パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 ★★★★★

2013年01月31日 | ら行の映画
世界的な文学賞ブッカー賞に輝いたヤン・マーテルのベストセラー小説「パイの物語」を、『ブロークバック・マウンテン』などのアン・リー監督が映画化。動物園を経営する家族と航行中に嵐に遭い、どう猛なトラと一緒に救命ボートで大海原を漂流することになった16歳の少年のサバイバルを描く。主演は、オーディションで選ばれた無名のインド人少年スラージ・シャルマ、共演にはフランスの名優ジェラール・ドパルデューが名を連ねる。227日間という長い漂流の中で、主人公がどのように危機的状況を乗り越えたのかに注目。

あらすじ:1976年、インドで動物園を経営するパイ(スラージ・シャルマ)の一家はカナダへ移住するため太平洋上を航行中に、嵐に襲われ船が難破してしまう。家族の中で唯一生き残ったパイが命からがら乗り込んだ小さな救命ボートには、シマウマ、ハイエナ、オランウータン、ベンガルトラが乗っていた。ほどなくシマウマたちが死んでいき、ボートにはパイとベンガルトラだけが残る。残り少ない非常食、肉親を失った絶望的な状況に加え、空腹のトラがパイの命を狙っていて……。(作品資料より)

<感想>タイトルの「パイ」とは主人公のインド人少年の愛称で、本作は大人になったパイが、原作者をモデルにしたと思しき作家に自分の数奇な半生を話して聞かせる、というスタイルで進んでいく。奇想天外な設定、スリルと興奮が切れ間なく押し寄せる展開、そう文字通り「パイ少年の人生についての物語」なのだ。
大嵐と荒波にさらされて、動物たちや船員を引きずり込むように海中へと沈んでいく貨物船。沈没事故で家族を失い、大海原に漂う1艇の救命ボートが。そこには、突然の海難事故に見舞われたった一人生き残った16歳のインド人少年パイが乗っていた。家族にも失った悲しみに暮れる間もなく、さらなる苦難が彼の前に立ちはだかる。なんと、そこには一頭の獰猛なベンガルトラがボートの中に潜んでいたのです。その他にもシマウマ、オランウータン、ハイエナが乗り込んでいた。

少年とトラが織りなす227日間の漂流生活という、およそ信じがたい物語を台湾出身の名称アン・リーが3D作品として映像化した。これが見事に面白いサバイバル・ファンタジーに仕上がっているのだ。
物語の大半は、大海原を漂流する救命ボートで展開し、登場人物はインド人の少年と動物たちしかいない。3Dの奥行を存分に生かしながら自由に天地を逆転していく大胆なカメラワークといい、逆に3Dの分かりやすい迫力に頼らないモダン・アートのごとき大胆な構図の面白さが発揮された映像美だと思う。

特に感嘆したのは、パイとトラが彷徨う群青色の夜の海は、天空の月や星を反射させ、写し鏡の向こうのもう一つの宇宙を想像させる。それと、ブルーの海に発行するクラゲとクジラが幻想的に舞う夜の海の水中バレエ、そしてまるで銃撃戦のごとき勢いで襲い掛かるトビウオの大群など、思わず息をのむイメージが次々に登場する。

そしてこのもう一つの宇宙とは、パイ少年の運命を司る「神」なんです。227日間の漂流生活は、少年と神との対話の時間でもあったのですね。ちなみに物語の冒頭でパイは、幼き日にヒンズー、カトリック、イスラムと3つの宗教の神に、同時に魅了されてしまった不思議な少年であることが描かれている。
まず驚かされるのは、小さなボートの上で少年とベンガルトラ、名前がリチャード・パーカーと名付けられた主役のトラは、CGクリーチャー。獰猛そうな動きはもちろんのこと、飢餓で骨と皮のように痩せ、ヨロヨロと弱っていく演技まで披露するのだから。確かに本物を使うわけにはいかないような、危なっかしい場面のオンパレード。それにしても、動きといい表情も毛並といい、とんでもなくリアルである。
少年とトラが互いに牽制し合いながら距離を縮めていく過程も、足場も少ない空間性と「ちょっとでも気を抜くと喰われる」というスリルを巧みにいかし、手に汗を握るアクションドラマとしても見事ですね。
後半では、大量のミーアキャットが生息する謎の浮島に辿り着くというファンタジックな展開にも度肝を抜かれ、その島がとんでもない島だったという物語も愉快。

その後ブラジルに流れ着くのだが、トラはジャングルに消え、中年になったパイが、カナダ人ライターに語り聞かせるという展開は、いつしか観客自身にこれは本当の話なのか、もう一つの話を語り始めるのは、悲しくて殺伐として、何より面白みに欠ける。どちらを真実と捉えればいいのか選択を迫られる。
しかし、もしパイにベンガルトラという相棒がいなかったら、実際に極限状況の中で彼を生かし、希望の糧となったのは、彼の豊かないイマジネーションだったのでは。CGで描かれた見事なトラは、その象徴であり、現実には存在しない、想像力が生み出した夢こそ、少年を生かし続け希望を与えたのではなかろうか。
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みなさん、さようなら ★★★★

2013年01月29日 | ま行の映画
中村義洋監督最新作の舞台となるのは1981年の日本。東京の郊外と思しき巨大団地街。

ここで育った悟は12歳の時に団地の中だけで生きていくと決心し、中学にいくのを止めて団地のケーキ屋に就職する。

まぁ、中学までは日本の法律の義務教育制度で中学には3年間就学しなければならないのですがね。それは置いといてと。
この巨大団地の中には、商店街、病院、図書館、など、団地で暮らしていれば生活が完結できてしまう時代。当時12歳の主人公、渡会悟にとって、それは十分な世界だったのだろう。

小学校卒業と同時に、とある理由で一生団地の中だけで生きていくことを決意した悟は、団地のヒーローになるべく、家では大山倍達の本を読んで体を鍛え、毎朝乾布摩擦に始まる規則正しい生活を送り、夜は団地に異常がないかパトロールして回る。

やがて隣に住む同級生の少女によって性に目覚め、同窓会で知り合った憧れの女性と結婚に向けて愛を育んでいく。つまりこれは団地という限定された空間で、展開する悟の青春映画であり、恋愛映画でもあり、人間ドラマでもあるのだ。

そんな生活を続けながら20年の歳月が過ぎる中で、ひとり変わらない悟をしり目に、商店街はシャッター通りとなり、団地に住む人はどんどん減り、恋人も友達も価値観や人生を変えていくわけ。時代の流れに飲み込まれていく中で、団地には、去る者、残る者、新たに加わる者、それぞれの選択が影を落として行く。
それはまるで社会の縮図のようで、何が正しくて何が間違っているかではなく、何を信じて生きているのか、という問いを投げかける。
12歳から30歳までの悟を特殊メイクなどに頼ることなく自然に演じきった、中村映画の常連、濱田岳の演技が見事に光る。
それに悟の人生をサポートし続ける母親役の大塚寧々をはじめ、彼の恋人となる倉科カナ、そして何でも話せる相談相手である隣の部屋に住む少女に扮した波瑠など、キャストはどれもハマリ役で最高。特に波瑠の存在感が、大人びていながら時にはエロティシズムを醸し出し、松島有里の時代を追った見事な変貌ぶりが印象的でした。
またこの映画は悟の成長を描く一方で、建物の老朽化が進み、彼の同級生たちが次々と団地から去っていく姿も描いている。高度成長期、東京郊外には団地を中心にした夢のニュータウンが生まれたが、新しかったものは古くなり、団地街は悟の一大の人生を全うさせることも難しくなるわけで、結局は彼自身も旅立ちをすることになる。これは昭和から平成へと移ろう日本の姿を写した、ドラマとしても秀悦であると思う。
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東京家族 ★★★

2013年01月28日 | た行の映画
小津安二郎の名作を蘇えらせた、山田洋次が紡ぐ現代の家族物語。
あらすじ:2012年5月、東京で暮らす3人の子供に会うため、瀬戸内海の小島から周吉と、とみこ夫婦が上京して来る。子供たちは歓迎するが、長男と長女は仕事や地域の活動に追われ、二男は説教くさい父親を敬遠し、結果的に両親をおろそかにしてしまう。しかし、2人が帰郷を決めたやさきに、母とみこが倒れる。

<感想>山田洋次監督が小津安二郎監督の「東京物語」(53)をモチーフに制作した、2012年の家族のドラマ。田舎から上京してきた親と、多忙な都会生活を送る子供たちとの隔たりや、結びつきを、日常的な風景を通して丁寧に映し出している。
ストーリーのみならず、固定カメラや正座目線のロー・ポジションなど、小津作品から受け継いだ撮影技法や、エッセンスが随所に散りばめられています。

クランクイン目前に東日本大震災が起きたため、監督は制作の延期を決断。そこで、二男の昌次と紀子が震災のボランティアで出会ったなど、脚本に震災関連のエピソードを追加したそうです。
また「東京物語」では戦死していた二男を存命にしたりと家族構成も変更した。疎ましく思いつつも、離れられない家族の絆という普遍的なテーマを、戦後復興後の50年代と震災後の問題を抱える現代。社会背景は変われど家族の姿は変わらないという、社会の相違を描ききっている。
本作のオリジナル部分は、俳優もゴージャスで楽しめるのだが、原作を踏襲した箇所がおとなしいせいでやたら長いのだ。郊外で開業医を営む幸一に、西村雅彦が、その妻に夏川結衣が家庭的で、2人の息子がいる。一応両親を歓迎するも、狭い自宅に快く泊めるのだが、せっかく来た両親を横浜見物に連れて行こうとするも、出掛けに急患の連絡が入り、親にはすまないと思いながらも、往診にでかけてゆく長男。落ち着かない長男の家。

長女は美容院を経営して、仕切りたがりの性格。夫を尻に敷き、その夫は理屈っぽい義父の周吉が苦手だ。自分のところへ両親が泊りに来ても、かまってやることが出来ないと、幸一とホテル代を折半して高級ホテルに宿泊させるのだ。
だが、両親は予定を変更して、長女の滋子の家へと。その夜、自宅で商店街の会合に出かける滋子は困り果て、寝床も世話をせずに親を追い出すのである。
利己的な長女役には中島朋子が、その夫に林家正蔵。
そして舞台美術の仕事をしている二男の昌次はお気楽で頼りなく、恋人の紀子は気が利く正直者。長女の滋子に頼まれて、両親を東京の名所案内をするのだが、仕事や将来について口うるさい父親が、相変わらず疎ましく、冷たい態度をとる二男。翌日、長女の家を追い出されて一人で泊まりに来た母親に、紀子を紹介する。彼女との結婚を考えていることを話て、母を喜ばせるのだが、・・・。
この監督は「家族で喧嘩」が持ち味なんだろう。長女と二男の形見分け問題のいさかいを、長男は「母さんが喜んでいるぞ」と、久しぶりに見る兄弟喧嘩のシーンでも、派手な喧嘩でもなくすぐに終わってしまう。もっとやらせておけばいいのに、なんてそういう洒落っけがまったくない建前映画である。
二男の妻夫木聡の恋人役、蒼井優が登場して、やっと空気の流れが良くなり、自然体の彼女のキャラが、清涼剤のような効果をもたらし、そんな娘を恋人にした妻夫木までが好青年に見えてくる。母親役の吉行和子も、蒼井優が現れた瞬間から、それまでの窮屈そうな演技から解放されて、普通の母親顔になるのもいい。

それにしても、やっぱり「東京物語」と無意識のうちに比較してしまい、特に前半はキャスティングからかして辛かった。それでも妻夫木と蒼井優のカップルに魅せられ清々しい思いがしてよかったと思う。
しかし、山田監督からみれば、我々は不真面目な人間なのだろうか。「東京物語」という古典的作品を見た昔の感動は、なんだったのだろう。再映画化の効用なのか、引き比べるのはおこがましいが、時代とともに自分の感性も衰えたのかもしれない。
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レッド・ステイト ★★★

2013年01月26日 | DVD作品ーま行、や行、ら行
田舎町に住む高校生3人を監禁した超保守派の狂信的キリスト教団体と教会を包囲した特殊部隊との壮絶な戦いを描く。世界三大ファンタスティック映画祭の最古参であるシッチェス映画祭2011年でグランプリを受賞したケヴィン・スミスが監督したホラー・サスペンス。狂信的なキリスト教信者たちに拉致された高校生が体験する恐怖を描く。出演は「エージェント・マロリー」のマイケル・アンガラノ、「ザ・ファイター」でアカデミー賞助演女優賞受賞のメリッサ・レオ、「アルゴ」のジョン・グッドマン、マイケル・パークスらベテラン実力派俳優が出演している点にも注目。。

あらすじ:アメリカ中部の田舎町に住むトラヴィス(マイケル・アンガラノ)、ジャロッドたち3人の高校生は、近所に住む女性がセックスの相手を募集しているというネット上の広告を見つけ、喜び勇んで彼女の所へと向かう。しかし、現れた女性サラ(メリッサ・レオ)に睡眠薬入りのビールを飲まされ気絶してしまう。そのまま彼らは、半裸で拘束された格好で目覚め、金属製の檻の中に入れられている。
そこは、「ファイブ・ポインツ・チャーチ」と呼ばれる超保守派のキリスト教団体の教会。クーパー率いる教団は、性の乱れを象徴する者として彼らを処刑しようとしていたのだ。「ああ、俺達殺されるんだな…」。だが、3人が起こした軽微な交通事故がきっかけで、保安官が教会を訪れ、教団の悪事が発覚。機動隊が派遣され、壮絶な銃撃戦が始まる。彼らが体験したのは、悪夢なのか、奇跡なのか。(作品資料より)
<感想>「クラークス」や「チェイシング・エイミー」などカルト的人気を誇る名コメディを連発してきた、オタクの鏡ケヴィン・スミス。彼が初めてホラー・ジャンルにトライした記念碑的作品は、メル・ギブソンの「パッション」に次ぐ宗教ホラーのようです。

レッド・ステイトとは共和党を支持する傾向が強い州を指すが、つまりキリスト教原理主義者の多い州のことでもある。同性愛や婚前交渉を憎み中絶もダメ、そんな若者たちを処刑の対象にする、武装化した過激なキリスト原理主義者たちが本作の主役だが、生贄となるティーンの目を通して、彼らの妄信的で異常な狂気を浮き彫りにしている。
カメラワークと壮絶な銃撃戦が切迫感を大いに煽ります。とにかくハンパないほどの銃撃戦で、教会の中に入っている信者のみならず、生贄となった若者や信者の子供たちもいるのに、警察の機動隊や捜査員が誰かれかまわず撃ち殺すのはあまりに酷いと思った。助けを求めて外へ出た若者が、警察官の手で撃ち殺されるのが気の毒に感じた。
人は呆気ないほどにバンバンと死んでいく。スミス映画のキモだった下ネタやオタク談義は完全に封印され、極端な信仰心が引き起こす悲劇と恐怖がストレートに、リアルに描かれているのだから、実際にカルト教団を率いるクーパー牧師を演じるのは、タランティーノ映画常連でもあるマイケル・パークスなのだが、確かに怖い!

信者たちはクーパー牧師の説教に、恍惚とした表情で耳を傾け、檻に入れられたゲイの男性が公開処刑されるのだが、全裸にグルグルと全身をサランラップ巻きされ窒息死させる。それを見ていた連れてこられた童貞男の3人は恐怖に怯える。
一人、また一人と拳銃で処刑され、銃声を聞きつけた保安官代理が返り討ちにあい、報告を受けた保安官が反撃に出ようとするが、ホモである証拠を牧師に握られているので、手出しができないのだ。弱り果てた保安官が、政府機関ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)のジョン・グッドマン捜査員に連絡、全面戦争の幕が切って落とされるのである。
迎え撃つ捜査官のリーダーにはジョン・グッドマンが、かなり老いてはいるがまだまだ活躍しそうな感じで、びゅんびゅん飛んでくる敵のライフル弾をよけて、彼だけ撃たれないのだ。本作はカンザス州のウェストボロ・パプディスト教会と、1993年にテキサスで起こった武装カルト教団ブランチ・ダビディアンとFBIの、壮絶な銃撃事件をモチーフにしていると思われるが、その事件で最初に突入したのもATFだったそうです。
あまりにもセンセショーナルな内容のため、スミス自らが全米配給権を獲得、自身のトークイベント付きプレミア上映ツアーを、全米15都市で開催するという、問題作でもある。
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プレイー獲物― ★★★

2013年01月25日 | DVD作品ーな行、は行
異常な連続殺人鬼に妻と娘を狙われた銀行強盗犯。そんな彼を追う女刑事。三つ巴の追跡劇の結末は?・・・。「ワン・ミス・コール」のエリック・ヴァレット監督のサスペンスで、「PARIS」のアルベール・デュポンテル、アリス・タグリオーニ、ステファン・デバク、セルジ・リペスらが出演。

あらすじ:銀行強盗犯として服役中のフランク。出所後は心を入れ替え、愛する妻と幼い娘と共に穏やかに暮らそうと誓う彼は、盗んだ大金の隠し場所を教えろという元仲間の脅しにも懸命に耐えていた。
そんな時、少女暴行容疑で逮捕されていた同房のモレルが冤罪で釈放されることに。穏やかな性格の彼を信頼したフランクは、妻子への秘密のメッセージを託す。
だがその後、ある男からモレルが危険な男だと聞いたフランクは、決死の覚悟の末に監獄から脱走する。大金の隠し場所に向かったフランクだが、すでに金はなく代わりに妻の死体が。脱獄だけでなく殺人罪まで着せられ凶悪指名手配犯となったフランクを追う女刑事クレール。
一方、モレルが少女ばかりを狙う連続殺人鬼だと知ったフランクは、彼に連れ去られた娘を救うため、その跡を追う。迫る捜査網の中、フランクはモレルに辿り着けるのか?・・・。(作品資料より)

<感想>2010年、フランス映画で昨年の6月30日に公開された作品。最近「96時間」や、「スリーデイズ」、「すべては彼女のために」などハリウッド・リメイクされるフレンチ・サスペンス。この映画もハリウッドでリメイクなるのか、見せ場の多いツイストの効いたフランスのサスペンス・アクションの佳作です。
超人的な身体能力の高さを誇る銀行強盗犯と、サイコな変態連続殺人鬼、しかも男女ペアの攻防を軸に、女刑事や殺人鬼に恨みを持つ濃厚なキャラクターたちが複雑に交錯する入り組んだストーリー展開。それでも伏線の張り方が中か中巧妙で、時にやや強引ながらも、テンポよくスピード感たっぷりにラストまで突っ走る。

サイコサスペンス的な要素を含むクライム・スリラーながらも、アクションが凄くダイナミックで、ビルからのジャンプ(これは無理だと思った、ケガをしてないのが不思議)や、走行中の電車へダイブ、カーアクションなど、CGに頼らないリアルな生身のアクションがエキサイティングで見ていて興奮マックス!

一見、温和に見える仮面の下に、サイコな変態連続殺人鬼の顔を持つモレル役を演じたステファーヌ・デバクの、狂気たっぷりな演技も中々ハードコアで、残虐なシーンではしっかり血が流れる。一緒にいる女も共犯で、フランクの5才の娘は聾唖者で口がきけないことをいいことに、手なずけて可愛がるこの女も変。フランクが娘が書いた墓の絵をモレルに託すが、頭のいいモレルは気が付いて墓の中から金を盗んで使い込んでしまう。

主人公を演じるアルベール・デュポンテルが、本国では人気なのかもしれないが、アクションシーンでの走り方がかっこ悪いし、このての映画では、走る姿はとても重要なのに主演としての存在感とカリスマが足りないのが残念。どうしてもこういう役には、華がないと脇役にしか見えなかった。
スタイルのいい美人の刑事の活躍が一服の清涼剤となり、このむさいおっさん主役を補ってくれているのがいい。
最後まで警察はフランクが連続殺人犯と睨んでいたが、女刑事だけはフランクは銀行強盗だけだと知り、娘を奪って逃げたモレルが怪しいと思い居場所を突き止める。そこは南仏の田舎、車を盗み南仏まで行き、モレルがクスリを常用しているのを知り、薬局で張り込み来るのを待つ。そして家まで付けて行き、娘を見つけ抱いて逃げるも、そこにも警察の手配が来ていた。フランクは、腹を撃たれ娘を手放し、モレルを誘い込み断崖から川へと一緒に落ちる。モレルは死に、フランクの遺体が見つからない。娘は孤児院へと引き取られ、娘宛にフランクからの手紙が届く。
脱獄犯、性犯罪者、女刑事と、三つ巴の争いの果てに、獲物になるのは誰なのか?・・・圧倒的にスリリングな展開、驚愕のラストに圧倒されます。
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テッド  ★★★.5

2013年01月24日 | アクション映画ータ行
『ザ・ファイター』のマーク・ウォールバーグ主演のドタバタ異色コメディー。命が宿ったテディベアのテッドと自立しきれていない中年男のコンビが巻き起こす騒動を、にぎやかなタッチで映し出していく。監督とテッドの声を務めるのは、テレビアニメ「ファミリー・ガイ(原題) / Family Guy」などの製作に名を連ねるセス・マクファーレン。固い絆で結ばれたテッドと主人公に嫉妬するヒロインを、『ブラック・スワン』のミラ・クニスが演じる。かわいいルックスとは裏腹に、言動すべてがオッサンなテッドには爆笑必至だ。(作品資料より)

<感想>もしテディベアに命が宿ったら、そしてそれが成長しておじさんになったら?・・・見た目は可愛いクマのぬいぐるみなのに、中身は中年のおじさん?・・・いい歳をしてクマのぬいぐるみから離れられない男性の友情を描くファンタジー・コメディ。だが、R15指定っていうことは、子供は見ちゃいけません。

主人公のジョン役は、肉体はアクション系のイメージが強いものの、「アザー・ガイズ俺たち踊るハイパー刑事」などでボンクラ演技を披露するマーク・ウォールバーグ。テッド役をモーション・キャプチャーで、セス・マクファーレン自身が演じるなど、彼と「ファミリー・ガイ」を声優として13年間仕事してきたミラ・クニスが、ロリー役を演じている。その他、サム・ジョーンズをはじめ、トム・スケリット、ノラ・ジョーンズやライアン・レイノルズ(ゲイ役で)が本人で登場するのも見逃せませんね。

ちなみに映画の舞台は、マクファーレンが大学時代に過ごし、マーク・ウォールバーグの故郷でもあるボストン。水族館やレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークといった名所ロケが、このあり得ないコメディにリアリティと説得力を与えている。
物語は、1985年、友達のいない8歳の少年が、クリスマスプレゼントにテディベアをプレゼントされ、名前をテッドと名付けた。ある晩、夜空の星にお祈りをした。「テッドが言葉をしゃべれたら楽しいのに」と。翌朝、ジョンは驚いた、なんとぬいぐるみが「だいちゅき」と抱きついてきたのだ。少年の祈りが奇跡を起こし、今やアメリカ中からテッドに取材が殺到して大騒動に。

そんなオープニングから始まるのですが、しかしその大騒動を描いた映画ではない。物語は一気に27年後の現代へとジャンプする。今ではテッドは町中で歩いたり話たりしていても誰も驚かなくなった。過去のスター状態で、それに口から飛び出すのは下ネタのオンパレード、可愛い顔して超お下劣。大麻をスパスパ吸うわ、ジョンが働いている間に、テッドはそこら辺の売春婦を4人も家に入れて乱痴気騒ぎ。床には脱糞が、とんでもないクソいや、クマやろうだ。
35歳になったジョンもレンタカー屋で働く単調な日々を送っていたが、彼には誇れものがあった。広告代理店勤務の美女ローリーと付き合っているのだ。ローリーもジョンにぞっこんだが、ジョンとテッドの「カミナリ兄弟」の間に入り込めない。ついに「私とテッドとどっちを取るの」とジョンに選択を求めてしまう。

その結果、テッドはジョンと別に部屋を借りて、スーパーで働く自立の道を強いられることになるものの、相変わらず二人は仲良しなのだった。そんなある夜ジョンの携帯が鳴った。(今パーティを開いているんだけど、「フラッシュ・ゴードン」のサム・ジョーンズが来ているんだ!)と、テッドの興奮した声に誘われたジョンは、飛んでいきテッドとサムとワイルドな時間を過ごしてしまう。それが原因でロリーに愛想をつかされたジョンは、テッドとも仲違いをしてしまう。
お前のせいで俺の人生はメチャクチャだ」果たして3人は元通りの関係に戻れるのだろうか。
テレビアニメ「ファミリー・ガイ」のクリエイターだったセス・マクファーレンのハリウッド進出作は、30代男とテディベアの友情を描いた、あり得ないコメディ映画。彼は当初アニメ作品として構想していたそうだったが、実写が可能になるまでCG技術の発展を待とうと考えたらしい。
その決断が正しかったのですね。薄汚れたクマのぬいぐるみが、現実社会で毒舌を吐いたり、マリファナを吸ったりセックスをしたり(これて変、何故かする)そんな姿がそれだけで最高に笑えるのだ。

動きは完全におっさんなのだが、もともとテディベアなので微妙に可愛らしいというバランス感も絶妙である。ファンならニヤリの映画ネタも随所に。「フラッシュ~」を筆頭に冒頭で2人が夢中になった「E.T.」や「スター・ウォーズエピソード1~」がパロディされたり、「インディ・ジョーンズ」、「007」、「エイリアン」シリーズもネタにされたり、ジョンとテッドの携帯電話の着メロも絶妙なり。
少年はテディベアと別れて大人の男になれるのか?・・・という新たな意味合いも与えている。それは「トイ・ストリー3」でもそうでしたね。物語が進むにつれて強まる別れの空気。あの言いようのないセンチメンタリズムを、お下劣極まりないR-15描写の中に常に漂わせているのだ。やがて訪れる大好きなモノとの別れをふつふつとさせる。「フラッシュ・ゴードン」に未だに人生を支配されているジョンのように、その感情は突き抜けた笑いと相まっているだけに破壊力抜群。まさに笑い泣かせるべくしてそうさせる凄い映画です。
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砂漠でサーモン・フィッシング  ★★★

2013年01月23日 | さ行の映画
英国でベストセラーになったポール・トーデーの小説「イエメンで鮭釣り」を、「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイが脚色し、「ショコラ」のラッセ・ハルストレムが監督する、前代未聞のプロジェクトに挑んだ男の成長物語。

主演は「人生はビギナーズ」のユアン・マクレガー。彼を支えるキャリアウーマン役にエミリー・ブラント。
物語は、主人公は、ユアン・マクレガー扮するアルフレッド・ジョーンズ博士という英国人水産学者である。彼は砂漠の国イエメンに、鮭を泳がせて釣りをするという実にメチャクチャなプロジェクトを頼まれ呆れ果てる。
依頼人はイエメンの大富豪のシャイフ(アマール・ワケド)だ。すでに英国外務省の支持も得ているという。

ジョーンズ博士は、窓口である投資コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)に「まったく実行不可能である」という返信メールを送る。
実行不可能宣言したジョーンズ博士なのだが、上司に命じられるままにハリエットと会う。水のない砂漠に魚あんど無理だという、子供でも解る事実を伝えるジョーンズ博士だが、科学者としてのプライドと、給料が倍になると言われ、家のローンのことなどを考えしぶしぶと引き受けることになる。

ジョーンズはハリエットと二人で大富豪シャイフと会うため、彼の暮らすスコットランドの城へと向かう。シャイフはお金で買えないものはないと、考える不遜な男と思っていたのだが、実は人間味あふれる一人の釣り人だった。
ジョーンズ自身も学問と釣りだけが趣味の、自称変わり者なのだ。二人は意気投合してしまう。
シャイフに会うことによって、この突拍子もない話に、ジョーンズは魅力とやる気を感じはじめていく。果たして砂漠でサーモン・フィッシングができるのだろうか?・・・。
タイトルだけ聞くと、なんじゃそりゃと思うかもしれない。「砂漠で鮭なんか釣れるわけないじゃん」と冷静に突っ込む人もいるでしょうね。でも実際に見てみると、それがなんと見事にそのとおりのお話なのである。

でもこの映画の監督が、「ギルバート・グレイプ」や「ショコラ」のラッセ・ハルストレムが映像化。脚本は「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイという黄金コンビです。この制作陣の名を聞けば、なんとなく作風の想像がつくというもの
実際もそのとおりの作風で、のほほんとしていて、オフビートに可笑しくて、観ているうちにだんだん心のモヤモヤがほぐれていくのだ。
主役のユアンの演技もさることながら、イエメンの大富豪シャイフにアマール・ワケドが、個性的な顔もてのイケメン男性に惚れ惚れする。それに広報担当官のクリスティン・スコット・トーマスというベテラン女優が。

砂漠とは、アラビア半島南西部にある「イエメン共和国」を指すのだが、文字通りイエメンの砂漠で鮭釣りをしようとするお話なのだ。とはいえこれはイエメンの釣り好きな大富豪の思いつきから出た話ではない。いや最初はそう思っていたジョーンズも、両社を取り持つ投資コンサルタントのハリエットも、大富豪の鮭放流の夢を聞いている内にすっかりその気になるというのだ。前代未聞の国家的プロジェクトに狭路y句することになるのだ。
仕事の充実ぶりとは裏腹に、ジョーンズは妻との関係が破綻し、さらにハリエットにも不幸が襲い掛かる。戦地に出兵している恋人が行方不明となり、家に引きこもってしまう。彼はなんとか説得して現場復帰させるのだが、連日連夜、イエメンで鮭が暮らせる環境作りに取り掛かるジョーンズ。そこで、何だかハリエットといいムードになっていき、すべてが順調にいくようだった。
そんな時に、またしてもイエメン国民からのバッシングや、鮭の養殖方法の問題などのトラブルが降りかかる。
「プロジェクトは成功するのだろうか」「ジョーンズ博士とハリエットの二人は結ばれることになるのか」と先の展開が気になるが、ラブストーリーを強調しているだけでなく、監督は脚本に盛り込まれた様々な要素をバランス良く描き、政治風刺の部分も疎かにしていない。
つまり、イギリスの頭脳とアラブ資本が手を組む生々しい現実をちらつかせながら、「鮭釣り」の話を愛や友情という極めて人間的な物語へと転化させていくのもいい。その意味では、これは一種の寓話には違いないが、細部はリアリズムで裏打ちされているからとんでもないホラ話にはならない。
何かが新しいという映画ではまったくないが、人生のもっとも美しい瞬間は、バカバカしい夢を信じたところから始まるのだということを忘れかけている。このありえない夢のような話を、人間の信頼の絆の物語に仕立て直すのだから。最近ちょっとお疲れ気味の方には、是非お勧めの映画ですよ。
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EVA<エヴァ> ★★★

2013年01月22日 | DVD作品ーあ行
あらすじ:2041年、雪深い田舎町、サンタ・アイリーン。著名な天才ロボット・クリエーターのアレックスは10年ぶりに故郷に戻ってきた。猫型ロボットと共に。母校の恩師ジュリアに、革新的な子供型アンドロイド開発を依頼されたからだ。彼は弟のディヴィッドと、彼の妻でアレックスの元恋人ラナと再会する。

10歳になる彼らの娘エヴァと初めて対面する。天真爛漫で自由奔放なエヴァに魅了されたアレックスは、彼女にアンドロイドのモデルになってくれないかと依頼する。エヴァの助けを得て開発は進んでいくが、彼女と過ごしている内にラナへの想いが再燃。そんな時エヴァの重大な秘密が明らかになり、大事件が起こる。
<感想>今年のスペインのアカデミー賞、ゴヤ賞で12部門にノミネートされ視覚効果賞など3部門を受賞した珠玉の美少女SFドラマ。キャラクターに魂を吹き込んだ少女の名演が光る、サスペンスフルでドラマチックな近未来SFファンタジーでもある。
スペインでSFという組み合わせが強力なフックになっているが、透明感あふれるスペインの銀世界を背景に、ロボットが不可欠な未来社会を、牧歌的に描くことでスペイン色を打消し、無国籍感と幻想的で寓話的な要素を見事に創りあげている。

ロボットを題材に芸術的かつ愉快な映像表現を盛り込みつつ、とにかくまるで「プロメテウス」にも出てきた、幻想的な光り輝く結晶体のような細胞組織の表現の仕方が、とても美しくファンタジーを醸し出している。その光を丸めてロボットに感情を吹き込む瞬間、ロボットが動きだし言葉を話す。
「ロボットの感情と魂」「ロボットの死」という命題に切り込みつつ、突然暴走するイカレポンチなロボットも出てくる。ロボットが突然暴走してアレックスを殺そうとする殺人的な行動は、ロボット兵器を造るという暗黙な未来が見え、サスペンスフルにロボット社会への警鐘も打ち鳴らすなど、重層的に深いテーマを掘り下げた本作も印象的です。

しかし、そのロボットの脳波をコントロールする、制御する装置がまだ開発されていない。だから、ここに出てくるエヴァというアンドロイドも、アレックスが創り放置してその後恋人のラナがエヴァを造り上げる。感情のコントロールがきかず、ラナとアレックスが仲良くしているのを見て、嫉妬の感情をむき出しにし、一応母親のラナを崖から突き落として殺してしまうのだ。
アレックスがそのことを知り、エヴァを改良するのか、それとも壊してしまうのだろうか?・・・まだまだロボットに感情を植え付ける工程は未熟だといえるのだろう。
それにしても、アレックスが連れてきた猫型ロボットは、日本のアニメの“ドラエモン”とは違うが中々良く出来ているのに驚いた。
ところが、執事のおじさんはまるっきり前に観た「アンドリュー」のアンドロイドを演じたロビン・ウィリアムと同じようで、仕草や動作、顔の表情、言葉などまるっきり真似をしたようでこれは減点ですね。
しかし、全編にハイクオリティなドラマを打ち出しており、同じスペインの「パンズ・ラビリンス」(06)や「永遠の子供たち」(07)とも肩を並べて、ドラマテッィクでエモーショナルな傑作に仕上がっている。
エヴァに魂を吹き込んだスペインのクロエ・モレッツなる、クラウディア・ヴェガの名演が圧巻で、感情の揺れ幅が広いユニークな少女を完璧に自分のものにして、眼や表情や言葉だけではなく体全体で、役をリアルに体得したその恐るべき才能に脱帽。これは必見ですぞ。
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希望の国   ★★★★

2013年01月21日 | か行の映画
「恋の罪」「ヒミズ」の園子温監督が、大地震で離れ離れになりながらも、それぞれの愛を貫く3組の男女の姿をオリジナル脚本で描く。酪農家の小野泰彦は、妻や息子夫婦と平和でつつましい日々を送っていた。一方、隣家の息子は家業を手伝わずに恋人と遊んでばかり。そんなある日、大地震が発生し一帯の住民は避難を強いられるが、泰彦らは長く住み着いた家を離れることができない。そんな中、息子の妻いずみが妊娠していることが発覚する。主人公・泰彦を夏八木勲が演じ、その妻役に大谷直子。息子夫婦を村上淳と神楽坂恵、隣家の息子とその恋人を清水優、梶原ひかりが演じる。(作品資料より)

<感想>今年で東北大震災から、早いもので2年目に入る年。この映画だけは観ておかなくては、と思いながらも東北では上映されないのかと諦めかけていた。それがやっと1月19日からミニシアターで上映され、本当に嬉しく思いました。一番目に観ての感想は、やっぱり原子力発電所のことですよね。

この映画では一昨年の震災の話ではなく、架空の長島県を舞台に、もう一度原発事故が起きたという設定に驚かされた。これは近い未来に再び大地震と津波で原発事故が起きたという設定のもと、放射能に怯える家族を描く劇映画です。
地震と津波の被災地が出てくるシーンは、3.11の被災地で撮影されているのだが、津波で根こそぎ持って行かれた家屋、そのまま廃墟と化して残されている家など、商店街も地震の被害がひどく、でも放射能汚染区域ということで、人間たちは避難せざるを得なかったのだ。このシーンでは、実に淡々とことが運んでいく様子が描かれ、2,3日で帰れると軽く考えてバスに乗る住民たち。

20キロメートル圏内の内と外を分ける立ち入り禁止の立札を境に、一方は誰もいないゴーストタウン。もう一方には、すぐそこにゲームセンターやスーパーがある。
黄色いテープと立札を立てて立ち入り禁止に、庭先に杭が打たれ、自宅の半分が避難指示区域になるという設定が映画的だが、実際に本当の話なのだ。父親の夏八木さんが、認知症の妻と強制避難区域ギリギリの自宅で留まることを決意し、息子と嫁に遠くに避難することを強く迫る。避難先で妻が妊娠、その喜びもつかのま、放射能被ばくの恐怖におののく妻。家の中でも街中でも防護服に身を包み、お腹の我が子を被ばくから守る姿は、私たちには滑稽には見えない。わが身に降りかかれば、切実にそう思うから。
放射能汚染区域からいくらか遠のいているとはいえ、そんな妻の大げさな姿にあざ笑う人々。人間は、のど元過ぎると、年月が経つと忘れるという傾向があるが、そうではないのだ。この原発の放射能被ばくは、長い間人体に影響があり、疎かにしてはならない。

そして物語のテーマである「父と子」。息子は本当は父親とは離れたくないと抱きつき、愛していることを何度も言う。その挙句、彼は妻と車で脱出するのだが、愛があるから大丈夫、と息子の妻が繰り返して言う。避難先の海岸で、息子は放射能探知機のガイガーが鳴るのを驚きの表情で見つめ、日本全国どこへ逃げても放射脳汚染から逃れられないと悟る。

残った父親は、牛舎の牛たちも処分しなければならず、苦渋の選択を強いられタオルを口に噛みしめ巻ながら、ライフル銃を構える。その後、庭で妻を抱きしめ、「愛している、死のうか、死のうと」、繰り返し言いながら、もうこの土地からは何処へもいけないことを悟った表情が見え、最後は二人で原発のないあの世へと旅立つのである。庭に植えてある夫婦のハナミズキの木が赤々と炎に燃え上がる映像は、人間の一生を表しているような錯覚にとらわれた。
「これからの日本人は一歩、一歩って歩くんだよ」という、地震の荒れ地に出てきた二人の子供がつぶやく言葉に感動しました。これはきっと津波で流された人の幽霊なのかも。

2年前とはいえ、まだまだ忘れる事の出来ない大惨事。いえ、忘れられては困るのだ。まだ、福島の原子力発電所の水素爆発した原子炉とか、その他諸々、避難区域の住民たちの今後のこと、認知症の智恵子が口癖のように言う言葉「帰ろうよ」
いつ自分の家へ帰ることが出来るのだろうか?・・・政府は今後の日本各地にある原子力発電所のことをどう考えているのか。日本の、日本人の、この国が抱えている鈍感さや無気力さなど、政治が何とかしなければ誰がする。まだまだ何も解決はしていないのだ。
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高地戦  ★★★★

2013年01月20日 | アクション映画ーカ行
いつまで続くのか、何のために戦うのか、・・・死体を踏んで攻め上がり、死体になって転がり落ちる。誰も知らなかった本当の“戦争の結末”とは。
1950年6月25日から3年1ケ月続いた戦闘の終わりは、停戦協定の成立ではなかった。「高地戦」では韓国でもほとんど記録が残っていない朝鮮戦争の真実の結末を初めて描いた映画だ。

物語は朝鮮戦争末期、1953年2月から幕を開ける。韓国軍防諜隊に所属するカン中尉(シン・ハギュン)は、ちっとも停戦交渉がまとまらない苛立ちから上官の上で暴言を吐き、激戦地エロック高地への出向を命じられる。彼に課せられた任務は、指揮官が不審な死を遂げた「ワニ中隊」内部のスパイ探し。
そこでカン中尉は思いがけない再会を果たす。かつて人民軍の捕虜となり戦場で行方不明となった親友スヒョク(コ・ス)が、ワニ中隊の実質的リーダーを務めていたのだ。スヒョクは今や昔の面影を失い、地獄のような戦場をタフに生き延びる筋金入りの戦争マシンと化していた。
カン中尉はワニ中隊の面々と行動を共にしながら、隊に隠された秘密と、後方では決して知りえない戦場の残酷な真実を知っていく。おびただしい量の同胞の血が流れ、ようやく待ちに待った停戦の報せが舞い込むのだが。

<感想>前から見たいと思っていた作品、やっとミニシアターで上映された。監督は「義兄弟」のチャン・フン。韓国と北朝鮮と、朝鮮半島が分断という複雑な状況がもたらす葛藤を、スリリングかつユーモラスに描いた「義兄弟」に続き、ついに真正面から朝鮮戦争というヘヴィーな題材に取り組んで見せた。
タイトルが「高地戦」というだけあって、急勾配を駆け上げる兵士たちの姿に寄り添い、何十メートルも直進に近い角度で突き進むカメラワークで捉えた戦闘シーンは圧巻というしかない。「プライベート・ライアン」症候群的演出には陥ることなく、独特の撮影表現の手腕はお見事ですね。
砲火にさらされまるはげ状態になった山を奪い合い、ひたすら不毛の陣取り合戦を繰り返し、凄まじい勢いで死体の山が築かれていく。韓国軍がエロック高地を奪還すると、その後にあまりにもたくさんの死体が転がっていて、その死体を埋めていくシーン、そこで堀ったところから昔の死体が出てくるという悲惨な映像。エロック高地は、戦いで死んでいった死体でできているといっても過言ではない。
現在の停戦ライン近くで繰り広げられた高地戦は、百戦錬磨の米軍でさえ手こずらせるほど過酷な戦いだったのだ。しかし、この映画で一番面白かったのは、エロック高地は奪い取ったり、奪われたりを繰り返している場所。そこでのワニ中隊と人民軍との物々交換のシーン。

果てしなく続く戦いの中で、両軍の兵士たちが密かに物々交換を行うというエピソードは、軍人同士が紡ぐほのなか友情、同じ民族が殺しあわねばならない不条理が、単純に論じてはならない割り切れなさが描かれていく。
それでもひとたび戦場に出れば、彼らは冷酷非常な殺人マシンに徹しなければならないのだ。そんな兵士たちの痛切な心情が、残酷な最終決戦のクライマックスへと導く。
その中でも、猛者揃いのワニ中隊を率いる隊長が、モルヒネ中毒の少年兵イリョン(イ・ジェフン)であるという謎、隊員たちがひたすら隠す忌々しい過去、そして全兵士から恐れられる人民軍の狙撃手“2秒”(着弾して2秒後に銃声が聞こえるほどの遠距離射撃スキルの持ち主)の意外な正体など。ミステリアスな要素も随所に散りばめていて飽きさせない。

なによりも魅力的なのが、いちいちキャラの立った人物描写と、味のある役者陣のアンサンブルでしょう。隊員たちから絶対の信頼を寄せられるスヒョクを演じるのは「超能力者」での熱演も記憶に新しいコ・ス。地獄を見てきた歴戦の勇者にしてはイケメンすぎるものの、爽やかな外見に内側の屈折した人物像は彼ならではの演技だと思う。
ワニ中隊とは、ワニが卵を50個産んで、その内卵が孵化して他の動物に食べられ、生き残るのは1匹か2匹だという。この戦争で生き残るには、味方でも自分に刃向う者は殺す。
個性豊かな兵士たちを演じたのは、チャン・フン作品には欠かせない巨漢俳優のコ・チャンソク。お調子者キャラを演じさせたら天下一品のリュ・スンス。「ポエトリー/アグネスの詩」の生意気な孫役も強烈だったイ・デヴィッドら、近年注目の名脇役俳優たち。中でも若き隊長イリョンをクールに演じた新人のイ・ジェフンが素晴らしい。
「神弓」で清軍のコワモテ特攻隊長を演じたリュ・スンリョンが、今回は顔面傷だらけのベテラン将校、人民軍(北朝鮮)のリーダーに。それに“2秒”と呼ばれたスナイパーにキム・オクビンらなど、人民軍側にも実力派が揃っている。

ラスト近くでカン中尉が死んだスヒョクを背負って基地に戻ってくる。そこで「停戦協定合意しました」という放送が流れる。これでやっと終わったとホットしたところで、そこからが、地獄の始まりだったのです。「停戦が実行されるのは12時間後、戦線はその時の、領土が境界線となる」と、今までの戦いで十分じゃないのと、これでもかというような、手足をバラバラになるようなすごい戦闘シーンがこの後繰り広げられるなんて思ってもいなかった。兵士の数も少ないし、全員殺し合わないと終わらないなんて誰が命令しているのか。同じ国の人間が領土争いして、人間の愚かさを見せつけさせる。最後なんて見るに堪えない映像で、目を背けたくなります。
韓国人にしか描ききれない分断の悲しみと葛藤を塗り込めた傑作であるとともに、スケール豊かな戦争アクション大作として見応えがあります。
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ドリームハウス  ★★★★

2013年01月18日 | た行の映画
「マイ・レフトフット」「父の祈りを」など人間ドラマの秀作で知られるジム・シェリダン監督が初めて挑んだサイコスリラー。主演は6代目ジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグで、007と違って、身も心もボロボロになりながら正体不明の敵と戦う姿が印象的です。

物語は、出版者に勤めるウィルは、家族と過ごす時間を大切にするために退職し、郊外の広い新居に引っ越して、妻と二人の娘が笑顔で迎えてくれる。そんな幸せを夢見て水入らずの生活を始めた。
ところが、新居はワケあり物件だったのだ。幼い娘たちは幽霊や家を覗く謎の男に怯える。ウィルがこの家の過去を調べると、5年前にこの家で、母娘3人が射殺され、容疑者の父親は精神病院へ入院中だと判明する。家族を守るためにウィルの暴走が始まる。

<感想>昨年に公開されたのに、地方ではやっと正月明けに上映。念願のマイホームで起きた悲劇、そしてさらに二転三転する展開に加え、本作がきっかけで結婚したクレイグと妻役のレイチェル・ワイズとの息の合った演技も見ものですよ。お向かいの住人、アン・パターソンにナオミ・ワッツが演じて、5年前の事件のことを知っているらしい色っぽい人妻役だ。ウィルには親切だが、何故か妻のリビーには挨拶をしようとはしない。それに離婚したのか、アンの元夫の怖い顔、それこそ挨拶もなしで、これが後で事件の鍵を握っていたとは、まさかまさかのどんでん返しに誰が想像しただろう。
家が舞台であり、事実上の主役となるホラー映画はゴシック文学の本道だが、家という観念が生まれると同時に、それがやはり夢、物語、そして映画のメタファーとしての家という構造は、ポーの作品とその度重なる映像化を見れば一目瞭然である。
主人公ピーター・ウォードもまたその線の名前だからで、ウォードは家や部屋を指し、ピーターはありふれた名前とはいえ、名前からしてこの映画のすべてを表しているのが最後に分かる。
ウォードとは字引で引くと、病棟、病室、監房とか保護、警戒、そして監禁とあって、この映画の世界そのもの。相当に、ウィットに富んだというか、遊び心のある映画でもある。

しかしだ、映画そのものは、ひたすら恐怖映画なのだし、主人公はウィル・エイテンテンという奇妙な名前を持つ小説家として登場する。
大都会のビル街を駆け回る編集者暮らしをやめて、田舎に引っ込んで小説を書こうとする。そうやって手に入れた郊外のこじゃれた家が問題の家である。
理想の家、理想の家族は文字通りのドリームハウスで、「夢のお家」として描かれる不動産屋のキャッチフレーズ。これにたちまち怪異の小道具がたたみかけられる。
窓に映る人影、襲い来る生き物じみた車。ここら辺は、かつての恐怖映画のパロディ集の感があると思う。秘密の地下室に、見知らぬ悪童たちが集まって浄化の儀式をやっている。そこへ主人公がやってきて怒って顔を出すと、少年たちは「奴が戻った」と叫びながら逃げていくが、ここら辺はちょいと古いがスティーヴン・キングの『IT』(イット)とかを思い出してしまう。

余りに小道具、小芝居がたたみかけられるので、なんか意気消沈してしまう。だが、そこから先が、ジム・シェリダンのメタフィクション開始なのだ。5年前に起きた母娘三人殺しの、呪われた家だったのですね。母娘殺害の犯人は、その一家の主で、現在は更生施設に収監中というのだ。それがどうやら主人公その人であるらしい。ここまで観るともう犯人は主人公のウィルだろうなんて、勝手に決めつけてしまう。
映像の中で、犯人を映した映像を見たウィルが、「これは僕だ」という瞬間から、現在と過去、現実と空想が激しく交錯する。ひょっとして恐怖映画史に残るかもと惑わされる。序盤では新居をめぐる「呪怨」を思わせるホラー的展開で始まり、中盤からはサイコサスペンスに。

さらにお隣のナオミ・ワッツが絡むクライマックスでは、もうひと捻りと。大どんでん返しで主人公が何故、精神病院送りになったかが判明する。
だが、かつてはそれも「夢のお家」でありながら、主人公の家と相似形の隣の家の夫婦との関係で、物語は一挙に合わせ鏡の錯覚に陥ってしまう。夢も家も、不動産やと精神分析医の間を行ったり来たりして、物語は大きく円を描くようにまわり、主人公のピーターが元の大都会の雑踏に戻る。

そしてピーターの書いた小説「ドリームハウス」が、ベストセラーとして注目を浴びているのだが、その中味を観客はすでに知っているという終わり方が実に素晴らしかった。
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ホビット/思いがけない冒険(2回目) ★★★★★

2013年01月17日 | アクション映画ーハ行
2回目、また鑑賞して来ました。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作と同じく、美しい中つ国を舞台に繰り広げられる。壮大なファンタジー映画である。時代設定には「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚に当たり、「ロード~」の冒頭で111歳の誕生日を祝福されていたビルボ・バギンズが、まだ青年だったころに起こったエピソードとなっている。ちなみにホビット族は人間よりもずっと長生きできて、普通120歳位まで生きるんだそうです。

物語は見た目は老人だけど、剣術や魔法の能力にたけ、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作でも大活躍した灰色の魔法使い、ガンダルフが、ホビット族のビルボのねぐらを訪ねるシーンで幕が開ける。何やら秘密めいたその訪問の目的は、いったい何なのかというと、・・・。
その翌日、魔法使いのガンダルフと共に、今度は13人のドワフたちがビルボの家を訪れる。ちなみにドワーフ族とは、人間よりも背が低く、頑強な体を持った種族。女性も含めて全員が髭をはやし、平均寿命は250歳。ほとんどのドワーフは、中つ国の山から貴金属を採掘し、鍛冶や石工を職業としている。
「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の中で、フロドやレゴラスたちの旅の仲間で、斧を使った戦闘が得意だった「ギムリ」がドワーフ族でした。実はこの13人のドワーフたち、ドラゴンに奪われた王国と財宝を取り戻すため、遠征旅行を企てていて、その14人目となるビルボを雇うためにやってきたのだ。
突然の誘いで驚くビルボは、最初は断るものの、冒険心にかられて引き受けてしまう。その晩は飲めや歌えやの大騒ぎ。大事な食器をワラれないか冷や冷やもんのビルボ。貯蔵して置いた酒や食量もカラッポになってしまう。

さて、ビルボとガンダルフとドワーフたちの一行は、夜になると野宿をしながら、はなれ山をめざして進んでいく。13人のドワーフたちはそれぞれ個性的なのだが、中でもドワーフ族の王子で、仲間のリーダー役を務めるトーリンに、「反撃のレスキューミッション」シリーズに出演していたリチャード・アーミティッジだ。
ビルボやドワーフたちが繰り広げる長い旅の道しるべとなるのは、魔法使いガンダルフが、トーリンの父親から預かったという「スローンの地図」。彼らがまず目指すのは、はなれ山の秘密の入り口を見つける事。しかし、中つ国の山間部の天気は変わりやすく、不吉な予感を抱かせる雨雲が上空を覆い尽くしている。おまけに道中には、険しい難所や、邪悪な魔物たちが待ち受けていた。森の中の魔法使いのユニークなこと、体だけでかいゴブリンや凶暴なワーグとの戦いも目が離せません。

この新たなる旅では、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の中の「裂け谷」の領主で、人間とエルフの両方の血を引くエルロンドと、ロスロリアンを収めるエルフ族の王妃ガラドリエルという、二人の人気キャラクターの再登場である。もち、そのままヒューゴ・ウィービングとケイト・ブランシェットに出会える。そしてあの素晴らしい「裂け谷」の景色も堪能できる。エルフ族は寿命を持たない「不死」の種族。だから美しい外面も失われることはないのだ。
一番の見どころは、今回ホビットたちが旅の途中で遭遇する数々の難所で、特に目を離せないのが邪悪なゴブリンたちが潜む霧降山脈の「地下トンネル」のシーンでしょう。ビルボはそこでゴラムと初めて出会い、のちのちの「ロード・オブ・ザ・リング」の物語へも繋がる、あの運命の「指輪」を手に入れることになる。
このゴラム役を最先端のモーション・キャプチャーによって演じるのは、前作と同じアンディ・サーキスですね。そう、これまでに「キング・コング」や「猿の惑星:創世記」のシーザー役など多くの名キャラクターに扮してきた彼なんです。世界最高峰のVFXを担当するのは、もちろんWETAデジタル。さらに改良を加え最新のCG技術によって、リアリティがどこまで進化を遂げているかも注目のポイントですね。
ここまできて、何故魔法使いのガンダルフはビルボを旅に誘ったのか?・・・実はビルボがタビの成功のカギを握る「特殊な能力」を持っていることを見抜いたガンダルフが、ドワーフたちに強く推薦したから。旅に出る前のビルボはおっちょこちょいな性格で、最初は失敗も多いが、旅が進んでいくにつれて成長を遂げ、しだいにドワーフたちの信頼を勝ち得ていくわけ。ビルボ役には、「銀河ヒッチハイク・ガイド」やBBCのドラマ「シャーロック」のワトソン役を演じたマーティン・フリーマンである。コミカルな演技と、今回のビルボ役にはまさに適任だと思った。
本作は3部作の序章なわけだけど、すでに残りの2作品の公開時期も決定している。2作目のタイトルは「ホビットスマウグの荒らし場」で、2013年12月13日の公開予定。ちなみにスマウグとは、ドワーフ族の祖国と財宝を奪った獰猛な黄金竜のこと。1作目以上に壮大なスケールの戦闘シーンが登場し、特にドラゴン好きのファンタジー・ファンにとっては、たまらない1作になりそうですね。3作目のタイトルは「ホビットゆきて帰りし物語」で、2014年7月18日公開予定。
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ロスト5 ★★

2013年01月16日 | DVD作品ーま行、や行、ら行
時空のひずみに迷い込んだ5人は、“謎の島"に辿り着いたー!
空前絶後の冒険が繰り広げられる、壮大なタイムトラベル・アドベンチャー!!!
数々の大ヒット・アドベンチャー映画の基となったジュール・ヴェルヌ原作!
『海底二万里』『八十日間世界一周』『十五少年漂流記』で知られるフランスの小説家ジュール・ヴェルヌ(1828~1905)。本作はH・G・ウェルズとともにSFの開祖として知られ、SFの父とも呼ばれる巨匠が遺した『神秘の島』を基に描いた注目作!

【STORY】
辿り着いた5人/時空を越えた島/襲いくる危機ー!!!物語の始まりは、アメリカ南北戦争時代のバージニア州リッチモンド。北軍の5人は気球を乗っ取って脱出を試みる。
しかし彼らが目を覚ますと、気球は知らない無人島に漂着していた。そこで人の気配を感じる。その島は、時空の狭間に迷い込んだ者たちの墓場であったのだ。
ジュエルとアビ―・フォグのふたりは、現代からバミューダトライアングルの海域から迷い込んだのだった。凶悪な海賊や、恐ろしい生物、そして今にも噴火しそうな火山に怯えているというのだ。
彼らは一刻もやはくこの島から脱出しなければならない。果たして間に合うことが出来るのかー!?
(Amazonより)
<感想>ジュール・ヴェルヌの「神秘の島」といえば、ハリーハウゼン先生の得意技で巨大カニやらチョコボールみたいなクリーチャーが、ワサワサと動く「SF巨大生物の島」、近年ではザ・ロックが地中深く潜って戦うアドベンチャー地底旅行もの「センター・オブ・アース2」など。様々な映画化作品のモチーフになっていたりする古典ですね。
本作はその偉大なる原作をダシに、著作権が切れて改変し放題だし、LOSTの要素を混ぜ混ぜしちゃえばウケるんじゃないか?・・・なんてみたいな安直な考えでこさえたような代物です。
南北戦争時代、気球に乗った北軍兵士が嵐に巻き込まれるとうところまでは原作通りらしいです。なぜか彼らは時空の狭間に位置する島に不時着するのですが、時空を超えているので、21世紀の今風の女子(姉妹)も飛行機で遭難してくるのです。
彼らは100年以上のジェネレーションギャップも感じることなく、自然に打ち解けたりするんですよ。こういう段取りを放棄するたるんだ脚本が実に凶悪です。
それで、この島にはあちこちにグロイ死体が転がっているような危険な島で、森の怪物どもが夜になると遭難者に襲い掛かり人間を食べるんですね。
でも怪物っていっても、ギリースーツを身にまとったおっさんが唸っているだけです。それが後半でネモ船長に出会うところから、だんだんと物語がそっち系かいという風に解釈できちゃうんですから。だってこの島をリンカーン島と名づけようなんて。
注:ネモ船長(ねもせんちょう、仏: Captaine Nemo)は、ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底 二万里』(1870年)の主要登場人物の一人で、同作に登場する潜水艦、ノーチラス号の 艦長である。ただし本名ではなく自称している偽名であり、ラテン語で「誰でもない」を意味する。
森の中に建つ豪邸、気球に乗っていた北軍兵士と南軍の兵士、それに綺麗な現代の姉妹。この島から出ようとするのですが、南軍の兵士がボロ船を見つけて一人で脱出すると、海には巨大なタコが出てその南軍兵士を飲み込んでしまう。海もダメ、姉妹が乗ってきた飛行機もダメ、仕方ないここへ来た気球を作って嵐の夜に時空の穴へと行きましょうと計画。火山は爆発寸前。
豪邸を建てたのは、ネモ船長の手下たち。有名な潜水艦ノーチラス号も建物の地下に眠っている。それが船員たちは、海の上では男らしい人間だが、陸に上がると人間失格となり狂って怪物となったわけ。だから、中身は人間で草みたいなモップみたいな被りもんで誤魔化して、サスペンスシーンなのに、森おっさんたちが並んでウガウガ言っているところなんか見せつけられると、なんかほっこりするんですね。でも、こいつら人食いですからね。

本作で1番リーダーシップを取って頑張っていたのは、北軍大尉のロックリン・マンローブさん、始終にこにこしてキン肉マンです。
いや、こんなふうにイジられては、ジュール・ヴェルヌさんも草葉の陰で泣いていることでしょうねぇ。著作権とはなんだったのか、気の毒ですよ。
アドベンチャーものとしては、少し物足りないし、なんで物語にネモ船長を出したのか説明不足ですよね。
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ふたりのパラダイス  ★★

2013年01月15日 | DVD作品ーな行、は行
ジェニファー・アニストンx「ブライズメイズ」製作スタッフが贈る傑作ラブ・コメディ !
全米2週連続トップ10入り ! 「ブライズメイズ」製作スタッフが贈る、都会派カップルが田舎のヒッピーコミューンで珍騒動に巻き込まれるパワフル・ラブ・コメディ !

あらすじ:マンハッタンに暮らすリンダ (アニストン)とジョージ(ラッド)の夫婦は毎日仕事で忙しく、都会の生活でストレスが溜まっていた。そんなある日、会社が業務停止に陥り、ジョージが仕事をクビになってしまう。
他に選択肢がないと判断した2人は、アトランタに暮らすジョージの兄の家に間借りをすることに。車で南部へ向かう途中、リンダとジョージはヒッピーコミュニティに遭遇する。そこでは個性的な人々が自然に囲まれて、のんびりと生活していた。財産、キャリア、装飾品などに執着しない彼らの思想に,2人は最初は戸惑いながらも少しずつ影響を受けていく…。
【キャスト】
リンダ:ジェニファー・アニストン『フレンズ』『そんな彼なら捨てちゃえば』
ジョージ:ポール・ラッド『幸せの始まりは』『40歳の童貞男』
セス:ジャスティン・セロー『ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣』『ブロークン・イングリッシュ』
エヴァ:マリン・アッカーマン『ロック・オブ・エイジズ』『ウォッチメン』
【スタッフ】
監督・脚本・製作:デヴィッド・ウェイン『ぼくたちの奉仕活動』『幸せになるための10のバイブル』
脚本・製作:ケン・マリーノ『ぼくたちの奉仕活動』『幸せになるための10のバイブル』
製作:ジャド・アパトー『ブライズメイズ 史上最悪のウェディング・ブラン』『憧れのウェディング・ベル』、ポール・ラッド

<感想>今やアメリカコメディ業界のVIPとなったポール・ラッドが、盟友のジャド・アパトー制作のもと、監督&脚本に『ぼくたちの奉仕活動』『幸せになるための10のバイブル』でも組んだ親友のデヴィッド・ウェインを、共演には『そんな彼なら捨てちゃえば』ジェニファー・アニストンを招いた本作。
物語はヒッピーが文明社会から離れて集団生活をおくる“ヒッピー・コミューン”をネタにしたコメディ映画。
初めは二人で、憧れのNYでワンルームマンションを購入し、それが夫のジョージが仕事を首になり、生活ができなくなりあえなくマンションを手放して、ジョージの兄のいるアトランタへと引っ越すことに。ところが兄の仕事の手伝いというのが、家畜小屋の糞を肥料に変えるという過酷な仕事で、サラリーマンだったジョージにはとても無理な仕事なのだ。それで二人で中古の車で南部へ向かう。
日本人からすると「コミューン」って?、・・・映画「イージー・ライダー」に出ていたけど、そもそも本当にそんなのあるのか、って感じ。それでも、ウィノナ・ライダーやジャック・ブラックはコミューン育ちだし、今も全米のあちこちで存続中だったりするのだから。

本作でも、いつも全裸で過ごしたり、フリーセックス、幻覚剤や自然農業の他にも、菜食主義、新生児の胎盤食いといった“コミューン”あるあるがことごとくギャグになっていて、ヒッピーカルチャーを知っていたら最高に笑えること間違いなしなのだが。
もしヒッピーに疎くても、この前の大震災直後に出身地でもないのに、沖縄に逃げた人々に、本能的に信用出来ないものを感じているんだったら社会学的資料として観た方がいいと思いますね。
ああいう奴らが、頭の中で何を考えてることって、まさにこの映画が笑っていることだから。だからなのか、この夫婦も初めは住む住居も無料で、仕事もしないでいいし、自分探しで忙しい妻のリンダなんてここに永住しようと思っているわけ。
それにこのコミューンのボス的存在の男(ジャスティン・セロー)と、妻のリンダが恋仲になりフリーセックスなんてちょっと考えられません。アニストンの上半身裸が見られます。ちなみにアニストンとセローは、本作が縁で結婚しているんですね。
宗教とかそういう集団ではないが、何しろ自由人過ぎてもちろん子供も産まれるし、ハエや蚊がぶんぶん飛び回っているのに、生き物は殺すなとか、教育どうなってんのって感じだ。
ベテランのアラン・アルダ(この土地の持ち主)やマリン・アッカーマン、ローレン・アンブローズら、コミューンの住人を演じた俳優陣ら、みな熱演しているけれど、中でもリーダー格のセスを演じているシャスティン・セローなんて、怪しさ満点な雰囲気で最高です。リンダといい仲になり、金が必要になってこの土地をレジャー施設にする不動産屋に権利書を盗んで売り渡すなんて、本当に悪党だ。
「フレンズ」でお馴染みの、ジェニファー・アニストンのラブコメなんだけど、「アラフォー女子のベイビー・プラン」「ウソツキは結婚のはじまり」など、彼女の出演作品は殆ど観ている。だが、本作は何となく彼女の演技が痛々しく見えて、一人で空回りしているように見えた。やっぱ40歳過ぎるとラブコメ女王から転落せざるを得ないのかも。セリフが下ネタで下品なのが難点でした。
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LOOPER/ルーパー ★★★

2013年01月14日 | アクション映画ーラ行
未来から転送されてくるターゲットを始末する殺し屋のジョーの前に、30年後の自分自身が送られてきたことから始まるスリリングなSFアクション。失敗の許されない殺し屋が未来の自分を前にしたときに躊躇ってしまった隙をついて、未来から来たジョーはある目的を遂げるため逃走する……。現在のジョーを「ダークナイト ライジング」「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、30年後の未来から来たジョーを「RED/レッド」「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスが演じる。他、「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラントが出演。監督・脚本は「ブリック」でもジョセフ・ゴードン=レヴィットと組んだライアン・ジョンソン。(作品資料より)

<感想>タイムトラベルSFという使い古されたジャンルを、ハードボイルドと掛け合わせた、これまたオリジナリティ溢れる作品である。未来の自分を殺さねば今の自分が殺される。さて主人公はどうする?・・・未来の彼はどう決着をつける?・・・っていう発想は面白いよね。ルーパーが指定された時間に、いつもの場所でライフルを構える。

すると頭に布袋を被されたターゲットが突然現れて、ドーンと撃ち殺す。ここまでは「ブレードランナー」の如き“人間狩り”のSFノワールを意識したチェイサーの爽快さ。尚且つ、自分に殺されるまでは死なないはずの若き主人公と、過去の自分がどうするか判ってて目的遂行を目指す老主人公との、知的な興味をくすぐる丁々発止の展開。これに自分を追う組織からの逃走戦を交え、まずはこの頭脳戦めまぐるしい追跡戦を、すこぶるドライな映像でハイテンポに進んでいくのだが。

そうなんです、この作品はタイムトラベルの“知の感性”で観客を引き込み、未来スリラーの映像やカッティングを楽しませる“体感“の映画だったのですね。タイムマシンの造形なんて見たことないくらい地味なのである。本当は時間軸のことなんて判ってないのかも。今の自分と未来の自分がカフェで会話するシーンがあるんですけど、「タイムトラベルのこと聞かせてくれ」とジョゼフが聞く、するとウィリスが「タイムトラベルの話は断る。複雑すぎる。どうでもいい」という台詞に腹が立つ。

もしも私だったら、未来の自分が現れたら殺さないと思う。この主人公も一瞬ためらった時に、30年後の自分に逃げられてしまうわけ。そうして徐々に、この自分VS自分の闘いをもたらした要因は何だったのか?、誰だったのか?・・・と犯人探しに移行していく。その時にはもう時間旅行など二の次になっているという。

それにラストが気にいらない。未来の自分が奥さんを殺したレインメーカーを殺しに行くのですが、それを見た今の自分(ジョー)が、老ウィリスがレインメーカーの母親を殺すと想像すると、レインメーカーは逃げて憎しみを秘めながら大人になる。そして、ルーパーの組織を壊滅させて、最後はウィリスの奥さんを殺すわけ。そう、想像した瞬間、若いジョーは自殺という自己犠牲なんですね。

「憎しみの連鎖を断ち切る」なんてカッコいいこと言って、レインメーカーを殺さないと、未来の自分も殺さないと、今の自分は生きていたいだろうに。気持ち悪いよこんな終わり方って。確かにウィリスは自分の愛する妻を殺された復讐で、過去に戻ってレインメーカーを殺すためにきたのだから。人違いで、関係ない母親と子供をバンバン殺すし。例え今は子供でも、いくらまともに育てるとサラが言っても、エスパーの子供なんだから将来は分からないよ。
それがこの映画の身上だと納得したならば、もう実のところ時間テーマに沿って描く事件の結末に感嘆するしかあるまい。「ターミネーター」のごとくアクション・スリラーと見せかけた映画を、もう一度ひっくり返して、やっぱり時間テーマのSFだったと思い知らせてくれた。
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