昨日も書いたが、急遽「マリー・アントワネット」帝劇凱旋公演初日を観にいくことにしたが、大正解~!!
昨年12/23に観た東京公演の感想はこちら
遠藤周作の原作の小説を読んでからだいぶ月日が過ぎたので、ミュージカル作品として割り切って観劇に臨んだのもよかったのかもしれない。大阪公演からだいぶ演出も変わっていたということも聞いていた。そして一部のキャストが変わることにも期待していた。また二人の「MA」のうちのマルグリット・アルノーの笹本玲奈を観ていなかったのでそちらで観なくてはというのもあり、帝劇凱旋公演初日が笹本マルグリットだったということもあった。
とにかく急遽エイッと初日を観たら、印象が一変してしまった!
まず、ボーマルシェの山路和弘は大劇場を仕切る自信がついたのか自在感が増し、堂々たる狂言回しぶり。山路の押し出しが強くなったことで芝居にまず一本太い芯が通った。以前観た時はカリオストロやオルレアン公とからむ場面はかすんでしまう感じがあったが、ボーマルシェがきちんと並び立っているのを観てひと安心。
笹本玲奈のマルグリットは貧しい花売りの時も垢抜けない感じがあっていい。貴族のボーマルシェに騙されたことに怒ってパレロワイヤルに乗り込んでいくのもただの勝気さからだったのに、アントワネットの仕打ちに傷つけられ、庶民に目を向けない貴族たちへの失望や悲しみを歌った「百万のキャンドル」がまず胸を打つ。
新キャストの今拓哉のフェルセン。アントワネットに代わってマルグリットに謝罪する場面も大人の雰囲気が出ていていい。愛する人の至らないところを影ながらフォローするところに大人の男ぶりが無理なく漂ってくる。ここの場面、フェルセンとアントワネットの二人に関わるマルグリットの出発点だったんだとあらためて思った。
フェルセンとアントワネットの恋も運命的に出会ってしまって育んできた大人の忍ぶ恋の切なさにあふれている。今拓哉の目の芝居が切ない~。そして大人の男だ~。アントワネットの欠点も含めて愛しているという想いが全身からにじんでくる。こういう男だからこそアントワネットは心の底から頼れるし、全身から甘え切った様子を漂わせる涼風真世アントワネットが一段と可愛く見える。最強のコンビの誕生だ。
もう一人の新キャストの鈴木綜馬のオルレアン公。眉なしは高島政宏と同じだが、目の下の赤いラインと口裂ラインが入っている。思い出した、映画「デスノート」でCGで登場していた死神リューク(声が中村獅童の方)にそっくりだ。顎を突き出して目を剥くから白目が大きくなるところもリュークそっくり。あくまでも貴族なのだから下品にならないようにして欲しい役なのだが、そこは全く問題なし。これまでの「綜馬さま」からは考えられない異常キャラぶりで客席がざわめく。エプロンステージで「私こそがふさわしい」とソロで歌った後、拍手がやまずボーマルシェが客席を鎮めるショーストップ状態になる。
山口祐一郎のカリオストロ。錬金術師という位置づけが相変わらずわからない役柄なのだが、物語全体への支配度を増し、登場人物それぞれを動かしているからみが増えている感じがした。そういったあたりも無理なく存在感がはっきりした。最後の牢獄の場面での歌が一曲増えていたのかな。
石川禅のルイ16世も相変わらずに愚鈍だが憎めない国王のとぼけた味をうまく出していたし、長男が死んだ時の嘆きの歌でアントワネットともども涙いっぱいの感情のこもった場面にこちらもやられる。この夫婦のコンビもますます熟成がすすんだようだ。
今回のマルグリットは少しずつ少しずつ変化しているのがわかる。マダムラパンとのエピソードも今回はすんなり受け止められた(原作からの脱却がすすんだ)。土居裕子のアニエスも若いマルグリットの暴走を要所要所で締めているのがよくわかった。革命の暴走におかしいときちんという場面も今回はより伝わってきて違和感が少なくなった。それもちゃんとマルグリットに影響している。
牢獄で見張り役として小間使いになった時、自分が知っている子守唄を歌っているのを聞いてあんなに憎んでいたアントワネットに自分と同じ人間の姿を見る(ここがミュージカルらしい!)。そして最後のフェルセンとの逢瀬もとりはからってやるということまでする。
牢獄での最後の王妃たちの逢瀬も激しい燃え上がり(こんなに激しいキスシーン、ミュージカルであり??)とすぐに訪れる永遠の別れ。これは切なすぎる。
革命の側にいたはずなのに、単純に敵として憎みきっていた王妃を同じひとりの人間として最後を見届ける気持ちにまでなったマルグリットの人物像を無理なく見届けることができたのは笹本怜奈の成長と演出の改善の両方があるのだろう。
前の公演では最後のギロチンシーンからすぐにカーテンコールを続けていた。アントワネットがギロチン台から降りてくる登場が悪評だった。そこがちゃんと変わっていた。暗転でギロチンがなくなって普通の登場になったのもホッとしてのアンコール。さらに指揮者の塩田氏が演奏を続ける。もしやと思ったらやっぱりドレス姿で涼風真世が再登場。やっぱりこういう方が最後は嬉しい。
さらに初日だけに涼風真世がご挨拶。
博多座→大阪→東京凱旋と帝劇に戻ってきたが手を入れ直し入れ直してずいぶん変わっていることにお気づきでしょうと口切。昼の舞台稽古で栗山民也氏から「人間の尊厳ということについて公演期間中、考えてほしい」というお話があったことを胸に刻んだということにも触れ、栗山さんらしいなぁと聞いていた。
今回公演からの新キャストの紹介の後、笹本怜奈が菊田一夫演劇賞をとったことも紹介された。まさに納得の演技だった。
そしてさらにドイツ公演が決定したということで、ドイツの劇場のフライ氏を舞台に呼んでご挨拶をいただいた。2009年1月で企画がすすんでいるという。これでまさにクンツェ・リーヴァイ作品の日本で世界初演ということになるわけで喜ばしいことだ。
まったくチケットをとらずにいた公演だったが、予想以上の大化けで嬉しくて仕方がない。プログラムは2ヶ月公演で今回公演の写真が入ったバージョンはまだ未定ということだった。もう一回くらい観るかもしれない感じになってきたので、しばらく様子を見て買いたいと思う。
昨年で懲りたという方も、一回はこの凱旋公演を観ることをおすすめしたい。
写真は帝劇初日看板。以前と違ってシックな色合いになっていてそれも嬉しかったので撮影。
演出で細かく手が入ってぐっと物語が浮かび上がってきたのと、本当に新キャストおふたりの力が大きいですね。もちろん山口さんの1曲追加も効いてます!
これならばもう一回くらい観てもいいかなぁと思い始め、悩み始めました。5月は歌舞伎や文楽やでけっこういっぱいだし、4月は「ジキル&ハイド」の鹿賀さんファイナル公演もあるので、どうしよう。悩む~。
リンクをありがとうございました。
私もMA初日に行ってまいりましたので、TB
させていただきました。
同じ回を観ても人によって視点が様々なので、とても新鮮な気持ちでレポを読ませていただきました。
私も綜馬オルレアンと今フェルセンの出現により
舞台の厚みと面白みが増したと次回を
楽しみにしています。
いろいろ言われているカリオストロの新曲も
わたしは結構気に入っています。
またお邪魔します!
涼風さん、ハイテンションのマルグリットに対抗できるアントワネットになってきたんですね。素晴らしい~。昔「回転木馬」での主演とか観ていたんですけど、帝劇にはちょっと無理があるなぁとか感じてました。涼風さんが女優として帝劇をしょって立てるようになられたことが私もとっても嬉しいです。
対比が良かったと思います。落ち着くのでも、底に凄みを感じさせる落ち着き方と言えるかな。ラストの法廷シーンは、真世さん、迫力ありました。このシーンでは、新妻ちゃん目立たなかったくらいだもん。
貴ブログでご紹介いただきまして有難うございます。あとからTBもいただいて嬉しいですm(_ _)m
恭穂さまは原作ファンとのことですが、これはまた別作品として観ていただくといいと思います。大体アントワネットという人物はヨーロッパでは人気がないようで、日本で一番人気があるのだそうです。「ベルばら」のせいもあるのでしょうか。だからこそ日本発の作品にできるのかもしれませんね。
★かずりん様
大阪で2回ご覧になられたようですね。その大阪の段階ですでにずいぶん手直しが入っていたようで、凱旋を楽しみにしていました。手直しもよかったし、新キャストがまたよかったんです。かずりんさんお気に入りの高島兄さん、オルレアン公はあまり合っていないと私は思っていたんですよ。鈴木さんの高貴なリュークメイクの演技に軍配でした(^^ゞやはりフェルセンは大人の男に限ります。そうじゃないと甘えきれないよ~?!
★かつらぎ様
笹本玲奈マルグリットの良さは、ほどよくとんがっているところだと思います。そしてじっくりじっくり覚醒していく感じがよかった。涼風アントワネットとのバランスもいい。やはりダブルヒロイン物といいながら、主役はアントワネットですからね。マルグリットが目立ちすぎるのはどうかなと思うんです。涼風さんのふんわりした雰囲気が活かせる一幕目、二幕目はしっかりと成長した姿を見せるというアテ書きのような脚本になっていると最初から思ってました。凱旋公演ではそれがますます際立ってきました。素晴らしいです。
22日観劇の感想アップを楽しみにしています。
★くーみん様
前回の東京公演でお嬢さんとご一緒に観劇されたんですよね。よりわかりやすくなってますから、またご一緒にどうぞとおすすめします。
山路さんのボ-マルシェ、一層堂々としてきました。
★玲小姐さま
4/7観劇の感想を有難うございますm(_ _)m
3人の位置づけ、なかなか面白いです。ただカリオストロはやっぱり錬金術師というか超能力者みたいな感じがしました。人智は超えてるのかなぁ?とにかく常人じゃない役はやはりこの人はいいです。
「綜馬さま」ノリノリだったでしょ?「私こそがふさわしい」と歌ったところ、鳥肌ものでしたよ。
今さん、切ない八の字眉の似合う男のベスト3に認定しました。第一位は仁左さま、第二位は染ちゃんに継ぐ第3位です。こういう顔が好き~。
>新妻さん。一本気なマルグリッド......それでアントワネットがかすんじゃいけないんですけど、大丈夫でしたか?
今回の公演がどうかによって次回の上演に大きく影響しますね。できれば前回懲りた人にリベンジを一度はおすすめしたいです。
★上方のおとみ様
大阪公演ですでに手直しが入っていたようですね。ソフィア・コッポラ監督の映画もご覧になられたようで感想も読ませていただきました。
>おばちゃんがナットクするお芝居にならないといけません......私も帝劇で上演するならそうしないといけないと思ってます。前回のままなら青山劇場くらいの方がいいと思います。アントワネットとフェルセンの忍ぶ恋もよりロマンチックになりました。
おばちゃんに「大人の恋」は必須ですよ。
うれしいコメントありがとうごじました。なんといってもM.A.は,究極のおばちゃんの娯楽ですから,おばちゃんがナットクするお芝居にならないといけません。初演の醍醐味ですね。
そーまさん、もともと大変知的な方だから、陰謀家としてのオルレアン公のキャラクターが非常に際立ちます。なにしろ、陰謀家は、いかにも頭よさそうじゃないとだめですからね!ほんとに、ノリノリじゃないですか!これは、そーまさんの当たり役になりそうです。
今日は、マルグリッド新妻さん。一本気なマルグリッドでした。勢いあまってすっ飛んでたのはご愛嬌。カーテンコールで自分から言わなければ、これも演技のうちかと思いましたよ。(お尻からすべったのだけれど、すぐさま体勢を立て直したのがすばらしい!)
新妻マルグリッドは、女たちがオルレアン公に、お金で扇動されることに違和感を感じつつ、とりあえずは違和感を飲み込んだまま革命運動を続ける。それが、最後の法廷場面で、一気に、本能的に、革命の矛盾を悟ってしまう。直情径行なマルグリッドだから、気づいてしまったら最後、怒りも爆発。そんな感じでしたね。ワタシは、この人物造形嫌いじゃないですよ。
今さん
あの、包容力のあるお声がいいですねえ~。この方なら、全てオマカセしたいです。(やっぱり、井上君は、まだ若かった!)
是非、東宝ミュージカルのレギュラー作品として、再演をお願いしたいと思います。
そんなに変わっていましたか~。
声優の山路さんのファンなので、彼をほめてくださってありがとうとお礼を申し上げたいです(違うって)・笑。
機会があったら、ぜひ行って見たいと思います。
観劇記録でなくて申し訳ないですが・・・
無事「M.A.」を観ることができましたら、
また改めてお邪魔しに来ますねv
「めっちゃ変わってるんちゃうかな?!
多分変わってるよ!・多分・・・多分・・・」
・・と、強気で攻めつつだんだん弱気な
発言を繰り返し
「楽しみにしてていいですよ!」・・と
結局強気で締めくくったのですが
きゃ~~~~♪ぴかちゅうさまがこのように
お書きくださり、安堵いたしました♪
嬉しいな~~♪枕を高くして寝れる♪
昨年見たときは、正直舞台全体にあまり魅力を感じなかったのですが(原作が大好きなので)、ぴかちゅうさんの記事を読ませていただいて、新生「M.A.」を観てみたくなっちゃいましたv アンコールが変わっていたのも、ほんとに良かったと思います(しみじみ)。
あ、自分のブログで、この記事に触れさせていただきました。観劇記録ではないのでTBはさせていただかなかったのですが、一応ご報告までv