ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/01/26 歌舞伎座藤十郎襲名公演夜の部②「藤十郎の恋」

2006-01-29 02:14:29 | 観劇
夜の部の最初の演目は「藤十郎の恋」。菊池寛が書いた原作を歌舞伎化したもので、藤十郎役を初代の中村鴈治郎が演じて当たり役になったという。それを今回は曾孫の当代扇雀が演じた。相手役のお梶は時蔵。おふたりとも初役とのこと。1/3の昼の部観劇で扇雀の女方以外の姿を初めて観てこの演目にも期待していた。

扇雀の藤十郎、二枚目だ~。人妻と姦通の上で心中するというこれまでに演じたことのない役作りに悩む表情が素敵!昔なじみのお梶とふたりになる機会ができ、ハタとあることを思いつく。茶屋の女房になっているお梶をくどいて籠絡し、その際の相手の反応を観察するという人でなしの手口だ。
時蔵のお梶、いい年増女ぶり。若い頃に藤十郎と一緒に祇園祭で連舞をしたことがあり周りにそねまれて困ったという思い出話をする時、実はその頃藤十郎が好きだった気持ちがにじんでいる。それを利用して実は自分もその頃からお梶どのが好きだったのにずっと抑えてきたのだと囁きかける。姦通は死罪だった時代に命をかけた告白を好きだった男にされて気持ちを動かす女の気持ちの大揺れをたっぷりと情感をもってこんなに品よく演じられるのは今はまさに時蔵だと思う。また、一座の女方に高麗蔵と宗之助を配してふたりが本当は男の女方っぽく演じていたことで差がうまく出たようにも思われた。

お梶が意を決して前掛けをはずして行灯を吹き消した後、観察すべきことを全て観た藤十郎はその場を逃げ出してしまう。
その観察で相手役も指導して自分も評判をとった藤十郎。人妻の誰かを口説いて得た演技だというゴシップ噂が渦巻く芝居小屋に届け物にきたお梶。その噂に激しく傷付いて藤十郎の楽屋で自害してしまう。
お梶の遺骸を見た藤十郎、さすがに動揺するが、気を取り直して舞台に向かって幕。しかしその台詞がいただけない。「この藤十郎の芸の人気が女子ひとりの命などで傷つけられてよいものか」というような内容。これは作者か脚本家かのどちらが悪いのかわからないが文句をつけたい。自分のエゴで死んだ女に手を合わせつつ、しかしながら芸の道をさらに極めていくとかいうニュアンスにしてほしかったなあ。

とにかく、扇雀の二枚目ぶりの良さに開眼した舞台だった。女方よりも気に入った。兄の翫雀との関係もあるだろうが、これからもっと二枚目役をふってあげてほしいな。
写真は、新春公演らしい飾りのある歌舞伎座ロビーを携帯のカメラで撮影したもの。