ジェシ・ウィンチェスターの知名度がどれほどのものか、把握していない。
大メジャーではないし、マニアの心を擽るレア度を誇るアルバムを録音した幻の人
でもない。私は何故かこの人のことが好きで、気が付けば結構な数のアルバムを
所持していた。
昨年出た「QUIET ABOUT IT」は闘病中だったジェシを励まし支援する意味合いを
含んだトリビュート・アルバム。参加した面子に惹かれて購入したのだが、これが
素晴らしい。どのミュージシャンも徒に自己の個性を主張するのでなく、元曲の
良さを引き出して自分のモノにしているのが素晴らしいのだ。
アルバムは冒頭から『PAYDAY』『BILOXI』と続き、この流れはそのまま自身の名前を
冠したジェシのデビュー盤の1曲目と2曲目である。アルバム・タイトルにもなった
『QUIET ABOUT IT』にしてもそうだが、やはりジェシといえば一般的なイメージは
70年にアンペックスから出た、あの盤なんだなぁということになる。
捻くれ者の私は72年のセカンド・アルバムの方が好きなのだが、1ST推しを否定する
ものでもない。冒頭の2曲はそれぞれジェームス・テイラー、ロザンヌ・キャッシュの歌唱が
素晴らしく心にしみる。トリビュート盤に在りがちな「出来の悪いカバー」は何一つ無いというのが
個人的な感想で、これほど粒ぞろいのカバー集は珍しい。まあ、収録曲が11曲で44分という
尺なので少数精鋭を地でいったというところか。
私が贔屓にするアルバム「THIRD DOWN , 110 TO GO」からは『DANGEROUS FUN』が
選ばれた。カバーしたのはロドニー・クロウェル・ウィズエミルー・ハリス&ヴィンス・ギル。
ロドニーはかつてエミルーのバンド、ホット・バンドに在籍したいたカントリー・シーンの重要人物で
エミルーと共に歌うこの曲は、映像でもあればなあと思わせる実に渋い演奏だ。
表題曲を演奏するのはエルヴィス・コステロで、驚くべきことにギターやピアノは勿論、ベースに
ドラムス、ウクレレ、マンドリンといった全ての楽器を自分で演奏している。この念の入り用は
流石というか、「好きなんだね」と思わずにいられない。
ジャケットの落ち着いたトーンとあわせて、愛すべき盤がまた1枚増えた。
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