ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/03/20 歌舞伎座の元禄忠臣蔵②「最後の大評定」

2009-03-23 23:58:11 | 観劇

「最後の大評定」で大石内蔵助がようやく登場。さて幸四郎の内蔵助はどんな感じだろうか?
【元禄忠臣蔵「最後の大評定(さいごのだいひょうじょう)」】(二幕)
あらすじと配役は公式サイトより引用加筆。
「赤穂城明け渡しの期日が迫り、幕府に抵抗して篭城切腹するとか打って出て斬り死にするとか家臣たちの意見はまとまらず、家老の大石内蔵助(幸四郎)はその態度を明確にしていない。そんな内蔵助を妻おりく(魁春)や嫡男松之丞(巳之助)は心配している。
大石邸の玄関先で内蔵助に会わせろと浪人者が騒ぎを起こす。内蔵助の幼馴染であり赤穂藩士であった井関徳兵衛(歌六)は先君の勘気を蒙り浪人していたのが息子の紋左衛門(種太郎)とともに駆けつけてきたのだ。登城前の内蔵助を待ち構えていたが内蔵助は旧交を懐かしむが行動を共にすることは許さない。
登城した内蔵助は、浅野本家から開城諭告使として遣わされた戸田権左衛門(錦吾)と面会の上で最後の大評定を始める。300を超えた藩士も今や内蔵助の前には、奥野将監(東蔵)を始め諸士(家橘・右之助・高麗蔵・松江)ら50余名が集うばかり。配分金増額を内蔵助に掛け合いに来た大野九郎兵衛らは逐電。江戸から駆けつけた堀部安兵衛(市蔵)らは吉良の傷が癒えて健在との情報を言上、安兵衛らは既に仇討ちを計画中だと言う。
内蔵助は全ての行動を自らに一任するという誓紙血判を受け取った上でその真意を明かすと告げる。藩士56名の連判に、内蔵助は速やかに城を明け渡し幕府への批判をしないこと、一同の生死を自分に預けて欲しいと語った。その様子に安兵衛らも連判に加わり、評議は一決。この諸士の信頼のありがたさに内蔵助は涙を零す。
城の外に出た内蔵助は井関が息子を先立たせ自分も続こうとしているのを見つける。徳兵衛は内蔵助がある覚悟をしたのを察し腹に刀をつきたてる。その覚悟を聞いて死んでゆきたいという旧友に内蔵助は主君の仇を討ち、ご政道に反抗するという本心を明かす。二人の亡骸に道具櫃の中の旗指物や鎧を着せ掛けて供養の上、名残惜しげに城を後にする。

赤穂義士となったのは藩士の中の一部だし、大野九郎兵衛のように明らかに不義士となった者もいて、仮名手本では斧九大夫として象徴的に配置されているのだなぁと納得。

粗末できったない紙衣姿というのがわかる衣裳で登場する歌六の井関徳兵衛が実によかった。単純で世渡りがいかにも下手そうで零落しているが侍としての誇りだけは身体に染み付いている。百姓女に手をつけて生まれた息子に誇りにしている赤穂藩士時代を語り続けて育ててきたのだろう。息子も父とともに主君のために命を投げ出すことにも生きる甲斐があると思ってしまっている。種太郎の紋左衛門もそういう朴訥さ健気さが漂っていい。暴走気味の父の行動にとまどいながらも一生懸命に従っている。
歌六の徳兵衛の暴走やふるまい酒での酔態は不自然さがなく困ったヤツなのに憎めない感じがよくでている。若かりし頃の内蔵助の親友だったというのも無理がないと思える魅力が滲み出ている。その友が死にゆく今際の際には本心を見せて安らかに旅立たせてやりたいと思うだろう。この父子の悲劇を配置したことで内蔵助と息子の未来も重ねてしまい、運命を生きる武士たちのドラマが重層的に描かれていると思い当たる。

幸四郎の大石内蔵助が予想以上にいい。この真山青果の元禄忠臣蔵はツケもなく義太夫も入らない台詞劇なので現代劇の俳優としては実に素晴らしいと思っている幸四郎の芸が生きている。歌舞伎でもこういう役柄でこそ幸四郎の真骨頂を発揮するのだと痛感した。幸四郎の芸の特質にあらためて注目し、こういう役柄ならば歌舞伎でもどんどん観たいと思わされた。夜の部の「大石最後の一日」にも期待が高まった。

今回の「元禄忠臣蔵」の金文字のタイトルが上に大きく横たわるポスターやチラシは幸四郎・團十郎・仁左衛門3人の内蔵助が並んでいて好ましい。写真は幸四郎内蔵助を携帯でアップで撮影。
3/20歌舞伎座の元禄忠臣蔵①「江戸城の刃傷」