パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

マン・オブ・スティール ★★★★★

2013年08月31日 | アクション映画ーマ行
クリストファー・ノーラン製作、ザック・スナイダーが監督を務めたスーパーマン誕生までの物語を紡ぐアクション大作。過酷な運命を受け入れ、ヒーローとして生きることを決意する主人公の苦難の日々を驚異のアクションと共に描き出す。『シャドー・チェイサー』などのヘンリー・カヴィルが主人公を熱演。悩んだり傷ついたりしながらも前進する主人公の姿が目に焼き付く。
あらすじ:ジョー・エル(ラッセル・クロウ)は、滅びる寸前の惑星クリプトンから生まれたばかりの息子を宇宙船に乗せて地球へと送り出す。その後クラーク(ヘンリー・カヴィル)は、偶然宇宙船を発見した父(ケヴィン・コスナー)と母(ダイアン・レイン)に大事に育てられる。そして成長した彼は、クリプトン星の生き残りのゾッド将軍と対峙することになり……。

<感想>これでもかとVFXを投入して創造されるド派手を極めたアクションとスペクタルに目を奪われる。たった一人で地球に来てしまったエイリアンは、いかにしてスーパーマンになったのか?・・・それを溯る旅だった。
タイトルにもそれがよく出ている。“スーパーマン”ではなく「マン・オブ・スティール」“鋼鉄の身体“をもっていたがゆえにみんなからは理解してもらえなかった一人の青年の、自分の居場所を探す旅。彼がスーパーマンになるまでの物語だ。クラーク・ケント、カル=エルには、ヘンリー・カビルが演じて筋肉美を披露している。

それにもう一つ新しいのは、クリプトン星のエピソードを描いているところ。父親のジョー=エルが、産まれたばかりの息子カル=エルに全てを託して送り出すシーンは印象的ですね。父親ジョー=エルには、ラッセル・クロウが、育ての親ジョナサンには、ケビン・コスナーが、2人のオスカー俳優が父親という、何という贅沢キャスティングで評価大です。
生みの母親ララに惑星クリプトンから地球に送れば怪物だと疎外されと身を案じられ、人類が抱く未知なるものに対する恐怖心を熟知する育ての親ジョナサンには、人前で超人的能力を使うことを禁じられるカル=エル。

幼少の頃、橋から川に落ちたスクールバスを引き上げたことで、周囲から畏れの眼を向けられた経験のある彼は、それを守ったばかりに義父を竜巻から救いだせずに死なせてしまい悔いが残っている。人々のために力を使えば使うほど恐れられ、使わずにいれば新たな悲しみを生み出してしまう彼は、自分が何のために存在するのか分からない。まさに、大いなる力を持つことの危ういさ、マイノリティという境遇、アイデンティティ・クライシスといった苦難に幼いころからさらされてきたのだ。

そんな彼が、亡き父親ジョー=エルの意識に導かれて己の使命を知るや、それまでの閉塞感を打ち破るようにして、大空を縦横無尽に飛翔するさまは、本作の最大の見せ場と言っていいでしょう。

だが、自分と同じクリプトン星の生き残りであるゾッド将軍たちが、敵として出現し、戦わざるを得なくなる。ゾッド将軍には、マイケル・シャノンが、強面メイクで熱演している。

様々な解釈、様々な楽しみ方が出来るあたりはノーラン的だが、後半の大アクションシーンのスピード&スペクタル感は大増量。主要舞台のメトロポリスがゾッド将軍により容赦なく破壊され、さらにスーパーマンとのバトルで破滅状態になる。都市を守るスーパーマンの従来のイメージを崩しかねないこのスペクタルは、ヒーロー誕生前夜の生みの苦しみ現れなのか?・・・。

これでもかと大都市を壊しまくるスーパーマンVSゾッド将軍の超高速バトルで、2人はビルを突き抜け目からは赤いビームで街を焼き尽くす。エイリアン同士のバトルということもあるが、最も重要なのはスーパーマンを迎え入れることによって、地球は変わってしまうこと。崩壊の後に彼がいる、新しい世界が待っているっていうことなのだ。

ヒロインのロイスは“危険なネタ”しか使わないと豪語する怖いもの知らずのデイリー・プラネット社の敏腕記者。極寒の地でクラークを目撃したことから、彼のパワーを知り、調査に乗り出す。そのせいで未知の敵に拉致されてしまう。泣き言一つ言わずクラークと共闘。今回のロイスは守られるだけの女性ではない。エイミー・アダムスが演じて、ラストでクラークとキスをするシーンに胸が熱くなります。

過去作のスーツは、クラークが地球に来た時に包まれていた布で作られていたが、今回はクリプトン人が着ている保護服と言う設定。だから、布地だった素材も硬質なものに改編。何より大きな違いは赤いパンツがなくなったことで、腰回りは青で統一されてスッキリ。S字に垂れた前髪も今回はナシで、Sマークがエル家の紋章で希望を意味することも説明されている。
制作が決定した続編には、スーパーマンに負けず劣らずの壮絶な組み合わせで、バットマンが登場するそうだが、エンドロールの最後にでも出て来るかと待っていたら、期待して損した。
2013年劇場鑑賞作品・・・263  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
トラックバック (43)

タイピスト! ★★★

2013年08月28日 | た行の映画
1950年代フランスを舞台に、タイプの早打ち以外には取りえのないヒロインが、タイプ早打ち世界大会優勝を目指して奮闘するラブコメディー。監督は、本作で初めて長編作のメガホンを取る新鋭レジス・ロワンサル。主演は『譜めくりの女』のデボラ・フランソワと、『ロシアン・ドールズ』のロマン・デュリス。ファッションなど1950年代当時のテイスト満載の映像美や、競技さながらの激戦が展開するタイプ早打ちシーンに目を奪われる。
あらすじ:女性にとって大人気の職業が秘書で、さらにタイプライター早打ち大会に勝つことが最高のステータスだった1950年代のフランス。田舎出身のローズ(デボラ・フランソワ)は保険会社の秘書に採用されるが、ぶきっちょで失敗してばかり。そんな彼女の唯一の才能であるタイプ早打ちに目を付けた上司ルイ(ロマン・デュリス)は、二人で協力し、タイプ早打ち世界大会に出ないかと提案する。

<感想>1950年代のフランスを舞台に、最新流行の秘書になるべくノルマンディーを出た主人公が、保険会社を営む鬼コーチの下、タイプライターひとつで世界に挑戦するサクセス・ストーリー。
帽子と手袋を必ず身に着けるエチケットも壊れ始めた50年代。タイプという技能を極限まで高め、世界大会で優勝することを目標に頑張るさえない女の子ローズが、人差し指の1本打ちタイプから十本打ちを経て、ブラインドタッチ、更には神業のような高速連打で陶酔境へ登りつめてゆくプロセスは、まさにセクシャルなような行為のようにも見える。
その潤んだ瞳や唇の動き、指の角度やホクロの震え、・・・足腰のくねりや身のこなし、ローズは全身でマシーンとぶつかり合う。見どころは、中原淳一な衣装とヘアースタイル、インテリアなど。主人公のデボラ・フランソワが、オードリーのように見えてきた。そして史実に基づいたタイプの早打ち大会。

1950年代はウーマンリブの萌芽の時代、タイピストというのは、当時の女性が一人で生計を立てていくための、最初の職業の一つだったのではないでしょうか。
タイピング練習用にジョイスやエリオットの難解極まりない文学書を何冊もタイプするシーンがあるが、様々な詩人や哲学者の文章を叩くことは、作家の知覚や認識を体で受け止め、身体に反響させることに他ならない。ローズは夜なべしてその文学書を読む。

そして、早朝ランニングに、ピアノレッスン、ブラインドタッチなど速度と耐久性を強化する厳しい特訓をくぐり抜け、タイプライター早打ち大会の地方予選、フランス大会、世界大会と勝ち抜き、とうとう国民的アイドルにまでなる。
さらに興味深いのは、タイプライターは20世紀文化の隅々まで浸透し、タイピストという職業女性の身体の一部と化したのである。

雇い主とのラヴ・ストーリーを絡みながら展開されるが、脚本も演出も、物語の時代に合わせるかのようにちょっと野暮ったく見えた。見せ場となるタイプライター大会のシーンのために、デボラ・フランソワは本物のコーチをつけて6か月間毎日3時間猛特訓したそうです。

しかし、気になったのは、今や禁煙時代なのに、これでもかのように喫煙シーンが、タバコを吸う、吸う、50年代の映画よりもっと吸う。確か、邦画の「風立ちぬ」の中でも男性はタバコをよく吸っていた。
この映画は1959年に設定され、ちょうどタイプライターは手動式から電動式、さらには電子式へと移り変わっていく直中にあったことが示されるている。その大きなシステム変換も、ヒロインのファッションや化粧、顔の表情や眼差しの変容とともに美しくなっていくのもよかったですね。
2013年劇場鑑賞作品・・・262   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (18)

江ノ島プリズム ★★.5

2013年08月28日 | あ行の映画
『仮面ライダーフォーゼ』シリーズの福士蒼汰、『男子高校生の日常』の野村周平、『FASHION STORY -Model-』の本田翼らが共演した青春作。ひょんなことからタイムトラベルの能力に目覚めてしまった青年が、親友の死を回避し、友人以上恋人未満だった幼なじみの気持ちを確かめようとする姿を描き出す。メガホンを取るのは、『キトキト!』『旅立ちの島唄 ~十五の春~』などの吉田康弘。主要人物を演じる三人の好演や青春のほろ苦さを巧みにすくい取ったタッチに加え、舞台となる江の島の美しい町並みも見もの。
あらすじ:小学生の頃からの親友同士である、高校生の修太(福士蒼汰)、朔(野村周平)、ミチル(本田翼)。恋と友情の入り交じった関係にある彼らだったが、ミチルの海外留学が決まってしまう。黙って出発した彼女が自分の気持ちをつづった手紙を受け取り、空港へ向かう朔だったがそのまま命を落としてしまう。それから2年。空虚な日々を送っていた修太は、行きたい時と場所を思い浮かべるとその時代に行けるという時空移動の方法が書かれた奇妙な本を手にする。試しに実践してみると、彼は朔が死亡する前日に戻っていた。

<感想>江ノ島を舞台に、幼なじみの仲良し高校生、男女三人組みの友情を軸にしたタイムトラベもので、淡い恋心を瑞々しく描いたファンタジー・
過去の親友の死を回避しようと奔走する、主人公のひたむきさは悪くないです。最初は遠景だった江ノ島が、ドラマの信仰につれて近景になる撮り方にも工夫があってよかった。
今が旬の福士蒼汰君をじっくり鑑賞する映画だということは、始まってすぐに彼が上半身裸になるところで気付いた。そんな福士が幼なじみ2人を、悲劇から救うためのタイムトラベルは、現代オタクカルチャーの「ループもの」からすれば素朴な仕掛けではあるが、仮面ライダーフォーゼや、あまちゃんを通過したツボを押さえた演技と、江ノ島の箱庭感とでゲーム的リアリズムを獲得していると思う。

トンネルを抜けると2年前だった、てきな江ノ電の使い方とか、郷愁感を誘う江ノ島の街並みも効いていると思うし、主人公と先輩時間移動者との切ない交流など。苦くも温かなラストの引きずる感じもいい。デコレーション過多な青春映画がなかった、あの頃に、タイムスリップできるというファンタジックなところが好きです。
その結果、ラストに関しては、ジュブナイルではなくて、実はリセットで“ゼロ”に帰しているだけという疑いもある。

ある日どこかで、「時をかける少年」は、バタフライ・エフェクトを起こすわけでもないが、ふりだしに戻る。そんな感じで古今東西の「タイムスリップもの」の、物事の本当に大切なところへとブチ込み、敬意を払い、しっかりとジュブナイルしている。
しかし、安易に過去と現在を往復するシーンが繰り返されるために、ストーリーの作為が鼻についてくるのは否めない。上手に騙されたいと思いつつ、60年も学校に棲んでいるという少女の今日子の存在など、まるでホラー映画のようなキャラで、突っ込みどころが多すぎます。
それと、江ノ島というと季節は夏というイメージが強すぎて、この映画の設定が12月のクリスマス前という。これだけでも、物悲しい寒い感じがしてならなかった。でも、江ノ電に乗りたくなるという気分にさせるのが最高ですよね。
2013年劇場鑑賞作品・・・261  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (2)

スマイル、アゲイン ★★

2013年08月26日 | さ行の映画
ヨーロッパサッカーの元スタープレーヤーが、別れた家族との絆を修復するために奮闘する姿を感動的に描くヒューマンドラマ。『300 <スリーハンドレッド>』などのジェラルド・バトラーが、息子のサッカーチームのコーチを務める元カリスマ選手を演じるほか、ジェシカ・ビール、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ユマ・サーマンなど豪華キャストが共演する。メガホンを取るのは、『7つの贈り物』のガブリエレ・ムッチーノ。うだつの上がらない主人公が再生していく姿を通して、人生の豊かさについて考えさせられる珠玉の作品。
あらすじ:ヨーロッパの一流クラブやFIFAワールドカップで活躍したサッカーの元スター選手、ジョージ・ドライヤー(ジェラルド・バトラー)は、やり直そうとやって来たアメリカで元妻のステイシー(ジェシカ・ビール)が再婚を考えていることを知る。そんなある日、あることがきっかけで息子ルイス(ノア・ロマックス)のサッカーチームでコーチを依頼されたジョージ。子どもたちの母親にモテモテのジョージだったが、ルイスとの関係がぎこちなくなってしまい……。

<感想>エンド・オブ・ホワイトハウス」で一人で孤軍奮闘していたジェラルド・バトラー。彼にはそういうアクション映画が似合うのに、これは良くを言えば古典的な、悪く言えば陳腐なことこの上ない、ハートフル・ヒューマンドラマである。欧州サッカー界でスター選手として活躍していた主人公が、家庭をかえりみることのなかった男、そんな夫に愛想をつかした妻と息子。これは、タイトルからして誰にも先が読めるお話なのだが、・・・しかし、彼は負傷のため現役を引退した後のことを考えてなかったのだろうか?
サッカー選手だけではなく、野球選手にしても、バスケ、アメフト、どんな有名な選手でも実際には、40歳を超えると体力が衰えて戦力外選手として引退せざるを得ない。その後のことを、有名な内にお金を稼いで老後のこととか、事業を始めるとか、スポーツキャスターになるよう自己アピールをしてTV局に売り込むとかしないと、その後の生活はお先真っ暗になってしまうはずだ。
御多分にもれず、稼いだ金は全部使ってしまったのか?・・・この作品の主人公はきっと現役選手の内はモテはやされて、引退後の暮らしなど考えていなかったのだろう。
そして、急に寂しくなり元妻と息子に会いたくなり、妻と息子が住んでいる町へやってきて息子に会いに行くのだが、息子は遊んだりかまってもらってなかったので、父親に対してあまりいい印象をもっていないのだ。だから、サッカーをしていると聞き見にいくと、デブコーチはケータイ電話で話に夢中。子供たちの練習なんてとんでもない。

だからみかねてジョージが子供たちにサッカーのいろはを教えて、いかにしてゴールしてサッカーが楽しいかを教えるのである。デブコーチはそんなジョージを恨んで、ボールをゴールバーの上の空き缶に当てろと意地悪を言う。しかし、さすがに元スターサッカー選手のジョージは、こんなの朝飯前とばかりに空き缶にボールを当ててしまう。子供たちは大喜びで、次の日から練習に励んで試合でも得点を入れ勝利してしまう。ジョージの息子がゴールを決めたのに、母親たちからの誘惑の電話に夢中で、息子の活躍を見ていない。これでは息子に嫌われても仕方がない。

それに、マッチョなジョージに、チームの子供の母親たちにモテモテで、盛んに誘惑される。それが、女は度胸っていうか、電話攻撃や、メール攻撃なんてもんじゃない。ジョージの家まで押しかけてきて、勝手に家の中に入り、寝室のベッドに裸になり寝ているのだ。そんなことをしたのは、大金持ちのデニス・クエイドの妻役のユマ・サーマン、夫が浮気をしているので欲求不満なのだ。それと、母親集団の中には、元スポーツキャスターのキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、地方のTV局のスポーツキャスターの仕事を世話する代わりに、身体だけの関係を求めてくる。熟女が肉欲たっぷりでキョーレツな役を豪華な女優陣が熱演しているのもお見事。ジョージの家の大家さん、独身なのでジョージの部屋にいい女が、毎晩のように押し寄せてくるのを見てはイライラと、コメディ演技で笑わせてくれます。

何だか、一向に冴えない演出に編集はもたついてるし、観客に伝えようとする意識があり過ぎで、つまり大半が脚本の意味を説明する映像なのである。何が足りないのか、人と人との距離である。例えば雨の中でボールを蹴る父子を離れて見ている元妻のシーン。表情ではなくさりげない距離感を見せてくれればいいのに。
元妻が再婚をするために、ウエディングドレスを取りに店へ行く。そこへジョージがよりを戻したいがために、再プロポーズをするのだが、元妻もまんざらではない様子。しかし、ユマ・サーマンとの浮気写真が発覚して、それは許されないこと。せっかく地方のスポーツキャスターの仕事も決まったのに、結局元のサヤには戻らない。
一人で車を走らせ、でも未練がたっぷりのジョージは車をUターンして戻って来た。元妻も再婚相手のマイクに、まだジョージを愛していると、断ってしまう。で、戻って来たジョージを温かく迎え入れる母子であった。
でもね、こんな男がそう簡単に落ち着くとは思えず、再出発してもなお、一抹の不安はぬぐえませんね。
2013年劇場鑑賞作品・・・260  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
トラックバック (6)

嘆きのピエタ ★★★★

2013年08月24日 | な行の映画
独創的な作風で世界中から注目を浴びる韓国の鬼才キム・ギドク監督による、第69回ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた問題作。昔ながらの町工場が並ぶソウルの清渓川周辺を舞台に、天涯孤独に生きてきた借金取りの男の前に突如母親と名乗る女性が現われ、生まれて初めて母の愛を知った男の運命を描き出す。主演はテレビドラマ「愛してる、泣かないで」のイ・ジョンジンと、ベテラン女優チョ・ミンス。二人の気迫に満ちた演技と、観る者の予想を超えたストーリー展開に圧倒される。
あらすじ:身寄りもなく、ずっと一人で生きてきたイ・ガンド(イ・ジョンジン)は、極悪非道な借金取り立て屋として債務者たちから恐れられていた。そんな彼の前に母親だと名乗る女性(チョ・ミンス)が突如現われ、当初は疑念を抱くガンドだったが、女性から注がれる愛情に次第に心を開いていく。生まれて初めて母の愛を知った彼が取り立て屋から足を洗おうとした矢先、女性の行方がわからなくなってしまい……。

<感想>この映画もだいぶ前に鑑賞したもの。思い出しながら書いてます。内容は、以前に鑑賞した「息もできない」の残酷な方法で肉体的痛みを与え、債権者から借金を回収することで生計を立てているガンドという男が主役です。彼は、暴力を振るうのになんの感情も持たず仕事として遂行してきたが、ある日、30年前に自分を捨てた母親だと名乗る女が現れ、執拗に追い掛け回されるようになる。
残虐な機械のような若者と、その母親を名乗る女性との心理的衝突を描く前半部分には、胸がつぶれるような思いにさせられる。

だが、若者に人間的な心が芽生えるあたりから、彼の動揺を反映するかのごとく、演出モードがズレ始め、観る側もかまえて鑑賞モードを模索することになります。
やがて死せるキリストを抱くマリアにあたる人物が、この映画に複数存在することが明らかとなるころ、母親的なものは、無償の愛などといった美しい言葉には回収され得ない、不気味なものとして立ち現れ、ガンドに復讐の矛先を向けてくる。
この作品は人間を理解する過程を描いたもので、キリスト教的な映画とも取れる内容で、人生を理解する過程つまり生から死までの人間の軌跡を追ったものと言えるでしょう。

そして、自殺です。この作品の中ではたびたび描かれますが、しかし、ガンドはなぜ自殺をせねばならなかったのか?・・・彼は仕事に忠実であっただけで、悪いのは彼ではなくその仕事だったのではないでしょうか?
ガンドは、仕事を選べない状況にあったわけで、それでも自分の行為に恥をしらないでいたことは、許されないと思ったのでしょうね。ガンドは、母親だと信じていた女性が、実は母親ではなかったことを知ると同時に、その女性が息子の復讐のために自分に近づいて来たのだということを知り、初めて深い罪悪感に陥ります。

しかし、人間であれ動物であれ、生きるためには他者の血を必要とするわけで、この映画の中でも殺された動物がかなり出てきますが、動物がそうであるように、人間も時に他人の血や自分の血を犠牲にしなければならない。
ガンドも生きるために、ニワトリやウサギを殺してしまう。その行為はガンドの性格を表現するために、動物をあんなふうに殺してしまうガンドは、同じように機械で人間を傷つけてしまう。彼にとって動物を殺すことと、人間を傷つけることは、殆ど同じ行為なんですね。

ですが、突然現れた女が母親であることを受け入れる前には、生きた魚を捌きますが、母親を受け入れた後では、すでに誰かが捌いた魚を持ってくる。この違いは、ガンドの変化を意味していて、彼は母親の力によって人間性を回復したということなのですね。
それとともに、今まで信じていたものがガタガタと崩れ、彼自身の魂も死んでしまうのです。ラストシーンの衝撃なトラックに引きずられるガンドの自殺行為は、監督の意図とすることで、残酷な描写ではありますが、きっとガンドのような人間を生んでしまったこの世の中とは、どういうところなのか。それを観客へのメッセージと捉えてもいいでしょう。
それにしても、あらゆる映画が、金、金、金の世界は間違っていると語っているようだ。キム・ギドクの作品にみなぎる暴力性には馴染めないが、この作品の“母親”の存在は大変興味深く感じました。
2013年劇場鑑賞作品・・・259  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (11)

さよなら渓谷 ★★★★

2013年08月23日 | さ行の映画
『悪人』『横道世之介』などの原作者として知られる芥川賞作家・吉田修一の小説を、『まほろ駅前多田便利軒』などの大森立嗣監督が映画化。幼児が殺害された事件をきっかけに暴かれる一組の夫婦の衝撃的な秘密を描きながら、男女の愛と絆を問う。愛と憎しみのはざまで揺れるヒロインの心情を、『ベロニカは死ぬことにした』などの真木よう子がリアルに体現。その夫役には『キャタピラー』などの大西信満がふんするほか、大森監督の実弟である大森南朋をはじめ、井浦新、新井浩文ら実力派が名を連ねる。
あらすじ:緑が生い茂る渓谷で幼児の殺害事件が発生し、容疑者として母親が逮捕される。隣の家に住んでいる尾崎俊介(大西信満)がその母親と不倫していたのではないかという疑惑が、俊介の妻かなこ(真木よう子)の証言によって浮かぶ。事件を取材する週刊誌の記者、渡辺(大森南朋)がさらに調査を進めていくうちに、尾崎夫妻をめぐる15年前の衝撃的な秘密にたどり着き……。

<感想>だいぶ前に鑑賞したのでかなり忘れている部分がありますが、衝撃的なまでに印象に残っているのは、主人公かなこを演じた真木よう子の体当たりの演技でしょうか。過去を背負って生きる愛憎の深さが、女性としてズシリと重く心に迫ってきます。彼女だからこそ、かなこを演じられたのではと。いつもなら、寺島しのぶさんとか、満島ひかりさんなど、裸で全身で勝負する演技派の女優さんが演じるので。それでは、また違った感じの映画になっていたかもしれませんね。
妻かなこは、容疑者の夫俊介の関係をなぜ告発したのか?・・・大森立嗣監督は、原作の汗ばむような緊張感や挫折感を忠実に映像化して、15年前の事件が、トラウマになっている男と女の屈折した心情を、炙り出していく。

かつての集団レイプ事件の、被害者と加害者でありながら、夫婦のように共に生きるかなこと俊介を演じた真木よう子と大西信満は、彼らの複雑な関係を冒頭から一枚の布団の上でじっとりと汗ばむような、素肌を絡ませながら体現して見せる。
二人の関係は、どんな言葉で説明するよりも、身体と身体のぶつかる様を見せつけるのがなによりも説得力がありありでした。そもそもの出発点が、大学時代の寮での強姦事件であるだけに、かなこのその後の生き様は順調にはいかなかった。男ができても結婚となると、昔の事件のことが発覚して破談になり、居場所も替えて仕事も転々としてきた。そのことを、知った俊介が贖罪の意味でもあるかのように、彼女の後を追いバスに乗り、一緒に住むようになる。

確かに俊介には、自分の人生を放り出してでも相手に殉ずる、そんな気持ちもあったのではと。いかなる障害を乗り越えてでも結ばれてしまう関係でも、そこに生まれる愛のようなものが感じられたのは分かりました。かな子と俊介は、社会の枠からはみ出ちゃった人たちで、かな子なんて戸籍上にも存在しないぐらいだけど、どこかで自由な二人でもあるわけで。相手の学歴とか年収とは無縁になっている状態だからこそ、愛の本質に最も触れていると思う。

「私たちは幸せになるために一緒にいるんじゃない」・・・暴行事件の加害者と被害者による不可解な同居のわけを、記者にこう答えた。普通のカップルは、ささやかでも幸せを求めて一緒になる。特に女性はと、思いがちである。
一見あり得ぬ設定にどう説得力、現実性を持たせるのか。ヒロインに揺るぎなき覚悟が出来た時に、それが可能になる。憎むべき男との再会、遅ればせながらの懺悔を真摯に繰り返す男を前にして、「私が死んで、あなたが幸せになるなら、私は絶対死なない」と吐き捨てる。完全に主導権はかなこになる。このヒロインを体当たりで演じた真木よう子が、無限のイマジネーションを与えてくれる。映画を、役者の肉体で観る者を圧倒させ、楽しませる喜び、ここに極まります。
流浪の果てに渓谷の町に仮住まい。しかし、ここに小さな幸せの積み重ねはないのだ。隣の家の幼児殺人に端を発し、崩れゆくのもまた摂理。実際にあった秋田幼児殺害事件を連想させ、週刊誌記者の視点で、隣に住む夫婦の過去をめぐる話に移行していく展開に、ミステリー仕立ての面白さがあります。
それを予期していたのか、決して女はそこに長居をすることを考えてはいない。壊れた炊飯器を買い替えないのも彼女の意志。事件後に出会った過去詮索男や、DV男に比べれば、前非を悔い、彼女の警察への嘘の証言すら甘んじて受ける、目の前の男の方がマシと思えてくる。
つい、世間の目から許されない女と、被害者に赦しを乞う男との生活の継続を夢想してしまった。しかし、「幸せになりそうだから」と彼女は「さよなら」とだけ手紙に書き残して、姿を消す。その彼女のこれからの生き様の覚悟に、女は覚悟で生きてゆく懐の大きさに感心した。それは男への赦しなのか。
それでも、男は未練の生き物なのか追い掛けようとする。微妙な余韻を残す終わり方に感服して、週刊誌の記者、渡辺(監督の実弟である大森南朋)と、その妻の和解めいたシーンを、さりげなく対照においた監督の配慮に演出の魅力を感じました。
2013年劇場鑑賞作品・・・258  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (13)

海と大陸 ★★★★

2013年08月22日 | アクション映画ーア行
イタリアの俊英エマヌエーレ・クリアレーゼ監督が、地中海の小さな島を舞台に、将来に不安を抱えるある家族と、島にやってきた難民の母子の心の交流を描いたドラマ。かつて漁業で栄えたリノーサ島も衰退の一途をたどり、父を海で亡くした20歳の青年フィリッポも、伝統の漁師を続けようとする祖父や、漁業に見切りをつけて観光業に転じた叔父、本土で新生活を始めたいと願う母との間で戸惑っていた。
そんなある日、フィリッポはアフリカからの難民を乗せたボートを発見し、幼子を連れた妊娠中の女性をかくまう。しかし、この出来事がやがて波紋を呼び、フィリッポの家族はそれぞれの人生を見つめなおすことになる。第68回ベネチア国際映画祭では審査員特別賞を受賞した。

<感想>シチリア南の島、果てなくつづく海、陽光に満ちた島。港町に流れる夏の時間。イタリア人が休息の地として訪れる地中海・リノーザ島を舞台に、現在ヨーロッパで現実に起きている難民問題と、ひとりの青年をめぐる普遍的な家族の物語を描いている。
小さな島で起きた夏の数日の話がメインのエピソード。のどかな漁師の話が、にわかにアフリカ難民の話へと転調する。そのあたりの呼吸が何とも言えず素晴らしい。

老いた漁師が言う「魚は減り、網にかかるのは人間の死体ばかりだ」という現実に憤然とする。「溺れている者をだまって見ていろというのか」と言う爺さんの言葉にはっとして、人間らしさに安堵もするのだが、イタリア政府の移民排斥政策を、正攻法で的確に告発するクリアレーゼ監督の心意気は実にあっ晴れと言えるでしょう。
昼間の明るい太陽の下、水着姿の若者たちが甲板を埋め尽くす小型船の観光クルーズ。その同じ海で、夜の闇の中を猛然と泳いで来る大勢の不法難民の群れたるや、人間の生きるという凄まじさがこちら側にも伝わってきます。
魚の網を揚げる作業をしている時に、いかだにたくさんの難民たちが手を振ります。そしてフィリッポの船めがけて必死に泳いできます。祖父ちゃんは直ぐに港の警察へ無線で知らせ、それでも船にしがみ付き乗り込む難民たち。

その中に妊産婦と男の子を祖父ちゃんは助けることにしたのです。捕まった難民たちは、アフリカへ強制送還です。
貧困をはじめとする様々な問題を抱えたアフリカの故国を出て、夫が住むトリーノ(スペイン)を目指す母親と息子。アフリカ大陸を縦断し、地中海を渡り、シチーリアの南にある小さな島リノーザ島へと、やっとたどり着いた女性とその子供たち。難民、不法移民は、関係当局に通報し、出頭させなければならないという法律がフィリッポの家族を追い込んでいく。もはや居場所のない古い世界を捨て、新しい世界を目指す者と、自身の世界になんとか居場所を確保してはいるが、その窮屈な中で身動きが取れない者。二者を対照的に捉えることによって、ここではない何処か、今いる場所よりも希望があるだろう地へという、前進していくという。人は動くことによって新しいことを学んでゆくのだから。

フィリッポの家でも、母親が漁業だけでは食べて行けず、夏のバカンスだけでも自分たちの家をリフォームして、観光客に貸してお金を稼ぐことに。そこへ、難民の妊婦と息子を預かり、妊婦はそこで女の子を無事出産する。その逞しさ、その生まれた子供の父親は誰なのかは分からない。それでも、夫が出稼ぎで働いているトリーノを目指してゆく。芯が強いというか決断せざるを得なかったのだろう。前へ進むしかないのだ。

二つの顔を持つ土地に生きる青年フィリッポの戸惑いや、苛立ちがバイクやボート、車といった乗りものを使ってきめ細やかに描き出されていく。演じたフィリッポ・プチッロの素朴な振る舞い、出演者の顔に力があって見せつける。
プロにノンプロを交えた配役もすこぶるいい感じでした。出て来る登場人物が皆、生っぽくそこに生きている。太陽の光の強さも魅力の一つといえるでしょうね。
祖父ちゃんが夜になると、その母子を車に乗せてフェリー乗り場へ連れて行く。だが、そこには警察が取り調べをして船には乗れないのだ。一旦、引き返すも、何を思ったのかフィリッポが車を動かして港へと。そして、親子を自分の漁船に乗せて暗い海を走らせていく。しかしだ、最後も何の解決もないまま放り出される。だがスクリーンの画の力は強烈に映し出している。これでいいのだと。
2013年劇場鑑賞作品・・・257 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
トラックバック (5)

トゥ・ザ・ワンダー ★★★

2013年08月20日 | た行の映画
『ツリー・オブ・ライフ』などの巨匠テレンス・マリックがメガホンを取り、愛の移ろいを圧倒的な映像美とともに描いたヒューマンドラマ。エンジニアの男性を主人公に、シングルマザーの女性との恋が生まれる瞬間や心の擦れ違い、学生時代の女友達との間に抱く安らぎを繊細につづる。主演は、『アルゴ』などのベン・アフレックをはじめ、オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ハビエル・バルデムが共演する。はかなく美しい愛の物語と、フランスのモン・サン・ミッシェルなどを捉えた流麗なカメラワークに陶酔する。
あらすじ:エンジニアのニール(ベン・アフレック)は旅行で訪れたフランスのモン・サン・ミッシェルで、シングルマザーのマリーナ(オルガ・キュリレンコ)と出会い付き合うことになる。アメリカで一緒に暮らし始めた二人だったが、やがて心が離れていくように。そんなある日、ニールは学生時代の友人ジェーン(レイチェル・マクアダムス)と久しぶりに会い、やがて彼女に心の安息を感じるようになり……。

<感想>ワンダーとは、テレンス・マリック監督によると一義的には、この映画の冒頭の舞台となる、ワンダー「驚異」大自然の驚きと呼ばれるフランス・ノルマンディー海岸の島、モン・サン・ミッシェルのことである。しかし、それは人が人を愛することの驚異=ワンダーであり、ワンダーが幾重にも重なって広がり、展開されていく、それは映画の未来を照らす光かもしれない。

男女の不毛とも取れる愛憎と、信仰に苦しむ牧師の姿が描かれる。描きようによっては醜く、耐え難いはずのドラマだが、マリック監督は、そんなドラマの中にもあらゆるものに「ワンダー」を見出そうとする。フランス・ノルマンディー海岸の自然が繊細に捉えられているのは当然としても、監督はオクラホマのスーパーマーケットの店内にさえ繊細な美しさを見出している。
ベン・アフレックが演じる主人公は、環境保護調査員の仕事に就いている。人の営みを包み込む自然を、人が自らの手で破壊していることにマリック監督はさりげなく、しかし、真摯な姿勢で触れている。しかしそれとて、例え人が自らの手によって滅んだとしても、それは永遠の宇宙の「ワンダー」からすれば取るに足らないことだろう。

物語は主に登場人物たちのモノローグによって語られ、進んでいく。セリフとセリフのやりとりによる、登場人物どうしの葛藤や演劇性はほんのわずかである。というかエピソードの断片として見せられるだけ。これほど演劇性から遠ざかっている映画はない。
ストーリーはそんなに若くない男女の恋のドラマ。アメリカの男性がフランスで、フランスの女性と恋に落ちる。10代で結婚し、失敗した女には、小学生くらいの娘がいた。3人はアメリカへ行き一緒に暮らす。しかし、うまくいかず、彼女と娘はフランスへ戻り、娘は父親のもとへ引き取られる。女は再びアメリカへ行くが、二人は決してうまくはいかない。どうなるのか?・・・。

男女の愛の高揚と終焉という単純で、かつある意味下世話な物語を、超越的な主題と結びつけているも、今回は無理がない。フランス女は情熱的で、結婚という決まり事に縛られたくないようだ。家庭的ではなく、いつも男とベットを楽しみたい。男は仕事で疲れ苦しんでいる。家庭に帰っても洗濯も炊事もしないフランス女。愛しているから一緒にいようでは済まされない何かが存在する。

「愛」という、見えないけれども絶対的に思えるもの。「神」という、見えないからこそ信じたいもの。「結婚」という、信じるに足るらしい制度。つまるところ孤独と表裏一体の愛というものに還っていく何かを、映画にするための試みなのだろうか。俳優たちが全力で、監督から提示された普遍的な「何か」と、アメリカの現実の表し方に挑戦して苦しんでいるように見えた。
叙情的な映像が美しいのは間違いない。撮影は「ツリー・オブ・ライフ」のエマニュエル・ルベッキ。言ってみれば難解な映画だが、今やマリック監督は、映像=心象を求め続ける。人に分かってもらう映画を作る気はないのに違いないのだから。
2013年劇場鑑賞作品・・・256 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (12)

スター・トレック イントゥ・ダークネス★★★★

2013年08月19日 | アクション映画ーサ行
前作に引き続きJ・J・エイブラムスが監督を務め、クリス・パインやザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナらも続投するSFアクション大作の続編。謎の男によって混乱にさらされる地球の命運に加え、カーク船長率いるUSSエンタープライズ最大の危機を活写する。冷酷な悪役を、『裏切りのサーカス』のイギリス人俳優ベネディクト・カンバーバッチが怪演。人類の未来を懸けた壮大な戦闘に加え、人間味あふれる物語に引き込まれる。

<感想>先行上映、2Dにて鑑賞した。ド派手な見せ場をふんだんに盛り込んだ待望の続編。前作の後日から始まる正統的な続編である。ロンドンの爆破テロ、サンフランシスコの艦隊本部襲撃によりパイク提督の死亡という事件が起き、規律違反で副長に降格されていたカークは、首謀者のジョン・ハリソンなる謎の人物の暗殺という密命を帯びる。
だが、ハリソンは“超人”の能力を示し、カークを艦隊反逆の道に誘う。復讐の感情を抑え、暗殺でなく逮捕すべきではないか、調査船に新開発光子魚雷持ち込むのは規約とモラルへの背徳ではないか。クルーとの議論に至るこれらのエピソードは、アメリカ軍によるビン・ラディン殺害作戦や、日本への核持ち込みの議論を容易に連想させるようにもとれる。

冒頭の惑星ニビルの探査では、火山の噴火から住民の生命を救うべく冷凍爆弾の起動をスポックに指示する。だが、危機に陥ったスポックを助けるため、宇宙艦隊の最優先規約に反する行動に出てしまう。スポックを救出するが、彼は船長を解任されてしまう。宇宙艦隊にカークの規約違反を報告したのは、彼が助けたスポックなのだ。「命を救ってくれたことに感謝はするが、規則違反は報告の義務があり当然のことだ」と答えるスポック。カークは自分の判断は間違っていないと憤慨する。2人は別々の船での任務に就くことを命じられる。

その直後に、宇宙艦隊の資料保管庫で、多数の死傷者が出る爆破テロが発生。宇宙艦隊は幹部を非情召集し、対策会議を行う。だが、カークはその席で敵の狙いを直感で感知。しかし、時すでに遅く、会議場はハリソンによる攻撃を受けてしまう。カークの機転でかろうじて敵を撃退したものの、重傷を負ったパイク提督が絶命してしまう。
ニビルでは、現地の未開人に宇宙船を目撃され、「探査の目的から逸脱した」と非難されたカークは、マッコイらの助言も聞き入れない。
自分を宇宙艦隊に導き、父親代わりに指導してくれた恩師の死に動揺するカーク。彼はパイク提督の敵討ちのため、犯人ハリソンの追跡をマーカス提督に直訴する。しかし、ハリソンは宇宙艦隊の法が及ばないクリンゴン帝国宙域にトランスワープしていた。クリンゴン帝国の領域に惑星連邦の宇宙船が侵入するのは戦争の勃発を意味する。

そこでマーカス提督は、新型光子魚雷を中立地域から発射してハリソン暗殺をカークに指示するのだが、カークは民間の小型宇宙船に武器商人に扮して乗り込み、クリンゴン帝国の本拠地、惑星クロノスへの潜入を試みるわけ。クリンゴン人との銃撃戦に、そこへ銃を持ったハリソンが現れる。

意外にも簡単にハリソンを拘束したカークは、怒りにまかせて処刑することはせず、裁きを法廷にゆだねるため地球へと向かう。しかし、エンタープライズ号は突然の航行不能に陥ってしまった。そのエンタープライズの前に謎の巨大戦艦が出現する。そして、攻撃を仕掛けてきたのだ。応戦しようにも武器系統が全て使えず、さらにワープ速度も3倍という敵戦艦に対しては、逃げることすらできない。絶対絶命の危機の中、カークはハリソンに対して思いもよらぬ申し出をする。ここでネタ晴らしすると、映画を見るのがつまらなくなりますので、それは見てのお楽しみです。
地球の引力に引っ張られ、このままでは墜落必至のエンタープライズの運命は?・・・。

見せ所は、ベネディクト・カンバーバッチ演じる敵キャラクター、ジョン・ハリソンに、エンタープライズ号のクルーをかつてない危機へと追い詰める冷酷非情な男を演じている。
それに、意外にも機関部長のスコッティこと、サイモン・ペッグの活躍に驚きました。彼は誰よりもエンタープライズを愛し、その心臓部を任されて詳しいのだ。結構思ったことをはっきりと口にするタイプで、カークと喧嘩したりするも、肝心な時にはずばりと物事を言う。それがカークの心に響いて、エンタープライズを起動させるためって、自己犠牲って凄いことやるんだ。実際に、もうカークは死んだと思った。

今回のカークは最初に最悪な状況に陥れられる。エンタープライズ号は壊れかけるほどの打撃を受けてしまい、カークも同じように打撃を受け、自分の強さを試され、自分も気づいていない強さを発揮するよう強いられる。仲間たちと共に試練を受け、その試練を切り抜けて最終的にどこまで、彼らができるのか、どこまで自分たちを究極まで追い込んで、人を助けるために何ができるのかという。物語のテーマとしては自己犠牲であったり、忠誠心であったり、ファミリーだったりとか。でもやっぱり3Dで見たかったぞ。
2013年劇場鑑賞作品・・・255  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (36)

ホワイトハウス・ダウン ★★★★★

2013年08月18日 | アクション映画ーハ行
「インデペンデンス・デイ」「2012」のローランド・エメリッヒ監督が、謎の組織にホワイトハウスが乗っ取られ、ワシントンD.C.が危機に陥る様子を描くアクション大作。議会警察官のジョン・ケイルは、大統領のシークレットサービスになるため面接試験を受けるが不採用となってしまう。幼い娘をがっかりさせたくないと、ジョンは娘をホワイトハウスの見学ツアーに連れ出すが、その時、謎の武装集団がホワイトハウスを襲撃、占拠するという前代未聞の事態が発生する。政府が大混乱に陥る中、ジョンは大統領や娘、そして合衆国の命運をかけた戦いに身を投じる。主人公の警察官ジョン・ケイル役に「G.I.ジョー」のチャニング・テイタム、米大統領役に「ジャンゴ 繋がれざる者」のジェイミー・フォックス。

<感想>この映画の主人公は、ホワイトハウス・ファンの少女エミリー。そして黒人大統領を守り抜こうとする娘の父親ジョンである。議事堂護衛の守衛であるジョンは、大統領警護のシークレット・サービスになろうと躍起になっているのだが、日本には首相官邸ファンや官邸警護員になりたがる人ってあまりおらず、さらには、大統領選で膨大なボランティアが沸いて出るアメリカと違って、議院内閣制の首相選出にもあれほどの昂奮はないから、日本の観客の目には劇中での父娘の行動に、不可解に映るかもしれませんね。

それでも、同じコンセプトの企画で3月に公開された「エンド・オブ・ホワイトハウス」よりもこっちの方が数段面白かった。ストーリー的に似ていてもまったく違うのは敵。北朝鮮からのテロリストによる襲撃だったし、同じく一人の男、シークレット・サービスの男が大統領と独り息子を守るお話だった。
あの映画で思ったのは、ホワイトハウスのセキュリティの薄さに驚いた。アメリカを陥れることが出来るのは、内部にいる人間が関わっていること。これは政治的な映画で、一見テロリストのようだがそうじゃない。ここで起こっているのはクーデターなのかもしれない。

主人公のジョン・ケイルは大統領を尊敬する娘をがっかりさせたくないために、ホワイトハウス見学ツアーに参加するが、偶然、重武装した集団によるホワイトハウス乗っ取りの場に、居合わせてしまったのだ。ジョン・ケイルを演じるのは、米ピープル誌が選ぶ「世界一セクシーな男2012」に選ばれたチャニング・テイタム。アクションもラブストーリーもコメディもこなし、今最も脂ののっている彼が、元軍人という設定にふさわしい身のこなしと、鍛え上げられた筋肉美を披露。スタントの殆どを自らこなしたと言う、そのワイルドでセクシーな熱演には目が釘付けになります。

そして、彼が守ることになる大統領ジェームズ・ソイヤーを演じるジェイミー・フォックスとの絡みも見ものですよ。大統領を前にしても動じることなくタメ口で話すジョンと、大統領とは思えない戦いぶりを見せるジェイミーの掛け合いは、時にハードで、時にユーモラス。

さらにもう一人の主役のエミリーが、下員議長(大統領代行)によるホワイトハウス爆破に待ったをかけようと、「大統領旗を打ち振り」のシーン。ホワイトハウス目がけて戦闘機がミサイルで爆破する寸前を、エミリーが大統領旗を一生懸命に振る姿を見た戦闘機のパイロットが、命令に背いてユータンするシーン、この断行させる圧巻のシーンに惚れ惚れしました。彼女を演じたのはジョーイ・キング、ジェームズ・ブランコ主演の「オズ はじまりの戦い」では陶器の少女の声を演じて、「ラブアゲイン」ではウィーバー家の娘の役を演じていたのですね。
さらに、さらにもう一人、ホワイトハウス・ツアーガイドのお兄ちゃんだ。彼は日本なら京都や奈良の歴史ガイドにあたり、官邸に所蔵されている古今の名器に通暁しており、それらを無造作に破壊するテロリストが許せず、命がけで抗議するのだが、いかんせんお金の価値がある所蔵品など屁でもなく銃でぶっ壊すのだ。そんなツアーガイドの兄ちゃんが、最後に全滅した大統領シークレットに代わり、押しかけ警護者の主人公ジョンが危ない所を救うべく、名器の一つでテロリストを殴り殺し、壊れた名器の由来を呟いて投げ捨てるショットは痛快そのものであった。

そして、主役級といえるのが、戦いの舞台となるホワイトハウス。監督のローランド・エメリッヒは、ホワイトハウスをできるだけリアルに描くことに力を注ぎ、一般的には解放されていない中枢部まで忠実に再現。オバマ大統領の経費節減政策によって見学ツアーが中止されたいま、ホワイトハウスの内部を見られるのはこの映画だけかも。いわばこの映画自体がスクープとなっているのだ。

しかも、監督はこれまで2度もホワイトハウスをぶっ潰してきたディザスタームービーの巨匠であるからにして。今回も無残な姿へと変貌していくホワイトハウスの姿を、惜しげもなく映し、武装組織との銃撃戦から、炎上する軍事ヘリの墜落まで、激しいアクション描写で見る者を震え上がらせる。
合衆国政府が突然の混乱によってカオスと化し、国家の運命を委ねられたジョンは、まるで「ダイハード」のブルースのようにランニング一枚で、タイムリミットまでのカウントダウンが迫る中、孤独な戦いを続ける彼の活躍から目が離せなくなる。しかし、大統領が生きているのにそれが中枢部に知らせないと、次の大統領が選ばれて、核ミサイルボタンの暗唱番号とIDを知らされるなんて、これは次期大統領の椅子を狙うクーデターの物語だ。

ホワイトハウス襲撃があれほどアメリカが恐れてきた外敵によるものでなく、自国政治機構内部のクーデターだったとする設定は、「アメリカは絶対に外敵によって破壊されることはない。我々が腰が据わらず、自らの自由を喪失するのは、我々が自らを破壊する場合だ」という、リンカーンの言葉を連想させる。
それでも、ホワイトハウス救済が、父娘の信頼感回復に連結される場面で、大統領旗というシンボルが、アメリカ国民の象徴でもあるという意味では印象的なショットでした。
2013年劇場鑑賞作品・・・254  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (41)

クソすばらしいこの世界 ★★★

2013年08月16日 | か行の映画
本作で長編デビューを果たす朝倉加葉子が監督と脚本を担当し、『息もできない』で大きな存在感を示したキム・コッピをヒロインに迎えて放つホラー。留学先のアメリカで、とんでもない悲劇に見舞われることになる留学生たちの身の毛もよだつ体験を活写。衝撃作『ムカデ人間』で注目を浴びた北村昭博や、元AV女優のしじみらが共演。日韓のアイデンティティーを交錯させつつ描かれる、血みどろの地獄絵に卒倒しそうになる。

<感想>仙台でもやっと上映された。今年の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」でプレミア上映された朝倉加葉子監督作。女性監督による初の劇場映画がスラッシャー、しかも舞台はアメリカの荒野。ヒロインは「息もできない」のキム・コッピ。微妙に下品なタイトルの指し示す意味とは?・・・。
アメリカに留学しながら学びもせず、酒とドラッグにうつつを抜かす日本人留学生たちが、キャンプ先でホワイト・トラッシュの殺人鬼兄弟に襲われるお話。
アメリカの片田舎のキャンプ地で、次々に手足を切り落とされていく犠牲者が、日本人留学生たちというところに時局的な面白みがあると言えばあるんですよね。

親が金持ちで大学に多額の寄付をしているから、帰国して「留学」に一字を履歴書に書き加えることだけが目的で、英語などまるっきり喋れないまま、マリファナやセックスだけは一丁前に謳歌しているという。中には一人だけ、エリカ様だけは英語が喋れる。
でもね、猛烈に帰りたくなっても電車に乗って、みたいな場所ではない。最寄りのコンビニですらえんえん歩いても辿り着けない僻地の別荘なの。文明の利器たるiPhoneだって電波が届かなければ、ただのガラクタですから。

しかも、その兄弟とはコンビニですれ違っていたんですよね。一連の残虐殺人は、金銭目当てのホワイト・トラッシュ(クズ白人)の、レッドネックの兄弟の仕業で、父親不在の世界で、死んだ“ママ”への思い出への執着が、兄のヘンリーにあるらしいところが、かの有名なヒッチ・コックの「サイコ」みたいなシーンで見られます。殺人者がシャワーで血を洗うと排水口に鮮血が渦巻いて流れ込むシーンなんかは、もう「サイコ」のパロディであることは決定的である。
殺人鬼兄弟の弟ヴィクターが、殺人の後始末を「イエローの女」に目撃されたというところから、6人の東アジア系留学生に危険が迫るわけだが、どうやらこの弟と入れ替わって自ら新たな殺人者と化すエリカ様の方に「サイコ」じみた文字通りサイキックな秘密または謎があるんですね。この殺人鬼と化したエリカ様の、秋葉原メイド衣装が実にユニークでいい。

キャンプ行きの金づるに誘いこまれた韓国人留学生アジュン(キム・コッピ)は、日本語が全くダメだから頼りはエリカ様だけ。苦労して仕送りをしてくれる本国の母親への恩返しを口にして、努力努力で成績トップクラスというアジュンが、唯一生き残る人間として選ばれるのなら救いがあるのだが、物語の逆説からしても一番弱い人間が生き残る、そうなるしかないと思っていると。
果たしてその通りになった。地獄巡りの果てに何かを得る。これをしも一人一人の人間の成長物語。認識獲得の物語と呼べるとしても、荒涼たる風景の中をふらふら遠ざかっていくアジュンの姿が幕切れとは、これぞ救いなしとも読めるし、そこは観客の判断に任せているという終わり方っていうのもいいです。

映画のラストで、辛うじて興味を繋ぎ止めてくれるのが、この弟ヴィクターとエリカ様の、激しくもアンドロジーナスな入れ替わりがもたらす早い展開だが、結局は、一番深められそうなこの謎解きは、血なまぐさい活劇の中でウヤムヤになってしまう。
傑作の「悪魔のいけにえ」や凡作だった「13日の金曜日」、「飛び出す悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲」など、血を正当に受け継いで見せた、こうしたスラッシャー・ホラーの基本フオーマットは、どちらかというと日本の風土に馴染みがたいそれを、冒頭で雄大なアメリカの風景に置くことで、一気にリアリティを獲得していると思った。それに、ラストシーンでの雪が降るところ。偶然なのか知らないが効果的な雪のショットが素晴らしかった。
2013年劇場鑑賞作品・・・253  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
トラックバック (2)

マニアック ★★★.5

2013年08月15日 | ま行の映画
ウィリアム・ラスティグ監督による1980年の同名映画を、「ピラニア3D」のアレクサンドル・アジャ&「アーティスト」のトマ・ラングマン製作、「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャ・ウッド主演でリメイクしたサスペンススリラー。
ロサンゼルスで両親が経営していたマネキン店を継いだ青年フランクは、淫乱で残忍な母親に育てられたトラウマから、生身の女性を愛することができず、自分が修復したマネキンたちに愛情を注いでいく。やがてフランクは夜な夜な若い女性を殺害し、その毛髪を頭皮ごとはいで自分のマネキンにかぶせるという異常な行動に出始める。そんなある日、フランクの前にマネキンを作品のモチーフに使わせてほしいという女性カメラマンのアンナが現れ……。

<感想>1980年版の猟奇的サイコサスペンスのリメイクで、主人公の名前や猟奇性はほとんどオリジナル版のままだが、サイコホラーの恐怖度も時代と共に進化している。その痛さやサスペンスの密度は、この現代版の方が段違いに上だと感じた。
それは主人公役を「ロード・オブ・ザ・リング」3部作で全世界の老若男女のヒーローとなり、「ホビットの思いがけない冒険」でも、その品行方正な優等生的存在感を見せつけてくれるイライジャ・ウッド。
しかし、「シンシティ」で見せた怪演を確実に覚えているファンにとっては、彼がただの“いい子“なんかじゃないことは百も承知のはず。それもそのはず、彼はホラー映画専門の制作会社を設立するくらいの本格的なホラー・マニアなのである。
このところ、お行儀のよい芝居が続いた反動か、ついに自らの暗黒面を前面に押し出した狂気の演技で決めている。

イライジャが演じるのは、オリジナルではジョー・スピネリが小汚く演じたマネキンしか愛せない頭皮剥ぎ殺人マニア。KNBエフェクツの特殊メイクで描かれる強烈なバイオレンスの中で、イライジャは繊細かつ優雅なまでの圧倒的演技で、殺戮でしか愛を表現できない主人公の心情を表現。それは見る者に殺人鬼へのシンパシーを感じさせる域まで到達していると思った。
だが、何度も出て来る主観映像(鏡に映るイライジャ)が、観ているこちらの感情を殺人者側に同化させるような効果をもたらす。けれど、その変質的殺人は確かにおぞましいが、主人公のキャラクターにどこか哀れさを誘うものがあり、というか、まだ未熟なときに魂を傷つけられ、でも何がしか無垢なるものも残っているとでもいうような。
贔屓目は抜きにしても、主人公の人格形成を大きく左右した母親の存在が決定的で、そういう意味ではこの主人公は犠牲者でもあるのだ。男好きで薬中毒、溺愛と放置の繰り返しで、息子を育てたシングルマザー。よくある話だが、そういえば笑うしかないほどおぞましい快作中の「ムカデ人間2」の主人公も、息子を口汚く罵倒する母親と暮らしていた。予告編でしか見てないが。

そして、マネキン修復師という主人公の仕事。無機質な物体であるマネキンを、より完璧に仕上げるために、殺した女たちから剥ぎ取った毛髪を、頭皮ごとマネキンの頭にかぶせるというのだが、終盤で、何体ものそんなマネキンが置かれた彼のベッドルームの醜悪、不気味さはまさに悪夢そのまんまで、臭気すら漂う気分である。
「人間の身体の部分で唯一永遠なのは髪の毛だ」と、マネキン修復師のフランクが、一方的に妄想を募らせている女性カメラマンに言う。命が消えた肉体は、直ちに腐敗していくが、毛髪だけはそのままだということ。女性カメラマンを通して、美術界の俗悪ぶりを皮肉っているのも印象的。
そういえば、日本の「リング」シリーズの貞子の長い黒髪も、呪いと恐怖の重要な一部を担っていた。毒を飲まされた「四谷怪談」のお岩の髪の毛が、ゾロリと抜け落ちるのも、髪は女の命と言われているから、何故か恐怖映画には、女の髪の毛が付き物である。
2013年劇場鑑賞作品・・・252  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
トラックバック (6)

映画 謎解きはディナーのあとで ★★★

2013年08月14日 | アクション映画ーア行
2011年の本屋大賞に選出された東川篤哉のミステリー小説を、嵐の櫻井翔と北川景子ら共演で映像化した人気テレビドラマの劇場版。財閥令嬢の新人刑事・麗子とトゲのある口調ながら彼女の推理を支える執事・影山という凸凹コンビが、アジア最大の豪華客船の中で起きた殺人事件の謎解きに挑む。「お嬢様の目は節穴でございますか?」と執事にあるまじき暴言を言い放つ影山と麗子の掛け合いはもちろん、中村雅俊、鹿賀丈史、宮沢りえ、生瀬勝久、竹中直人ら多彩なキャスト陣にも注目。
あらすじ:財閥の令嬢で新人刑事の宝生麗子(北川景子)と執事の影山(櫻井翔)は、久しぶりの休暇を楽しむためシンガポール行きの豪華客船に乗り込む。しかし、出航後ほどなくして船内で殺人事件が発生。乗員乗客3,000人を乗せた船が目的地に到着するまでの5日間に犯人を捕らえ、事件を解明しようとする麗子と影山だったが、次々と事件が発生してしまい……。

<感想>TVシリーズは、たまに見てました。テレビの映画化だからといって、映画らしさを出す必要もないが、スペシャルドラマで十分な内容なのでどうってことない。シンガポール行きの豪華客船に乗った気分で映画を鑑賞。
本格ミステリと、泥臭いコメディのドッキングという狙いは、悪くないと思います。豪華客船上での殺人事件。雰囲気はとてもあるのですが、謎がちょいと弱かったかなぁ。口の悪い執事とお人好しの主人というコンビは先例ありとのことで、そっちも有名になったが、これはこれで良し。

ただ事件の本筋とは無関係なお邪魔虫キャラと、彼らのドタバタが多すぎてしらけてしまう。つまり、竹中直人と大倉孝二扮する凸凹コンビの泥棒が、風祭警部の椎名桔平さんの部屋にある、黄金の翼を持つ“Kライオン”を盗む下りです。それが本当に安物って感じで、翼の片方が取れてしまうんですから。
もう一つのお宝は、宝生家の50億円もする“セイレーンの涙”なのです。両方ともそれは厳重なセキリティで管理しているのですがね、・・・。

そして、支配人・中村雅俊の娘の恋人である要潤さん、実はかれも泥棒だったのですが、運悪く彼女の父親に見つかり殺されてしまう。それも全裸で。

それと、厨房のシェフと機関士の男、警備員の甲本雅裕の3人組み、何やら怪しい感じがするでなし、実は船長の加賀丈史への誕生日ケーキプレゼントを作ってたんですね。
そして、ニャッとしたのが、何と宮沢りえの貫録ぶり、なんでこんな作品に(失礼)少し老けたかなぁ、謎多きオバサン役で、やっぱりお騒がせ女として意外性があり、その正体も、びっくりですから。
いくら娯楽ミステリだからとはいっても、過度な遊びや寄り道は、作品を薄っぺらにするだけ。お嬢様刑事と毒舌執事のコンビも、もう一つスマートさがあればと感じましたが、TVドラマからスタートしたキャラだけに不満を言ってもしょうがない。
北川景子よりも、櫻井翔を立てている趣旨のせいか、彼女が豪華なドレスを着て登場しようが、華がない見せ方に終始しているようで、ロマンチック・コメディ部分が不足しているのも当然。無人島に漂着して主従関係が逆転する展開も活かされていないのも残念である。

美貌のご主人がせっせと仕事をしている間に執事は骨休め、というコンセプトにシャッレケがあって良かったのですが。名探偵の休暇、もっとも、休んでいたのではないと、後で分かる仕掛けで怪盗の件も含め、全体に「後で分かる」ということが多くて、そこまでに退屈してしまうのが残念。これを見れば一流の執事魂を体得できるように出来ており、執事志願者には必見ですぞ!
豪華客船という限定空間が舞台にもかかわらず、主要人物が都合よく現れたり、消えたりしては、謎解きはどうでもよくなってしまうのは惜しい。丸ごとレジャー気分の映画で、楽しみましょう。
2013年劇場鑑賞作品・・・251 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (12)

少年H ★★★★

2013年08月13日 | アクション映画ーサ行
作家・妹尾河童の自伝的小説で、上下巻あわせて340万部を突破するベストセラーを、「ホタル」「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男監督が映画化。太平洋戦争下という時代に翻弄されながらも、勇気や信念を貫いて生きた家族の激動の20年間を描き、実生活でも夫婦の水谷豊と伊藤蘭が夫婦役で映画初共演を果たした。昭和初期の神戸。名前のイニシャルから「H(エッチ)」と呼ばれる少年・肇は、好奇心と正義感が強く、厳しい軍事統制下で誰もが口をつぐむ中でも、おかしなことには疑問を呈していく。Hはリベラルな父と博愛精神に溢れる母に見守られ成長し、やがて戦争が終わり15歳になると独り立ちを決意する。

<感想>毎年のごとく8月15日が来る度、日本人が辿った戦争の歴史を思い、二度と繰り返さないと、その気持ちを強くします。
激動の昭和初期をたくましく生き抜いた神戸のある一家の姿を描いている。リベラルな父親を水谷豊が演じ、実生活でも妻である伊藤蘭と夫婦役で共演。昭和10年代、神戸の下町。妹尾家の長男、肇は小学校の帰りに友人たちと海で道草をくったり、父親の仕事のお伴で外国人居留地を訪ねたりと、無邪気に子供らしい毎日を送っていた。だが、彼と家族のつましくも明るく幸せな暮らしに、戦争の影が徐々に忍び寄ってくる。

戦争が始まり、外国人を顧客に多く抱えていた父親盛夫にスパイの嫌疑がかかる。警察に連行された盛夫は夜どうし拷問を受け、洋裁で生計を立てている彼の右手を中心に痛めつけられる。息子の肇も学校でスパイの息子といじめに遭う。
中学生になった肇も軍事訓練でしごかれ、軍国主義に対する素朴な疑問を口にし、原田泰造演じる田森に目を付けられる。好きな絵を描いていつも画集を持って歩く肇。裸婦の西洋画を模写したことで「敵国の絵を真似るとはけしからん」と、田森に体罰を受ける肇。そんな彼を救ったのが、軍国主義に染まらない教官の佐々木蔵之介に出会う。
そんな中、肇と仲良くしていた近所のうどん屋の息子、小栗旬が政治活動をしていたらしく、ある夜のこと、「アカ」として逮捕されてしまう。一方では、オトコ姉ちゃん(早乙女太一)が、召集令状に一旦は応じたものの、出兵後に脱走し首吊り自殺をして死んでしまう。肇の周辺で戦時下の暗い空気が漂い始める。

戦争で外国人たちが帰国し、仕立て屋が立ちいかなくなったため、父親は志願をして消防士になる。体が小さい盛夫は、消防士の制服が大きくて、まるで貸衣装みたいだとみんなに囃され、一晩で自分の身の丈に合わせて作り上げる。
さすが、仕立て屋だけのことはある。しかし、消防士の仕事は、重労働で辛い毎日だ。
まだ幼い妹は田舎かに疎開させ、その後、神戸も大空襲に見舞われしまう。母親と二人で家に残っていた肇は、空襲の焼夷弾で家が焼け、火事を消そうと奮闘するが、近所の人たちは消火訓練のかいもなく、みんな逃げていなくなり町は一晩で焼け野原となる。それでも、父親の大事なミシンを2階から降ろすも、外は猛火で逃げるのに精いっぱい。命が助かっただけでも有難い。

空襲で避難所暮らしを余儀なくされる妹尾家。それでも、母親の敏子はどんな逆境にあっても楽観的で、キリスト教の愛を体現し変わらぬ明るさを持ち続けます。戦時中といえども将来、様々な国の人と交流するだろうと、教会の外国の人が国に帰る時に頂いたナイフ、フォーク、スプーンを取り入れ、外で話すときは標準語を使いなさいと、子供たちに新しいものをどんどん取り入れる。戦後の物不足の時代でも、自分の家族がやっと食べられるご飯を、隣の家族に分けて上げる優しさ。これには、肇も母親に反発して怒ります。でも、こういう母親だったからこそ、家の中が明るく和んで良かったのですよ。伊藤蘭さんの母親の演技も素晴らしかったです。

そして、父親の水谷豊さんの何より強く印象に残っている場面は、空襲の翌朝、自宅周辺の焼け野原で呆然とたたずむ姿。息子の肇を見つけた時、彼は喜びの表情さえ出すことができなかった。その後も、避難所暮らしでは、まるで抜け殻のような水谷さん。憔悴しきって何もする気が起こらないのだ。そんな時に、妻の敏子が宗教の信念ゆえの強さを見せて、家族を支える夫婦愛とでもいうのでしょうか良かったですね。

最後は、息子の肇が家を出て自立をして、絵描きになろうと頑張る姿が眩しかったです。理不尽と我慢を強いられる戦中、肇が線路の上で死のうと覚悟するも、何かを感じたのでしょうね、生きることを選んだ肇少年。

そして不安を抱きながらも「普通に生きられる喜び」を感じる戦後を、ユニークな家族の物語とともに描いていて、今現在、ささやかな日常を過ごせることの尊さを、この映画の中で戦争をあらためて考えさせる作品です。
2013年劇場鑑賞作品・・・250 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (20)

ワールド・ウォー Z ★★★★

2013年08月12日 | アクション映画ーワ行
ベストセラーを記録した、マックス・ブルックスの小説を実写化したパニック大作。人間を凶暴化させる未知のウイルスの感染原因を解き明かそうと、感染者と非感染者の死闘が繰り広げられる世界各地を駆ける元国連捜査官の姿を、息詰まるタッチで活写する。ハリウッドスターのブラッド・ピットが主人公にふんし、製作も兼任。監督は『007/慰めの報酬』などのマーク・フォースター。無数の感染者が群がって生じた巨大人柱が防壁を越えようとするなど、圧倒的映像の数々に息をのむ。
あらすじ:元国連捜査官のジェリー(ブラッド・ピット)と家族の乗った車が、渋滞にはまっていた。すると、前方で爆発音が聞こえ、トレーラーが無数の車をはじき飛ばしてクラッシュし、パニック状態の群衆が通りになだれ込んでくる。そのただならぬ状態から家族を守ろうと、妻子を連れて逃げるジェリー。やがて、彼は人間を凶暴化させる未知のウイルスが猛スピードかつ世界的規模で感染拡大しているのを知る。そんな中、元国連職員の技能と知識を買われたジェリーは、各国を回ってウイルスの感染原因を突き止めるよう依頼される。

<感想>監督マーク・フォースターと製作・主演ブラッド・ピットの不仲が囁かれ、一時は完成さえ危ぶまれた本作。しかし、蓋を開けてみればそれは誰も見たことのない、原因不明のウィルスが蔓延した世界を舞台に、狂暴化しアンデッドと化した感染者との闘いが描かれていた。
とはいえ、単なる「ゾンビ映画」でもない。ある朝目覚めて、突然重要なものがすべて無意味になっていたら。自分と家族の命を守るために逃げなければならなくなったら。この映画のお話なのだが、冒頭の数分間で、予告で見た映像が見せられて、そこからがすごい。とにかくゾンビの走るのが速い。まるで稲妻ゾンビ。

ゾンビ映画というと、前に観た「28日後…」のゾンビも素早かったが、このままではウィル・スミスが主演した「アイ・アム・レジェンド」状態に世界がなっても嘘じゃない勢いなのだ。感染源を阻止する方法も分からない状態なのに、ある時突然に、全世界に拡散してしまったらどうなるのか、というお話です。さすがに、自分の家族だけは、無事アメリカの航空母艦へと軍のヘリで救出された。
そして、ブラピ演じる元国連捜査官のジェリーが、各国が感染し侵されるなか、事態の悪化をどうやって阻止するのかを究明しようとするのだが、どういうわけか、大きな壁を作った国、エルサレムだけがまだ感染されていないというのだ。すぐに、軍の飛行機で飛ぼうとするも、飛行場にもゾンビの猛威が押し寄せており、ブラピは間一髪で民間機に乗せてもらう。
感染者を滅ぼすために核ミサイルが発射されたのだろうか、輸送機の下に広がるキノコ雲が見える。同乗する女性が、飛行機の中に隠れていたゾンビに手を噛まれてしまう。即座にブラピがその女性の腕を切り落として、10秒間、数を数えて様子を見ると女は感染していなかった。そして、飛行機の中でのゾンビとの戦いは、スーツケースでゲートを作るもそんなの直ぐに崩されてダメ。ブラピが飛行機の壁に手榴弾を投げ、その炸裂によって空中分解し、感染者も非感染者も一緒くたになって機外へと放り出された果てに墜落してしまう。
それでも、自分と女はシートベルトをしてしっかりと椅子に掴まる。しかし、二人だけ助かるって、まぁ主人公は腹に飛行機の破片が刺さって大丈夫なの。
しかし、その中でも壮絶なのが、感染者が巨大防護壁へと群がって山となり、瀑布のごとくよじ登って傾れ込み、鉄砲水のように路地という路地を埋め尽くしていく。エルサレムにおけるゾンビ液状化襲撃シーンは、最大最強の見せ場といっていいでしょう。
その中にある病原体を持っている患者を、彼らが避けて通るのを見たブラピは、これは何らかのウイルスでワクチンを作れば助かるのだ、と思いつくのですが、これからが大変だったのです。その研究所の中も、ゾンビでいっぱいだったのですから。それでも、音に反応するゾンビなので、恐る恐ると、それこそ抜き足差し足、忍び足の「まるでだるまさんが転んだ」の遊びでもしているようでしたね。
スリルとサスペンスを追求したゾンビ・ムービー、繰り出されるパニック&カタストロフ描写にびっくりですから。しかしながら、ブラピほどの大物スターが、金髪なびかせながらゾンビに追い掛けられテンパリまくるなんてね。そんな日が来るとは夢にも思わなかったぞ。いくら息の長いゾンビ・ムービーが続いているとはいえ、ハリウッド・メジャーまでをも本気にさせてしまうとは、改めてゾンビ・ウィルスの感染力の強さを思い知りました。
2013年劇場鑑賞作品・・・249 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トラックバック (32)