「対面寿曽我」の前に勘三郎の「鏡獅子」から感想を書く。
【新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子】
2007年1月の勘三郎の「鏡獅子」の感想はこちら
今回の配役は下記の通り。
小姓弥生後に獅子の精=勘三郎
胡蝶の精=千之助、玉太郎
局吉野=歌江 老女飛鳥井=吉之丞
家老渋井五左衛門=友右衛門
用人関口十太夫=高麗蔵
江戸城の大奥の広間に並ぶ奥女中ふたり。老女飛鳥井を前回つとめた歌江が局吉野に回り吉之丞の飛鳥井とのコンビとなっていてこれはもう最強のおふたりであられると感心。友右衛門の老け役は珍しいと思った。
いよいよ勘三郎の弥生が登場すると前回の弥生とはまた違った印象。前回よりもさらにダイエットがすすんだとみえて、ふっくらした娘の顔から大人びた女になっている感じがした。
今回は詞章のコピーも膝の上に乗せて準備万端。「ここで扇をもつ」とか以前の書き込みの赤文字も見ながら、長唄で歌われている内容と踊りの振りの関係も一生懸命チェック。牡丹の花が咲き乱れ扇が花びらが舞う様子を表したり、二枚扇になって花の波を表したりしつつ、「牡丹→胡蝶→獅子」につながっていくのかと、手に獅子頭をもつ前くらいからの運びにあらためてよくできた舞踊だと感じ入る。
後見の胡蝶の動きにつられて獅子頭に獅子の精が宿るんだろうなぁとこれもまた納得。やっぱり詞章を理解して味わうことの面白さを痛感した。そういえば「シネマ歌舞伎 三人連獅子」のポスターに長唄の詞章が字幕で出る上映回ありとあったが、それっていいと思った。
「春興鏡獅子」の詞章のサイトをご紹介。
今回の胡蝶は御曹司の二人、千之助・玉太郎コンビ。開演前に舞台写真をチェックしたら台に乗って登場する赤の衣裳でポーズを極めているふたりがあまりに可愛いので即買ってしまった。大人の役者の写真は筋書にあるので今月は我慢。千之助は父・孝太郎にそっくりでびっくり。終始伏し目がちにしているのがいいし踊りもうまい。さらに驚いたのが玉太郎。「盛綱陣屋」の小三郎で見直していたが今回はさらに頑張っている。千之助に負けないように一生懸命ついていっているという感じ。負けん気は強いのかもしれない。こちらは大きな眼が可愛い。父・松江がきりっとしているのでそういう風になっていくかなと思えて応援モードへ。最後の毛振りのところのうさぎとびまでふたりとも頑張った。
花道から獅子の精が登場するが、今回の席からはあまり見えない~。我慢我慢。
とにかく前半の弥生と後半の獅子とをそれぞれ堪能させてくれてまさに「兼ねる役者」の本領発揮だ。千穐楽だけに大向こうのあちこちから掛け声が飛ぶ。「中村屋」「十八代目」だけでなく「当代一」も!
獅子が髪洗いを始めるとだんだんと期待が高まっていく。実は今日の千穐楽の毛振りの回数を100回ではと予測していた。その理由は、福助が昨年10月の「英執着獅子」千穐楽で父の傘寿の祝いで80回振ったから。福助の獅子よりも今回の獅子とでは毛の量が段違いに多いと思われるがそこは勘三郎のことだから負けん気で上回ってくるだろう。昨年が歌舞伎座120年だったが120回というのもまた大変だ。だから100回あたりでくるだろうと思い、いつものように数え始めたら40回、50回と回し続けるので客席の興奮が高まっていくのを身体で感じる。70回、80回、やっぱり超したぞ。90回を超したあたりからスピードアップ!これは100回だな。100回!!客席の割れるような拍手!!
毛振りの後で二畳台の上で片足で立つという見せ場もあるのだが、さすがにふらつきながらも幕が引かれるまで頑張って片足維持!意地の見せ所だね。
今月の勘三郎は夜の部だけ出演で、続けて「鰯賣戀曳網」の猿源氏だ。夜の部は3本立てだし、どれも見応えあり。少しずつアップしていく予定。
写真は千穐楽の垂れ幕のかかった歌舞伎座正面を携帯で撮影。
さて、明日は古田新太の「リチャード三世」。このふり幅が自分でも快感である(笑)
獅子の大きさゆえの胡蝶の愛らしさなのかもしれませんが、
胡蝶だけを観ててこんなにウットリしたのは初めてです。
本当に素晴らしい鏡獅子だったと思います。
毛振り100回はすごいですが、うさぎ跳び100回もすごいですね!
千之助・玉太郎コンビの成長を見るためにも長生きしたいと思いました(笑)