ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/05/22 五月花形歌舞伎昼の部(2)松緑の「魚屋宗五郎」

2010-05-27 23:58:37 | 観劇

「魚屋宗五郎」は2006年の前進座の梅之助の舞台が初見。2007年4月の勘三郎主演の舞台の記事はこちら
松緑が宗五郎を初役でつとめた昨年3月国立劇場の「通し狂言 新皿屋舗月雨暈」は未見。さて、今回の「魚屋宗五郎」はどうだろうか。
【新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎】
今回の配役は以下の通り。
魚屋宗五郎=松緑 女房おはま=芝雀
父太兵衛=市蔵 小奴三吉=亀寿
磯部主計之助=海老蔵 召使おなぎ=七之助
岩上典蔵=亀蔵 浦戸十左衛門=左團次

主の宗五郎が妹お蔦の葬儀の寺関係で出かけてる留守宅に、弔問にやってきた御茶屋の女将と娘の対応をしている家の者3人を芝雀、市蔵、亀寿で実によく見せる。江戸の大きくもない商売店を営んでいる家族に妾奉公に出した娘が殿様のお手討ちにあったという事件が起こした驚きと悲しみの波紋。嘆き悲しむ父親と納得がいかないからねじこまないとといきり立つ店の若い者三吉をなだめるおはま。沈んだ様子で帰宅した宗五郎も太兵衛と三吉を分別くさく諌めている。
そこにお蔦の朋輩だったおなぎがやってくるのだが、七之助の台詞が実によく事を明らかにする。金比羅さんに願をかけて酒を断っていた宗五郎が堪忍袋の緒を切って、おなぎの遣物の白木の角樽をいただくことにする。
茶碗酒を飲む姿にちょっと驚く。勧進帳の弁慶が蔓桶の蓋の酒を干す時のように身体を揺らすのだ。蔓桶の蓋であればバランスがいいが、茶碗酒であんなに身体を揺らしては中の酒がこぼれるって!といらぬ心配。それを繰り返すうち、松緑のはだけた胸やら腕やらがまっ赤になっていく。息をつめて身体を大きく動かして身体を上気させるという口伝でもあるのかしら?しかしながら、若いから動きがオーバーアクションになっているのかしら?などと余計なことを考えてしまった(^^ゞ

やめさせようとしても酒乱状態に入ってとまらぬ宗五郎と家の者とのやりとりを呆気にとられておたつくおなぎの対比でしっかり笑わされる。角樽を振り回して障子板を蹴破って磯部の家に殴りこむ宗五郎をおなぎが追っていって幕。

磯部の家で岩上典蔵たちに縛り上げられた宗五郎。亀蔵の典蔵がいかにも悪そうでいい。左團次の浦戸十左衛門がまたいい。お家のゴタゴタをうまく納める忠臣であり情けがありそう。宗五郎の気持ちも受け止め、主計之助にも諫言し、という様子が十分に伝わってくる。この家老に十分に気持ちをぶつけて、立ち行くようにすると保証され、立派な殿様ぶりの海老蔵の主計之助に酒の上で誤ったので赦してくれと手をつかれてしまえば、もう何も言うことはない~状態なのも無理はないと思える。

海老蔵はこの一場面なのだが、不思議な貴公子ぶりがいい。美しいということは得なことだと納得させられてしまう。参りました(笑)
松緑の宗五郎は味わいという点ではまだまだだが、熱演に好感がもてる。家の芸の役だし磨きをかけていって欲しい。芝雀のおはまが予想以上に下々の女房ぶりがよくて驚いた。汚い顔で思いっきり地味なおばさんで声も実に色気もないおばさんなのだが、亭主への愛情の深さが滲み出るいい女房ぶりが可愛いのである。若い松緑と組んでもおかしくない若さがあるのもいい。これからもこのコンビが楽しみになった。

写真は、演舞場正面の入り口の上に掲げられるようになった「きやうげんづくし」と書かれた櫓。歌舞伎座の毎年11月の顔見世興行で掲げられていて、さよなら公演期間中は11月から4月の最後の興行まで掲げ続けられていた。新橋演舞場へのバトンタッチをここでもアピールしているようだが、演舞場向けに新調していると思う。違うかな?!
さぁ、明日は千穐楽の夜の部を観にいくぞ!

「五月花形歌舞伎の演目を眺め渡す」記事はこちら
5/22昼の部(1)「寺子屋」       


最新の画像もっと見る

コメントを投稿