パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ゆずりは★★★

2018年06月29日 | アクション映画ーヤ行

人気ものまねエンタテイナー、コロッケが本名の滝川広志名義で映画初主演を果たしたヒューマン・ドラマ。新谷亜貴子の同名小説を原作に、葬儀社に勤めるベテラン社員と新入社員が、葬儀の現場で出会う様々な別れと悲しみの人間模様を優しく見つめていく。共演は柾木玲弥、勝部演之。監督は「eiko[エイコ]」の加門幾生。

あらすじ:葬儀社の営業部長・水島は、茶髪にピアスで面接にやって来た若者・高梨を、周囲の反対を押し切って採用する。水島の見込んだとおり、一見軽薄に見える高梨は、遺族の心にきちんと寄り添える優しい若者だった。そんな高梨との出会いをきっかけに、それまで悲しみの心を押し殺してきた水島にも少しずつ変化が生じていくのだったが…。

<感想>「おくりびと」とは異なり、送る人と送られる人、こちらは葬儀社の物語。それも、主人公がものまねのコロッケが、本名の滝川広志で初出演だという。コロッケが持ち味の表情も動きも止めて、シリアスな演技派に転向するなんてと、心配になったが、感情をあらわに出来ない抑圧が役柄と相まっていて好演。元々、皺ひとつから自在に動かせる芸達者な存在だけに、動きを制限されるとその中で、目一杯見せようとするだけに、演技が引き立ちます。

今までの「おくりびと」以降の葬儀屋の映画のパターンに収まった作りとは言え、これから世の中、葬式ばっかりになるわけだから、葬儀屋さんの仕事をきちんと描く企画は望ましいと思う。

そして、過剰に挿話を盛り込もうとせず、主人公自身の抱える問題と上手く対比させながら、型破りな新人社員との因縁も絡ませる作劇も、無駄がなく好感がもてましたね。新入社員の飼っていた「おかめインコ」の話が面白かった。

どうして新入社員の男の子が、見も知らぬ故人のためにスピーチを引き受けることになったのかが、興味深かったです。老夫婦の夫が亡くなり、葬儀をするのにもお金がない。予算が30万円でという最低ランクの棺桶やら、式場にその他で、確かにお金がかかるのだ。でも、お金を借りて高い葬式をあげるのはどうかと思いますね。その人に見合った葬式でいいと思います。だから、身内だけで葬式をすませるのが最近多いですよね。

新入社員の柾木玲弥くんの涙、涙のお別れのスピーチに誘い涙が出てしょうがなかった。お隣さんもすすり泣きをしてました。夫が盲目で、色が見えない、想像の色は白黒で、アルバムの写真も白黒が多いのだ。夫婦で散歩をしながら、妻が喜んでいる時はピンクの色が、二人で出会えない時には心がブルーになるという夫。バラの花が大好きな妻が、夫に教える花の色。そして、最後に柾木玲弥くんが喪主のお婆さんにそっと手渡すピンク色のバラの花、それを棺の中に入れてやる。そんな心温まるお話でした。

そして、女子高生のいじめによる自殺。その女の子の葬儀には、後ろの席に並んで座っていた女子高生たちが、ぺちゃくちゃと煩いし、担任の先生が両親に土下座をして謝るところで、その女子高生たちが、土下座に笑うのだ。いじめられて死んだって、加害者は、反省も、後悔もしやしないと、やりきれない気持ちになる。

葬儀の和尚の読経の間にも、女子高生がぺちゃくちゃと、その女子高生に対して、新入社員の柾木玲弥くんが、真面目に葬儀に参列しないのなら帰ってくれと怒鳴ってしまう。怒りに任せて葬儀をぶち壊してしまい、ざわざわと、参列者たちもあまりいい気持ではない。それを、営業部長・水島が叱り飛ばす。せっかく来てくれた参列者に対して失礼だろうというのだ。注意をして悪いのかどうかは、観客の見ている人たちが決めようではないか。

この新入社員との出会いは、まだ子供だったころに、父親が事故で亡くなり、その少年に水島が、「頑張れよ」と言ったことに対して、反撥してしまったことなど、そんな因縁があるのだ。

それに、主人公の水島も妻を自殺で亡くしている。それも葬儀社の社長の娘が妻だったことで、子供が出来なかった。それが男の自分に責任があったことで、子供がなくても二人で生きて行こうと言ったのに。妻は生きる希望を見失い死んでしまった。

ラストで、葬儀社の社長が突然死をする。まえから心臓が悪かったらしいのだが、みんなで社葬をするところ。そこで社長の遺書によって明かされる、水島の妻のことが、実は養女だったことが。社長も子供の出来ない男だったのだ。

タイトルの「ゆずりは」のことを社長がスピーチでお話をするところ。葬儀社の庭には、「ゆずりは」の樹が植えられている。樹齢40年、亡くなった娘を養女に向かえた日に植えたそうです。

注:ユズリハの名は、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することから。その様子を、親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて縁起物とされ、正月の飾りや庭木に使われる。

 

018年劇場鑑賞作品・・・123アクション・アドベンチャーランキング

 

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焼肉ドラゴン★★★・8

2018年06月27日 | アクション映画ーヤ行

「愛を乞うひと」「血と骨」などの映画脚本でも知られる人気劇作家・演出家の鄭義信が、数々の賞に輝いた自身のヒット舞台を、自ら初監督を務めて映画化した感動の人情コメディ。大阪万博前後の関西の下町を舞台に、小さな焼肉店を営む在日コリアン一家が、時代の波に翻弄されながらも逞しく生きていく姿を笑いと涙で綴る。出演は真木よう子、井上真央、桜庭ななみ、大泉洋らに加え、両親役には韓国の名優キム・サンホ、イ・ジョンウン。

あらすじ:大阪万博が目前に迫り活気溢れるとある地方都市の路地の一角。第二次世界大戦で左腕を失った龍吉は、故郷の済州島を追われて来日した英順と再婚し、ここで小さな焼肉店“焼肉ドラゴン”を開業し、4人の子どもたちを育てるために身を粉にして働いてきた。そんな中、中学生になった末っ子の時生は学校でイジメに遭い心を閉ざしてしまう。一方、次女の梨花は、夫・哲男が幼なじみでもある長女・静花への恋心を今も捨てきれずにいることに苛立ちを募らせていくのだったが…。

<感想>舞台演出家としての鄭義信には、“鄭三部作”と呼ばれる在日コリアンの歴史をたどった家族劇がある。「焼肉ドラゴン」「たとえば野に咲く花のように」「パーマ屋スミレ」と、上記の作品では、戦争、政治、経済の荒波に否応なく巻き込まれる市井の人々の逞しさを描いて来た。戯曲版「焼肉ドラゴン」は日本の新国立劇場の10周年、韓国の芸術の殿堂20周年の記念に共同制作され、その後も再再演されたもの。映画の舞台は、大阪万博開催中の関西のとある町。モデルは伊丹空港近隣の国有地にあった集落ですが、姫路城の外堀の石垣のある場所に、戦後、土地を持たない人たちが勝手にバラック小屋を建てた特殊な町。

映画では“焼肉店ドラゴン”を営む父親、龍吉のセリフの「この土地は醤油屋の佐藤さんから買ったんだ」が父親の口癖でした。少年時代の末っ子の時夫は、バラック小屋の屋根に上がり、夕焼けを見上げては、そこで暮らす大人たちを「どうしようもない人だ」と見ていた。しかし、大人になって事情が理解できるようになり、自分だってだらしない人間だと自覚することで、あの町の人たちの愛すべきところや、それぞれの人生や生活の形が分かるようになってきたのだ。

この焼肉ドラゴンでは、三姉妹が主人公であり、長女が足に障害持つ設定や、一人の男性をめぐる長女と次女の関係など、重なり合うエピソードが面白い。

長女・静花には真木よう子が、美人で勝気な性格で店を切り盛りしている。店に来ている客にプロポーズをされ、前から好きだった哲男と、その相手の男ハン・ドンギュと、やかんに入った酒(マッコリ)を「ご返杯!」と言いながら次々と飲み干すシーンでは、本物の酒を呑んでいるわけないと思いつつも、何倍もお代わりをして飲むのに、最後には吹き出してしまう哲男。

次女の梨花・井上真央が、熱いテンションで大声で喚き散らすシーンとか、哲男と結婚するという日に、二人で大げんかするシーンもある。

そんな哲男を演じた大泉洋は、短気で喧嘩っ早くて、非常に直情的。その裏には1970年という高度経済成長期に浮かれる日本で、在日韓国人として生きる厳しい現実と、そして次女の梨花と結婚しながらも、その姉・静花への想いを断ち切れないという複雑な内面も抱えている。

哲男は小さい頃からの幼馴染である長女の静花に想いを寄せているのだ。そのことで、ひと悶着があり、どうして、静花が足に障害を負ったのかが明かされ、二人は相思相愛の仲なのに、はっきりと言い出せない哲男の男としてのずるさがある。まぁ、最後には二人が一緒になるのだけれど。

三女の美花は、キャバレーに働いていて、店のバーテンダーと恋仲になるも、その男には、歌手の年増の女がいるのだ。この女同士の口喧嘩も、あの時代ならではのもの。それでも、妊娠をして結婚をする三女夫婦。

まず、「焼肉ドラゴン」が国有地の上に建つゆえ、常に立ち退きの問題が付き纏う。店にはいろんな国籍の人間が足を運び、同じように食べて笑い、酒を飲んでは喧嘩しながらも仲良く暮らしている。

近くに川が流れており、トタンの廃材で建てたバラック小屋が一列に並んでいる。自転車にリアカーが荷物を運ぶのに便利で、店主の龍吉・キム・サンホは戦争で故郷(朝鮮)と左腕を奪われながらも、常に明るく前向きに生きており、妻の英順・イ・ジョンウンが、下働きをしながら一家を支えている。

後半部分で、龍吉・キム・サンホが済州島四・三事件について語るシーンがあり、かなりの長セリフなれど、日本語をよくマスターして上手かったです。

悲しい話ですが、冒頭でナレーションをしていた末っ子の時生は、有名私立校に通っていたが、韓国人であるが故のいじめに耐えられずに自殺してしまう。過去も現在も、子供たちのイジメによる自殺があることは、大人たちがもっとしっかりと子供たちに目を向けて助けてあげないといけないのではないかと思います。

やがて万博も終わり、立ち退きを迫られていたこの家族にも、それぞれに旅立つ日がやってきました。哲男と静花は北朝鮮へ、梨花たちは韓国へ、美花は妊娠し日本に残ることになる。どこへ行くわけもなく、リアカーに荷物を乗せた父は、母をリヤカーに乗せこの地を旅立って映画が終わる。

多くの韓国人たちは在日韓国人のことを知らなくて、在日のイメージも大金持ちか貧乏人の二極しかない。同じ在日コリアンの家族の話でも、「血と骨」は強い人たちの話であり、ギラギラとしているが、こちらの「焼肉ドラゴン」は和やかで柔らかい。どんな人生であろうと受け止めて、どっこい生きている、そんなたおやかな人たちの物語。

龍吉が言う、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”というセリフに尽きる映画だと思いますね。どんなに辛い過去があっても、明日を信じてもがき戦い続ける家族のお話。観た方が“明日もがんばろう”って思える作品です。

018年劇場鑑賞作品・・・122アクション・アドベンチャーランキング

 

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友罪★★★

2018年06月07日 | アクション映画ーヤ行

薬丸岳の同名小説を生田斗真と瑛太の主演で映画化した群像ヒューマン・サスペンス。心に深い傷を抱えた元週刊誌記者が、元少年犯の青年との出会いをきっかけに、改めて自らの罪と向き合い葛藤していく姿を描く。共演に夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市。監督は「ヘヴンズ ストーリー」「64-ロクヨン-」の瀬々敬久。

あらすじ:ジャーナリストの夢に破れ、寮のある町工場に流れ着いた青年、益田。彼はそこで同じ日に入った鈴木という男と出会う。最初は他人との関わりを拒んでいた鈴木だったが、次第に2人は友情を育んでいく。一方で鈴木は、元恋人から逃げている元AV女優の美代子とひょんなことから知り合うようになる。そんな中、近くの町で児童殺害事件が起こったのをきっかけに、17年前に日本中を震撼させた凶悪事件について調べ直した益田は、当時14歳で、今はすでに出所している犯人・少年Aの写真を見つけ、そこに鈴木の面影を見て愕然とするのだったが…。

<感想>挫折を抱える益田純一が、新天地である勤務先の工場で、鈴木秀人という謎の青年に出会うところからストーリーは始まる。二人の男の後ろ姿の間に、「友罪」のタイトルが出た直後、道路を緩やかに移動する画面に、胸騒ぎめいた感覚を覚えたのだが、以後の展開にも絶えず予測しないことが起こりそうな気配が感じられて、目が離せなかった。それは二人の内の一人が、「あの少年A」だから、ということによるのではないと思うのだが。

主演の生田斗真と瑛太、その一瞬一瞬の表情すべてが素晴らしかった。「心を許した友は、あの少年だった」という本作の宣伝コピーですが、つまり、キャッチコピーが「心を許した友は、あの少年だった」という内容を端的に表しているが、その「少年A」以外の登場人物たちも含めて、テーマは「贖罪」。とにかくその周囲の人たちみんなの「贖罪」が描かれていくわけ。

端的に言うとそういう話なのであり、原作の薬丸岳の小説は未読ですが、「64―ロクヨン」や「8年越しの花嫁」の瀬々敬久が監督・脚本を手掛けての映画化であります。

どうでしょうかね、観ているとやりきれない気持ちになる映画にしか仕上がってないでしょうに。どうやったって、という方向で激しく観る者の期待を煽ってくれる作品でもあります。

 

様々な罪が出てくるのだが、罪自体は描かれないのだ。ただ、どちらもその事件の“その後”を描いていると思う。罪の後、そこに戻ることはできないのだと。戻ることで問題が解決するわけではない。事件は取り返しがつかない。じゃあ、自分たちはどう生きて行けばいいのか。それが「友罪」だと思います。

今回のモチーフにしているのは事件そのものが謎すぎるのだ。捉えきれない部分が多かったと思う。闇が深すぎる。ただ、衝撃は凄かった。14歳の少年が起こしたということも含めて、つまり闇の衝撃だった。

それぞれの物語が絡まり合って群像劇を構成しているのだ。息子が過去に犯した事件がきっかけで家族はバラバラになり、日々贖罪に向き合うというタクシー運転手の佐藤浩市。自分勝手に罪を償おうとする佐藤浩市に比べれば、「少年A」の理性には付いていけない。罪を犯した息子が幸せになることが、どうしても許せないと憤慨する父親の姿がもどかしくなる。

相手を殴ると事件になり身許がバレるのでやらないだけなのだが、それにしても自分を罰してガツンとやる場面が凄い。ただし、その後に傷跡がないのは変だと思った。鈴木=少年Aを演じた瑛太の芝居にもそういうところはあるようだ。捉えどころがなく、不可解な人物ではある。

その一方にいる生田斗真演じる益田も、彼自身が加害者的な位置にいたのだろうと。つまり関係性があいまいなわけです。加害者、被害者というダイレクトなものでもないし、友達になり得る、ということにも曖昧さがある。

益田は映画の構造として探偵にも成り切っていない。だから物語の構造が明確なものになってはいないのだ。益田には、かつてイジメで自殺した同級生がいる。助けることが出来なかったことで彼には加害者意識があるのだ。彼はジャーナリスト志望だったが、物語はマスメディアが事件関係者に及ぼす暴力的な影響も描いている。益田は複数の後ろめたさに支配されることになる。つまり、シンプルな罪悪感ではない。そうした混乱が、鈴木の不可解な闇を照らしたのではないかと思う。

しかし、相手がどんなに不可解な存在であっても、ある時、人は人に惹かれる。益田と鈴木もそうだったように。その結果、相手を知ろうとするのだ。クライマックスは、主人公二人の偽の視線交錯がある。この演出が瀬々監督なのだ。

 

益田の元恋人で週刊誌記者の杉本清美には山本美月。DV男に付き纏われて、鈴木に助けられ、だんだんと好意を抱いていく藤沢美代子に夏帆さんが。

鈴木の少年院時代に担当法務教官だった白石弥生には富田靖子。富田靖子は何故に、自身の裸を「少年A」に描かせたのか。とか微妙な謎が残るのもいい。一人の少年を救おうとして自分の家庭を壊してしまった医療少年院勤務の女性。

罪を背負う人々が、少しずつ重なり合いながら破門を広げていく劇の、構造は即ち円熟の域に達していて、罪を償うという行為への問いかけを実直に描いている。

瑛太の演技がちょっと苦手だったのに、感情を欠損させる不自由さを課すことで、中々いい役者となった感じがした。それに、佐藤浩市のさすがっぷりの演技に目を奪われがちだったが、生田斗真の細部にわたるリアルさも見落としてはならない。

 

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ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~★★★★

2018年02月10日 | アクション映画ーヤ行

ダイアン・アッカーマンのベストセラー・ノンフィクション『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』を「ゼロ・ダーク・サーティ」「クリムゾン・ピーク」のジェシカ・チャステイン主演で映画化した感動ドラマ。ナチス占領下のポーランドで300人ものユダヤ人の命を救った動物園の園長夫婦の信念と勇気を描く。共演はヨハン・ヘルデンベルグ、ダニエル・ブリュール。監督は「クジラの島の少女」「スタンドアップ」のニキ・カーロ。

あらすじ:1939年、ポーランドのワルシャワ。夫のヤンとともにヨーロッパ最大規模のワルシャワ動物園を運営するアントニーナ。すべての動物たちに深い愛情を注ぎ、献身的に世話をしていた。そんな中、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発、動物園の存続が危うくなる。そこへヒトラー直属の動物学者ヘックが現われ、“希少動物を救いたい”と申し出る。一方でユダヤ人は次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)に連行され、見かねたヤンは、動物園に彼らを匿おうと考える。自分たちの命さえも危険に晒す夫の提案をためらうことなく受け入れ、全力でサポートしていくアントニーナだったが…。

<感想>ユダヤ人300名を動物園に匿い、その命を救った勇気ある女性の感動の実話。ナチスを題材にした様々な作品が公開される中、また新たな感動作出来上がった。例えば「シンドラーのリスト」や「杉原千畝」のような勇気溢れる行動で、ホロコーストからユダヤ人を救った人物の物語は、これまでもたくさん映画化されてきたが、本作のように、女性の視点から描いた作品はなかったのではないか。

本作では、第二次大戦中のワルシャワ動物園でナチスに追われたユダヤ人を30人も救った、驚くべき事実を記したノンフィクションを、ジェシカ・チャステイン演じる主人公アントニーナの感動秘話が描かれている。

時には、狡猾なナチスの将校に相手に駆け引きを繰り広げ、聖なる場所を守り抜く凛々しいアントニーナ。知恵と勇気と愛を武器に闘った一人の女性の生き方が胸を打つエモーショナルな一作である。

監督を務めたのは、ニュージランド出身のニキ・カーロ。「クジラの島の少女」が数々の映画祭で高い評価を受け、ヒロインのパイケア・アピラナが演じたケイシャ・キャッスル=ヒューズはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。カーロ監督は「ワルシャワのゲットーや動物園についてのリサーチを重ねて、リアルな映画を目指した」と語っています。

これまでも男性社会の中で負けずに戦う女性像を演じてきたジェシカ・チャステインは、本作で初めてフェミニンな演技にも挑戦している。「女神の見えざる手」でも素晴らしかった彼女の演技が、まったく違う役柄を演じた今回も素晴らしかった。圧倒的な支配に怯えながらも、善き人間であり続けようとする女性を、初めて見る表情とセリフ回しの彼女が見事に体現しているのだ。

アントニーナは、戦う力強い人物というありがちなヒーロー像としては描かれてはいない。彼女は動物を愛し、子供たちを愛し、戦時中でも可能な限り女性らしい服を着ようする。冒頭でのパーティで、母親象の前で、小象の鼻がねじれて中に詰まっている物を取り出し、息を吹き返すシーンに感動した。

彼女の唯一の武器は愛なのだ。戦わないことで戦ってみせる。嫌悪や対立に満ちた世界に愛を返そうとする。愛で本当に命を救ったという事実が、嫌悪に満ちているかのように思える。常軌を逸した事態が文字どうり女性の視点で描かれており、いくらでも扇動的にできる題材を丁寧に、かつ上品に扱っているのがとても良かった。

夫の変化に説得力があるのもさることながら、教養と礼節ある紳士だったドイツ人動物学者の、演じるダニエル・ブリュールが権力を手にした途端に変貌する恐ろしさ。珍奇な動物をベルリンに運ぼうとし、すでに絶滅した動物の復活を図り、その牛の交配をするためにアントニーナの手を借りる。そして、夫婦の中へと割り込んで来る。

自分たちの危険を顧みずにユダヤ人を救う主人公夫妻の行動には、ストレートに感動します。ただし、ゲットーからユダヤ人を連れ出すシーンの数々は、どれも緊迫感が足らず、夫婦愛と親子愛に迫った部分や、ワルシャワ蜂起の描写もこれといって密度が高いわけでもなく、なんだか散漫な仕上がりになっている。そんな中でも驚いたのが、ゲットーの門前で記念撮影するカップルの姿。こうした下劣な連中ガ、ナチスのような存在をのさばらせた訳でもあり、そのあたりを無視しないで描いたのも良かった。

緊迫した時代を舞台にしながらも、戦闘シーンは最小限にしか描かず、愛や希望や思いやりで物語を貫こうとしているところがまず新鮮であります。今のこの世界に投げかけるメッセージは、あまりにも強烈であります。

 2018年劇場鑑賞作品・・・25アクション・アドベンチャーランキング

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夜明けの祈り★★★★

2017年10月27日 | アクション映画ーヤ行

 42回セザール賞で、作品賞、監督賞などにノミネートされた、実話をベースにしたドラマ。第2次世界大戦終結後のポーランドで、ソ連兵からの陵辱が原因で妊娠してしまったシスターたちの苦悩と向き合ったフランス人女性医師の姿を追う。監督は『ボヴァリー夫人とパン屋』などのアンヌ・フォンテーヌ。『待つ女たち』などのルー・ドゥ・ラージュ、『ハミングバード』などのアガタ・ブゼク、『イーダ』などのアガタ・クレシャらが出演する。

あらすじ:第2次世界大戦の傷痕残る、194512月のポーランド。赤十字の医療活動で慌ただしい毎日を送っていたフランス人女性医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)は、一人のシスターから助けを求められてある修道院に向かう。そこで彼女が目にしたのは、ソ連兵によって妊娠させられた7人のシスターだった。信仰と現実の間で板挟みになっている彼女たちと、宿している命を救おうと決意するマチルド。何とか時間を作ってシスターたちと向き合うマチルドだったが……。

<感想>実在の女性医師をモデルにした重厚なドラマであり、6月に開催されたフランス映画祭で観客賞を受賞した話題作である。1945年、終戦直後のポーランドの修道院。ソ連に占領されたポーランドの村で、ソ連兵に襲われ身ごもった修道女たちの命を救う赤十字の医師の姿を、じっくりと描き、その高潔な姿を浮き彫りにしていく。

彼女たちを救おうと奮闘する女医。その障害物が修道院長であり、カトリックの戒律であるというところが興味深いですよね。戦時中より戦後、暴力により信仰の方がより過酷だったという皮肉。そこにキリスト教批判、というよりも、神に仕える者、その中にある偏狭さへの抗議が嗅ぎ取れる。

いくつかある修道院映画の如く、この作品も静謐なたたずまい。そこに人間の血の温もりをさらりと通わした演出ですが、少し型にハマリ過ぎな物足りなさを感じます。

ですが、被占領国の女性であり、なおかつ神に仕える修道女という立場から、すべてを耐え忍び闇に葬らざるをえなかった彼女たちの姿を通して、この映画はヒューマニティについて、見る者に大きな問いかけを投げかけるのであります。

何故なら、残念ながらここに描かれている問題は、普遍的なものであり、今も世界のどこかで起こり得る悲劇と言えるのだから。この時代では、宗教的な戒律もあり中絶は出来なかったのでしょう。それにしても、修道院長が生まれた子供を自分の手で殺して、闇に葬るということが衝撃でしたね。

女医のヒロインに扮したルー・ドゥ・ラージュは、フランスではただいま上昇中の若手の女優さん。どこか純真さと気品さを感じさせる横顔が若きころのイングリッド・バーグマンを彷彿とさせる面影である。

そんな彼女の瑞々しい魅力や、修道女たちの凛とした姿、寒々しいポーランドの風景を見事にとらえているのが、フランス映画界を代表する撮影監督カロリーヌ・シャンブティエのカメラ。翻案・台詞パスカル・ポニゼール。

J・L・ゴダールやレオス・カラックス作品で知られる彼女が紡ぐ映像は、戦後の混乱期ポーランドの、雪に覆われた修道院にカメラを向ける。修道女たちを襲った悲劇は、筆舌に尽くしがたいほどに、本作に一層の清廉さを付け加えていると思います。

2017年劇場鑑賞作品・・・249アクション・アドベンチャーランキング

 

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ユリゴコロ ★★★

2017年10月07日 | アクション映画ーヤ行

沼田まほかるのベストセラー・ミステリーを吉高由里子主演で映画化。生まれながらに“人間の死”が拠りどころのヒロインのおぞましくも切ない半生と、その殺人履歴が綴られたノートを見つけた青年の運命が狂わされていくさまを描く。共演は松坂桃李、松山ケンイチ、木村多江。監督は「君に届け」「心が叫びたがってるんだ。」の熊澤尚人。
あらすじ:亮介はカフェを営み平穏な日々を送っていたが突然、男手一つで育ててくれた父が余命わずかと診断され、婚約者の千絵がこつ然と姿を消してしまう。そんな時、実家の押し入れで『ユリゴコロ』と書かれた一冊のノートを見つける。そこには、人を殺すことに心の拠りどころを感じてしまう美紗子と名乗る女が、自らの殺人の記録と、洋介との運命的な出会いによって救われたことなどの衝撃的な告白が綴られていた。美紗子とは誰なのか、そもそもこれは事実かそれとも父の創作か、激しく動揺する亮介だったが…。

<感想>人殺しの私を、愛してくれる人がいた。一冊のノートに記された殺人者の記憶。人を殺し、死の瞬間に触れることが“生”の拠り所となる。絶望的な喪失をかてに生きる女性の物語。その女性、美沙子を演じていたのが、あの喋り方が突拍子な声の吉高由里子が扮して、殺人鬼となって自分の心を満たしていたとは。彼女には不似合いな役柄であり、よくぞ演じてくれたと思っていたが、そんなにホラーっぽいところはなく、みつ子(佐津川愛美)のリストカットの“快感”が感染したような少女時代の美紗子。彼女の臭気迫る殺人シーン、血みどろなシーンも吉高由里子が平然とやってのけるので、あまり変人、狂人とは見えなかったのだが、要するに淡々とした平気な顔つきで殺人を犯すので。

それよりも、殺人鬼の母親から生まれたとされる亮介を、松坂桃李が扮していて、父親が隠していた母親のだろうノートを見て、衝撃を受けるところ。「ユリゴコロ」と題されたノートには、人を殺めることでしか自分の生きる世界と繋がれない女、美沙子の衝撃な告白が綴られていて、つい引き込まれて読んでしまう。まさか、自分の産みの母親のノートだとは知らないで。

美沙子とは、幼いころに偶然目撃した“人間の死”が、生きることの「ユリゴコロ」=拠り所となってしまった美沙子。彼女は自傷行為を繰り返す親友のみつ子を死に向かわせたり、自分に近寄る男性に手をかけることで、自身の空虚な心を「ユリゴコロ」で満たしてきたのだ。

父親、若き頃の松山ケンイチ扮する洋介、過去のある出来事として(女の子の麦わら帽子が側溝に落ちて、それを拾おうとして側溝の鉄板を上げる洋介、すると帽子を取ろうとする兄の男の子の首のところへ、美沙子が手を添えて助けるふりをして鉄板を落としてしまい少年は死んでしまう)と言ういきさつがあり、洋介は衝撃を受けてしまう。その罪の意識を背負い続ける洋介。

美沙子はその後、売春婦となり道端で客を引く。そこへ洋介が現れ、そのどこまでも深い優しさに触れた彼女は、洋介と過ごす日々を通じて“愛”という別な感情で心を満たしていく。
そして、洋介と美沙子は結婚をして、夫の子供ではない男の子供を妊娠して、亮介が生まれ、暫くは子育てで穏やかな幸せな人生を送っていた2人に、さらなる悲劇が忍びよっていた。その美佐子自身の半生を綴ったノートを残し、現在は行方不明なのだが。

そこからが、実に豹変した美沙子、美容整形で似ても似つかない木村多江に変身して、名前も細谷と変えて、息子の亮介の前に現れ、婚約者の千絵を探すべく、千絵がヤクザの愛人であったこと、千絵はその男に拉致監禁されている。その部屋へ千絵を助けにいく母親の木村多江。昔の人殺しに戻り、まさかのヤクザ数人を殺してしまうという、ここはちょっと眉唾もんでしたね。
それに、亮介の松坂桃李さんの取ってつけたような車の運転も、狂ってる感じを出しているように思えて違和感がありました。

父親も、声だけが松山ケンイチのような、ミステリーを入り口として、狂おしい愛と生が過去と現在を股にかけて入り乱れ、物語は驚愕の真実にたどり着くという。生きることの意味、人を愛することとは何なのか?・・・など、3人の人生が突きつける命題に激しくこころを揺さぶられます。
ですが、やっぱり最後には、美沙子も父洋介の愛の深さに、過去の殺人鬼としての自分を見失っていたのを心入れ替えて、洋介との長い旅路へと。最後は人間の愛でしたね。

2017年劇場鑑賞作品・・・229アクション・アドベンチャーランキング

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夜明け告げるルーのうた ★★★

2017年06月08日 | アクション映画ーヤ行
「MIND GAME マインド・ゲーム」「ピンポン THE ANIMATION」「夜は短し歩けよ乙女」の鬼才・湯浅政明監督が、自身初の完全オリジナルで描く長編青春ファンタジー・アニメーション。田舎の港町を舞台に、塞ぎがちな少年が歌が大好きな人魚の少女との出会いを通して少しずつ心を解き放ち、やがて町に訪れた大きな危機に立ち向かっていく姿を、丁寧な日常描写と躍動感あふれるアクションで描き出していく。声の出演は人魚ルーに谷花音、少年カイに下田翔大。ほかに篠原信一、柄本明、斉藤壮馬、寿美菜子。
あらすじ:寂れた漁港の町、日無町。両親の離婚で東京からここに移り住み、いまは父と祖父との3人暮らしをしている中学生のカイ。鬱屈した毎日を送る彼にとって唯一の楽しみが、自作の曲を匿名でネットにアップすること。そんなある日、正体を知ったクラスメイトの国夫と遊歩に彼らのバンド“セイレーン”に誘われる。仕方なく練習場所の人魚島へ向かったカイは、そこで3人の音楽に合わせて楽しそうに踊る不思議な人魚の少女ルーと遭遇する。やがてそんなルーとの交流が、カイの凝り固まった心に変化をもたらしていくのだったが…。

<感想>本作は「夜は短し歩けよ乙女」に続くその2作目である。酔いと宵の京都ファンタジー・アニメを描いた前作にたいして、本作の舞台は、寂れた漁港の町、日無町。本来なら出会うはずの無い人間の少年と人魚の出会いと別れの物語を、巨大な岩で影ができる日無町という舞台でそれができる。そしてそれはカイの心の中も表している。斎藤和義の名曲である「歌うたいのバラッド」をはじめとする楽曲に乗せて、色彩豊かにつづっているのもいい。

心を閉ざした少年カイが、町の危機に巻き込まれながらも、歌が大好きな人魚の少女ルーと、絆を育む様子を躍動感たっぷりに描き出しているのがいいですよね。本作のテーマは、「心から好きなものを、口に出して“好き”と言えているか?」という疑問がこの物語の出発点だったそうですが、「好き」を隠さないこと。

目にするすべてに「好き」と言うのをためらうカイと人魚のルーの二人を軸に、好きなものにもすぐに「嫌い」と言ってしまうカイの友人、遊歩。昔の思い人への想いを断ち切れない、老婆などが抱くそれぞれの「好き」が、町の危機を通して解放されてゆく。
だが、やがて災いをもたらすとされている人魚の存在が、町の人々に知られてしまう。町の商工会議所である遊歩の父親は、その人魚を町おこしのために使って盛大に祭りをやろうと提案する。高校生の青春ものとは違っていて、何処かダークでバイオレントだった将来へのオリジナル作品と比べ、格段に明るく優しい本作であります。

しかし、その人魚がもたらす災いとは、それは宮崎駿さんの「崖の上のポニョ」とそっくりの作りで、海の母親がここでは父親のクジラ?だと思うのだが、娘を心配して港町へ出て来てびっくりさせるし、父親も大きな傘をさして太陽に当たらないように日陰を探して歩く姿は、まるで人間のように洋服を着ているのだ。

それに、人魚は太陽に弱くて死んでしまうというのだ。だから人魚島は、手前にある御蔭岩で日陰になっていて太陽にさえぎられている。人魚のルーも日傘をさして、いつも日陰を探して歩くというか踊っているのだ。

本作の見どころでは、港町に大嵐のような津波のような大波が押し寄せてきて、大洪水になり、人々は船に逃げたり高台へと逃げたりして大騒ぎになる。この辺なんて「崖の上のポニョ」とそっくりでありますからね。

最後が、波は引いていくのですが、クライマックスで日無町が日陰になっていた大きい御蔭岩はなくなるが、それは素直になったカイの心境でもあるように見えた。カイはルーと出会って素直になり、切なさよりも心地よさが感じられる。人魚島の手前の島が大波で削られて無くなり、だから、ルーと会えなくても寂しくは無い。人魚島は太陽に照らされて人魚が住めなくなるというお話。
それでも、監督特有の奇妙な空気感や、何よりよく動く映像と精巧な脚本で生み出されるクライマックスなどは、しっかり健在であります。これからも素晴らしい妄想や空想の世界を魅せてほしいものですよね。
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夜に生きる★★★・8

2017年05月23日 | アクション映画ーヤ行
警察一家の父親とその息子たちを巡る激動の一大サーガを綴った人気ミステリー作家デニス・ルヘインの傑作三部作の一編を「ザ・タウン」「アルゴ」のベン・アフレック監督・主演で映画化した犯罪ドラマ。禁酒法時代を舞台に、警察一家に生まれながら裏社会でのし上がっていく一人の若者の愛と野望の行方を描く。共演はエル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、クリス・メッシーナ、ゾーイ・サルダナ、シエナ・ミラー、クリス・クーパー。
あらすじ:禁酒法時代のボストン。警察幹部トーマス・コフリンの三男として生まれたジョーは、厳格な父に反発して家を飛び出し、不良仲間とチンピラ稼業に明け暮れていた。そんなある日、賭博場を襲撃したジョーは、そこでアイルランド系ギャングのボス、ホワイトの愛人エマと出会い恋に落ちる。しかしホワイトの罠にはまって刑務所送りとなってしまう。危険な獄中生活で裏社会での生きる術を身につけていったジョーは、父トーマスの尽力でわずか3年で出所すると、ホワイトと敵対するイタリアン・マフィアの傘下に入り、ホワイトが牛耳るフロリダ州タンパへと乗り込んでいくのだったが…。

<感想>原作はデニス・ルヘインが書き続けているボストンを舞台にした連作の一つで、一本筋の通ったギャングの一代記であり、制作総指揮にも名前を連ねているデニス・ルヘイン。その渋めの原作を、監督・脚本家としてのベン・アフレック監督が職人技ぶりが遺憾なく発揮され、冴えわたる映画でした。

ギャング稼業の非情な世界を彩るアクション、1920年代~30年代のアメリカのクラシカルな色味や、街並みの撮り方には品があり、テンポの良さと演出のメリハリで見せ場の多い作品に仕上げている。

往年のアメリカ映画で、ハンフリー・ボガードほかが演じてきたギャング像を、ベン・アフレックは敬意を込めて演じているようだ。観ていて痺れるほどに素晴らしかった。ノワール映画のヒーローに宛てたラブレターのようで嬉しくなってしまう。

特筆すべきは役者のアップ多用だろう。顔面の力で活劇を見せられるのは、やはり俳優出身の監督ならではの実力なのか。そして、聖女とも魔女ともつかないエル・ファニングが印象的だが、夢を持ってハリウッドへ女優志望で行ったのだが、ヤク中になり体も心もボロボロになり、帰ってきたけれど、カルト宗教に入ってしまうという。ファニングの賭博反対運動により、ジョーは痛手を受けて折角作った賭博をして大儲けしようとしたホテルが台無しになってしまうも、その後に彼女は自殺をしてしまう。これは彼女のルックスを逆手に取ったキャスティングが上手くいったようだ。エル・ファニング、彼女の特異質な芝居も必見であります。

それに、シェナ・ミラーの娼婦の役には、フマムファタールぶりも新鮮で良かった。

ですが、この映画を真に支えているのは、エル・ファニングの父親を演じているクリス・クーパーをはじめとする、ベテラン俳優であるおじ様たちの、脇役陣のお蔭だろう。
監督・脚本・主演作の連続で、ポスト・イーストウッド監督の地位を確実に手に収めたような、まさに今が旬といった作品でもある。

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夜は短し歩けよ乙女★★★・5

2017年04月19日 | アクション映画ーヤ行
第20回山本周五郎賞、第4回本屋大賞第2位に輝いた森見登美彦の小説をアニメ映画化。京都の移りゆく四季を背景に、パッとしない大学生と彼が片思いする後輩の恋の行方を、個性的な仲間たちが起こす珍事件と共に描く。主人公の声を、テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などの星野源が担当。監督の湯浅政明をはじめ、脚本の上田誠、キャラクター原案の中村佑介ら、森見原作によるテレビアニメ「四畳半神話大系」のスタッフが再集結する。
あらすじ:クラブの後輩である“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、「なるべく彼女の目に留まる」略してナカメ作戦を実行する。春の先斗町に夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくのに外堀を埋めるばかりで進展させられない。さらに彼は、仲間たちによる珍事件に巻き込まれ……。

<感想>京都を舞台にした、一夜のほろ酔い気分な青春幻想譚。お酒を愛する好奇心旺盛で少し天然であり、瞬く間に周囲を巻き込む黒髪の乙女と、彼女に恋する絶妙にダメ男な先輩。この作品の世界は、主人公は“先輩”じゃなくて彼女を中心に回ります。

“黒髪の乙女”に想いをよせる“先輩”は、彼女とお近づきになるべく「ナカメ作戦」いわゆる(なるべく彼女の目にとまる)を実行していますが、「偽の電気ブラン」や「ラ・タ・タ・タム」などに心を奪われている“乙女”は、中々振り向いてくれません。

夜の先斗町を、下鴨の古本屋を、学園祭の人込みの中を迷わず歩む“乙女”と、それを追う“先輩”。風変わりな人々と共に夜を駆ける彼らの爽快な青春模様に、ときめかずにはいられないのですから。

森見登美彦の原作小説を、湯浅政明監督ら「四畳半神話大系」チームが、劇場アニメ化したこの作品。森見作品とアニメの相性の良さは「四畳半」などで証明ずみではありますが、本作もまたアニメになることで、、水を得た魚のように生き生きとするお話でありました。

“乙女”と“先輩”が交互に語り手を務める原作は、彼ららしい言葉が小気味よく連なることで、その性格や摩訶不思議な出来事への想像を掻き立てましたが、劇場版で明らかにしたのは、彼らのその「テンポ」です。しこたまお酒を呑み、へべれけな人々と夜の街を歩く“乙女”のテンポなんですね。「偏屈王」役を奪いとるために爆走する“先輩”のテンポと。

それらはある意味で、言葉以上に彼らの心情を知り手掛かりとなりました。そして、「声」もやはり同様の役割を果たしています。
黒髪の乙女の花澤香菜の愛らしく抜けの良い声は、“乙女”のまっすぐさを裏づけていますし、“先輩”の星野源はさすがに偏屈だけど、ピュアな男に命を吹き込む天才、“先輩”へのヘタレな」部分を、上ずったり震えたりしながら、完璧に表現していましたね。

他にも「詭弁踊り」や「偏屈王」のミュージカルなど、映画ならではの見どころを上げたらきりがありません。
とにかくも、奇妙奇天烈でちょいと粋な夜の住人から、物の怪の類までもが入り乱れる摩訶不思議な物語が、ポップアートのような大正ロマンといった形で、カラフルなアニメーションで綴られていきます。
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湯を沸かすほどの熱い愛 ★★★★

2017年01月12日 | アクション映画ーヤ行
『紙の月』などの宮沢りえと、『愛を積むひと』などの杉咲花が母娘を演じ、余命宣告を受けた主人公の奮闘に迫る家族ドラマ。行方不明の夫を連れ戻すことをはじめ、最後の四つの願い事をかなえようと奔走するヒロインの姿を捉える。『チチを撮りに』などの中野量太が監督と脚本を担当し、物語を紡ぎ出す。母親と娘の強い絆はもとより、人生の喜怒哀楽を詰め込んだストーリーに夢中になる。
あらすじ:1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。

<感想>やっと今年になってから東北でも上映されました。ネットで皆さんの高評を見て断然観たくなり、駆けつけました。死期が迫る母親が、遺される家族のために奮闘する姿を描いたヒューマンドラマです。主人公の母親に扮する宮沢りえが、人情味あふれる母親を情感豊かに演じているのが最高。それに、娘役の杉咲花と父親のオダギリジョーの飄々とした姿も完璧の演技陣に拍手を贈りたい。

とても私には、こんなにも強く優しく血のつながりもない子供たちを育てる母親像が、羨ましくもあり、いつもの余命いくばくもないという映画を観て、涙を流してきたのが1年間に数十本もあるのに、中でも死という生を軽んじる安直な映画が許せなかったが、この映画だけは違っていた。

本作は白い煙の煙突に始まり、赤い煙の煙突で終わる。立ち上る煙の様子に、生きることを象徴させて、登場人物たちの成長と共に煙突の姿もまた成長させているように見えました。
残された家族は、双葉がパートで働いて生活をしていたが、職場で急に倒れて病院へ行き、余命宣告を受けるほどの末期癌だったとは。普通は、そこで親戚とか友達に相談して、夫を探し当て、家を売ったお金を半分貰って離婚するんですけどね。この映画では、まったくもって違っていた。

夫であるオダギリジョーが、パチンコに行くといって出て行ったきり戻って来なかったことから始まり、実は浮気をしていて、子供までいて隣街のアパートで暮らしていた。探偵に依頼して探してもらったのだが、ひょうきんな顔をしてオダギリジョーが暗くなる作品を上手く笑いのとれるコメディにしてくれる。双葉が死ぬ前に生きたいと言っていたエジプト旅行。入院先の病院の庭で、家族で作る人間ピラミットで驚かすのには苦笑いでした。
それからは、一度は銭湯の風呂場で泣き明かした双葉だが、意を決してそれからは、銭湯の再建と家族の複雑なしがらみを1人で踏ん張って解決していく。

まさか、長女の安澄が先妻の子供であり、そして出て行った夫が連れてきた娘と、自分がお腹を痛めて生んだ子供がいないのが難点。それに双葉の生い立ちも詳しく描かれていない。それに長女は学校でいじめられており、登校拒否をする。そこで母親は、負けるな、強く立ち向かえとばかりに、安澄の好きな水色のブラジャーとパンツをプレゼントして、「ここぞと言うときの勝負パンツだよ」と笑って娘に言う。娘が学校で、意地悪3人娘に対して、その下着の使い方が大変気が利いて良かった。でも、これは恥ずかしさが先に出て、勇気がなければダメ。

そして、夫が戻ると銭湯を開くといい、双葉は「働かざる者食うべからず」とみんなに手伝うように仕向ける。それに、毎年のように安澄の誕生日にタカアシガニを贈ってくる、安澄の母親に会いにいくのだ。聾唖者である母親のために、安澄に手話を覚えるようにと言う双葉。会いに行き、複雑な思いの安澄の心に、双葉はお母ちゃんが2人いて良かったねと。

それに、夫の連れっ子である娘は、母親恋しさから番台からお金を盗み家出をする。双葉は、前に住んでいたアパートに行くと、そのドアの前に座っていた。母親に捨てられたのではないと、待っている。その娘も、双葉の優しと愛情で次第に懐いて来るのだった。

その旅行中に、若い青年がヒッチハイクで車に乗せてくれと言う。その男は、松坂桃李くんで、父親が再婚をしては腹違いの弟がいて、家に帰りずらいと言う。この青年も、心を病んでいるのを知って双葉が愛の手を差し伸べる。

最期には、双葉が探偵に自分の母親探しを依頼していて、見つかったというので行くと、再婚をしており大豪邸に住んでいて幸せな顔の母親が見えた。そして、一目だけでも会いたいと言うと、母親は「私には子供はいない」と、つれない返事で会ってもくれない。頭にきて、孫と遊んでいる幸せそうにしている母親に、門にあった置物を投げつけてやる双葉。

それでも最後まで、ひねりのある人情味あふれる脚本と、細部にさりげない遊びを取り入れた演出も巧いですね。確かに死に往く母親の心配りということでは、「バースデーカード」の母親に設定は似ているし、痛いエピソードもある。けれども、その痛さをしっかりと蹴とばすことになる伏線が、巧みに用意されており、気が付いたら泣き笑いしていた。
本作で思わず涙腺が緩むのは「死」が悲しいからではない。厳しい現実に直面しながらも、生きることを諦めない姿に心動かされるからであります。ラストの葬式のシーンでは、湯船に双葉の好きな赤い色を中心に花畑を作り、その中に双葉が白いワンピースを着て寝ていた。もしかして、双葉の遺体はお風呂を沸かすために焼いたのだろうか。ちょっとこれは気に入りません。
それから、家から車で出て河原にピクニックにでも行くように、みんなでお昼を食べ笑って見送る家族の姿は素敵でした。
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闇金ウシジマくん ザ・ファイナル ★★★★

2016年11月07日 | アクション映画ーヤ行
闇金業者を主人公に裏社会を活写した真鍋昌平のコミックを実写映像化したシリーズの最終作で、山田孝之演じる丑嶋馨の過去に迫る話題作。原作の「ヤミ金くん編」を基に、丑嶋と闇金をつないだ因縁を現代と過去を交錯させて描き出す。山田のほか綾野剛、永山絢斗、やべきょうすけらが出演。貧困ビジネスや債務整理でもうける弁護士の描写や、封印した過去に直面した丑嶋の行動に注目。
あらすじ:違法な金利で金を貸す金融屋「カウカウファイナンス」の丑嶋馨(山田孝之)を、中学時代の同級生・竹本優希(永山絢斗)が訪ねてくる。しかし丑嶋は、金の貸し借りとあれば友人も冷たくあしらう。竹本は鰐戸二郎(YOUNG DAIS)に仕事を紹介されるが、それは賃金をピンハネする貧困ビジネスだった。さらにはその鰐戸三兄弟、丑嶋のライバル犀原茜(高橋メアリージュン)、そして丑嶋には12年前からの因縁があり……。

<感想>もう、本当にこれで終わりです、という感じの終わらせ方だった。ウシジマの過去を描く本作では、中学時代の出来事を起因にあれやこれやと恨みやしがらみが描かれており、イマイチ痛快感が薄いような気がする。

過去にこだわる男たちに、1番の弟分のやべきょうすけの柄崎のことが詳しく描かれており、なるほどと、それに、中学の同級生の永山絢斗扮する竹本との因縁関係も詳しく描かれている。丑嶋が可愛がっていたウサギのことであり、彼の亡き母の形見のようなウサギを、竹本が預かり面倒を見ていたといういきさつがある。それが、貸し借りとすれば、ウシジマは竹本には恩返しをしなければいけないのだ。もち、幼馴染の戌亥の綾野剛も出てます。
中学時代からの喧嘩相手の悪なのが、鰐戸(ガクト)三兄弟の長男の安藤政信、それに弟の三蔵に間宮祥太朗。

他には、丑嶋のライバル犀原茜の高橋メアリージュンと、子分の高田の崎本大海、そして、極悪弁護士の都陰に八嶋智人、タコ部屋に押し込まれた甲本に太賀、他多数出演。
このウシジマが営業している闇金の他に、鰐戸三兄弟が営業している「純愛の家」貧困ビジネスであり、まるで「カイジ」のような地下ビジネスをマネているようなそんな感じがした。

その上、過払い金返還商法のカラクリを暴く、債務整理でもうける悪徳弁護士、都陰の八嶋智人のヤバサ加減が最後には、明るみに出て警察の御用となる。
一方、中学時代の真面目人間の竹本(永山絢斗)がウシジマのところへ現れ、金を貸してくれといい、昔の恩人でもあり5万円貸してやりたいのだが、貸してやらなかった。その竹本は、ウシジマの性悪説的世界観に真っ正面から対立してくる性善説の、幼馴染の姿を借りて現れること。それにウシジマが惹かれてしまい、自身の規範が揺らぐウシジマは魅力的に映っていた。

その竹本が、鰐戸三兄弟の「純愛の家」で働いており、いくら働いても実入りがないとは。自分が騙されていることに気づかない、バカと言うか、真面目というか、どうにもこういう男は手が付けられない。
今回では、ウシジマの過去を振り返るシーンが間に挟まれており、今の無口な丑嶋の形が出来たという。そして、ラストで丑嶋が鰐戸三兄弟のアジトへ乗り込んでいくところ、今までにありそうでなかったシーンであり、社長がわざわざ出向くことはないわけで、、ただし、今回は社員のやべきょうすけの柄崎と、高田(崎本大海)が捕まってしまい拷問を受けているので。さすがに「てめえが来い」とは言えない。拳銃を突き付けてくる長男の安藤政信、しかし、丑嶋も拳銃を持ってきている。

ですが、実のところ、ウシジマ君の過去や因縁など知りたくもなかった。これまで通り、彼の非情な闇金ビジネスと、客に対する彼なりのケジメだけで終わりにしても良かったのではないかと。

高利を承知で闇金に駆け込んでくる、客たちのそれぞれをの事情に世が窮えたのも大きな理由でもあるし、その事情に合わせたウシジマの対応も充分に面白かったのだから。
しかしながら、結果として最後に、竹本を寿命が縮むくらいの仕事を世話する、ウシジマの辛さが顔に滲み出ており、自分の闇金という仕事を悔やんでいるようにも見えた。

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闇金ウシジマくん Part3 ★★・5

2016年10月07日 | アクション映画ーヤ行
真鍋昌平の人気コミックスを山田孝之主演で実写化した人気シリーズの劇場版第3弾。原作の“フリーエージェントくん編”と“中年会社員くん編”を基に、違法な高金利で金を貸す闇金業者・丑嶋(ウシジマ)が見届ける、欲望に飲み込まれていくダメ人間たちの非情な運命を描き出す。共演は綾野剛、本郷奏多、藤森慎吾、浜野謙太。監督は引き続き山口雅俊。

あらすじ:今日も高金利で金を貸す金融屋「カウカウファイナンス」の丑嶋馨(山田孝之)。フリーターの沢村真司(本郷奏多)は偶然知り合ったモデルのりな(白石麻衣)にあおられて、ネットで1秒間に1億円を稼ぐという天生翔(浜野謙太)のビジネスに身を投じ、カウカウファイナンスを巻き込んだある計画を考える。一方、サラリーマンの加茂守(藤森慎吾)は妻帯者でありながら遊ぶ金欲しさにカウカウファイナンスで借金を重ね……。美人キャバ嬢・花蓮に入れあげ、ズブズブと闇金の底なし沼にハマっていく…。

<感想>ただでさえ丑嶋馨(山田孝之)の出番が少ないのに、2本もあるなんんてね。今回も変わらずの「闇金ウシジマくん」です。で、本作では派遣の仕事で食いつなぐ真司(本郷奏多)が、誰でも稼げるという塾を主宰とするネット長者の天生翔(浜野謙太)の広告を見て、半信半疑でセミナーに出席。人生一発逆転を狙って、億単位のマネーゲームに巻き込まれてゆくという。

つまりはマルチ商法に引っ掛かったバカ者です。真司の父親の大杉漣が言う言葉「地道にコツコツ働かないでどうする。」に、今の若者には解らないでしょうから。何も考えずに簡単に借金をして、没落してく様を描いた群像劇です。

借りた金は返さなければならなく、そのことを良く考えずに10日に5割の利子で、どんどんと借金が増えてゆく様がこの映画の見どころ。結局は、返せなくて自分の首を自分で絞めてしまうという愚か者のお話しです。
マネーゲームに於いては、人は「自分だけは損しない」と信じて疑わないもの。このシリーズでは、金に人生を左右される多様な人々を描いているが、観ている側もどこか他人事で「自分だけはそうならない」と信じて疑わない。現実世界でも本作と同じように、検索サイトの隅で大金獲得を謳う怪しげな広告が、人々の欲望を誘惑しているというのに。

一方では、美人のキャバ嬢を落としたいサラリーマンの加茂守(藤森慎吾)は、カウカウファイナンスで金を借りまくって、店に通い続けるが、・・・。この役にぴったりのチャラ男の藤森慎吾でした。
いつものように、お金によって踊らされる「闇金ウシジマくん」シリーズの面白さは、現実を映して鏡にした金をめぐる人間模様であり、キレイごとは一切なしで、何より闇金“カウカウファイナンス”の社長ウシジマのブレない姿勢が小気味いいんですね。
演じる山田孝之の個々とした事情などはまったく関知しないビジネスライクな冷酷ぶり。闇金に駆け込んでくる人たちが、欲に舞い上がって足元を見ない人ばかりで、そのツケで大怪我をするのも、反面教師的で納得できるのだ。最後の最後に仕掛けるウシジマの、大岡裁きは今回もスカットしますからね。

この第3作目では、高額アフィリエイトを題材に、デフレやインフレの仕組みを学べるだけでなく、金を稼ぐことのあり方に対する是非を再確認させるのも一興ですな。
それだからこそ、惜しいデキというべきか、面白くなかったと言いたいが、それは「怒り」に続いて水澤紳吾が素晴らしかった。脇役であればあるほどにそいつが場をさらって行く存在感があり、逆に中心的な人物には、観る甲斐がないということになっている。

罰ゲームの債務者の児嶋一哉や同業者の高橋メアリージュンとか、端役の方こそが描こうとする世界にシンクロして、無意識的に俳優たちに救われていると感じた。
それでも、次作の「ザ・ファイナル」は丑嶋馨の過去が観れる物語だというので、彼が何故にこんな人になったのだろう。何故にこんな人が出来上がったのだろう、という興味はありますよね。
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ヤング・アダルト・ニューヨーク★★★・5

2016年08月24日 | アクション映画ーヤ行
「イカとクジラ」「フランシス・ハ」のノア・バームバック監督が、世代の違う2組のカップルを主人公に贈るコメディ・ドラマ。心と体の衰えを自覚させられつつある40代のカップルが、ユニークな20代のカップルと出会い、交流を重ねる中で自分たちの人生を見つめ直していくさまを、ジェネレーション・ギャップを巡る笑いを織り交ぜつつシニカルに描き出す。出演はベン・スティラー、ナオミ・ワッツ、アダム・ドライヴァー、アマンダ・サイフリッド。
あらすじ:ドキュメンタリー作家のジョシュと映画プロデューサーのコーネリアは、ニューヨークのブルックリンに暮らす40代の夫婦。子どものいない2人は、いつまでも若いつもりでいたが、近頃は老いを意識させられることもしばしば。そんな中、新作がなかなか完成せず袋小路に入ってしまっていたジョシュは、講師をしているアートスクールで、2人の聴講生から熱烈な賛辞を送られ、気分を良くする。彼らは監督志望のジェイミーとその妻ダービー。20代の若い夫婦だったが、LPやVHSテープといった古いモノを愛する風変わりでおしゃれなライフスタイルを送っていた。そんな彼らに刺激され、マンネリ気味だったジョシュとコーネリアの生活にも活気が戻ってくる。やがて、ジェイミーが企画したドキュメンタリー映画の製作にも快く協力を買って出るジョシュだったが…。

<感想>二組のカップルの交流とギャップを見つめた、シニカルかつハートフルなコメディである。どちらかと言うと、私小説的な作品で、愛すべきダメ人間を描き続けるノア・バームバック監督の、人間観察眼が光る迷子の大人たちの成長記録になっていた。
本作では自身と同世代の40代のカップルと、20代のカップルの交流を軸に、ジェネレーション・ギャップとそれぞれの野心や悩みを絶妙なセリフと小道具を駆使して描き出している。

子供のいない40代の夫婦、ジョシュとコーネリア。助成金を頼りにインディ系のドキュメンタリーを撮っている40代の監督夫婦であり、友人のベビー自慢のうんざりしつつ、羨ましさも隠せない二人は、映画監督を目指す20代夫婦との交流からエネルギーを取り戻してゆく。
世代論や芸術論を織り交ぜた才気あるタッチは軽快であり、面白くウディ・アレンの再来と評されるのも納得である。ですが、人物設定と会話のくすぐりだけで持たせるセンスは卓越しているが、ちょっと地味すぎるような気がするでもない。

特に面白かったのが、両世代のライフ・スタイルを逆転させたことである。40代カップルはSNS漬けのハイテク世代にし、一方20代カップルには、一昔前のローテクスタイルがクールと、VHSビデオにレコードをコレクションして、タイプライターで執筆しているのだ。
若い監督志望のジェイミーは、かつて一世を風靡して以降スランプから抜けられない監督40代のジョシュに接近する。エネルギッシュでチャーミングなジェイミーたちに魅了され、マンネリ気味だったミドルエイジ・カップルにも活気が戻る。だが、ジェイミーの真の目的は、・・・。著名な映画監督であるナオミ・ワッツの父親を利用するために近づいたのだった。

名コメディ俳優ベン・スティラーを向こうに回して、ヒップホップ・ダンスに目覚めるナオミ・ワッツのコンビが、コミカルな魅力を開花させる。若いジェイミー夫婦に誘われて、怪しげな自己啓発の儀式に参加。呪い術師のところへいくも、幻覚剤のような麻薬を飲まされて支離滅裂になり、妻のコーネリアはジェイミーとキスをしているのだ。それを見てヤキモチを焼く夫のジョシュが切なくもおかしかった。

中身の未熟を実年齢に無理やり合わせるのではなく、自分の中の子供を認めることで大人になる。そのためには親になる既成事実よりも先に、それを望むか否かの意志が尊重されているわけで、そこにたおやかな反骨の精神を感じる。ですが、難解な芸術理論に辟易する。最後に、子供の養子縁組でハノイまで行く夫婦に未来あれ。

白眉は、野心を愛想の良さに包み込み、世渡り上手な、どこか憎めないジェイミーを演じるアダム・ドライヴァーである。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の新星ドライヴァーの、ミステリアスで抜け目ない青年像にも注目。
舞台となるブルックリンの街や、流行の先端をいくヒップスターのスタイル、多彩な音楽が物語をカラフルに装っており、ピリ辛な社会批評も込めたコメディとして中々良かった。
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予告犯 ★★★★

2015年06月12日 | アクション映画ーヤ行
「ジャンプ改」で2011年から2013年にかけて連載されて人気を博した筒井哲也のコミックを実写化したサスペンス。法では裁けぬ悪や罪をネット上で暴露し、その対象への制裁を予告しては実行する謎の予告犯シンブンシとエリート捜査官の攻防が展開する。監督は『ゴールデンスランバー』、『白ゆき姫殺人事件』などの中村義洋。『脳男』などの生田斗真が、新聞紙製の頭巾を被った異様な主人公を怪演、その脇を戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々ら実力派が固める。息詰まるタッチに加え、社会のさまざまな闇に光を当てる硬派な視点にも注目。
<感想>ネット社会を舞台にした犯罪ものかと思えば、主人公のゲイツこと奥田宏明、生田斗真くんが演じているのですが、彼一人が犯人かと思えば、そうではなく、同じように真面目に働いていた若者が、パワハラやイジメに遭ってやむなく会社を辞める。派遣先でのパワハラ、ハローワークに通っても仕事が見つからない厳しさ、やむなく日雇い労働にと。その廃棄場での重労働に、タコ部屋のような飯場に押し込められ、人間扱いされていない若者5人。
ですが、彼らの結束力が固いのは、彼らが社会で除け者にされた人間の集まりだから。中でも、フィリッピンから出てきた少年は、日本へ父親を探しに自分の腎臓を売って金にして来日。しかし、名前しか判らないので父親は見つからず、その飯場で死亡する。親方は、その少年の金を搾取し、死亡したら穴を掘って埋めとけなんて簡単に言う。

食中毒騒ぎを起こした食品会社や、軽薄なバカッター、金の力で世論を誘導しようとする政治家たち。その政治家に殺人予告をするゲイツ。だが、政治家も負けてはいない、バイトのサクラを使ってフォーローする。その政治家には小日向さんが扮してました。

人間の尊厳を平気で踏みにじる企業や権力者、ですが、無責任な若者に次々と鉄槌を下すのだ。警視庁サイバー犯罪対策課の捜査官・吉野絵里香には、戸田恵梨香が、彼女も幼い頃に虐めに遭い、川に飛び込んで死のうと思ったこともあったが、自力で克服して刑事になる。だからということなのか、彼らに対してもキツイ言葉で叱りつけ、そんな社会に負けるな、もっと頑張れと歯がゆい若者に怒りを表す吉野絵里香。

警視庁サイバー犯罪課の刑事、吉野絵里香と、下流社会を生き延びてきたゲイツをリーダーとするテロリストグループとの頭脳戦が見どころの一つですね。
ですから、彼らのしていることは、その日雇い労働現場の違法行為など、社会の最下層で追い詰められてきた人間たちの代弁者でもあるのです。だから、彼らは泣き寝入りをしたくなくて、何か法律が裁かない社会悪に対してお仕置きする現代の“仕事人”のようにも見えるんです。IT系の知識と大胆さで、権力者に立ち向かう姿がとってもクールに映る。

シンブンシ:犯行予告の際にいつも新聞紙で作った覆面を被っている謎の男たち。ネット上での人気が次第に高まり、模倣犯や擁護派が現れる。
主人公のゲイツ(生田斗真)、彼はIT系の会社の元派遣社員で、正社員を目指して真面目に働いていたのだが、社内での社長による虐めに遭い、正社員になるどころか掃除夫としてこき使われる。犯行動機は社会への復讐か?

カンサイ(鈴木亮平)、関西弁で話すガテン系で、ロックバンドを組んでいたが、解散の憂き目にあう。自殺願望のあるファンから貰ったペンダントには、毒薬が入っている。

メタボ(荒川良々)、気のいいグループ内のムードメーカーだが、キレると怖い一面もある。何時か回らない寿司を腹いっぱい食べるのが夢だという大食漢。

ノビタ(濱田岳)、メガネをかけた気弱な元ニートで、行きつけのラーメン屋で働く女の子と仲良くなったことから、グループから足抜けを考えている。
彼らが出会う回想シーンは、社会派ドラマの趣もあり、中盤のゲイツが戸田恵梨香演じる刑事吉野に追われて、下水道に逃げ込むシーンは、堺雅人が犯人に仕立てられて逃げ込む下水道と同じような「ゴールデンスランバー」を彷彿とさせる。

やがて、ゲイツたちがネット上で騒ぎを煽った意外な理由が明かされることになります。本当は、飯場の親方を殺したのは4人であり、最後には生きずらい世の中に、ピリウドを打って集団自殺をしてしまうという、悲しい結果になる。ラストではどんでん返しのような展開もあり、全部の犯行をゲイツ一人で被ってしまう動画もあり、自分のためにはもうガンバレなくなっていたゲイツが、仲間のためにと思った時に、こんなアクションが起こせるっていうことなの。
本当の事実は5人とも仲が良くて、飯場に火を付けた後で、海へ行きスーパーで買ってきた寿司を皆で食べ、それが最後の晩餐となるのだ。過激でスピーディな展開で、ゲイツが毒の量を少なくして生き残った3人には、第二の人生を頑張って生き抜いてもらいたいですよね。最後まで一気に見せる、社会派エンタメ作品でもあります。
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誘拐の掟 ★★★★

2015年05月31日 | アクション映画ーヤ行
『96時間』シリーズなどでアクション俳優としての地位を確立した名優リーアム・ニーソンが主演を務め、ローレンス・ブロックの傑作ミステリーを映画化したサスペンス。引退した敏腕刑事が、猟奇殺人犯と激しい頭脳戦を繰り広げる姿を活写する。『ザ・ゲスト』などのダン・スティーヴンスや、ラッパーのアストロことブライアン・ブラッドリーらが共演。邪悪な猟奇殺人鬼に挑む主人公のパワーに圧倒される。監督は「ルックアウト/見張り」のスコット・フランク。
あらすじ:1999年、ニューヨーク。かつて酒に溺れ、刑事を辞めた冴えない私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)。ある日、ドラッグ・ディーラーの男から、“妻を誘拐して惨殺した犯人を突き止め、捕まえて欲しい”との依頼が舞い込む。やがて犯人は2人組で、警察に通報できない麻薬関係者の身内ばかりを狙い、猟奇的な凶行を繰り返していることが明らかとなってくる。そんな中、新たな誘拐事件が発生する。被害者は別のディーラーの14歳になる娘ルシア。同一犯の仕業と確信し交渉役を引き受けると、残忍で狡猾な犯人を相手にギリギリの駆け引きを展開し、徐々に追い詰めていくスカダーだったが…。

strong><感想>62歳のリーアムが、またもや猟奇殺人犯をシバくハードボイルドのアクション映画に出演しているのだ。原作はローレンス・ブロックの傑作ミステリー小説「獣たちの墓」。人気シリーズで17作も描かれているらしい。
今作では、アルコール依存症のリハビリを続けている元刑事の私立探偵が、免許をもっていないからもぐりの私立探偵なんだけど、心に傷を負い、一度はアルコール依存症で人生のどん底に落ちながらも、今では立ち直ろうとして、断酒会へとせっせと通いづめているのだ。リーアムが演じると男の哀愁漂うキャラクターが際立って見えるのだ。

そんなスカダーが戦う今回の敵は、超異常な誘拐犯で、女性を誘拐しては身代金をせしめるだけでなく、自分たちの倒錯的な欲望を満たすために人質を残虐な方法で殺害し、その死体をバラバラにしては送り返すか、墓場や川などに小さくした肉片にしてビニール袋に包んで捨てるという。
快楽のためには手段を選ばない。異常な欲望のために、誘拐を繰り返しているのがこの男たち。抵抗されないよう、ターゲットにするのは若い女性か少女のみ。しかも、警察に通報できない弱みを持つ麻薬ディーラーの近親者を狙う卑劣さだ。
綿密でズル賢いのも、この男たちの特徴。雄弁で頭がいいリーダー格と無口な実行犯という、サイコキラーとしては珍しい2人組みなのにも注目。街を徘徊していても怪しまれない修理業者のバン(反抗のたびに車体の色やロゴを塗り替える)を装って獲物を物色する。
そして、誘拐した後は、残忍な手口で背筋も凍る拷問器具を使い、拘束して声を上げられないようにしたうえで、苦痛にゆがむ顔を撮影しながら楽しむのだ。身代金の要求はするが、生きて帰すつもりなど元々ないという凶悪さ。惨殺したあとは、バラバラにして処分する異常ぶりだ。

犯行の異常性と緻密さを感じさせる描写の積み重ねが、不穏な空気を見る物に与えていく構成は、「羊たちの沈黙」や最近ではヒュー・ジャックマンの「プリズナーズ」など、猟奇サスペンスのエッセンスを受け継ぐものであります。
グロテスクなシーンは、画面上では、殆ど映らないが、その冷酷さは伝わってきますから。通常の誘拐のルールが通用しない相手というのもやっかいだし。
犯人は麻薬ディラーなど、後ろ暗いところがあって、警察に通報できない連中の家族をターゲットにしているのだ。しかも、用意周到な準備をして目標を尾行して、相手の行動パターンを知った上で、特に白昼どうどうと犯行に及ぶんだから、手におえないよ、こつらは。
そんな、殺すこと自体が目的の誘拐犯を相手に、どう交渉すれば、人質を生きたまま奪還できるのだろうか。
最初に、妻を誘拐されたケニー(ダン・スティーヴンス)が、身代金を犯人に支払ったのに、妻は惨殺されて殺されていた。そのこともあり、ケニー本人も、麻薬の売人で、その売人繋がりで次のターゲットとなるのが、ロシア系麻薬ディーラーの娘ルシア。

このルシア役を演じているのが、本作が映画デビューとなるダニエル・ローズ・ラッセル。獲物を物色する誘拐犯たちの車の前を、赤いダッフル・コート姿で横切る美しいスローモーションのシーンが見逃せない。

初めに掴んだ情報で、墓の管理人というデブの男を狙うも、尾行してあるビルの屋上へと、そこには誘拐され殺された女の写真があり、こいつが犯人なのかと思ったのだが、リーアムの目の前で投身自殺をされてしまう。

そこで、リーアムが元刑事の勘で見つけたのが、麻薬取締捜査官の2人組みである。この悪徳捜査官の2人は、証拠を見つけないと捕まえられないので、相手の隙を狙って尾行する。そのリーアムの相棒となるのが、図書館や施設で寝泊まりする皮肉屋の黒人少年“TJ”だ。

ホームレスの少年と心を通わせ、やがてコンビとして事件解決へと挑んでいく姿も見逃せませんね。

犯人のアジトへと、黒人少年が2人組みのバンに乗り込み突き止めるお手柄である。しかし、そのアジトでは、女を拷問したり、その後に切り刻んだりする道具が地下室にあるのを見ると、背筋が凍りつきますから。

して、リーアムとケニーことダン・スティーヴンスが、そのアジトに侵入していきます。その後は、どうしたかというと、そこは観てのお楽しみということで、もう一つのテーマは「贖罪」でもあるのです。スカダーは、かつて冒頭で起こした事件で、通りがかりの少女を拳銃の流れ弾で死亡させてしまうという記憶に、今も苦しめられているし、他の登場人物にも、それぞれ自らの罪や過ちと向き合わなければならない瞬間がやって来るわけなんです。単に異常犯罪者と探偵の駆け引きを描いたサイコ・サスペンスというだけでなく、人間ドラマの深みも加えたことが、この映画の魅力といってもいいでしょう。
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