十月歌舞伎座の「加賀美山~」であまりに菊之助がよかったので、私にしては珍しく奮発してしまい、最前列のかぶりつきで観劇。上手寄りの席だったのだが、最後の地獄谷シーンで真正面で菊之助の児雷也が奮闘する踊りを観ることができ、「若いお肌がなんてキレイ!」とドキドキしてしまった。いやあ、実に久しぶりです、こんな興奮は!失礼しましたm(_ _)m
最近、母業でけっこう緊張をしいられる状況もあり、今回はストーリーからじっくりと書く余裕がない。そこでしっかりお話を紹介しながら感想を書かれているキナ湖さんの観劇レポをこちらでご紹介させていただくことにした。
キナ湖さんの11/13の観劇レポはこちら
ちょっとだけ物語について書くと、ガマとヘビとナメクジの三すくみというジャンケンのような力関係が前提になっているのをまず理解して観ないといけない。敵役のヘビ(大蛇丸)に勝つのはナメクジ(綱手)ということになっているので、ガマの児雷也は綱手がいないと全く敵討ちもできない。さらにヘビの毒気にやられて再起不能状態になる児雷也ってどこが豪傑なんだといいたくなる。そうか、妻の助けがあってこそ敵と戦えるっていう男を主人公にすると女性も共感しやすくなるのかな?だからこそ江戸時代もこの草双紙は30年間も続編が続くという息の長い人気を保ったのかもしれない。それに今回は有名な歌舞伎のパロディも随所にちりばめて物語を組み立てているという。
私はキャストについての感想を中心に書かせていただく。
菊之助は、ご本人が立役がお好きということらしく、児雷也は本当に活き活きと楽しそうに演っている。唯一女装して出てくる巫女・宝子の場面とは声も使い分けてそれも両方「いい声」なのだ。菊之助について私はいわゆるいい役者の条件「一声二顔三姿」の順で気に入っている。宝子の正体を明かして装束は巫女、頭は児雷也になって「ば~かめぇ」と引っ込むところのメリハリもきいていていい。最前列だったので双眼鏡も持っていかなかったため、序幕最後の宙乗りは最初しか表情が見えなかったのが残念。スクリーンも近すぎて斜めで見えにくかった。この場面については後ろ席の方に軍配。
亀治郎の綱手姫は、児雷也に対して常に気遣う本当にいい女房で可愛らしかった。こんなに可愛らしいのは初めて観た。戦闘シーンではきりりとしていてこれもよい。外には強く夫には優しいという妻の役は、女方としても美味しい役だと思う。それをこんなに魅力的に演ってくれて亀治郎を今回あらためて見直した次第。そしてこの役を経て七月の「十二夜」の麻阿につながったのねと納得。
松緑の大蛇丸は、二人がかりでかかってこられてもがっぷり組めるというような存在感があった。七月の「十二夜」の安藤での三枚目への開眼も記憶に焼きついているが、実悪もしっかり極めて欲しいという今後の期待に大いにつながった。このように彼の芸域が広がっていくのは楽しみだ。
菊五郎はすっかり脇に回っての二役。さばき役の勇美之助はさすがにカッコイイ。最後に馬にのって登場してしめくくる時も座頭の貫禄たっぷり。しかし今回は二幕冒頭の金満家の妻のお虎でしょう。実は名古屋の御園座での初演の写真を『演劇界』で観てから早く東京で上演してくれないか手ぐすねひいて待っていた私。ブランド好きなケバイマダムで「軽くヤバイ」なんていうパロディを人間国宝がのたまう楽しさよ。この二役のメリハリは観ている方も楽しいが、ご本人きっと楽しくて仕方がないと思うのだが。
團蔵の金満家=お虎の婿養子さんも楽しかった。いつも悪役でカッコイイ團蔵さんがこんなにはじけてる~!婿養子のいじけぶりを「ヒロシです」に乗ってやられてしまった。これを名古屋からやっているのを見ていれば、松緑も安藤であそこまではじけられるようになる励みになったのでは?などと勝手に思ってしまった。(追記:それよりも親代わりの菊五郎さんのお虎でのはじけっぷりを見習わざるをえないか!!)
松也の金満家の娘お辰のコギャルぶりにはまいりましたm(_ _)mダイエットの成果ですっきりされたのは「加賀美山」の求女でわかっていたが、本当にキレイ。胸元のハートのタトゥやら頭のウサギの耳風ヘアアクセなども凄いけど髪の毛をくるくるさわる手つきがすごい!バランスボールに乗ってかなり客席まで迫ってきた時もドッキリ。こんなに背も高いのねってよくわかった。二役の二枚目も憂い顔や悔しさいっぱいの表情がよかったし。菊之助が女方に回る時の相手役の二枚目は、これからはやはり松也がいい。
松也の父・松助の仙素道人は、椅子に座りっぱなしで児雷也と綱手に妖術を授けていたが、病気から復帰されたばかりとのこと。声もマイクを通していたようだが、目や表情の演技はなかなかの存在感だった。早くお元気になられますように。
また、最前列だと舞台の照明が明るいので幕の冒頭に筋書きで出演者がチェックできて普段はどなただかよくわからなかった脇役の方々もわかった。特にTVCMの勘定奉行で有名な京蔵が女方で出ていたのがわかってよかった。
最後に全体の感想をひとこと。
やはりストーリーの説明に追われてしまい、人物どうしの気持ちのぶつかりあいなどで緊迫する場面がないのはちょっと物足りない。有名な歌舞伎のパロディ場面もけっこう面白かったが、まあそんなものかという感じ。私にとっての麻薬性は薄かった。
つくりもののガマとヘビとナメクジを動かして対決する場面なども動かす人が頑張ってるなあと思った。一番見応えがあったのは、地獄谷の場面。火の粉四天が赤い晒し布で炎を表現したところは「近江のお兼」からの発想のようだが、四天の頑張り、舞台奥に姿を見せた下座音楽の皆さんの演奏とともに3人のたたかいを迫力あるものにしていた。
菊五郎劇団には音楽部もあるとのことで、今回のような洋楽を下座音楽にしたてるのもうまくこなしてくれるのだろう。劇団制での興行もなかなかいいものだと今回また強く思った次第。
NHK生活ほっとモーニングを見た時の記事はこちら
写真は今回の公演のチラシ。松竹のウェブサイトより。
追記
(株)地雷也の天むすを演舞場の中で買って食べたが、二幕冒頭の児雷也がお金を盗んだあとの名乗りで置いてきた掛け軸の「児雷也」を見てお辰が「天むす~」って叫んでいた意味がバッチリわかった。しかし客席の笑いが少なかったから名古屋の御園座ではかなりウケルだろうけど東京じゃあねえ(笑)。
最近、母業でけっこう緊張をしいられる状況もあり、今回はストーリーからじっくりと書く余裕がない。そこでしっかりお話を紹介しながら感想を書かれているキナ湖さんの観劇レポをこちらでご紹介させていただくことにした。
キナ湖さんの11/13の観劇レポはこちら
ちょっとだけ物語について書くと、ガマとヘビとナメクジの三すくみというジャンケンのような力関係が前提になっているのをまず理解して観ないといけない。敵役のヘビ(大蛇丸)に勝つのはナメクジ(綱手)ということになっているので、ガマの児雷也は綱手がいないと全く敵討ちもできない。さらにヘビの毒気にやられて再起不能状態になる児雷也ってどこが豪傑なんだといいたくなる。そうか、妻の助けがあってこそ敵と戦えるっていう男を主人公にすると女性も共感しやすくなるのかな?だからこそ江戸時代もこの草双紙は30年間も続編が続くという息の長い人気を保ったのかもしれない。それに今回は有名な歌舞伎のパロディも随所にちりばめて物語を組み立てているという。
私はキャストについての感想を中心に書かせていただく。
菊之助は、ご本人が立役がお好きということらしく、児雷也は本当に活き活きと楽しそうに演っている。唯一女装して出てくる巫女・宝子の場面とは声も使い分けてそれも両方「いい声」なのだ。菊之助について私はいわゆるいい役者の条件「一声二顔三姿」の順で気に入っている。宝子の正体を明かして装束は巫女、頭は児雷也になって「ば~かめぇ」と引っ込むところのメリハリもきいていていい。最前列だったので双眼鏡も持っていかなかったため、序幕最後の宙乗りは最初しか表情が見えなかったのが残念。スクリーンも近すぎて斜めで見えにくかった。この場面については後ろ席の方に軍配。
亀治郎の綱手姫は、児雷也に対して常に気遣う本当にいい女房で可愛らしかった。こんなに可愛らしいのは初めて観た。戦闘シーンではきりりとしていてこれもよい。外には強く夫には優しいという妻の役は、女方としても美味しい役だと思う。それをこんなに魅力的に演ってくれて亀治郎を今回あらためて見直した次第。そしてこの役を経て七月の「十二夜」の麻阿につながったのねと納得。
松緑の大蛇丸は、二人がかりでかかってこられてもがっぷり組めるというような存在感があった。七月の「十二夜」の安藤での三枚目への開眼も記憶に焼きついているが、実悪もしっかり極めて欲しいという今後の期待に大いにつながった。このように彼の芸域が広がっていくのは楽しみだ。
菊五郎はすっかり脇に回っての二役。さばき役の勇美之助はさすがにカッコイイ。最後に馬にのって登場してしめくくる時も座頭の貫禄たっぷり。しかし今回は二幕冒頭の金満家の妻のお虎でしょう。実は名古屋の御園座での初演の写真を『演劇界』で観てから早く東京で上演してくれないか手ぐすねひいて待っていた私。ブランド好きなケバイマダムで「軽くヤバイ」なんていうパロディを人間国宝がのたまう楽しさよ。この二役のメリハリは観ている方も楽しいが、ご本人きっと楽しくて仕方がないと思うのだが。
團蔵の金満家=お虎の婿養子さんも楽しかった。いつも悪役でカッコイイ團蔵さんがこんなにはじけてる~!婿養子のいじけぶりを「ヒロシです」に乗ってやられてしまった。これを名古屋からやっているのを見ていれば、松緑も安藤であそこまではじけられるようになる励みになったのでは?などと勝手に思ってしまった。(追記:それよりも親代わりの菊五郎さんのお虎でのはじけっぷりを見習わざるをえないか!!)
松也の金満家の娘お辰のコギャルぶりにはまいりましたm(_ _)mダイエットの成果ですっきりされたのは「加賀美山」の求女でわかっていたが、本当にキレイ。胸元のハートのタトゥやら頭のウサギの耳風ヘアアクセなども凄いけど髪の毛をくるくるさわる手つきがすごい!バランスボールに乗ってかなり客席まで迫ってきた時もドッキリ。こんなに背も高いのねってよくわかった。二役の二枚目も憂い顔や悔しさいっぱいの表情がよかったし。菊之助が女方に回る時の相手役の二枚目は、これからはやはり松也がいい。
松也の父・松助の仙素道人は、椅子に座りっぱなしで児雷也と綱手に妖術を授けていたが、病気から復帰されたばかりとのこと。声もマイクを通していたようだが、目や表情の演技はなかなかの存在感だった。早くお元気になられますように。
また、最前列だと舞台の照明が明るいので幕の冒頭に筋書きで出演者がチェックできて普段はどなただかよくわからなかった脇役の方々もわかった。特にTVCMの勘定奉行で有名な京蔵が女方で出ていたのがわかってよかった。
最後に全体の感想をひとこと。
やはりストーリーの説明に追われてしまい、人物どうしの気持ちのぶつかりあいなどで緊迫する場面がないのはちょっと物足りない。有名な歌舞伎のパロディ場面もけっこう面白かったが、まあそんなものかという感じ。私にとっての麻薬性は薄かった。
つくりもののガマとヘビとナメクジを動かして対決する場面なども動かす人が頑張ってるなあと思った。一番見応えがあったのは、地獄谷の場面。火の粉四天が赤い晒し布で炎を表現したところは「近江のお兼」からの発想のようだが、四天の頑張り、舞台奥に姿を見せた下座音楽の皆さんの演奏とともに3人のたたかいを迫力あるものにしていた。
菊五郎劇団には音楽部もあるとのことで、今回のような洋楽を下座音楽にしたてるのもうまくこなしてくれるのだろう。劇団制での興行もなかなかいいものだと今回また強く思った次第。
NHK生活ほっとモーニングを見た時の記事はこちら
写真は今回の公演のチラシ。松竹のウェブサイトより。
追記
(株)地雷也の天むすを演舞場の中で買って食べたが、二幕冒頭の児雷也がお金を盗んだあとの名乗りで置いてきた掛け軸の「児雷也」を見てお辰が「天むす~」って叫んでいた意味がバッチリわかった。しかし客席の笑いが少なかったから名古屋の御園座ではかなりウケルだろうけど東京じゃあねえ(笑)。
よかったのが、大詰めで、バックにずらり並んだ音楽のご一同(爆)
男性の袴姿は、やっぱりいいですね
私も菊之助さんのあの良くとおる声、好きです。
松羽目物とかやってほしいです。
わたしもTBさせてもらいまーす。
でもおもしろかったし、何よりも音楽に感心させられました。
楽日はやはり楽しいネタ満載でした。当方が書く前に既に他の方のブログで多く書かれているでしょうから、一つだけ書きますと、松也さんのお辰のコギャル振りは一層パワーアップしていたうえ、タトゥが千穐楽になっていて、そのために胸元がさらにはだけていて、色っぽいこと色っぽいこと。
終演後お仲間の方の出待ちにお付き合いして、たまたま松也さんご本人とも少し話す機会がありましたが、素顔も話し振りも本当に素敵な好青年でした。
「ジライヤ」という天むすのお店があるのですね!
あの掛け軸をみて「天むす~」というお辰の言葉の意味が今わかりました(遅っ)!
遅くなりました!7回見た私。
ようやくTBさせていただきました
7回も足を運んだくせにちょっと・・っと思っていたところ、同じようなこと、児雷也を見ていて、思ったんじゃないのかな?と思えた加納和幸さんのコメントを紹介したところもTBしました。
★うさ吉さま
本日図書館で『演劇界』の劇評を読んできましたが、菊之助がとても誉められていましたね。彼の声のツヤは艶ではなくて光沢でその声に恍惚だっていう表現で誉めている指摘もなんかとても共感してしまいました。児雷也の声には私もうっとりしてましたから、最前列とってよかった~。
★お茶屋娘さま
確かにメッセージがないんですよ、この作品。でもエンタメ作品だから許します、私。菊ちゃんミーハーになりつつあるし。
★花梨さま
そうそう劇団音楽部の皆さんの演奏に心打たれました。ラヴェルのボレロもヴィバルディも邦楽にしてもいいと思ったし、太鼓の音にのった地獄谷の立ち回り、火の粉四天とともに印象に残ってます。
★六条亭さま
いいなあ、楽日のカテコは楽しかったらしいですね。私、松也さんのお辰の舞台写真ももちろん買いました。二枚目の時もあの悔しさを噛み締める表情がよかった!
★キナ湖さま
ご紹介させていただいて助かりました。天むすネタ、東京だとちょっとわかりにくいですよね。
★harumichinさま
す、すごい。7回ですか!花組芝居の加納和幸さんのコメント読みにいきましたが、ちょっとよくわからなかったんです。補足して教えていただけると有難いです。
1月の菊五郎劇団の国立、やはり行ってしまいそうです。
はてなダイアリーに対するTBについては、http://d.hatena.ne.jp/ascent/20051204/1133696057
に原因をまとめましたので、ご参照くださいまし。
1月の国立も楽しみにしています!