ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/07/10 追悼つかこうへいさん、初観劇まにあわず+『娘に語る祖国』

2010-07-12 23:59:22 | 美術・本

今年1月に肺がんで闘病中であることを公表した、つかこうへいさんが10日に亡くなっていた。彼の作品は映画になった「蒲田行進曲」をTVで観ただけで、舞台はどの作品も未見。「蒲田行進曲」は面白かったのだが、どうもああいうノリの芝居はあまり好みではないのでブームの頃に観ようという気が起きなかった。小劇場系にあまり興味がなかったということもある。
それでも最近の北区つかこうへい劇団の活動は地域密着型で面白そうだったし、TVや映画で売れている若い女優を主演に起用しては鍛えて本格女優に成長させているという印象は持っていた。(→ここを加筆)そして何より劇団☆新感線の主宰者たちが当初はつかこうへい作品のコピー上演を繰り返してからオリジナル作品に取り組んだということで、彼らのスピード感あふれる舞台の基礎にあるというのが気になっていたのだ。
最近、小劇場のお芝居にも興味が出てきて、気になる名作は再演があれば観ようかという気になってきた。中川右介著『坂東玉三郎 歌舞伎座立女形への道』の中にあった日本演劇史の概略部分の引用紹介もさせていただいたが、串田和美の「上海バンスキング」もこの3月に観た。つかこうへい作品も一度ちゃんと観ておこうと、8月のシアターコクーンの「広島に原爆を落とす日」のチケットをとったばかりだった。

つかこうへい氏で一番印象に残っているのは、1990年に出版された彼の著書『娘に語る祖国』である。光文社のカッパ新書が出ていたのを買って読んだ(冒頭の写真はこの表紙だったと思う)。在日韓国人2世であることをカミングアウトした内容で、在日の方々の悩み多き人生にしっかり向き合ったそれが最初だった。学生時代に戦中戦後史を学んだとはいえ、一人の人間の人生という視点でしっかり考える機会はなかったのだ。

日本人である元つか劇団の女優さんと再婚して生まれた一人娘に思いを語る形で書かれていて、私にも1987年に娘が生まれていたので、とても心情的に理解できる内容だった。
紀伊国屋書店のサイトの『娘に語る祖国』の項はこちら
Wikipediaの「つかこうへい」の項を読むと、その一人娘さんは宝塚歌劇団雪組トップ娘役の愛原実花さんだとのこと。愛称のひとつは「みなこ」ということなので、やはりその娘さんに語るという感じで書かれたのだろう。上記の本の情報の詳細のところから一部を引用してご紹介しておきたい。
「人間の残酷さと生命力を描くのがパパの役目です
人の心の暖かさは変わりません」

私にとっての初めてのつかこうへい作品の観劇は来月の19日。追悼の思いをかみしめながら見ることになりそうだ。
「広島に原爆を落とす日」の特設サイトはこちら
つかこうへいさんのご冥福を祈ります。