パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

きっとここが帰る場所 ★★.5

2015年03月09日 | か行の映画
名優ショーン・ペンが引きこもりのロックシンガーに扮し、亡き父の思いをたどってアメリカ横断の旅に出る姿を描くドラマ。人気絶頂の最中に表舞台を去り、アイルランド・ダブリンの広大な邸宅で穏やかな日々を過ごしていたロックスターのシャイアンのもとに、故郷アメリカから30年以上も会っていない父親が危篤との報せが届く。飛行機嫌いなシャイアンは船でニューヨークに戻るが臨終には間に合わず、ユダヤ人だった父が元ナチス親衛隊の男を探していたことを知ると、父にかわって男を探す旅に出る。元「トーキング・ヘッズ」のデビッド・バーンが本人役で出演し、音楽も担当。タイトルも「トーキング・ヘッズ」の同名曲からとられている。監督は「イル・ディーヴォ」「愛の果てへの旅」のパオロ・ソレンティーノ。
<感想>80年代ミニシアター族には、悶絶必至のロードムービーです。2008年にカンヌ映画祭の審査委員長を務めた際、ショーン・ペンは骨太なイタリア産政治ドラマ「イル・ディーヴォ」にほれ込んで審査員賞を授与。
こんなに笑えるショーン・ペンの演技は初めてだと思う。初老の元ミュージシャンの皺だらけの顔の、絶妙なダウナー感を醸し出す主人公シャイアンを演じているのが、自然でいいですね。

葬儀の時に、父親の左手首に刻まれた数字は、アウシュビッツ収容所に捉われていたユダヤ人の一人であったことが分かる。そして、息子が去った後、孤独な生活のなかで自分に屈辱を与えたアウシュビッツの門番(ランゲ)を、執拗に追いかけるようになる。
シャイアンは父親が30年かけて探し出そうとした人物に会ってみようと、NYを離れアメリカの南から北まで車で突っ走るのです。
「トオーキング・ヘッズ」のデヴィッド・バーン、総白髪になった今も健在なのには驚く。劇中スコアのみならず本人役で出演し、長回しマニア必見の迫力ライブシーンを披露してくれる。

ソレンティーノが米国人だったらやらなかったことがもう一つある。それはニューウェイヴ華やかなりし80年代に、一世を風靡したアート・ムービーへの濃厚なオマージュである。とにかく全編、デヴィッド・リンチやジム・ジャームッシュ、なによりヴィム・ヴェンダース「パリテキサス」からの影響を隠さないどころか誇示しているのだから凄い。なにしろハリー・ディーン・スタントンが出てくるのだもの。それにU2のボノの娘まで出演している。
まぁ、80年代の米国にはキュアーみたいなバンドはなかったし、そこのリーダーがミック・ジャガーと共演経験がある設定だったりするのは、イタリア人らしいアバウトさではあるけれど、80年代育ちであることは照れるどころか、居直る姿勢には好感を抱かずにはいられない。
監督のパオロ・ソレンティーノにコラアボを申しでたのだが、しかし、ペンに届けられた脚本に書かれていたのは、往年のロックスターがナチ・ハンターとして米国中西部を放浪する珍道中。しかも主人公のルックスは完全にキュアーのロバート・スミスだし、滅茶苦茶ヘタレの設定で、男気俳優のショーンとはまるで正反対のキャラだったのだ。
シャイアンは、探し当てた旅の最後に、父親に屈辱を与えたナチの残党にも、遠くで暮らしていても、帰りを待つ家族がいることを知るのですね。しかし、アカデミー主演男優賞を2回もゲットした男だけあって、ショーンは役を見事にモノにしてしまっている。実はショーンの父方はユダヤ系で、もしかするとショーン自身も本作を通して自分探しを行ったのかもしれない。
ソレンティーノ監督は、米国人監督だったらまずやらせない役をふることで、ショーンに新境地を開かせたのかもしれませんね。
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