パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

暮れ逢い ★★★.5

2015年03月03日 | か行の映画
『髪結いの亭主』などのフランスの名匠パトリス・ルコントが、孤独を抱えた若妻と夫の秘書である青年との純愛とめまぐるしい運命を描いた甘美な恋愛ドラマ。ヒロインが夫の秘書である青年と惹(ひ)かれ合いながらも、引き裂かれ、戦争によって翻弄(ほんろう)されていくさまを映し出す。『それでも恋するバルセロナ』などのレベッカ・ホールをはじめアラン・リックマン、リチャード・マッデンが出演。ベートーヴェンの音楽や、1900年代初頭のシックな衣装も印象的。
あらすじ:1912年。ロット(レベッカ・ホール)の屋敷に、夫ホフマイスター(アラン・リックマン)の個人秘書として、頭が切れる青年(リチャード・マッデン)がやって来る。若妻のロットは青年と惹(ひ)かれ合うも、触れ合うことも甘い言葉を交わすこともなかった。そんな中、青年が南米へ転勤することに。二人は思いを確かめ合い再び会おうと誓うも、間もなく第1次世界大戦が始まり……。

<感想>百年前のドイツを舞台に、英国俳優を使って英語で制作した。全篇にわたる絵画的なフレーム、画面外から聞こえるベートーベンのピアノの旋律、美しくエロク、フェチな匂いをプンプンと漂わせたつのる慕情。今の時代にこうした作品が撮られていることに、不思議な感覚をおぼえる。

わざと不安定にズームするカメラを多用し、彼女が弾いたピアノの鍵盤の残り香をクンクンする若者、オペらを見に行った時に、オペラグラスで目の前の彼女のうなじを超拡大で凝視する若者。街かどで自分の帰りを待っていたレベッカ、雨に濡れた彼女のかじかむ手指を温めようとフーフーしたり、と、思慕にふるえて崩れ落ちる若者のリチャード・マッデンをとらえる画面には、ルコントのエロフェチ魂が健在なようですね。キスすらしない関係なのに、二人を見ているこちらの心をざわつかせます。

いくつもの突出したショットで、ツヴァイクをよみがえらせるルコント監督の演出は洗練しつくされてとても素敵。

人妻のレベッカ・ホールの「待つ女」に胸が痛みます。また、アラン・リックマンがいいですよね。自分よりも若い美しい妻が、もっと若いイケメンとなんだか、イチャイチャして楽しそうな姿を、自分の息子とも仲良しになり、一緒にだるまさんが転んだをしてはしゃぐ奥様を、遠くから見ていろんなことを悟った時の表情が抜群ですね。

とても興味深かったのが、あの時代の衣装や、屋敷の内装に家具、絵画など画面を見たし、ゆったりと映画の世界へと浸るのが堪らなくいいですね。
人妻とその夫の見込んだ野心家の青年の恋の行方。観客を驚かせるのではなく、ディテイルを楽しむ懐かしいタイプの映画になっている。

しかし、時代はナチスの台頭。仕事の都合でリチャードはメキシコへと旅立つ。そうして、戦争がはじまり、夫の鉄工場は軍需工場へと政府に取られて、夫も病死。未亡人となったレベッカ・ホールの哀しみと、リチャードへの募る思いも。待って、待って、やっとリチャードが帰って来た時、二人は手に手をとってメキシコへでも逃避行するのか。
二人のその後を想像すると、波乱万丈であろうその怖さを、その辛さを考えてしまう。
4月25日公開の「シンデレラ」で王子のキッド役を演じるリチャード・マッデン。ちなみにシンデレラ役にはリリー・ジェームズ、継母役は、ケイト・ブランシェットが演じています。
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