パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

キャビン ★★★

2013年04月25日 | か行の映画
若者たちが人里離れた山小屋で戦慄の恐怖に見舞われるという従来のホラー映画のお約束を踏まえた、巧妙かつ予測不能のストーリー展開が映画ファンから絶賛された異色のホラー・サスペンス。

「クローバーフィールド/HAKAISHA」やTV「LOST」の脚本で知られる新鋭ドリュー・ゴダードが、TV「バフィー~恋する十字架~」などでタッグを組んだ「アベンジャーズ」のジョス・ウェドンと共同で脚本を執筆、自ら初メガフォンをとり映画化。出演は恐ろしい目に遭う若者たちに「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースのほか、アンナ・ハッチソン、クリステン・コノリー、フラン・クランツ、ジェシー・ウィリアムズ、そしてベテランのリチャード・ジェンキンス、ブラッドリー・ウィットフォードが脇を固める。(作品資料より)

<感想>前から観たいと思っていた作品が、やっと地方でも上映されました。これはパターンを覆すホラーと人類滅亡の世界観を融合させた物語。内容は確かに「死霊のはらわた」そっくりの山小屋は出てくる。そこへ、バカンスを楽しみにバカそうな若者グループがやってくるところも同じである。山小屋に向かう途中、立ち寄ったガソリンスタンドには謎のジジイがいて、なにやら不吉なことをほのめかす。
「死霊のはらわた」ふうの山小屋についた若者たちは、とりあえず近くの湖で水遊び。ひとしきり楽しんで戻ってきた彼らは、小屋の中に、長年使われていなかった地下室を発見する。そこには不気味な日記やアルバム、蓄音機やオルゴール、フィルムにテープレコーダーがごろごろしていた。ここまでで観て、これはやりすぎだろうって、いくらホラーファンが定番ネタを好むからといって、ここまで何もかもいつも通りにしなくてもいいじゃないの、と思った。ところがですよ、ここからが違っていたんです。

実は若者たちの行動はすべて謎の組織に監視されており、“組織”で働く連中は、あの手この手を使って若者グループの行動を「いかにもありがちなホラー展開」にするべく奮闘していたのです。地下室に気付いているのか、よし、突然ガタンと地下室の扉が開くようにしろ!、・・・森の中でカップルがイイムードになったのに女が脱がない?、「森の中の気温を上げるんだ」ついでに地面からフェロモン霧を噴射しろ」なんて軽口を叩きあいながら、とある施設で働く男たち。なんとこの二人は、リチャード・ジェンキンスとブラッドリー・ウィットフォードではないか。

謎の組織はかなり大掛かりで、働いている人たちはみなスーツを着た公務員ふうで、地下の巨大な施設でせわしく働いている。随所に設置されたモニターには、山小屋の若者たちだけでなく、各国の映像も映し出されている。おかしなことに、それらの映像はすべて各国版の「ありがちなホラー映画」。例えば日本では「リング」の貞子のような女の子が登場します。
山小屋の若者たちが悲惨な目に遭うのを、観客は映像の中の“組織”の人間の視点からみることになるのだが、それだけだとドッキリカメラ番組と同じで「画面の中の人」の恐怖はこっち側とは関係のないものになってしまう。世界同時のホラー・ゲームを仕掛ける組織の描写があってのこと。これは誰のためのスペクタルか?、その組織の顧客が誰かという伏線がじわじわと効いてくる。

しかし、あらゆるものをごちゃ混ぜにしてしまい、映画を見ている間は観客を離すまいとする馬鹿力はたいしたものだ。生き残った若者の闘いがもう一つなのは、地下の構造とスケール感を描くことが困難なせいだからなのか。こんな作品でも、ヒーロー的な活躍を見せるはずの大学生のカートに扮した、クリス・ヘムズワースが、バイクでジャンプしたところそこには壁、つまりバリアが張られてありあっけなく最期を迎える。

だが、最後の最後まで引っ張るコミック・テイストなホラーの展開。意外に心地よい緊迫感はあるが、神経をすり減らすような恐怖は感じられない。学生たちや、組織の人間たちに襲い掛かるのは、心霊、ゾンビ、クリーチャーなど、まさに怪物のオンパレードに相応しいクライマックスで一気にヒートアップする。
とにかく最後に出てきた「エイリアン」のシガニーおばさんは何なの?・・・しかも、地下組織の人たちも自分たちが仕掛けた箱入りの怪物たちの餌食となり、怪物たちの上に君臨する巨大な存在を目撃した時は、もう笑うしかない。決して苦笑ではなく、あまりに痛快な快感を覚えた。オタッキー映画ながら、実に考えられた作風に知性さえ感じさせる。
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