に日本のレコード会社の企画ジャズ、あれなんかは100人が100通りのと、全く逆を行くイージー・リスニング・ジャズで興味もてません。

Unknown (ハリー)
2005-05-19 18:55:08
ブルー・ノート神話、特に4000番台はマニア間の

競争が激烈とか・・。



難解と敬遠されがちなフリーでもノイズでもその音の間を縫って一瞬でも「ガキーン!」とくる瞬間を

聞き手が捉えたとき、聞き手の許容量もあるでしょうが、

その瞬間こそ、演奏者の勝利なんだと思います。



激烈なプレイが印象に残るトレーンですが、

さすが、TKさん。「クレッセント」とは

お見逸れしました。「WAISE ONE」「LONNIE'S LAMENT」

というスローな2曲が印象に残る好盤ですよね。



7,8年前高熱が続いて仕事を休んだ事がありました。

朝から晩まで「コンプリート・プレステッジ・レコーディング」を聴いていたのですが、トレーンは目の前に

現れませんでした。(笑)

熱は下がりましたが・・・・。





Unknown (ハリー)
2005-05-19 18:57:15
私が賢者でない証左。

「WAISE」ではなく「WISE」でした。
追伸 (TK)
2005-05-19 18:59:08
ジャズにハマってた頃、昔の「ジャズ批評」誌のコルトレーン特集号を買って読んだことがあります。その中の企画で、恐山のイタコにコルトレーンを呼び出してもらうというのがありました。実験かいし、お婆さんのイタコに見事にコルトレーン降臨、お婆さんは明かな東北訛りでこう言ったそう、「クッ、クッ、苦しい~、わしはコルトレーンじゃ~」。こういう企画最高です、レコードコレクターあたりで、故人を特集する時こんな企画やらないデスかね~、ウケると思うんですけどね。
Unknown (ハリー)
2005-05-20 21:43:43
ハハハ、それは面白いですね。

できればイタコを数人呼んで、コルトレーンと

ジミヘン、コルトレーンとデュアン・オールマン

とかの対談、もしくは3者同時に降りてきて

もらっての鼎談、想像しただけで笑ってしまいます。そして最後に読者クイズ。



「一番高額のギャランティーを要求したのは

誰でしょう?」正解は6月号で。



6月号 先月のクイズの正解は・・

答え:ジミ・ヘンドリックス。



編集部注:それでも一昨年のDVDとCD発売時

に行なったジミー・ペイジ・インタビューより

遥かに安いものであった(笑)



僕も買いましたよ!! (じみへん)
2005-05-25 23:24:44
こんばんわ!!

僕も遅ればせながら、このCDを購入して来ました。

たしかにハリーさんやTKさんがおっしゃるように、なんともアヴァンギャルドで

少しオドロオドロしいアルバムではありました。

なるほど、こういう切り口のフリージャズもありだったんですね~、勉強になりました。



白石かずこさんのヴォーカルを聴いていると、なにや1970年代に

テレビで観た怪奇ドラマのナレーションを聴いているような錯覚に陥りました。

それぐらいリアル感のある、まさにフリーフォームな作品に仕上がっていると思います。

たしかにところどころで針音が聞こえてきますが、そんなささいなこと

まったく問題ありません!っていえるぐらい器の大きな作品に仕上がっていると思いました。



あ、それからハリーさんに昨日メール送信しておきましたんで、宜しくお願い致しますねー!!



Unknown (ハリー)
2005-05-29 21:38:04
どうも、じみへんさん。

「男たちよ」シリーズは、秋吉久美子、安井かずみ、

花柳幻舟、そしてこのアルバムを購入したのですが、

一番多く聴いたのが、「白石かずこ」なんです。

怖いものみたさから始まって、すっかりハマって

しまいました。(笑)

安田南のアルバムは、未購入なのですが、なんとなく

ジャケが気に入っているので、アレもなくなる前に

購入しておこうと思っております。

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