HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 16

2014-04-10 00:09:50 | 日本のロック・ポップス

何をもって「東洋風」とか「オリエンタル・ムード」というかの定義が、自分の中にない。
それ故に、歌謡曲や演歌のフレーズ或いは解りやすい洋楽のイメージから離れると
安易にそんな言葉を使ってしまいそうになる。譜面に起こせば(そしてそれを読めれば)
明確なラインというものが見えてくるのだろうが、それもできない私にできるのは
そういった言葉を安易に使うか使わないかの判断のみだ。

中学生の時に聴いた久保田早紀のヒット曲『異邦人』のメロディーは、初めて聴いた
時から今に至るまで鮮烈な記憶に残っている。特に好きな曲でもなかったが、今まで
聴いたことのないメロディーであったことは間違いなかったから。

ファドというジャンルに造詣があるわけではないが、レゲエはさておきサンバやボサノヴァに
違和感なく接することができるようになり、またそれとは別に英国フォークの深淵に立つと
ファドのような音階も違和感なく接することができるというものだ。

掲載写真は久保田早紀が80年にリリースした3枚目のアルバム「サウダーデ」。
リアルタイムで聴くほどの知識も度量もなかったが、今ではジャケットの雰囲気と合わせて
好きな1枚である。

アルバムのA面をポルトガルのミュージシャンを使って現地で録音し、B面は日本人
ミュージシャンを使っての録音。個人的には圧倒的にA面ばかり聴いている。ギターラや
ヴィオラ(ここではクラシック・ギターを指す)中心のドラムレスな曲ばかりなのだが、ここに
収録された5曲に駄曲無し。あの『異邦人』も再演されるが、大仰なシングル盤に比べて
こちらでの抑制の効いたアレンジが曲の表情をよりしなやかに伝える。

また『アルファルマの娘』『トマト売りの歌』といった歌詞で垣間見ることができる、純粋な
少女の視点というのが瑞々しくも眩しすぎる。

それに比べてB面がどうも今一つ。いや、これはこれで日本のポップスとしては完成度が
高く、おいそれと到達できるようなものではないとも思うが、A面の素敵な5曲と比べると
どうも凡庸に思えて。それだけ、A面でのアレンジや楽曲が素晴らしすぎるのだ。
ただ、『異邦人』以降、シングル盤の大ヒットを期待されたであろうことは間違いなく、
それに続くヒットを出せないまま自分の趣味性だけを前面に押し出すことができなかったのは
想像に難しくない。事実、このアルバムからのシングル・カットはシングルのA・B面ともに、
アルバムのB面収録曲であった。

この後、ポップス路線のレコードを作り、数年後には結婚してキリスト教の伝道音楽に
勤しむことになることを思えば、私にとっては「サウダーデ」は一期一会の奇跡のアルバム
だったのかもしれない。

 


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