私がもしミュージシャンなら、仮に契約してくれるとしたら印税やプロモーションや
その他諸々の条件が良いレコード会社或いはレーベルを選ぶだろう。それは当然の
ことなのだが、そういう条件を抜きにしても格好いいレーベルや憧れのレーベルが
あるわけで、自分の作品にそういったレーベルのロゴが刻まれる、つまりそこから
作品を出せるというのが悦びであるのも間違いない。
配給の関係で好むと好まざるとそうなったのかもしれないが、日本のミュージシャンで
ヴァーティゴ・レーベルから盤を出したミッキー・カーティスやかまやつひろし、
アサイラムから盤を出した伊藤銀次や泉谷しげる、アトランティックから盤を出した
内田裕也や近年のウルフルズ、なんて処を思い浮かべると洋楽中心のリスナーだった
私にしてみれば「格好いい」と思ってしまうのだ。
掲載写真は「CHARLIE WATTS MEETS THE DANISH RADIO BIG BAND」と題された
盤で、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツが2010年にデンマークの
ビッグ・バンドと共演したライブ盤である。
トリオやカルテットでなく、あくまでビッグ・バンドなのでドラムスが目立って何かをすると
いうことはないのだが、全体を包む上品なアンサンブルの中でジャズを演奏するチャーリーは
粋人の極みではなかろうか。私を含めた多くのストーンズ・ファンは「チャーリーが参加
している」というエクスキューズでこの盤を手にしたかもしれないが、それを抜きにしても
聴いていて気持ちの良い音である。
ストーンズのカバーが3曲収録されているので、ストーンズ・カバーを集めているという
理由で購入したとしても、良質な盤に行き着いたという気分になると思う。
エルヴィン・ジョーンズに捧げたチャーリー自作の組曲で幕を開ける盤が、インパルス
から出るというのも凄いというか神の御加護というか運命というか、これほどの組み合わせは
そうはない。ワン・ショットの契約だろうがインパルスから自分のジャズ・アルバムを
出せることをチャーリーは心底喜んだだろう。ストーンズ者として私も嬉しい。
IMPULSEが活動を再開していて本当に良かった。(笑)
ところで、私がエルヴィン・ジョーンズの名前を最初に知ったのは多分ソニー・ロリンズの
「A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD」だったと思う。曲が終わって「THANK
YOU, THANK YOU, ELVIN JONES ON DRUMS」というMCが入っていたのはこの盤
だったような。何故かその一節を似せて呟くのが楽しかったのだ。(笑)
おっと、これはBLUE NOTEの盤だった。
「CHARLIE WATTS , CHARLIE WATTS , LADIES AND GENTLEMEN」
今はこの一節が妙に嬉しいのだ。