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ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/01/02 「釣りバカ日誌20ファイナル」はオススメです!

2010-01-11 22:36:53 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

1/1~2と妹2の家に新年会に行き、一泊して帰る際、母と一緒にMOVIXさいたまに行って「釣りバカ日誌20ファイナル」を観てきた。けっこう親孝行な私(^^ゞ感謝価格1000円だし、気軽につきあえる(笑)

原作の漫画は昔は読む機会もあったが、このシリーズを映画館で観るのは実は初めて。TVではよくチラ見していたけれど。
Wikipediaの「釣りバカ日誌」の項はこちら
【釣りバカ日誌20ファイナル】
公式サイトはこちら
監督:朝原雄三 脚本:山田洋次、朝原雄三
原作:やまさき十三、北見けんいち
出演:西田敏行、浅田美代子、吹石一恵、塚本高史、松坂慶子、谷啓、三國連太郎、加藤武、小野武彦、鶴田忍、中村梅雀、益岡徹、中本賢、笹野高史、奈良岡朋子、岸部一徳、六平直政、平田満、角替和枝、かとうかず子、高畑淳子
あらすじは以下、goo 映画の「釣りバカ日誌20ファイナル」の作品情報より引用。
「近年の不況の波はゼネコン業界にも訪れ、鈴木建設も例外ではなく、業績悪化の一途をたどっていた。そんな中、会長の一之助(スーさん)が無期限の給料全額返還を実行すると宣言、その噂は社内外に広まり大騒ぎになる。そんな中、スーさんのために一肌脱ごうと奮起した伝助(ハマちゃん)は、得意の釣り人脈から思いがけない大型受注に成功する。そのご褒美に釣り休暇をもらった伝助は、スーさんと共に北海道へ釣り旅行に出掛けた・・・・・。」

社会風刺も効いていて思いっきり笑いをとるシーンに大笑いし、しみじみもできて見ごたえがあった。エンドロールで脚本に山田洋次とあったので、しっかりとこのシリーズを把握することにしてプログラムを買ってしっかり読む。
3社が映画化を申し入れ、人情ものが得意な会社ということと脚本に山田洋次という条件で松竹が映画化の権利を獲得したらしい。渥美清さんの死去でシリーズが終る「男はつらいよ」との併映で始まり、好評で次の代表シリーズとして続いてきたという。
山田洋次や朝原雄三監督の文章で基本構造がよくわかった。作品のテーマは企業の創業者スーさんの苦労や悩みであり、その周囲でハマちゃんが楽しくからんでいく。山田洋次のメッセージがスーさんの台詞にこめられ、だから三國連太郎というキャスティングが生きるのだ!
三國連太郎の文章でも「ファイナルにしてこの作品がよくわかった」というようなことが書いてあった。だからファイナルだけでも映画館で観て正解だった。

北海道ロケも風景、幻のイトウ釣りの場面も自然が楽しめるし、松坂慶子と吹石一恵の母子家庭の母娘のドラマに主人公二人がからむのもよかった。
スーさんが脳梗塞で倒れて息を吹き返すまでの霊界ミュージカルが楽しいのだ。芝居も歌もうまいという西田敏行を活かしきっている。
生還を果たした上で役員勇退を宣言するスーさんの社員への言葉が圧巻。今の世の中の経営者たちには是非ここだけでも観てほしいくらいだ。
企業というものはそこで働く全ての人たちのもので、経営が傾いてもしも辞めてもらうような選択をする時は、役員からそうしなくてはいけないと、残りの役員たちに釘を刺した!!
その姿勢にホールを埋めた職員たちの拍手が、映画のシリーズのカーテンコールと重なっていくという手法に脱帽だ。そこで今は登場しなくなっていた谷啓も登場させるというのが憎い。
ただのお笑い映画だと思っている方も、こういうテーマ性もあり、上質なエンターテインメントにも仕上がっていることをお知らせしたいので、気合を入れて書いてみた。

写真はこの作品の宣伝画像。お正月らしくていいねぇ。

映画を観た後は、さいたま新都心駅ビルに直結できる「日本海庄屋」で母娘ふたりでお茶ではなくオチャケにした。
海鮮サラダがお刺身たっぷりで実に食べ応えあり(写真はこちら)。カルパッチョも食べたいと母が言うのをこれが来てから考えようといって正解。あんこうの小鍋も美味しかったし、海のお魚の映画を見てお魚料理を楽しんだのも大正解。
食事の後、母を妹2の家方面の電車に乗せてツレアイくんに駅まで車で迎えを頼み、自分は帰宅。親孝行の一日も無事終了(^^ゞ

10/01/04 アンコール上映で「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」

2010-01-10 23:59:21 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

12月の封切の際、2週間の限定の予定が延長されても日程が確保できず。娘は観ていて一見の価値ありというので一度は観たいと思っていたが、ようやくアンコール上映で観ることができた。
1/2に母とMOVIXさいたまで「釣りバカ日誌20ファイナル」を観た時に貯まったポイントをしっかり使い、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」の座席指定券をとっておき、年末年始の休みの最終日に一人でゆっくり観てきた。
【マイケル・ジャクソン THIS IS IT】
作品概要は、goo 映画の「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」の作品情報を参照のこと。

ドキュメンタリーとしての仕上がりもよく、マイケルの人柄や共演するキャストのオーディションに参加した人々やコンサート成功に向けて結集したスタッフたちのマイケルへの思いもよくわかった。
12年間のブランクを経ながら、ファンの期待以上のコンサートを創り出そうとするマイケルの姿は素晴らしくもあり、またそのブランクや加齢や体調不良によるつらさなども伝わってきて、切ない気分になった。

若かった頃のライブ映像との組合せもあったので、若かった頃の活躍をラジオでしか知らなかった私でも、最盛期のマイケルのイメージをある程度は喚起してもらえたと思う。

しかしながら、歌曲に字幕がつかないのは何故だろう。私は意味がわからない曲を初めて聞くことを続けると眠くなってしまう。マイケルのダンスも確かに魅力があるのだろうなぁと思いつつ、ヒップホップ系のダンスを好まない私。長く見続けるうちに気がつくと瞼が落ちていて、眠気との闘いになってしまった。
後半が荒唐無稽だった「ムーンウォーカー」は短かったから眠くならなかったのかもしれない。
しかしながら、マイケルの歌声は実に癒し系の魅力がある。だから気持ちよくなってしまうのだろうとも思う。

観終わった後、「ムーンウォーカー」を観た後と同じようにシネコンの階下にある紀伊国屋のマイケル・ジャクソンコーナーに立ち寄ってDVDやCDを物色。一番コストパフォーマンスのよさそうな1枚をほぼ内定。すぐには買わない。アマゾンの方が安いかもしれないから(^^ゞ

その後、NHKの「SONGS」の再放送だと思うが、カーペンターズのリチャードが来日してカレンの映像とともにデュエットしているのも見た。こういう癒し系の魅力的な歌い手はなぜに早世なのだろうと考え込んでしまった。
歌唱力が優れているだけでなく、繊細な心が歌声にもしみ出ているのではないかと推測。

そしてアマゾンで20%引きでちゃんとGET。ローソンでの引き取りもできるようになったのも知って早速それでやってみた。
実は今もそれを聞きながらこの記事を書いている。
「キング・オブ・ポップ ジャパン・エディション」
収録曲は以下の通り。
1.ビリー・ジーン 2.マン・イン・ザ・ミラー 3.スムーズ・クリミナル 4.スリラー 5.今夜はビート・イット 6.バッド 7.ブラック・オア・ホワイト 8.ヒール・ザ・ワールド 9.ロック・ウィズ・ユー 10.ヒューマン・ネイチャー 11.ウィ・アー・ザ・ワールド (デモ・ヴァージョン) 12.セイ・セイ・セイ 13.スクリーム 14.リメンバー・ザ・タイム 15.オフ・ザ・ウォール 16.ベン 17.スリラー・メガミックス
歌詞カードは老眼鏡をかけないと読めないので、何度もBGMでかけている。好みは「ヒール・ザ・ワールド」「ヒューマン・ネイチャー」。多くのミュージシャンが参加した「ウィ・アー・ザ・ワールド」もマイケル一人で歌うデモ・ヴァージョンは初めて聞いたが歌い方がよりソフトで心に沁みる。
こういう楽しみ方もいいでしょう?!



09/12/23 母へのクリスマス・プレゼントに映画「ティンカー・ベルと月の石」を観る

2009-12-23 23:07:48 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

先週末に引越しをすませたばかりの名古屋の妹1一家がお正月には帰省しないことになり、実家の母を囲んでの親族のお正月の集いをどうするか、頭を悩ませている今日この頃。明日の24日は介護保険の認定の更新ということで市の高齢者福祉課職員が訪問調査にやってくるのだが、そちらの対応は妹2に頼んでいる。
今年の12/23の休日はちょうど水曜日なのでレディスデイだし、母へのクリスマス・プレゼント代わりに映画を一緒に観ようと誘った。土曜日にも実家に行って昼ごはんを食べてきて、お正月に映画でも観ようかという話題がでて、そこでアニメ映画がいいという話が出ていた。
「カールじいさんの空飛ぶ家」が観たいと言われたが、私はもう娘と観てしまったし、日本語版は3Dなのが母親には向かない。ディズニー映画の「ティンカー・ベルと月の石」もいいんじゃないかと提案しておいた。
残業で遅くなった昨日の夜、電話を入れたら体調もいいので行きたいと大喜びし、朝起きてから天気と体調を確認して決行することにした。めざす14:40からの回の残数をネット検索したら15!すぐにMOVIX会員カードでネット予約して、13時集合にした。

ランチを食べるデニーズの傍らの広場で地元の小学校の吹奏楽クラブがハリーポッターの音楽を演奏していた。実家のあるエリアとの文化レベルの違いに二人で感心してしまった。結局ギリギリに着席(^^ゞ

【ティンカー・ベルと月の石】
「ティンカー・ベル」シリーズは彼女がピーター・パンと出会う前の物語で4部作になるのだという。今作はその第2弾!予告編を観て映像が綺麗だし、ティンカー・ベル(愛称がティンク)がまるでピーター・パンのような服を着て冒険に出かける話のようだったので興味をひかれていた。
「MOVIE Collection」サイトの「ティンカー・ベルと月の石」のページはこちら
いくつかのサイトを見比べたが、上記のサイトのストーリーが一番正確だった。
「ピクシー・ホロウの妖精たちは、秋の到来の準備に忙しい。もの作りの妖精、ティンカー・ベルもいろいろな道具を作っていた。そんな時、ティンカー・ベルはクラリオン女王から呼び出され、魔法の力を持つ“月の石”を納める“聖なる杖”を作る任務を与えられた。月の石は、妖精の命ともいえる重要なもの。慎重に作業をしていたティンカー・ベルだったが、完成間近というところでイライラして親友テレンスと口論をしたあげく、失敗をテレンスのせいにしてしまう。そのとき、月の石が壊れてしまい……。」
前作の内容はWikipediaの「ティンカー・ベル」の項を参照するとよくわかる。

妖精たちがみな可愛いし、それぞれの仕事に励む様子もコミカルさも強調されているので微笑ましく気持ちが和らいでいい。
ティンクはもの作りが仕事で、妖精の粉の管理の仕事をするテレンスが親友なのだが、この二人の関係がまたまた可愛い。女の子と男の子とではあるが、恋愛とは違う友情というところが実に安心して見ていられるというか、小さいお子様に見せるにも良質という感じがいい。チューっとなんてやらない爽やかな親友どうしの友情がゆらいだり、結び直されたりするのが見どころなのである。

ハートウォーミングな一時間半の短めの作品で、終ってみてシアターが明るくなると小さいお子様連れの家族が大方をしめていた。やっぱりなぁだった。
私の母は、「私はこういうのがいいの」と実に満足してくれたので、誘った甲斐があったというものだ。
観たあとにアイスクリームショップでリクエストのラムレーズンを食べてもらってさらにご満悦。
駅の改札まで送って別れた。
「こういう機会もあと何回でもないと思うからまた作ってね」と言われてしまった。ハイハイ、やれる限りは調整して機会をつくっていきますよ。

写真は今回の作品のチラシ画像。封切初日に観てしまったんだよなぁ。

09/11/27 3時間半の映画「沈まぬ太陽」で胸がいっぱい(T-T)

2009-11-29 19:39:41 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

11/22の日曜日にMOVIXさいたまで3時間半の大作「沈まぬ太陽」を観ようと思って、家を出る前にチェックしたらネット画面で観たい昼の回の売り切れを確認。封切後一ヶ月で小さいシアターに変わっているので休日の昼は厳しかったようだ。そこで思い切って仕事帰りに直接観に行ってしまった。
Wikipediaの「沈まぬ太陽」の項はこちら

「Yahoo!映画」からあらすじを引用。
「国民航空(NAL)の労働組合委員長・恩地(渡辺謙)は職場環境の改善に奔走した結果、海外勤務を命じられてしまう。10年におよぶ孤独な生活に耐え、本社復帰を果たすもジャンボ機墜落事故が起き、救援隊として現地に行った彼はさまざまな悲劇を目の当たりにする。そして、組織の建て直しを図るべく就任した国見新会長(石坂浩二)のもとで、恩地は会社の腐敗と闘うが……。
東宝の公式サイトのストーリーはこちら
製作総指揮:角川歴彦 監督:若松節朗
出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、香川照之、木村多江、清水美沙、鶴田真由、柏原崇、戸田恵梨香、大杉漣、西村雅彦、柴俊夫、風間トオル、山田辰夫、菅田俊、神山繁、草笛光子、小野武彦、矢島健一、品川徹、田中健、松下奈緒、宇津井健、小林稔侍、加藤剛、ほか

御巣鷹山のジャンボ機墜落事故は、事故当時の衝撃が大きく、「クライマーズ・ハイ」を観た時も泣けてしかたがなかった。今回も覚悟はしていたが、冒頭からその場面になるのは予想外でいきなり滂沱の涙に襲われる。
空港で事故機に乗り込む人とそれを見送る家族の場面があって、トラブル発生。機内で酸素マスク着用を促すスチュワーデス、遺書を書き付けるサラリーマン。コックピットでは機長役の小日向文世が必死の形相で操縦し「パワーパワー」の音声を残して・・・・・・。
恩地たちはNALの山岳部員が救援部隊として派遣されるが加害者ということで事故現場には入れず、被災者の家族の対応に回る。事故現場の再現映像も物凄いが、地元の体育館などに遺体が搬送されて家族に確認してもらう場面は、家族の嘆きとそれを受け止める恩地たち職員の心のいずれもが見ているだけでつらい。こういう事故が何故起きたのか?安全対策は十分だったのか?

安全対策にかけるコストはカットされやすいのだ。現場で働く者の組織がきちんと経営側に拮抗できているかどうかが大きな抑止力となる。JRの脱線事故でも然りだが、力の強い労働組合を分裂させることが労務対策の常套手段となる。国鉄の分割民営化もそれがねらいだったと、中曽根元首相が今頃しゃあしゃあと明かしているくらいなのだ。
世の中をよくする運動が高揚し力を発揮すると、それを分裂させて力を削ごうとするのが権力の常套手段。歴史的に繰り返されるのを避けることはできないのだろうか・・・・・・。

恩地がNALの労組の委員長時代には労使の団交で勝利するくらいの力をもっていたのに、委員長を降りた途端の報復人事で海外へ約10年飛ばされている間に分裂させられていた。それを推し進めたのが副委員長として共に闘った行天(三浦友和)だったというのが実につらい。行天の変節はどうやら恩地へのライバル心からだったような気がする。人間的に勝てないというコンプレックスを地位を得ることで勝つことができるはずと思い込んでいたのではないだろうか?
その弱い男にほだされるのが愛人となりスパイ役にもなってしまった美樹(松雪泰子)。弱さから変節する男についていく女の愚かさ哀れさがあった。

恩地の妻りつ子(鈴木京香)は夫がその矜持を貫くことを認め、海外僻地赴任に子どもと共についていく。会社側は従来の海外僻地赴任を連続でさせないという労使慣行を破って、それを圧力に恩地過去の労組の活動についての詫び状を書くことを何度も強要する。恩地は断り続けてパキスタンのカラチ→イランのテヘラン→ケニアのナイロビと転々とさせられる。それは明らかに不当労働行為だと思うが、恩地は母の葬儀で帰国した折に社長に約束が違うと談判しに行き、次はないと約束してもらうだけで裁判を起こして闘うなどはしない。確かに裁判すれば給料はすぐに出なくなるだろうし、会社にもマイナスイメージを与えるだろう。しかしながらそれでも自分の信念を曲げることはしないのだ。
私はこういう職場があることが当たり前の社会であることを肯定することができない。しかしながらどうやって折り合いをつけて生きていくかということなのだろうとは思うようになった。こういう恩地の生き方もあるだろう。ただし、家族のつらい思いにも涙が出てしまうし、耐え抜いて夫として父として認めていったりつ子や子どもたちにも素晴らしさを感じた。

その恩地の海外僻地への異動を不当として闘った書記長の八木(香川照之)は、配属部署でいじめぬかれる。その心の弱みを行天につかれて隠し金作りに利用されるが、最後には自分の命と引き換えに告発する。労組で勝利した光り輝いた時の仲間と一緒の写真をずっと持ち歩いているというのが切なかった。

ようやく国内に戻った後、御巣鷹山の事故である。恩地のモデルになった人物が遺族係になったことはないようだが、そこは山崎豊子が小説化するとき、メッセージを伝えるための重要なフィクション化としてそういう設定にしたのだろうと思える。
事故後の会社の立て直しのため、首相が主導権をとるための会長人事の結果、石坂浩二扮する国見が着任。4つの労組に分かれてそれぞれの利益ばかりを主張して顧客第一の発想を失っている職員をひとつに束ねるために、分裂前の労組での統率力をかって恩地を抜擢登用する。そこで立場を超えて同志として心が通い合わせての会社の改革に溜飲が下がる。

しかしそれも長くは続かない。会長の下に団結するつもりもなく、幹部それぞれが自分の思惑で動いていくし、任命した首相が風向きが変わると辞任を迫るという皮肉な展開。それでもホテル買い取り疑惑の役員の更迭や、八木の命を投げ出しての告発で行天が失脚することが、観ているこちらの悔しい気持ちをなだめる。
地検特捜部で上川隆也が最後に姿を見せることも嬉しい(^^ゞ

それにしても失脚前の行天によって再びナイロビに送られた恩地が見た地平線に沈もうとする太陽が沈まぬ太陽に見えたというのはどういうことだろう。沈み続けることはないということか?!
「陽は沈み、陽は昇り」と「屋根の上のヴァイオリン弾き」の有名な歌ではないが、人間の社会も人生も常に希望に満ちた時ばかりではなく絶望の時ばかりでもない。その中でどう信念を保ち続けながら生きていくかということが問われるということだろうか?!

ちょうどそんなような気持ちで生きている今の私にとっては、胸がいっぱいになるような作品だった。
JALが墓穴を掘るように小説化の時も映画化の時も、会社に誤まったイメージをもたれると非難のキャンペーンを張っているのが笑える。そんないろいろな逆風の吹く中を映画化を実現したスタッフたちに、感謝と応援のエールを贈りたい。

写真は東宝の公式サイトよりチラシ画像。
主人公・恩地のモデルとなった小倉寛太郎氏の著書『自然に生きて』の紹介

09/11/14 県民の日にシネコン割引で「サイドウェイズ」

2009-11-15 23:58:32 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

映画の日やレディスデイなどで映画を観ようと隣駅前のMOVIXさいたまのサイトをちょくちょく覗いていたら、「お知らせ」の欄に11/14が埼玉県民の日で1000円に割引になるという見出しを発見。土曜日の夕方だし娘と一緒に観ることにしていた。ところが娘は風邪が長引いていてしんどいので寝ているという。雨が降りそうで寒い中を一人で自転車で出動!

「cinemacafe.net」の「サイドウェイズ」のページはこちら
以下、あらすじを引用、加筆。
「キャリアも私生活も冴えないシナリオライターの道雄(小日向文世)。20年前の留学生時代の親友・大介(生瀬勝久)の結婚式に出席するため渡米した彼は、独身最後の日々を謳歌したいという大介に乞われて、1週間のドライブ旅行に出かける。行き先の希望が相容れなかった二人だが立ち寄った昔のホームステイ先のママからパパの遺品の赤いムスタングを譲られ、さらに道雄が家庭教師として勉強を教えていた麻有子(鈴木京香)がナパ・バレーで働いていることを知らされる。大介が譲って彼女に会いにナパ・バレーをめざすが、予期せぬレストランで麻有子が画家を目指す年下の親友ミナ(菊地凛子)と一緒にいるところに遭遇。4人で盛り上がるうち・・・・・・。」

予告編で観たワイナリー風景が美しかったのと、小日向文世・生瀬勝久という舞台でも好感をもっている二人の人生の珍道中的なところが面白そうだったので観たのだが、大正解!
ナパ・バレーがカリフォルニア・ワインの聖地ということも知らないくらいワインに関心のない私だったが、愛好家の道雄が語るワインのうんちくもそれほどうるさく感じずにすーっと引き込まれていった。

昔の道雄と麻有子の恋が順調に始まらずに終わってしまったところから20年経って、二人ともいろいろな挫折と傷を引きずりながらの出会い。これがまたスムーズに気持ちが通い合わないところが観ているこちらをハラハラさせる。

一方で婚約者がいることを隠したまま大介とミナはあっという間にできてしまう。しかしこれも単なるハメはずしではなく、背伸びした結婚を前にした大介のマリッジブルーのなせる暴走というのだからこちらも実にせつない。
男二人が二人とも情けなくて可愛いのだ。
麻有子は御曹司との結婚に破れて突っ張って生きている。麻有子はワインのカベルネが好きで道雄はピノワールが好み。そのワインの特性に例えた二人の生きる姿勢の違いが面白く、さらに何を飲むかではなく誰と一緒に飲むかの方が大事だと気づいたことを告げる道雄のメッセージ。
ミナにフライパンで鉄槌をくだされた大介がさらにひと波乱を巻き起こすのが笑えるが、そこを乗り越えてようやく逆玉婚への覚悟を固めるシーンがまたまたよい。ちょっとムスタング君が可哀相ではあるけれど・・・・・・。

ミナの菊地凛子は日本人とのハーフの役。常にその時々を真っ直ぐに生きているタフな女の子という感じ。ちょっとニュアンスのずれる変な日本語で年上の3人を励ましてくれる存在感が実に可愛く有難い。
最後にそれぞれを思ってすれ違う道雄と麻有子の恋。それをミナのかける言葉で一気にハッピーな結末を観客に確信させる実に憎いエンディングであった。

第74回アカデミー脚色賞受賞作「サイドウェイ」(アレクサンダー・ペイン監督)を日本側の企画でリメイクした作品ということで「20世紀少年」などで現地班監督を務めてきた日本出身の米国人チェリン・グラックが監督を務め、オールロケ、オ-ル現地スタッフで作られた初めての作品だという。

映画の音楽を担当したのは「フラガール」と同じくジェイク・シマブクロ。彼のアコースティックな演奏とチョイスの1980年代のUSミュージックが耳にも心地よい。

あまりに面白かったのでプログラムでは情報量が少ないと日経BPムックのオフィシャルガイドブックまで買ってきて読んでいる。プロデューサーや監督のインタビューも面白い。ついでにカリフォルニア・ワイナリーの勉強もできるみたいだ(笑)

写真は「サイドウェイズ」の宣伝画像。

09/11/07 映画「ムーンウォーカー」でM.ジャクソンを追悼

2009-11-14 23:59:10 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

50歳で急逝したマイケル・ジャクソンが10年ぶりのライブをロンドンで予定していて、その死の直前のリハーサルまで収録したドキュメンタリー映画「THIS IS IT」が話題になっている。そんなにマイケルのファンではなかった私はどっちでもいいやという感じだった。娘は父親から猛烈に誘われて観てきてすごくよかったとのこと。
その関連でマイケルが製作総指揮をした映画「ムーンウォーカー」も11/7に緊急公開。1000円での公開だが古くて短い作品だからだろう。
せっかくマイケルに娘がノリノリになっているので一緒にMOVIXさいたまの公開初日に観てきた。
Wikipediaの「ムーンウォーカー」(映画)の項はこちら
前半はマイケルのジャクソン5の時代からのプロモーションビデオやライブパフォーマンスの映像。この部分がけっこう楽しめる。整形前のマイケルの若々しい姿が可愛く懐かしい。♪「ABC、123、ドレミ、・・・・・・」♪の歌がジャクソン5でマイケルが歌っていたとは知らなかった。
私は激しいダンスをしながら歌うというスタイルがあまり好みでない。だからマイケル・ジャクソンもそんなに好きではなく、映像で観たのは東京ディズニーランドの「キャプテンEO」くらいだが、アルバム「スリラー」は友人がカセットテープに録音してくれたのをよく聞いていた。
今回の映画で聞いたことがある歌を初めて映像で観ることができたのが嬉しかった。

後半はマイケルが悪人から子供たちを救うために戦うミュージカル仕立て。マイケルがガンダムのようにロボットの姿になったり、車や飛行艇?宇宙船?に変身したりするのにはちょっとびっくり。
ディズニーランドが大好きだったり日本のアニメやゲームが大好きだったり、私邸をネバーランドと称してテーマパークのようにしたり、何人もの子どもと一緒に暮らすことが大好きだったりしたマイケル。マイケルは天使のような人だったという例えも聞くが、私にはピーターパンのように思えた。
今の世の中をよくしていこう、ひとりひとりが変わっていこうというメッセージが込められた歌も素晴らしいと思った。

晩年の白い肌を脱色したのかと思っていたら、娘に「白斑症」で大変だったみたいだよと教えられた。
Wikipediaの「尋常性白斑」の項はこちら
罹患した著名人にマイケルがあげられていた。整形の延長で脱色までしたと誤解を招きやすいのだろう。
黒人で初めてのアメリカ大統領が生まれ、ノーベル平和賞も授賞された2009年。マイケルが亡くなってもそのような社会の変化につながっている!
そのことに希望をもちながら、マイケルの思いを大勢の人達が引き継いでいくだろうことも信じていきたい。
あらためてマイケルの冥福を祈る!!

写真は期間限定発売のDVD。

09/10/12 ミニミニ同窓会のち映画「南極料理人」

2009-10-12 23:59:50 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

3連休のうち、土日はけっこう真面目に家事をやったので最終日はしっかり遊びに行った。
玲小姐さん幹事のセッティングでさいたまスーパーアリーナ横のロイヤルホストでミニミニ同窓会。北西のキティさん、sakuramaruさんと4人でランチのあと、スイーツまでドリンクをお替りしながらしゃべるしゃべる。
おすすめメニューの黒×黒ハンバーグを食べてみた。黒毛和牛と黒豚の合挽き肉で黒胡椒もしっかり乗っていた。脂っこくなくてけっこういけた。十六穀御飯とけっこうマッチして満足。スイーツのフォンダンショコラはちょっと甘すぎかな。
皆様、楽しい時間を有難うm(_ _)m

その後、私は西口のシネコンに移動。「南極料理人」を観る。MOVIXのサイトの作品紹介から引用して作品の概要を紹介すると以下の通り。
「南極観測隊に料理人として参加した、西村淳原作のエッセー『面白南極料理人』を映画化した癒し系人間ドラマ。南極の基地内で単身赴任生活を送る8人の男性たちの喜怒哀楽を、数々のおいしそうな料理とともに見せる。」
主なキャストは以下の通り。
堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、西田尚美、古舘寛治、黒田大輔、小浜正寛、小出早織、宇梶剛士、嶋田久作、豊原功補、他
西村役の堺雅人が気に入っているし、シチュエーション的に興味があったので是非観たいと思っていたら、来週の水曜日で終了なのでせっかくなのでかけつけた。
堺雅人の写真はcinemacafe.netの映画「南極料理人」の方が大きくて可愛いかな(^^ゞ

海上保安庁の料理人が南極観測隊に派遣されるということになるほどだった。南極行きを子どもの頃から憧れていた宇梶剛士演じる料理人が事故で行けなくなってのピンチヒッターで、堺雅人と並んだところの体格差が南極への思いの大きさの違いがシンクロして実に面白い滑り出し。
南極ドームふじ基地の仲間となった8人の中で、自分から希望して来た人間の方が少ない。ただでさえ過酷な環境で一年半を過ごさなければならないのに、そういう思いに追い詰められてしまう状況にもなるほどと思わされる。

その一番の心の支えが一日3回の食事ということで、食事をつくる食べるシーンが中心になっている映画なのだが、その多様さにどんどん楽しまされてしまうのが実に心地よかった。

一番盛り上がったのはミッドウインター祭り(冬至祭りってことかな?)で本格フランス料理を白く高々とした帽子までつけて本格的なシェフの正装でつくり、若い隊員をウエイター役にしておじさん隊員たちはネクタイとジャケット着用で食べるシーン!太陽の出ない季節から太陽が出る季節へ向かう転換点を祝う冬至の極地での有難さがよくわかる。

ホワイトボードに書かれた帰国まであと何日という数字が最初は五百日台だったのが、少しずつ減っていくというのを見せるのも隊員たちの「帰りたい」という気持ちを間接的に伝えている。
電話室には一分間740円の貼紙。家族や恋人への電話も声はするのにうまく会話がすすまずにせつなさが募るのがいい。
月日は人に別れを促し、また関係の結びなおしのチャンスもくれるということも描かれて、実にあったかな気持ちにさせてくれる。
帰国後の主人公は、我が家の中でよりしっかりと居所ができていて、その幸せが漂う台詞が「うまっ!」だった。食べて美味しいと感じられるのは料理の味だけではないことのようだねぇ。

写真はこの作品の宣伝画像。

帰宅して、久しぶりにエプロンをつけて気合を入れて夜ご飯をつくって娘と食べたら、昼の外食より美味しく感じた。

09/09/18 映画「20世紀少年」最終章で漫画の方も締め括れた!

2009-09-21 23:59:12 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

近くのシネコンの開業5周年の記念割引デーの9/18、何か映画を観ようと娘と仕事帰りに待ち合わせ。長い時間の作品で結局はレイトショーの時間帯になってしまうので200円しか違わないのだが、まぁ二人分だし気分ということで(^^ゞ
選んだのは映画「20世紀少年」最終章。浦沢直樹の漫画は「モンスター」を全巻制覇。続いて「20世紀少年」も読んでいたが、途中で失速。最後の「21世紀少年」上下巻のあたりは買ってツンドク状態になっていた。

実写版3部作映画の製作発表から気にはしていたものの、読み直す気力もなかなか起きず、第2章あたりでようやく残りを読んで、最終章くらい映画館で観ようかなという感じ。第1章・第2章のTV2週連続放映も結局見なかった。
Wikipediaの「20世紀少年」の項はこちら

最終章だけ観ても漫画を読んであれば話はわかるよと娘に言ったところ、それなら読んでから観る!ということになり、私もこれを観ようと急遽前日決定!!
12室あるシネコンで2室を使って交互上映しているので上映回をお互いが勘違いをしているということでドタバタしたが、なんとか午後8時からの分に滑り込んだ(^^ゞ

まず嬉しかったこと。T・レックスの「20th Century Boy」を初めてこれだと認識したことだ。聞いたことのある曲だったのでこれがそうだったのかと急速に作品世界がより身近になった。

漫画の役柄を具現化したようなキャスティングや特殊メイクが話題になっていたのもなるほどなぁと思う。大人キャストによく似た子役を探したということにも感心至極。ストーリー展開は膨大な原作を3部作に納めるためにずいぶんと変更してあったが、まぁこんなもんでしょうと許容範囲内と思える。

ケンヂの唐沢寿明、オッチョの豊川悦司、ヨシツネの香川照之、ユキジの常盤貴子、マルオの石塚英彦、ケロヨンの宮迫博之、キリコの黒木瞳あたりはまったく違和感なし。
コンチの山寺宏一は黒眼鏡のせいでプログラムを買うまでわからず。ヤン坊・マー坊の佐野史郎は肥らせる特殊メイクと双子での合成に笑えた。森山未來が眼鏡をかけてイカサない漫画家・角田は、オッチョの生き様に打たれて彼のようなヒーローを描くと熱く語るのが実によい。
遠藤カンナの平愛梨は残念ながらまだまだ芝居は下手くそだったが、目に力があるのでゆるす(^^ゞ
仁谷神父の六平直政、敷島博士の北村総一郎、ジジババのババァの研ナオコ、蝶野将平の藤木直人、その祖父の伝説の刑事チョーさんの竜雷太ってもうハマリすぎ(笑)

最終的に世界をなくそうとした“ともだち”が誰だったかというのが映画版と漫画版では違うのだが、それも違和感がなかった。“ともだち”が世の中を呪う一番大きな原因をつくったケンジへの屈折した思いが、2000年の血のおおみそかやそれ以降の大惨劇を引き起こしたというところは全く共通しているので、最終的な“ともだち”が同じであればいいようなのだ。
とにかく、佐々木蔵之介がロボットのリモコンが動かなくなった時の「やめろ、終っちゃうじゃないか」という時の実に子どもじみた泣きそうな表情が秀逸。

それと漫画ではあまり印象に残っていなかったケンジが東京に向かう乗り物を実写で見てようやくその可笑しさに気がついた。スクーターに改造バイクのようなハンドルがついているのか!こりゃいいや!!
反陽子爆弾による地球の破壊の危機は回避され、ケンジはその変なバイク?でフリーコンサート会場の万博公園を埋めつくす群集の前に登場する。
“ともだち”礼賛の演歌歌手に身をやつしていた春波夫ことチャーリーの古田新太が着流しを脱ぎ捨ててドラマーに早替りするところでは思わず身体が反応するほど笑ってしまった。映画版ならではの醍醐味だ。YMOメンバーの高橋幸宏のビリーがベースで頑張ってくれて、ケンヂの唐沢寿明と若き日のバンドメンバーが3人揃うライブで盛り上がるのもなかなか贅沢なもの。
“ともだち”の圧政をしのぐ民衆の間にコンチがラジオで流すケンヂの「ボブ・レノン」の歌の大合唱になるのだが、これも漫画ではメロディがわからなかったので映画を見てよかったと思うところ。

しかし、スーダララ~♪グータララ~♪ってねぇ。なんでこれがカッコイイ曲名がつくのだろうと考える。しかし、ディランもレノンも実はこういう日常の暮らしの中にある希望を歌っていたのかもと考え直したりもする。浦沢直樹のロック魂のあらわれなんだろうなぁと推測。

エンドロール後も重要なラストシーンがあるので、席を立たないでという案内があったが、席を立つ人がいた。娘と「リピーターかもね」と後で話したが、ここを見ないとわけがわからない。

中学校の放送室を占拠して流した「20th Century Boy」で何も変わらなかったとケンヂはがっかりしているが、実は大きな役割を果たしていた。それからは現実とバーチャルでは違った展開になるというのを見せてくれるのだが、漫画よりもわかりやすく気持ち的に救いのあるラストとなる。
神木隆之介ってやっぱり可愛いなぁ。

実は漫画の方はなんだかラストがわかりにくく、すっきりとした読後感が持ちにくい。プログラムを読むと読者によく考えてもらいたくて、わざとそのようにしたらしい。しかしながらけっこうそれってひねりすぎじゃないかとも思う。読む方も余裕がないとなかなか負担が大きい。漫画でそこまで求めるのはちょっと酷じゃないだろうか。

漫画の執筆の最後の方は映画化も決定していて、浦沢直樹が脚本づくりにも参加していたということも書かれていたが、漫画と映画との相乗効果をねらったのかもしれない。まぁ映画の最終章を観たことで漫画の方の理解も深まり、映画からも漫画からも「20世紀少年」という作品をより堪能できたので、これで締め括れるという区切りがついたのがよかった。

まぁ、こういうこともあるのかなと思っておこう。疲れがたまっていて、こういう重たい作品を観てしまって翌日は知恵熱が出たのだろうか(^^ゞ
ボーっとしていて帰りに食べた店でお気に入りの腕時計をはずしたまま多分置いてきてしまったらしいのが悔しく、落ち込んでもいたが、まぁこういうこともあるだろう~♪と思っておこう。
写真は「20世紀少年最終章」の宣伝画像。

09/07/06 シネマ歌舞伎「牡丹亭」をみてきたことの簡単報告

2009-07-06 23:59:49 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

先週行くつもりが、母の騒動で行けなくなっていたシネマ歌舞伎「牡丹亭」。
今日までは妹1が泊り込んでいるのと娘が手伝いにいったので、夜は時間がつくれたので仕事帰りに東劇へ。
18:35からの最終上映を観てきた。一部が45分で公演までのドキュメンタリー。二部が「牡丹亭」蘇州公演のダイジェスト。
ドキュメンタリーはNHKのプロフェッショナルの時の続きのようで、またまた感動してしまった。
勤続15年休暇で上海・蘇州を家族旅行してきたので、太湖石のある庭のある蒼狼亭を玉三郎が歩くシーンなどは懐かしかったし。
「牡丹亭」はまるでチャイニーズ・オペラといった印象。出演者が裏声でしゃべり歌う蘇州語の音が美しい。玉三郎も中国キャストから浮き上がることのない蘇州語(に私には聞こえた)。歌う比率が高いのにびっくり。(オペラのくだりを追記)

最終上映会はガラ空きだったが勿体ない感じだ。7/10までなのでまだの人は是非おすすめである。
写真は観た後に歌舞伎座前を通って駅を急いだら、カウントダウン時計があと299日になっていた。
七月はさよなら公演版玉三郎の泉鏡花ワールド。「海神別荘」と「天守物語」を組み合わせた特別ポスターにも目を引かれた。やはり今月はこの2本で鏡花ワールドを構成し、昼と夜の一本目は主役を任せる若手が活きる演目にしたのだろうと推測した。

09/06/14 彩の国シネマスタジオで「闇の子供たち」

2009-06-14 23:58:22 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

昨年シネマライズでご覧になって私には観てブログに書いて欲しいという玲小姐さんのリクエストにお応えし、彩の国シネマスタジオ6月企画で「闇の子供たち」を観に行った。
【闇の子供たち】
発売されているDVDの紹介サイトより冒頭を引用。
<スタッフ>
監督・脚本=阪本順治 原作=梁石日 撮影=笠松則通
音楽=岩代太郎 主題歌=桑田佳祐
<ストーリー>
タイ駐在の新聞記者・南部浩行(江口洋介)が、闇ルートでの臓器売買に関する取材を始めると、金のために子供の命までもが容赦なく奪われるという、想像を遙かに超えたおぞましい実態が明らかになってくる。一方、理想を胸にバンコクのNGO団体に加入した音羽恵子(宮あおい)も、子供たちがさらされている、あまりに悲惨な現実を目の当たりにしていく。やがて、突然姿を消した貧民街の少女が売春宿に売り飛ばされていることを知った恵子らNGOのメンバーは、彼女を助け出そうとするが…。

タイの貧しい山村で子供たちが幼児売春宿の男(プラパドン・スワンバン)に次から次へと買われて車に乗せられるところから始まる。親に札束を渡し子供にはぬいぐるみをプレゼントして連れていくのだ。そしてその行く先のバンコクの幼児売春宿での売買春の現場のエピソードがこれでもかこれでもかと映し出される。先進国の客が自国ではできない幼児買春を金の力で易々としている。その異常さに先進国の社会の病理も映し出される。ここまで異常な性愛嗜好は歪んだ精神病理が基になっているとしか思えない。
Wikipediaの「ペドフィリア」の項はこちら(6/15追加)
人身売買というものをなくすということは戦争をこの世の中からなくすと同じくらい困難な課題だと思っているが、そのための努力を続けなければならないことは問題を意識した人間の責務だと思っている。そのためのボランティア活動やNGO活動をしている方たちにまず敬意を表していることも書いておく。その象徴としてバンコクの社会福祉センター所長のナパポーン(プライマー・ラッチャタ=浜美枝さんに似ていた)以下のボランティアであり、そこに加わった宮あおい扮する恵子である。

日本の本社からの情報で動き出す現地の新聞記者・南部が以前ナパポーンたちの施設を取材したことから情報を得るために接触。そこから二者の協力が始まる。日本に戻って情報を手繰り、8歳の子どもにタイで心臓移植手術を受けさせる両親(佐藤浩市・鈴木砂羽)と会い、恵子はストレートに手術をやめてと訴えるが「息子の命を救うのを邪魔する権利はない」と反論される。闇のルートを通してだが既に決まってしまったことを白紙に戻すことはできそうにもない。
本社のデスクの2人(塩見三省・豊原功補)の恵子の姿勢への批判は鋭い。「今回の臓器提供者だけを救おうと感情的に動いてもダメだ。そのしくみ自体をなくすために事実を報道するんだ」(という主旨)
南部はフラフラといい加減な仕事をしていたフリーカメラマン与田(妻夫木聡)も巻き込んで取材を続けるが、マークしていた幼児売春宿で「これ以上動き回ると殺すぞ」と脅される。その脅しもかいくぐり、タイの子どもが犠牲になるのを止められなくても最後の表情までを記録に残して報道するという南部の使命感に感銘した与田も最後まで協力する。生きたまま臓器を取り出される子供も幼児売春宿の中の健康な少女だった。

一方、エイズにかかってバンコクからチェンライに転売された少女アランヤーを救うための活動の中でセンターの男性が射殺される。一緒になって動いてもらった警察にマフィアへの内通者がいるためだ。使い物にならなくなったエイズの子供はごみ袋に入れて捨てられることがわかり、収集車を見張って救い出す恵子たち。
殺された男性ボランティアの追悼集会でまさかの銃の乱射騒ぎが起きる。チェンライでボランティアをしてくれていると思われていた男性の裏切りか?!それとも彼もおかしくなってしまっているのではないか?!
それでも麻薬取り扱い容疑と抱き合わせることで幼児売春宿は摘発され、何人かの子供たちは救出された。

しかし、映画はここで終らなかった。心の闇が膨れ上がり首をくくった南部を東京から戻った与田が発見。後始末に東京からかけつけた清水(豊原)と与田によって南部の闇が暴かれての終幕。彼がここまで事件の実像を明らかにすることに尽力したのは贖罪の意識からだったのだろうか?しかし贖罪しきれずに自殺したのか??うーん、ここまで見せてくれなくてよかったなぁというのが私の正直な気持ち。江口洋介だとあまりにイメージがかけ離れてしまって最後はちょっと引いてしまった。まぁ脚本を書いた阪本順治監督の思い入れも理解はできるが・・・・・・。

冒頭と最後に月のアップの映像。満ち欠けの闇の部分が濃く、明るい部分との対照が鋭く心に突き刺さる。光と闇の部分がある世の中の象徴か!

この映画で何人の子供たちの死が描かれただろう。臓器提供者にさせられた女の子は冒頭に連れ去られた子のうちのひとり。その子が一緒に買われた男の子はホルモン注射の打ちすぎで目の前で死んでいったし。ごみ袋から自力で脱出して郷里に戻って鳥小屋のようなところでエイズで死んだ女の子が焼かれた後に、最後に着飾らされた女の子が病院に連れてこられた場面。
けれど彼女を買って最後に病院に連れてきた男も幼児売春をさせられて大きくなった人間で、その傷がうずいたり、その怨みを南部にぶつける場面もあって、ただの犯罪者として描いていないところがよかった。犯罪を生み出す社会の根っこを治さなければ不幸の連鎖は止まらない。
戦争も人身売買もその根となる地球上の経済格差もなくするために知恵と力をもっと集めなければならないのだろう。やれることから参加していきたいという思いを強くする。

ここまでこういうダークな問題をメジャーの映画としてつくれるようになった日本の映画界にはエールを送りたい。そして、恐がらず無力感を抱かないように是非とも大勢の方にこの作品を観ていただきたい。

写真はDVDのパッケージの画像。