フランキー・ミラーがドイツのテレビ番組「ロックパラスト」に残した音源がCDとDVDで
リリースされた。発売のアナウンスは同時であったが、先にCDがリリースされ、暫く
間をおいてDVDのリリースとなった。
76年、79年、82年と3つの年代のライブをそれぞれ1枚のCDに収録した計3枚組で
CDはリリースされた。何故ディスク1が82年、ディスク2が76年と時系列でないのが
違和感がある。DVDもディスク1が82年で、ディスク2に76年と79年の演奏が
収録されている。
3つの異なる年の演奏を収録しているのだが、会場の規模もそれぞれ違うので
ライブの雰囲気の違いが楽しめる。また年代が経つにつれてレコード制作の環境や内容が
変わり賛否両論あったミラーだが、ライブにおいては一定のクオリティーを保っていた
こともわかる。そうはいっても76年、79年のライブに贔屓目になるのは仕方あるまい。(笑)
ポール・ロジャースに負けずとも劣らない渋い声は実に魅力的で、76年の1曲目の
アコースティック・ギターを持って一人で歌う『DRUNKEN NIGHTS IN THE CITY』を
聴けば、声の持つ力の大きさに厭でも気づくだろう。ランディ・ニューマン、ディランのカバーも
ミラーの咀嚼力で新たな魅力を与えられている。狭いスタジオでの収録で、徐々に
熱気が満ちていく様がわかるような気がする。
個人的には79年の演奏が選曲とあわせて一番気に入っている。スタジオ録音もある
ボブ・マーリー、アンディー・フレイザーのカバーに交じって、ジョン・レノンやストーンズの
カバーも披露。演奏曲も15曲あるし、ささやかなヒット曲『FALLIN IN LOVE』も演奏されるし
何よりバンドの演奏とミラーの歌唱、客席の盛り上がりが一体化した様子が素敵だ。
まあ、正直に書けば、タイトルがよく似ている『A FOOL IN LOVE』の方が好きだけど。(笑)
82年は野外コンサート。だだっ広い会場ではないので、ある程度のまとまり感?がある。
コンサートの終盤でミラーのギターの弦が切れるのだが、それ以降画面が会場近辺の
風景を延々と映していて曲が終わってしまうのが笑える。笑えるというか、笑えないのが
ミラーがギター交換にもたついているのに、次の曲が始まってしまう場面だ。
新しく登場したギターを肩にかけ、音を出してみるがまだプラグは繋がっていないのであった。(笑)
時代を反映した音作りであるが、ミラーの歌唱はいつも通り。
今までフランキー・ミラーのまとまった映像はリリースされたという記憶が無い。
ライブ音源にしてもCDのボーナス・トラックで数曲、という程度だったので、今回のCDと
DVDのリリースの価値は大きい。
ロッド・スチュワートやロバート・パーマーの高評価に比べて、わが国ではあまり話題にのぼることも
ないフランキー・ミラーではあるが、彼らと比べて何ら劣ることのないパフォーマンスを確認する絶好の
機会は、今なのだ。