掲載写真は81年にザ・フーがリリースしたアルバム「FACE DANCES」からシングル・カットされた2枚。
左がファースト・シングル『YOU BETTER YOU BET』、右がセカンド・シングル『DON'T LET
GO THE COAT』。英国盤はそれぞれ「WHO OO4」、「WHO 5」という型番が与えられ、
英ポリドールが如何に気合が入っていたかが伺える。
さて、我が国はというと、この2枚のシングルの国内盤はリリースされなかった。最後に我が国で
リリースされたザ・フーのシングルは映画「さらば青春の光」のサントラからの『5時15分』で、
オリジナル・アルバムに準拠すれば『フー・アー・ユウ』ということになる。元来、日本ではザ・フーは
冷遇されていたが、キース・ムーンの死後にケニー・ジョーンズを迎えた新生ザ・フーの門出を
スルーするのだから、どうなってんの?というわけである。
81年と言えば私はもう洋楽を聴いていたのでリアル・タイムでアルバム「FACE DANCES」を聴いても
よさそうなところだが実のところ、アルバムを買ったのは84年のことである。ラジオで『YOU BETTER
YOU BET』でも流れてくれば話は違っただろうが、そもそもフーの曲がラジオから流れてくることなんて
まず無かった。
当時のガイド本やディスコグラフィーの類は、「LIVE AT LEEDS」か「TOMMY」についてばかり熱心に
書いていたし、私は「ダイレクト・ヒッツ」や「キッズ・アー・オールライト」のサントラを聴くので手いっぱいで
高校時代は「フーズ・ネクスト」に辿り着くのがやっとだった。ケニーの入った盤はキース・ムーン在籍時のフーを
集め終わってからでもいいやと思ったのも事実。
ところが84年の秋頃だったと思うが、ぼんやり見ていたMTVからいきなり飛び出してきたのが、
モノクロの『YOU BETTER YOU BET』のプロモ・ビデオだった。その日、それまで流れていたどのビデオとも、
或いはこの曲のオン・エア以降に流れた全てのビデオと比べても、『YOU BETTER YOU BET』の
格好良さは際立っていた。それは私にとって、初めて見た「動くザ・フー」でもあった。
慌ててアルバムを買い、歌詞を読むと歌詞中に「T.REX」が登場するではないか。ああ、なんて素敵なんだ。
そして決定的だったのが次の歌詞であった。
I DON'T REALLY MIND HOW MUCH YOU LOVE ME
A LITTLE IS ALRIGHT
何故か印象に残ったピート独特の、ちょっと捻くれた孤独な感じの恋愛観が、単に当時の私の感情と同じような
ものであっただけなのだが、後にピートのソロの楽曲に『A LITTLE IS ENOUGH』という曲をみつけ、
ますます、『YOU BETTER YOU BET』を好きになったものだ。
この曲のプロモ・ビデオには、今ならNG扱いにされるであろうシーンがある。
映像はライブではなく当て振りなのだが、曲の後半でピートがコーラス・パートが無いシーンでも
マイクに向かってコーラスをつける場面がある。その後の本当にコーラスをつける場面ではピートの
顔が少し笑っているのが、御愛嬌。まあ、いずれにせよ曲の魅力を削ぐものではない。
18歳の私は、『YOU BETTER YOU BET』に、そしてアルバムでは『YOU BETTER ・・・』に次いで
A面2曲目に配された『DON'T LET GO THE COAT』にも入れこんだ。
コートの似合う素敵な女の子に、この曲を思い浮かべながらラヴレターを書いたのも、今では
いい思い出だ。
10代の私の、心の中の荒廃地に吹く風はやまなかったけれど。(笑)
84年の秋、街にはザ・フーの82年の解散コンサートを収録したアルバム「フーズ・ラスト」の
レコードが並んでいた・・・・。
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