【忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門】
この演目は2回目。2006年12月に時蔵の滝夜叉姫で観た時の記事はこちら
今回の配役は、傾城如月実は滝夜叉姫を七之助、大宅太郎光圀を勘太郎。
スッポンのない浅草公会堂での滝夜叉姫の出はどうするのだろう。舞台全体を暗くしていて下手にパッと灯りが入るとそこにいたという工夫。黒衣2人が面灯りで照らしだすのだが、蝋燭の火がいきなりつくはずはないので、きっと何か大道具で仕掛けをしてくれているのだろう。それはわからなかったが見事!
七之助の滝夜叉姫は大人の女の色仕掛けの誘惑という妖艶さはあまりない。七之助の魅力は凛とした雰囲気。父将門の最後を聞いての嘆きのところから武将の娘の誇り高さが滲んでいてよかった。正体を現してからの眼力の強さも生きる。
兄の勘太郎が女方優先で配役されている時にその相手役で組むことも多く、真女方の役ばかりでなかったことがよかったように思う。中村屋のこの兄弟は実に色々な役の経験を積んできていて恵まれているし、きちんと力をつけてきているのがいいと思う。
そして光圀の勘太郎もよかった。戦物語も動きがきびきびしている。滝夜叉姫の正体を見破ってからの立ち回りも花形らしい若さあふれる様子で楽しめる。滝夜叉姫、光圀がともにぶっかえって絵面に極まると思わずニンマリしてしまう。
薄暗い古御所の建物がどんどん壊れていき、大屋根の崩れたところから大蝦蟇とともに現れた滝夜叉姫が平家の赤い旗を投げ広げて、下の光圀と上下に極まっての幕切れ。前回は歌舞伎座の3階席で滝夜叉姫の首から上は見えなかったのだ。浅草公会堂は3階席からもしっかり上の方まで見えるし、花道も七三のあたりもけっこう見えるのがよい。今回でようやく「将門」の幕切れまで耽美的な舞台を堪能できて満足!
写真は劇場正面の酒樽の積み上げを携帯で撮影したもの。酒は「鏡山」。
1/17新春浅草歌舞伎(1)立役二人の「正札附根元草摺」
1/17新春浅草歌舞伎(2)「御浜御殿綱豊卿」
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