ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

12/10/27 「三響會」を15周年記念公演で初見!猿之助の三番叟で大満足

2012-10-28 01:14:07 | 観劇

市川亀治郎×三響會で2009年に始まったチャリティ企画「伝統芸能の今」を9/8に初体験し、その勢いで10/27新橋演舞場で「三響會」公演自体を初めて観ようと決意してチケットGET!
「三響會」のオフィシャルサイトにある「三響會」の説明は以下の通り。
父、能楽師野流大鼓方家元亀井忠雄、母、歌舞伎長唄囃子方田中流 田中佐太郎のもとに生まれ育った、亀井広忠、田中傳左衛門、田中傳次郎の三人の兄弟が、1997年に結成。 囃子を通じて、能と歌舞伎それぞれの伝統を踏まえつつ、新しい可能性を追求している。

「第八回 三響會 十五周年記念公演」の公演詳細はこちら
演目と配役
一、一調一管による三響會の歩み
「一調一管」をネット検索してみつけたYouTubeの情報「一調一管(いっちょういっかん)」にあった説明が一番わかりやすかった。「一調とは能の演奏形式の一つで、打楽器(小鼓、大鼓、太鼓)一人に謡い手一人が能の一部分を演奏します。その変形が一調一管で小鼓と笛で演奏します。」
今回はさらにその変形のようで、「船弁慶」は演奏が地謡と長唄の掛け合いで三味線も入っていた。
能楽師野流大鼓方の亀井広忠は観世喜正の謡で「安宅 延年・瀧流」。歌舞伎長唄囃子方の田中傳左衛門は小鼓で尾上菊之丞の立方で「獅子」。田中傳次郎は太鼓で藤間勘十郎の立方で「船弁慶」。
舞台奥の幕に何か所もいろいろな高さの筒型に透けるようにしてあり、その向こうに灯り。演目によって色調を変えているのが斬新。上手と下手に橋ガカリ上のものがあり、下手の手前が花道に続くようになっている通路的なものがしつらえられ、能舞台と歌舞伎の舞台のイメージが融合されている。
藤間勘十郎は2005年11月の「女と影」で観て以来だが、素踊りなのに知盛の亡霊の怨念のようなものが立ち上ったすごい踊りで、その迫力に圧倒されてしまった。3階1列6番の席はちょうど花道の真上で、七三がしっかり見えたのはラッキー。舞台の上にいると見立てられる義経主従をにらみすえながら、祈り伏せられて薙刀を回しながら無念の思いをにじませて引っ込んでいった。
幕間が5分。
二、舞囃子「小袖曽我」
亀井広忠の大鼓、梅若紀彰のシテ、観世喜正のツレ。直面(面をつけない)での謡。
幕間が10分。芝居なしの観劇は、だんだん修行モードに入ってくる。時折意識が飛ぶ。

三、舞踊「供奴」
ここで舞台がぱあっと明るくなり、新吉原の店々が並ぶ大きな通りになって気分一新。過去の三響會公演で出演された中村富十郎の子息、鷹之資が奴を踊った。「供奴」も初見。花道から登場してしばらく花道の上で踊り、私の席からはぎりぎり見えたが「助六」の出端の踊りと同じで仕方がないのだろうか。
今年の1月の演舞場で五世中村富十郎一周忌追善狂言ということで吉右衛門と「連獅子」を立派に踊った鷹之資を観ているが、一人で踊るのを初めて観る。すっかり立派な若者の奴に見えたし、実に足拍子もしっかりして行儀よく楷書の踊りという感じで観ていてすっかり嬉しくなった。こういう機会に立派につとめて着実に成長していって欲しいと応援モードになる。

幕間20分。2階ロビーでご一緒した玲小姐さん、けろちゃんさんと待ち合わせ。ここまでの感想で盛り上がる。
四、半能「天鼓」
謎の「半能」を調べて納得。この演目は能漫画「花よりも花の如く」で読んだ記憶あり。この場面は、本物の筒型の灯りがたくさん配置され、前半とのメリハリがつけられていた。
シテの観世銕之亟は能装束と面をつけて登場するとやっぱり漫画と同じだと嬉しくなったが、面の下からの謡はまるで聞きとれず、意識が朦朧状態になり、双眼鏡を落としそうになる。30分でも私のレベルではきつかった。謡の詞章を電光掲示板で見せて欲しいとつくづく思う。

幕間10分。一番のお目当ての猿之助の出る演目はたった15分かぁ・・・・・・。
五、囃子による「三番叟」振付 藤間勘十郎
開幕すると、舞台は三段になっていて切り穴があるのがわかる。三番叟の登場はここからだろう。筒型の灯りと囃子連中が上手と下手に分かれてそれぞれの段の上に並んでいる(田中傳左衛門社中も並ぶ)。「カッ、ポン」1個の大鼓が「カッ」と高い音を立てると10個ほどの小鼓が揃って「ポン」と応える。このバランスのよさはなんという心地よさだろうか。

市川猿之助の三番叟はその切り穴から高く飛んで出た。この意表を突く登場に客席はどよめいた。「天鼓」で半落ちしていたのが嘘のようにいっぺんに目が覚める。まるで勘九郎(当時は勘太郎)の「雨乞い狐」の登場の高い飛び出しのようだ。「翁」のいない「三番叟」だが静かにせり上がってくるイメージがぶちやぶられる。
それから猿之助は謡い始めたが、「五穀豊穣」とか聞こえたので翁の「とうとうたらり~」という謡ではないかと推測。翁と三番叟を兼ねているのだろうか。

手前の上手に小鼓の田中傳左衛門と傳次郎が並んでいるが、下手の大鼓の亀井広忠と並んで小鼓を打っている白髪の方は誰?双眼鏡で観てびっくり!母の佐太郎だ!!後から筋書を見たが名前がない。きっと猿之助あたりから出演してもらえるように頼んでのサプライズだと推測。
猿之助の三番叟は2006年5月に染五郎と踊った「寿式三番叟」(振付:藤間勘十郎)を観ている。その時もうまいと思ったが、一人で踊る今回はさらに絶品だった。
三番叟と床板を踏み鳴らす音と小鼓、大鼓の音が気持ちよく響く。長く大きな袖を中折れに持つための輪に指をかけているのも双眼鏡からしっかり見えた。これでなるほど袖を巻きつけるところも綺麗に極まるなと納得。
猿之助には襲名以来座頭の風格が身についてきて余裕たっぷりに踊っている感じ。自由自在に身体が動いているようで、観ていて小気味がいいのでウキウキしてくる。さらに下手に上手に横に飛んでいく時の表情は悪戯を楽しむ時の子どものようで、これでやられてしまうのだ。実に可愛い。

後見に袖を直してもらって神楽鈴に持ち替えて鈴之舞。祝言の舞ということで、「三響會」15周年を寿ぐという意味もあるのだろうなぁと気がついた。
三段の上に登って煽ぎ見ながら片足を伸ばして極まり、幕が下りる。ものすごい拍手で幕が上がり、カーテンコールとなる。客席に応え、上手と下手の囃子方へも拍手を誘い、最後にまた自分で引き取って応える。この堂々とした役者ぶりはどうだろう。
猿之助が舞台で躍動しているのを久しぶりに観たら目頭がじんわりしてきてしまった。私はやっぱり猿之助が好きだなぁと自覚する。これは玉三郎を観て感じた幸せ感と同じようだ。生きていくのはしんどいが、こういう至福の時間を持てることは本当に有難い。

ほとんど修行モードで観ていた「三響會」だが、猿之助の三番叟でエンタメとしても大満足モードになった。
来月は明治座での座頭としての公演だし、しっかり昼夜観に行くぞ。そうそう、NHKのドラマに猿之助が出演するのを忘れていたが、2回目から観ることにしようっと。

冒頭は今回の公演の筋書の表紙(題字は坂東玉三郎によるもの)。これまでの公演をを振り返る写真がついていたのでしっかり購入。終演後に売り場をみたら完売御礼の札が出ていた。終演後の食事会が盛り上がったのはいうまでもない。