パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

コロニア ★★★

2016年09月30日 | アクション映画ーカ行
『ハリー・ポッター』シリーズなどで知られるエマ・ワトソンが主演を務め、恋人を救い出すために危険な賭けに出るヒロインの活躍を描くサバイバルドラマ。南米チリを舞台に、慈善団体とは名ばかりの難攻不落の施設から脱出を試みる男女の姿に迫る。相手役は『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュール。史実を基に語られる、歴史の暗部に焦点を絞った衝撃の物語に戦慄(せんりつ)する。
あらすじ:1973年9月11日、キャビンアテンダントのレナ(エマ・ワトソン)は、仕事でチリを訪れる。彼女は、現地でジャーナリストの恋人ダニエル(ダニエル・ブリュール)と再会を果たしたものの、突然チリ軍部によるクーデターが起こり、反体制勢力としてダニエルが連行されてしまう。彼を救うため、レナは“コロニア・ディグニダ“に潜入する。

<感想>1973年9月11日の軍事クーデター後の、チリを舞台とするサスペンスもの。監督はドイツ人のフロリアン・ガレンベルガー。元ナチスのパウル・シェーファーがチリに設立した実在の宗教組織コロニア・ディグニダ(尊厳のコロニー)の施設に幽閉された恋人を救出すべく、潜入したエマ・ワトソンの健気な勇気が麗しいと思うのだが、そのほかは何もかもがグロテスク極まりないのだ。日本でいえば、オウム真理教のようなもの。自給自足なので農園で働かされる。

作品の焦点は、コロニア・ディグニダと、元ナチスのパウル・シェーファーの異常性の再現にある。70年代のチリの軍事独裁の恐怖政治が背景になっているようです。殺害された市民は3万人。投獄された者は、数十万人とも言われる。

ドイツから来たジャーナリストのダニエルに、ダニエル・ブリュールが演じており、実際に捕まって拷問を受け、瀕死の重傷を負うシーンが痛々しい。まさか恋人のキャビンアテンダントのエマ・ワトソンが、オカルト教団に潜入して自分を助けに来てくれるとは思ってもみなかっただろう。全編に渡って英語で話されていたのもご都合主義な気配が感じられた。

それに、脱出計画も難しく日にちだけが過ぎてゆく中、意を決して地下道の逃げ道を見つけて、地下道には拷問室や牢獄があり、そこから2人が逃げるのだが、一緒に逃げたいという女がいて、その女は妊娠中であり、腹の父親は殺されたというのだ。

その女が一緒に逃げるも、地下道の水中でエプロンが引っ掛かり溺死寸前をダニエルが助けて、教団の塀の外の森の中へと出るも、罠が仕掛けてあり、そのワナに引っ掛かり死んでしまう。2人は、何とか逃げ延びるのだが。
空港には、ドイツ、ナチスの息のかかった教団のパウル・シェーファーがおり、逃げられないようになっていた。しかし、キャビンアテンダントのエマ・ワトソンが、同僚のパイロットに電話をしておき、飛行機に乗せて貰えるように頼む。このシーンもどうなることやら、まるで映画『アルゴ』真似をしたような、空港での逃走劇のシーンのようでハラハラのしどうしでした。
「ミッシング」、「サンチャゴに雨が降る」などはこの不正義に対する怒りが正面から描かれていたが、本作ではオカルト教団の修道院と装う拷問施設からの、脱出劇が主となり、撮影は施設内部に限られので、現実感がなくなっている。

実話とはいえ、現実の政治が引き起こす恐怖をオカルトホラーにすり替える如き、制作の意図が肯定しがたい。教団のパウル・シェーファーには、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で一躍有名になったスウェーデンの ミカエル・ニクヴィストが演じている。実際のシェーファーは幼児性愛者であり、虐待もしていた。

エマ・ワトソンが、ほぼポスト“ナタリー・ポートマン”のように、鞭に打たれるシーンや、下着姿になるシーンなどを体当たりで演じている。『ハリー・ポッター』シリーズでの子役からのキャリアが、学業と女優業の両立といった外的な要素だけじゃなく、少々過度な正義感と女性特有の、潔癖さをうかがわせるルックスや生き方のスタンスも似ているような気がする。最近では「ノアの約束の船」(2014)がある。

そんなエマが本作に惹かれるのは必至であり、全寮制の女子校を思わせる施設での、居住空間や信仰との結びつきなど、その手のフェティシズムをくすぐる効果も満載でした。名目は恋人の救済ですが、自らの正義がそれを上回る女性版ジャスティス映画になっていた。
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にがくてあまい ★★・5

2016年09月29日 | アクション映画ーナ行
『好きっていいなよ。』などの川口春奈と『パレード』などの林遣都が初めて共演を果たした、WEBコミックを映画化したラブコメディー。あることがきっかけで一緒に住むことになった肉食系シングル女性と、ゲイで菜食主義者の男性の風変わりな日常を映し出す。監督を担当するのは『ボクが修学旅行に行けなかった理由』などの草野翔吾。正反対の二人がさまざな問題を抱えながらも、次第にかけがえのない存在になっていく過程に胸が高鳴る。
あらすじ:男運のない仕事一筋のキャリアウーマンのマキ(川口春奈)は、ある日、男子校の美術教師をしているイケメンの渚(林遣都)と出会う。2人はふとしたきっかけで同居することになるものの、料理ひとつ満足にできないマキに対する料理上手の渚の態度は素っ気ない。家事も野菜も苦手なマキと、料理好きで菜食主義者の渚はことあるごとにぶつかり合う。

<感想>食と愛をテーマにした小林ユミヲの原作コミックを実写化したもの。野菜が大きらいなキャリアウーマンの江田マキは、美形で美術教師の片山渚とゲイバーで出会い、へべれけに飲み渚の部屋で朝まで介抱をしてもらい、一目惚れをしてしまう。しかし、実は渚がゲイであり、ベジタリアンであった。

本来ならばシンプルな設定だったのに、余計なくすぐりを入れたせいで意味不目な作品になっているのだ。女嫌いの男と、野菜が嫌いな肉食系の女が同居することになるとは。
そして、それぞれの苦手を克服物語にもなっていた。それで十分なのに何か雑味が多いのだ。それは、年頃の女マキのエピソードの中心核がバラバラな感じになっているし、女の実家が優れた野菜農家で、というのが重要なのだが、それと彼女の野菜嫌いの動機の結びつきが変なのだ。

さらには、男子校の生徒との同性愛趣味にも説得力がない。まぁ、激しい絡み合いを見せて貰っても困るので。ただし、女は男を好きになっちゃうのに、男はまったく無関心である、というシチュエーションは悪くない。

ゲイ役の渚を演じた林遣都君は「僕だけがいない街」にも白鳥役で出演していた。そのゲイの恋人役で馬場園に千葉真一の息子の真剣佑(まっけんゆう)が出ていて、「ちはやふるにも出ていて、意外とイケメンだったのに驚く。

漫画ならば美女と美男ゲイの男子校教師が、強制同居する話でも成立したのだろうが、生真面目に実写化しては、ゲイの扱いも含めて違和感を感じたのですがね。TVドラマで十分だったのでは。

野菜を前面に押した作りなので、渚の手造り弁当とか、こまめに作る朝・夕ご飯などの料理が出てくるのが良かった。美術と演出が丁寧なので観ていられるし、この監督ならば、もっと飛び跳ねた食と性のコラボ喜劇も可能だったのではと思えたのが惜しい。

まぁ、終わってみればラブコメとしては、女と男の組み合わせに捻りがあって悪くはないと思うのだが、画面と音声に相当イライラさせられました。特に前半部分で、バックからの照明の白っぽい締まりのない画調と、聞き取りにくいセリフである。そして、女性のマキの過去は詳しく出てたのに、男の渚の過去が曖昧だったのが残念でした。兄貴との因縁も含めてもっと知りたかった。

ですが、実家の両親に中野英雄と石野真子が扮していて、一人娘に気遣っているのが感じられ、久しぶりに帰って来た娘に、それも美男子の男を連れて、だからなのか、結婚相手だと勘違いをして娘に振袖を着せて見せるシーンに涙がちょっとね、それにお二人さんがとても演技が上手いのだ。

マキが実家に置き去りにされて、振袖姿でバイクに跨り渚を追いかけるシーンにも感動しつつ、渚の兄貴の墓参りに二人で行くという終わり方も良かった。
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レッドタートル ある島の物語 ★★★

2016年09月28日 | アクション映画ーラ行
2000年に発表した短編「岸辺のふたり」でアカデミー短編アニメーション賞を受賞したオランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督が、8年の歳月をかけて完成させた初長編作品で、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞。スタジオジブリが、同社としては初となる海外作家の映画製作に参加し、高畑勲監督がアーティステックプロデューサーとして、シナリオや絵コンテ作りなどに関わっている。

あらすじ:嵐で荒れ狂う海に放り出された男が、九死に一生を得て無人島に漂着する。男は島からの脱出を試みるが、不思議な力で何度も島に引き戻されてしまう。そんな絶望状況の中、男の前にひとりの女が現れ……。

<感想>宮崎駿監督の引退宣言を経て、スタジオジブリが2年ぶりに放つのは、オランダ出身監督によるお伽噺であります。それは、この上なくシンプルな物語であり、温かみを感じさせるタッチと色使いの絵柄に、一切のセリフを排除して描かれている。それゆえに多様な読み解く力が必要なように作られているのだ。

無人島が舞台ということで、水の表現に目を奪われるが、島に生えている植林が竹というのも何だか日本らしい感じで目を引く。竹は生命力の強い植物であり、完全に根を絶やさない限り繁殖を続ける。途中で津波が押し寄せて来て、何もかもが流される圧倒的な水の力の後に、残ったその竹の子が芽を出している姿が頼もしく感じられた。

これは、日本のお伽噺にある「鶴の恩返し」ならぬ亀の恩返しともいうべきか、主人公は恩返しをされるようなことは何もしていないのに。むしろその反対なのに。何故だか、カメは何処までも彼に優しいのだ。これは、男が無人島で取り残され、孤独に苛まれ妄想を抱く物語のように見えた。

何度も無人島から脱出しようと、竹で筏を作り海へと漕ぎ出すも、直ぐに海の下からの力で筏が壊されてしまう。それが何度も続くのだが、不思議に思った男が筏の下を覗くとそこに真っ赤な亀がいた。

孤独に打ちひしがれ、絶望の淵に立たされた男が、浜辺に打ち上げられた大きな赤い亀をひっくり返して、そのままにしておく。そのままの状態では、いつの日か死んでしまうだろうに。彼は可愛そうに思ったのか、海水を汲んできては亀に与える。ある日突然に亀が脱皮するかのように、人間の手足が生えて来て、驚くことに目の前に姿を現わした一人の女と共に、二人で人生を紡いでいく姿を、セリフを排し、美しく詩的な映像と音楽のみで綴っていくのだ。

絶海に泳ぐ男、孤島に辿りつき、やがては女が現れ子供が生まれる。幾年月が過ぎ、大嵐が島を襲い津波が来る恐ろしさ。息子は、孤島を去り旅に出ることを選ぶ。
この作品の根本的な理解の仕方に違いがあると思うが、企画開始が東日本大震災以前に遡るそうで、冒頭の嵐のシーンよりもあの大きな津波のシーンが絶望感を表していると思う。

すべてモノクロに近い水墨画のようなタッチで描かれるので、その中でも亀の赤が映えるのだ。

しかし、スタジオジブリと言えば繊細な絵筆のタッチと色使い、それに竹を描くにしても、細かく竹の葉の色彩や、葉の一枚一枚を丁寧に描く技術が優れているのが当たり前なのにだ、これは高畑勲監督の筆使いなのか、余りにもお粗末な感じがしてならなかった。
物語の展開にしても、大仰な感情表現もないが、素朴で静かな感動が感じられるのは確かである。
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メカニック:ワールドミッション ★★★★

2016年09月27日 | アクション映画ーマ行
ジェイソン・ステイサムが完璧な暗殺を行う凄腕の殺し屋を演じるサスペンス・アクション「メカニック」の続編。殺し屋家業から足を洗った主人公ビショップが、因縁の相手からの依頼を受けるハメになり、かつてない過酷なミッションに挑むさまを描く。共演はジェシカ・アルバ、トミー・リー・ジョーンズ、ミシェル・ヨー。監督はドイツ出身で、これがハリウッド・デビューとなる「THE WAVE ウェイヴ」のデニス・ガンゼル。
あらすじ:精密で正確な仕事ぶりで“メカニック”と呼ばれた凄腕の元殺し屋ビショップ。今は裏社会から足を洗い、リオデジャネイロで平穏な日々を送っていた。そんなある日、幼少期から暗殺者として一緒に育てられた男クレインからの依頼が舞い込む。彼はある事件がもとでビショップへの憎しみを募らせる因縁の相手でもあった。依頼を拒絶して、タイに身を隠すビショップだったが、何の罪もない女を人質にとられてしまい、やむを得ず依頼を受けることに。しかしそれは、武器商人として世界を裏で操る3人の超大物フィクサーを暗殺するという、あまりにも危険で困難なミッションだった。

<感想>前作は2011年でしたね。待ちにまった続編です。一匹狼の暗殺者が亡き恩人の息子に殺しのテクニックを教えるという物語のベースは共通なんだけど、ステイサムの演じた主人公ビショップのキャラクターが人気を集めたので、今回は全くのオリジナルでの続編とのこと。ビショップの過去がちょっと語られていて、何故にあんなに凄い殺しのテクニックを持っているのかが明かされることに。

それにしても、ずいぶんとパワーアップしたというか、サービス満点なストーリーですから。冒頭の舞台はこの間終わったオリンピックのリオ。自らの死を偽装して静かに暮らしていたのに、山頂のカフェで謎の一団に囲まれるも、鮮やかにエスケープ。その後、証拠隠滅のために住まいだった船を惜しげもなく爆破するあたりがビショップ流ですね。

そうなんです、徹底して用心深い彼は、常に逃げ場と武器や資金を用意していて不慮の事態にも決して焦りを見せないのが彼流なのです。これこそがメカニック(機械のように完璧な男)と呼ばれる所以。

その後、タイに訪れたビショップだったが、知り合った何の罪もない女ジーナ(ジェシカ・アルバ)を人質にされ、やむなく3件の実現不可能と思われる、暗殺ミッションを引き受けることになる。

そこには、海辺でバンガローを経営しているミシェル・ヨーがいて、かつてビショップに救われたことがあるらしいのだが、ほんの少しの出番でアクション・ナシですからね、もったいない使い方。アクション観たかったのに。

3件の実現不可能と思われる、この暗殺の工程がちゃんと描かれているのがお見事で、最初のターゲットが脱走不可能と言われている孤島の刑務所に服役中の男。難攻不落の刑務所にどうやって潜入したのか、そして服役中の男を暗殺する、この殺し方も面白かった。

次はシドニーの高層ビルの屋上に身を潜めている男。どちらも多数の護衛に囲まれている上、事故死に見せかけなければならないという厳しい条件が。さて、ビショップはどうやってそれを実行するのかが興味の的です。まるで「ゴルゴ13」みたいに遠くから狙撃するという訳にはいかないだろうに。

ビショップもジェイソン・ボーンと同じように、必要最小限のことしか喋らない寡黙なタイプだからして、その行動を観て推理するしかない。細かな準備段階を経て決行に至るプロセスは、まるで「ミッション:インポッシブル」のイーサン・ハントがチームを組んでやっていることを、単独で挑んでいるのだ。

そう、屋上の分厚いガラスのプールめがけて、高層ビルを吸盤で這い上がっていくシーンはまるでタコ男だ。その分厚いガラスの底にヒビを入れて、そこからガラスが割れて泳いでいた人間は真っ逆さまに落ちてゆくという。

それに、知的なゲームの雰囲気も盛り込みながら、途中の人質救出劇作戦や、ラストの激しい銃撃戦に格闘戦も問答無用で入れているあたりが大サービス満点なんですね。それに、やたらとステイサムの飛び込むシーンが多く、肉体美を見せつけるシーンが多かった。

それよりも、ジャシカ・アルバの水着姿には、男性諸君の眼が釘付けになるのではないかしら。

そして、第三の標的として武器商人の親玉のトミリー・ジョーンズが登場して以降は、トミリーの風貌が面白いのとユーモアを交えながら激しいクライマックスになっていた。ブルガリアの武器商人マックスは、要塞化した歴史的建造物に潜んでおり、ビショップに与えられた3番目の暗殺のターゲットなのだが、さすがに頭のキレルビショップは、さてどうでるのかがお楽しみというところ。まさかの死亡説も流れるビショップ、是非劇場で最後のシーンをご覧ください。

しかし、冒頭のブラジルに始まり、タイ、オーストラリア、ブルガリアと世界を駆け巡りながら、文字どうりの「ワールド・ミッション」。1本の映画に幾つもの見せ場を並べたシリーズをパワーアップさせた、ステイサムの真骨頂とも言える。

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真田十勇士 ★★★

2016年09月26日 | アクション映画ーサ行
堤幸彦演出、中村勘九郎主演の同名舞台劇を、同じ堤幸彦監督、中村勘九郎主演で映画化したエンタテインメント時代劇。天下一の名将という真田幸村の伝説は、猿飛佐助によって仕組まれたものだったという大胆な発想のもと、一癖も二癖もある真田十勇士の活躍を描く。共演は松坂桃李、大島優子。

あらすじ:関ヶ原の戦いから14年。天下統一を目前にした徳川家康と、秀吉の側室・淀殿が秀頼を立てて復権を狙う豊臣家の対立がいよいよ深まっていた。そんな中、名将と謳われた真田幸村と抜け忍の猿飛佐助が運命的な出会いを果たす。ところがこの幸村、これまでの武功はたまたま勝ちに恵まれてきただけで、その本性はただの腰抜け男だった。すると佐助は“アンタを本物の英雄にしてあげる”と宣言、さっそく同じ抜け忍の霧隠才蔵を筆頭に、一癖も二癖もある男たちを集め、“真田十勇士”を誕生させる。そして巧みな情報操作で、十勇士の武勇伝を巷に流布していく。やがて淀殿からお声が掛かり、意気揚々と大坂城入りする幸村と佐助たちだったが…。

<感想>舞台劇は観ていませんが、最初っから最後まで主人公猿飛佐助の中村勘九郎が目立っていて、それはもう歌舞伎調のベランメエ口調で見応えありです。「天下の名将として語られてきた真田幸村は、実は運がいいだけの腰抜け男だった」というのが、堤幸彦監督の奇想天外で予想のつかない、びっくり箱を開けるような楽しみがあります。

自分への評価の高さに悩む幸村に加藤雅也が扮しており、貫禄があるのにヘタレという設定。そして、抜け忍・猿飛佐助と運命的に出会い、「あんたを本物の“天下一の英雄”にしてやろうじゃねえか!」とひと肌脱いだ佐助が、個性豊かな男たちを集めて「真田十勇士」を結成。一世一代のハッタリをかまして戦国を駆け抜ける姿が描かれるのだ。

それと、最初とエンディングがアニメーションで作られていて驚きでした。でも、アニメーションだからこそ、良い意味で遊んでいる感が伝わってきて、終始楽しい映画という印象になっている。

だが、途中での映像にアニメの他に屏風絵のようなシーンもあり、なんか手抜き感覚が否めない。ですが、戦場のシーンの迫力は、黒澤明監督の戦国時代の「乱」や「影武者」のような派手な合戦の映像はない。

それでも、大坂の陣でのアクションシーンでは刀でグサッと刺されたり、首がぶっ飛んだりするので、苦手な方には目をおわずにいられません。特に真田幸村が後ろから前からの攻撃に遭い、息子の大助(望月歩)に徳川を倒せと命じて死ぬという場面もある。少年息子の初陣なれど、大群の徳川勢には刃も鉄砲も役に立たず、戦国の世に生まれた男として大助の最後も気の毒なことに。

だが、淀殿(大竹しのぶ)が真田幸村を愛していたという寝床を襲うシーンとかはいらなかったのでは。淀殿が一人城に残り戦うという最後が良かった。ですが、秀吉の息子秀頼は佐助によって薩摩藩に逃亡するという設定にも驚く。


さすがに、猿飛佐助のキレのあるアクションやマントを使ってモモンガのごとく飛ぶというワイヤーアクションの霧隠才蔵(松坂桃李)に、同じく抜け忍の火垂の大島優子が塀の上を飛び越えるのもそうだし、木の上を走るワイヤーアクションをすべてこなしていたのが良かった。これは、中村勘九郎のための舞台劇であり、映画化でもあると思った。

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ハドソン川の奇跡 ★★★★★

2016年09月25日 | アクション映画ーハ行
俳優としても監督としても著名なクリント・イーストウッド監督と、名優トム・ハンクスがタッグを組んだ人間ドラマ。2009年1月15日、突然の全エンジン停止という危機に見舞われながらも、ハドソン川に不時着して乗客全員が生還した航空機事故のてん末に迫る。『サンキュー・スモーキング』などのアーロン・エッカートらが共演。機長の手記を基に描かれる、奇跡の脱出劇の背後に隠された真実に言葉を失う。
あらすじ:2009年1月15日、真冬のニューヨークで、安全第一がモットーのベテラン操縦士サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は、いつものように操縦席へ向かう。飛行機は無事に離陸したものの、マンハッタンの上空わずか850メートルという低空地点で急にエンジンが停止してしまう。このまま墜落すれば、乗客はおろか、ニューヨーク市民にも甚大な被害が及ぶ状況で彼が下した決断は、ハドソン川への着水だった。

<感想>これは意外だった。今まで、クリント・イーストウッド監督と、名優トム・ハンクスがタッグを組んだことがなかったとは。主人公を演じるトム・ハンクスの顔。実在の人物に似せるだけでなく内面から心の震えを引き受けるようなクローズアップが胸に響く。アメリカ人なら誰でもが知っている出来事だが、このニュースは世界中に発信されていたと思う。

実際の映像はTVのニュースでしか見たことがないので、それが映画化されるなんて、それも内容が驚くような展開になっていたとは、誰が知ろう。

離陸直後に左右の翼のエンジンに鳥が飛び込んで、エンジンに吸い込み停止する。高度わずか850メートルの上空で起きた未曽有のアクシデントだった。そして、エンジン停止から着水準備までわずかに38秒間。サリーのパイロットとしての48年間の経験が、マンハッタンの西に流れるハドソン川に緊急着水するという決断を可能にした。

これは簡単に考えては困る、どんなにベテランの機長でも川とか海に着水するには、左右の翼を水平に保ちながら、着水した時の衝撃はもちろんのこと、直ぐに救援に来てくれるかどうかで人間の命にかかわるからだ。乗客乗員155名全員が無事だったことが本当に奇跡といっていいでしょう。

ですが、その後に待ち構えている国家運輸安全委員会は「空港に引き返さずに着水を選び、乗客の命を危険に晒した」と言われ「事故は操縦者の過失によるものでは?、エンジンは左は大丈夫だったのでは」とサリー機長に疑惑の目を向け、奇跡と言われた着水を意外な方向へと傾けるまるで法廷劇のような内容。
最初にハドソン川に着水した後に、機内を調べて歩き一番最後に出てきて、妻に電話をする。事故のことを知らない妻はのんきなことを言うも、事故のことを知り、国家運輸安全委員会の尋問にかけられて、もし首にでもなったら、「家のローンとか子供の養育費とかどうするの」なんて酷いことを、夫のサリーに言う妻っているんですね。

実際に、サレンバーガー機長は、事故後のホテルで見る夢は、マンハッタンの高層ビルに激突する恐ろしい悪夢を何回も見る。これは明らかに9・11の残像のようだ。きっと、心的外傷後ストレス障害に苦しめられたのだろう。
もしも、そのまま管制塔の支持どうりに空港に胴体着陸したら、多くの犠牲者を出したに違いない。状況次第で英雄が犯罪者になりかねない、こうした機長を苛む要素を映像の中に加えて観る者の心を貶めていく。

それでも、中には1月の厳寒のハドソン川に身を投じる人もいるのだ。無事に着水した後、救援隊が駆けつけ、左右の羽に乗った乗客や、救助用のマットの上にいる乗客を救助する。
最後まで機長は機体の後部から侵入する冷たい水に腰まで浸かりながら、二度も機内を往復し入念に調べ逃げ遅れた乗客がいないか、声を出して探している様子が映し出され、韓国の船の事故や中国の船の事故で、船長が一番早くに乗客に混ざって救出されたことが頭に浮かび、サリー機長の人柄というか、日頃学んでいるスキルを駆使し、一人の人命も失わずに生還させたそのプロフェッショナルとしてサリー機長に拍手を贈りたい。

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オーバー・フェンス ★★★★

2016年09月23日 | アクション映画ーア行
近年再評価が進む不遇の作家・佐藤泰志の小説を、大阪芸術大学出身の気鋭監督で映画化する「海炭市叙景」「そこのみにて光輝くに続く“函館三部作”最終章。人生に挫折し、将来の展望のないままに孤独で無気力な日々を送る主人公が、キャバクラで働くヒロインや職業訓練校の仲間たちと織りなす不器用な交流を通して少しずつ変わっていく姿を描き出す。主演はオダギリジョー、共演に蒼井優、松田翔太。監督は苦役列車」「>味園ユニバースの山下敦弘。
あらすじ:妻子と別れ、故郷の函館に戻り、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らす男、白岩。訓練校とアパートを往復するだけの毎日で、すっかり生きる意味を見失っていた。そんなある日、同じ訓練校に通う代島に連れて行かれたキャバクラで、聡という男みたいな名前のホステスと出会う。昼間は寂れた遊園地でバイトし、鳥の動きを真似て踊るこの風変わりなホステスに急速に惹かれていく白岩だったが…。

<感想>同じ原作者の前2作の気取りと名作志向は感じられなかった。作品を山下敦弘監督が自分の世界にしているのも良かった。舞台となる函館の灰色の空を、数羽のカモメが飛んでいる。空が曇るのは鳥が飛ぶ時だけのようだ。晴れやらないのはオダギリジョー演じる白岩の心のようだ。

だが、傍目にはそうは見えない、職業訓練校では白岩は静かな雰囲気の兄貴分のイメージであり、仲間から慕われているようだ。何処へ行くにも自転車で移動する。
主人公は引っ越してきて3か月も経つのに、段ボールはそのまま開けていない。そこへ妹の旦那がやって来て、存在感も隠し味的に効いている。主人公のことを、実家の父親とか心配しているのだ。

職業訓練校のやるきの感じられない建築課の訓練の後で、決まってソフトボールの練習をするのだが、こちらもやるきのなさが感じられるのだ。若い教官にしてみれば、みんなのチームワークを図るための運動なのだろう。

ここへ通っている生徒たちは、経歴も年齢もバラバラな連中に、大工や自動車修理工の技術を習得させることを建て前とした場の、生徒と教官双方を覆う独特の倦怠感が感じられるのだ。中には定年退職者の年齢の人もいるし、みんなどういうわけか喫煙所でたばこを吸いながら飲み屋の女の話とかしている。
しかし、大人同士なのに、いい年をして弱いもの虐めみたいに、やる気のない大学中途出の男を教官からして、ダメ人間とハンを押したように決めつけ、だからなのか、生徒たちもみなその男を阻害して仲間外れにしてしまう。その男、森が精神的にキレてしまう場面では、ソフトボール大会では外されて見物状態に、そして教官を襲う森くんの行動に驚き、みんなが止める。結局は、彼は退学となるのだ。

そして、松田翔太演じる代島が白岩をキャバクラに誘う。つまり、彼はそのキャバクラの店長として働くことを決めているも、白岩を副店長として一緒に働かないかと誘って来る。

そこで働いている女、聡が店の中で機嫌のいい時には、鳥の求愛ダンスの真似をしてはしゃぐという特異な存在が強調されている。

この聡という女を演じているのが、蒼井優であり情緒不安定で鬱病らしく、白岩が結婚指輪をはめていることや、別れた妻と会って泣いていたりすることに過剰に反応し、鬼の形相をして暴力的であり、破壊的な行動に出るのだ。

それに、白岩を自分の部屋に招き入れ、暗い台所で全裸になり体を洗う姿とか、ここでは奇怪なふるまいを通して、危うい傷つきやすい魂を抱えている女を演じて上手いのだ。

そんな危ない女、聡を好きになり、失業保険で暮らしている中年男の白岩のいい加減さも含めて、将来性もまったく感じられないし、そういう絶妙な距離感というか、別れた妻の優香との久しぶりの逢瀬。喧嘩別れをしても、幼い女の子がいる元夫婦。妻が指輪を返してくれ、自分はまだ未練たらしく指輪をしている白岩の男心(ここでさめざめと泣く白岩)も垣間見えて良かった。
タイトルの意味が最後に判明するのだが、ソフトボール大会のことであり、大負けに負けていたのに、白岩がホームランをかっ飛ばすその瞬間の感銘には、分かっているのに衝撃を受けた。これは、白岩がウジウジしていた今までの生活に決着をつけるという意味もあるかと、そう思ってならない。

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ハイ・ライズ ★★★

2016年09月21日 | アクション映画ーハ行
巨匠J・G・バラードのSF小説を「マイティ・ソー」のトム・ヒドルストン主演で映画化。上層階と下層階の間に大きな階級格差が存在する40階建て高層マンションを舞台に、ある出来事をきっかけに内部の秩序が破壊され、それまで死守されてきたヒエラルキーが崩壊していくさまを、不条理かつ退廃的なタッチで描き出す。共演はジェレミー・アイアンズ、シエナ・ミラー、ルーク・エヴァンス。監督は「サイトシアーズ ~殺人者のための英国観光ガイド~」のベン・ウィートリー。

あらすじ:セレブばかりが住むゴージャスなタワーマンションで、一体何が起きたのか?現代社会のヒエラルキーの崩壊を描くミステリードラマの傑作!1975年のイギリス。ロンドンから北2マイルに位置する富裕層向けの新築タワーマンションは、ラグジュアリーな内装や抜群の眺望のみならず、敷地内にスーパーマーケット、プール、銀行、医療施設、小学校、レストランなど、ありとあらゆる設備が整う、人々の生活の夢を具現化したかのような住居空間だった。

医師のラング(ヒドルストン)は25階に新たに独りで越してきた。入居者たちは俳優、モデル、アーティスト、TVプロデューサーなど、すべて一流のセレブリティばかり。彼らは毎晩、派手なパーティーを開き、自らの成功に酔いしれ人生を謳歌していた。ラングもまた、この狂乱の宴の中に身を投じていく。最上階に住む、マンションのコンセプトを考案した建築家ロイヤル(アイアンズ)にも気に入られ、順風満帆な生活がスタートするかに思えた。ある時ラングは、ワイルダー(エヴァンス)という住民と出会い、フロアの高低に基づく階級間の摩擦が存在することを知る。そして突如起こった停電を境に、ついに住民たちの問題は顕在化する――。

<感想>「太陽の帝国」で知られるJ・G・バラード原作のSF小説を映画化。理想のライフスタイルを求め高層マンション群の「ハイ・ライズ」に引っ越してきた医師のラング。上層階にはよりセレブが、下層階には家族連れのそれなりなセレブが多く住み、フレンドリーな雰囲気に反して『階級』がガッツリ根ざすセレブマンション。

自分で設計したビルの最上階に住み、屋上庭園でくつろぐタワーの設計者ロイヤルは真っ白な服をまとい神のような存在である。演じているのはジェレミー・アイアンズ、しかしここでの神なんて渦巻く思念の前では通用せず引きづり下ろされるのだ。

憧れてビルの中階に仲間入りをしたトム・ヒドルストンの医師のラングが敵役である。それに、低層階に住むワイルダーに扮したルーク・エヴァンスの存在感に圧倒される。だが、ビルの内部崩壊の図式化を急ぎ過ぎて人物像が混乱し、リアリティを欠いたことも確かであります。

これは評価が分かれるようですね。物語世界のカオス化と同時に語りもカオス化するお話しを、1本の筋書きとして追えなくなり、時間も空間も混乱するという大胆さゆえに高く評価する人もいるだろうが、一方では崩壊する過程の描き方が単なる思わせぶりな映像の断片の羅列ではないかという、これは演出の放棄ではないかと思うのだが。

合理的な世界ではないので、どうしてみんな逃げ出さないのか、という疑問も湧く。上下のあるところで人が暮らすと、本作のように、だからと言って前後しても「スノーピアサー」のように死人が出ても誰もマンションから出て行かず、その破滅をただただ受け入れ・狂い・暴動を起こし上へ上へと昇っていく。

スーパーの食料も底を尽き、牢獄のようなディストピアと化す。犬のバーベキューに、タワーの設計者ロイヤルの屋上庭園で飼っていた白い馬のバーベキューを見た後での高層ビルの実景描写が妙に恐ろしく感じた。

決して良いとは思わないが横並びが無難で、それを分かっていた昔の日本の長屋の暮らしはたいしたもんだと痛感できた。映像も凝りに凝っているし、出演者の顔ぶれにもグッとくるし、特に主人公のトム・ヒドルストンのスーツ姿の着こなしぶりに惚れた。

舞台となる高層マンションを筆頭に、仮装パーティーのベルサイユ宮殿のような雰囲気とか、美術や衣装はクラクラするほど完璧で良かった。

しかしだ、肝心のビル崩壊への経緯も崩壊後の混乱も、死んだ人間はプールが墓場となり、金持ち人間は掃除洗濯など生活一般のことが出来ない人たちばかり。だからなのか、ダラダラしてばかりでノレないのだ。

文句を言えば、使用人を使ってないのか掃除とか、インフラ整備もスムーズじゃないし、スーパーの品揃えなんて明かに乏しいし、ダストシュートが狭くて粗大ごみ袋はダメなんて、どうするのセレブなのにゴミ分別までやらなければならないの。至れり尽くせり設定のマンションなのに、設備や内容がそこまで魅力的じゃないのが残念であり、そこが惜しい。

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めぐりあう日 ★★★

2016年09月20日 | アクション映画ーマ行
『冬の小鳥』のウニー・ルコント監督がメガホンを取り、親を知らずに育ったヒロインと母親の30年振りの再会を描くヒューマンドラマ。出生の秘密を調べるため、とある町に引っ越した理学療法士が、運命的な再会を果たすさまを映し出す。主演は、『君と歩く世界』などのセリーヌ・サレット。治療を通して共鳴し合う娘と母の心と共に、ジャン=リュック・ゴダール作品などの撮影を手掛けてきたカロリーヌ・シャンプティエによる叙情的な映像も胸にしみる。
あらすじ:生みの親が誰かわからない理学療法士のエリザ(セリーヌ・サレット)は、自分の出生について調べようと息子と一緒に北フランスのダンケルクに移り住む。しかし、実母は匿名を望んでいた。ある日、息子が通う学校に勤務しているアネット(アンヌ・ブノワ)が、エリザの療法室を訪れる。治療を重ねるにつれて、二人は不思議な親密感を覚え……。

<感想>韓国の孤児院を舞台に、里親を待つ子供たちと過ごす9歳のジニの“通過儀礼”を描いた冬の小鳥』(09)に感動しつつ、今回もウニー・ルコント監督の生い立ちを反映した、孤児の女性の母親探しの物語。原題は、アンドレ・ブルトン「狂気の愛」の末尾の一言。これだったら、邦題の付け方の優しい感じがいい。
観ていてあの「冬の小鳥」のあの孤児院の少女が、この映画の監督なのだと言う思いが頭から離れなかった。確かに、前作「冬の小鳥」のタッチと繊細さと頑固さが共存しており、さりげなく動くカメラも悪くはない。

理学療法士であるヒロインは、情報よりも先に、直接その探していた母親の肌に触れるという手掛かりを得るが、漂う予感が確信に変わるまでの不確かさが美しく感じた。
エリザは母親を知りませんが、母親の肉体から生まれたのです。その出産という極めて肉体的な行為を想起させるような、手と肌と骨の映像が観ているこちらにも伝わってくるようでした。だから、エリザが施術をする時の肌の描写が、息をのむほどに美しかった。

この物語は、子供を捨てた母親と養父母の元で育った子供、その二人の30年後の姿、再会を描きたいということから始まっている。その内にお互いが親子と知らない段階で、既に再会していたらどうなるのだろう。
自分探しというのは嫌いな言葉ですが、生みの親を知りたいと思うことは、自分を知りたいことに他ならない。監督が韓国の孤児院で育ち、9歳で養女となりフランスへと渡ったルコント監督の切実なテーマであります。

エリザが息子を連れて自分が育った養護施設を訪ねるけれども、塀に阻まれて中には入れないという、痛切な光景が映し出される。子供を養子にだした母親が匿名を希望する場合には、それぞれの事情があると思います。しかし、子供が自分を探していると知って名前を公表するのは、果たして誰のためなのだろうか。知りたい子供、知りたい親、さらには知らせたいという親の想いが加われば、当事者同士の望むところは合致するはずなのに。理屈どうりにはいかないところが、逆に真実味があるのです。

そしてエリザを生んだ母親のアネットが、匿名を解除して実名を名乗るために書類に書くシーンがあります。1981年11月17日にダンケルクの産院で女児を出産。エリザベットと命名。彼女はその後は、結婚していないようで、現在は小学校の給食のおばさんと、掃除の仕事をしている。合間に近所の犬の散歩も。その小学校で、エリザの息子のノエと出会い、孫が宗教上の理由から豚肉を食べられないという、その時の給食は豚のソーセイジでした。転校生でもあり、他の子供たちかた虐められているような感じもしました。

それに、息子の父親とは別居生活という、エリザのお腹には彼の子供が宿っており、自分のルーツのこともあり彼の2人目の子供を産みたくないという選択をします。そういう意味のあってなのか、彼女が自分の生い立ちを知りたくなって、母親の住んでいる場所へと引っ越してきたのでしょう。結局は、彼女の判断で2人目の子供は中絶してしまう。この迷いも女性には、大変精神的にも肉体的にも辛い選択だったと思います。
エリザは確信を得て、生みの母親であるアネットのところへ。そこには兄妹と住んでいる母親の幸せそうな姿がありました。自分の出生の秘密を知り、本当はこんな理由だったなんて知らなくても、孤児院で育った子供には、親が自分で育てる力がないという理由が多いのに。

自分が里親のところで幸せに暮らし結婚もして、息子を生み、それに第二子まで授かったのに。自分の出生の事実を知ったことで、何が変わると言うのか。他人の生き方にあまり苦言は言いたくないが、もっとしっかりと足を地に付けて生きて欲しかった。息子は母親の生き方を良く見ているから。
もっとドラマチックに描かれるところを、抑制が効いており良かった。あまり私には好きなタイプの映画ではないが、こういう母娘ものは、日本では受けるのだろう。最後の朗読は唐突でもあるが、これを言いたかったのだと思う。
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怒り ★★★★

2016年09月19日 | アクション映画ーア行

「悪人」の李相日監督が再び吉田修一の小説を原作に、実力派俳優陣の豪華共演で贈るヒューマン・ミステリー・サスペンス。残忍な殺人事件が発生し、犯人が逃亡して1年後、千葉・東京・沖縄に現われた前歴不詳の若い男3人が、やがてその土地で新たな愛を育んでいく中、真犯人を巡る謎と犯人ではとの疑念が思わぬ波紋を周囲に広げることで生じるそれぞれの葛藤のドラマを描き出す。出演は渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡。

<感想>「悪人」で多くの賞を総なめした李相日監督が、再び吉田修一の小説を、更に力を込めた作品であります。殺人現場には被害者の血で殴り書かれた“怒り”の文字が、凶々しい夫婦惨殺の未解決事件の真相が、東京、千葉、沖縄の3地点の“身元不明の”男たちとの恋、人間模様を通じて明らかになってゆく物語。

まずは、千葉から家出をして東京で風俗店で働いている娘の愛子、人生を放棄してただ、毎日男にいいようにされてだらしなく生きている娘。父親が迎えに来るも、愛らしい顔の愛子を演じた宮崎あおい。どんな役にでも徹して、こなしていく上手い女優さん。
どこか頭が弱い女を演じていて、父親のところで働いている身元不明の男、松山ケンイチを好きになり一緒にアパートで同棲することに。心配する父親、東京で自堕落な生活をしていても、顔を叩くわけでもなく怒鳴るわけでもなく、ただ娘のことが心配で怒らないだけ。

この父親も娘のことを溺愛するばかりに、警察の指名手配写真を見て愛子が好きになった男,田代がその殺人犯だと思い込み、娘もじっとその写真を見て警察に通報するのだ。ですが、その田代は、殺人犯ではなく、その写真の男によく似た別人だったということ。失ってから信じてやれなかったことを悔やみ、しかし、娘が彼を探し出して迎えに行くと言うのを、許してあげ父親として暖かく迎えてあげようと思う親心。父親の渡辺謙さんは、現実でも実際に子供を叱れない優しい父親なのでしょう。

そして、東京の会社員のゲイの優馬に妻夫木聡が演じていて、相手はどこか女性らしい身元不明の直人役の綾野剛。優馬の母親が死の床につき、見舞いについていく直人に、母親は自分の息子のことを何処まで知っているのか、連れてきた直人が親切にも最後を見届け、母親のお墓のことで「お前も一緒に墓に入るか」という優馬の言葉に嬉しそうに頷く。

だが、悲しいのは愛してたのに最後まで信じきれなかった妻夫木聡と綾野剛の関係。TVの指名手配写真を見て、直人と似ているような、そんなことから彼を信じられなくなり辛く当たり散らす。そのために、直人は家を出てゆく、その後に聞いたのが直人は重い病気だったということ。その後、公園で亡くなっていたという。今更悔やんでも悔やみきれない同性愛の恋人同士。

そして、沖縄では離島に引っ越してきた東京の高校生の泉は、無人島に1人で住みついている謎めいたバックパッカーの田中に心惹かれていくが…。その沖縄の無人島の空を爆音を立てながら戦闘機が飛んでいるシーンと、青い海の色に白い砂浜の美しさ。泉役の広瀬すずのアメリカ兵のレイプシーンは、観ていて余りにも酷い衝撃を受け、今まで高校生の純真な役どころばっかりだったけれど、今回の役は汚れ役で女優さんには嫌な役だと思う。

しかし、その汚れ役を必死で演じていた広瀬すずが、海辺で叫ぶ“怒り“の魂の叫びには感動しつつ、今後の作品で女優として大いに役立ったと思う。
そして、犯人の動機という意味ではあやふやな描き方で、夏の暑い日に仕事先に出向いて行った犯人が、そこには誰もいないし電話をすれば全然違う場所であって、結局は仕事はもらえなかったという。イライラする話であり、若者がキレる状態、つまり太陽が照り付ける熱い夏で、休んでいた家の奥さんが親切に麦茶を出してくれた。
それなのに、その男は何を思ったのか、その家にそのまま強盗に入って、奥さんを殺して冷蔵庫の中の物を食べ、そこへ旦那が帰ってきて殺して、朝方までそこにのんびりと居たという。そして、壁に被害者の血で“怒り”と殴り書きする。朝になりそこの自転車で平然とした顔で帰るという、その犯人の神経は尋常じゃない。

冒頭から、3人の男が別々のパターンで描かれており、3つの場所で生まれる人々の疑心暗鬼。人間の奥底に潜むこの感情はいったいどこへ向かうのか。そのうちの誰が犯人なのかと想像をしてしまう。指名手配の写真は整形もしており、3人とも良く似ているのだ。だから、疑うのも無理はない。
しかし、沖縄の田中だけは異常に違って見えた。それは世田谷一家殺人事件や、市橋達也の事件を思い出し、沖縄の無人島に逃げた市橋達也のことを。そこへいた男は、森山未來が演じており、民宿を手伝ったりして温厚そうな性格だが、何かがキレ始めると壊れだして暴れ始める。
この作品では、誰かを信じることの難しさ、あるいは人を疑ってしまうことの闇。誰かを、何かを永遠に信じ続けることは不可能かもしれません。他人を信じないことと、信じてしまった理由を積み重ねていくと、結局は自分自身を信じ切れるのかということに繋がっていくような気がする。この映画は、深遠にして鮮やかであり、過酷にして堂々たる第一級の人間ドラマとなっていた。

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BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント★★★

2016年09月18日 | アクション映画ーハ行
「チャーリーとチョコレート工場」の原作者ロアルド・ダールのロングセラー児童書『オ・ヤサシ巨人BFG』をスティーヴン・スピルバーグ監督が実写映画化したファミリー・ファンタジー・アドベンチャー。孤独な少女と心優しい巨人を主人公に、2人の間に芽生える奇妙な友情と、世界を救うために2人で繰り広げる大冒険の行方を描く。主演は少女ソフィー役に新人ルビー・バーンヒル、巨人のBFG役に「ブリッジ・オブ・スパイ」でオスカーを獲得したマーク・ライランス。
あらすじ:10歳の女の子ソフィー(ルビー・バーンヒル)は、ロンドンの児童養護施設で生活していた。寝付きの悪いソフィーが窓から夜の街を見ていると、身長約7メートルの巨人(マーク・ライランス)が出現し、彼女を巨人の国へ連れていく。巨人の名はBFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント。優しいBFGに、ソフィーは心を許すようになる。そして、子供たちに夢を吹き込む仕事をしているBFGと一緒に、ソフィーは夢の国へと向かう。

<感想>孤児院で暮らす好奇心旺盛な少女ソフィーと、ある真夜中に謎の巨人に捕まり、“巨人の国”へと連れて行かれる。これは、少女と独り暮らしの巨人との友愛を描く物語。主人公の少女ソフィーは自立心に富んでいて、彼女には施設で暮らす哀感は微塵もなく、両親がいない寂しさなど一度も口にしない勝気な少女。友達もいないようだが、孤児院では虐められているわけでもなく、完全に自分の世界を作っている。わが身に降りかかる事態に驚愕しつつも、着々と運命を切り開いていく。そうした少女こそが、スピルバーグ監督が示そうとするストーリーということなんですね。

ソフィーは、消灯後にフトンをかぶり、懐中電灯の光で本を読む。普通だったら、母親が語る物語を聞きながらやがて眠りに落ちる。ですが、孤児院ではそんなこともなく、一人で夜に懐中電灯の灯りで本を読む。ですが、一度だけ、BFGが彼女の小さな本を読み始めると、それを聞いていたソフィーはいつしか眠ってしまう。やはり読み聞かせは眠りへの最良の誘いなのだ。

初めは巨人に怯えるソフィーだったが、見た目とは違う穏やかで優しい彼の内面にふれ心を通わせて行く。普段はのっそりと動く彼も実は驚異的な走力と跳躍を持っているのだ。施設のベッドから毛布ごとつまみ上げられた彼女は、あっという間に遥か遠く“巨人の国”へと。

主人公の少女ソフィー役には新人のルビー・バーンヒルが、めがねっ子でお茶目な素直な感じの女の子を堂々と熱演している。巨人のBFGには、「ブリッジ・オブ・スパイ」の老スパイ役でアカデミー助演男優賞に輝いたマーク・ライランスが熱演していた。

ですが、そこで驚いたのが、BFGが“巨人の国”の外れにある“夢の国”で採取した夢を調合し、人間の子供たちに吹き込むこと。

そのことに興味を持ったソフィーは、自らも夢を捕まえようと心躍らせるのだった。瓶詰にした夢の中には、なんと“ソフィーの夢“という瓶もあったのだ。

そして、最も素敵なシーンでは、子供たちに夢を吹き込むためBFGが瓶に詰めている夢は、まさにこの映画に描かれたようにフワフワと宙に漂うのだ。まるで妖精のように、それはティンカー・ベルにも似たような夢の形でした。ですが、映画の中では実際にはその夢がどんなものかを、映像として一切見せようとはしない。

ところが、巨人の国では世界中に脅威をもたらす悪の巨人たちも住んでいる。何と彼らをやっけたいソフィーとBFGは、英国女王の協力を求めてバッキンガム宮殿へと向かう。BFGが女王の夢に悪の巨人たちが、子供たちをさらい食べている夢を見させて、退治するように頼むわけ。
宮殿の中へ招かれたBFGとソフィーは、朝食をごちそうになり美味しそうに食べるシーンも。そして、軍隊のヘリと兵士を出してくれ、“巨人の国”へと。ヘリに吊り下げられて、誰も知らない孤島へと。

それに、原作者ロアルド・ダールは言葉遊びのギャグが大好きなようだ。ことにBFGはダジャレと地口によって現実を転倒させる箇所だらけだ。巨人の主食の“ニンゲンマメ”はもちろんのこと、人間族でもお国柄によっていろんな味がするし、泡が下に向かって落ちる“泡立ちエキス”を飲むと、口からげっぷが出る代わりに、お尻からオナラが出るのだ。女王陛下がオナラをするこのシーンも痛快だった。
ファンタジー文学が近年ぞくぞく実写化されたのは、現実部分を現実として撮り、さらには不思議な部分も現実として撮り、CGの進歩は別世界を現実の世界とするためのものとなったようですね。この映画は、どちらかというとお子様と一緒に鑑賞するといいようです。
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ゆずの葉ゆれて ★★・5

2016年09月16日 | や行の映画
コピーライターとしても活躍する作家、佐々木ひとみの児童文学「ぼくとあいつのラストラン」を基にしたドラマ。苦楽を共にしてきた夫婦の深い愛と絆を、一人の少年との触れ合いを交えながら映し出す。監督は、『蛇女』などの助監督を務めてきた神園浩司。ベテランの松原智恵子と津川雅彦が中心となる妻と夫を演じ、その脇を西村和彦、小林綾子、芳本美代子らが固める。舞台である鹿児島県喜入地区の牧歌的風景に注目。
あらすじ:鹿児島県喜入の小さな町。走るのが大好きな小学4年生の武(山時聡真)は、隣家に暮らす老夫婦をジイちゃん(津川雅彦)、バアちゃん(松原智恵子)と呼んで実の祖父母のように慕っている。だが、寝たきりになってしまったジイちゃんの姿を見るのがつらくて会いに行かなくなっていた。そんな中、ジイちゃんが亡くなってしまう。人の死というものを初めて経験すると同時に、彼を避けてしまったことを悔やむ武。そこへヒサオと名乗る見知らぬ少年が現れ、競争しようと武を誘い出して速く走るコツを教えてくれるが……。

<感想>ロケ地の全面協力を取り付けての、鹿児島の山村、ご当地映画としても過不足のない作品だと思います。ですが、物語の焦点が今一つ定まらない弱さが難点ですね。
主人公の少年の家族と、隣家に住む老夫婦との絆を軸にして、老人の突然の死、お通夜、お葬式と進む中で、残されたお婆さんの回想へと展開していく。

葬式で集まってくる知人や親族は、駅伝選手で監督だった爺ちゃんの武勇伝を語り始め、婆ちゃんも古いアルバムを開いて思い出にふける。セピア色として紡がれる、夫婦の若き頃の出会いと、駆け落ちをして結ばれる2人のラブ・ストーリー。

次々と現れる登場人物に、映画自体が溺れかけているような、そんな感じがしないでもない。走るのが好きな少年が、津川雅彦演じる爺ちゃんの過去を知って奮起するというお話と、松原智恵子が演じるバアちゃんの夫婦愛の物語とが、根っこのところできちんと結び合わさってないので、エピソードを並べただけにしか見えなかった。

これは少年がただ走る映画にすれば良かったのに。走りが得意なのに、1位になれない主人公ながら、原作がしっかりとしているせいもあるのだろう、破たんのない丁寧な作りになっている。
空撮もそっち方面にたくさん効かせてくれたら、ずっと楽しかったと思いますね。彼に走り方の手ほどきをする謎の少年、実はという構成なのに消化不良になっていた。
それから、謎の少年が宝探しをしようといい、老夫婦ゆかりの柚子の木の根元を掘る。すべてがかけがえのない記憶となってよみがえる。
ですが、その少年が始終ウジウジとしているところがいいので、そのためお姉さんや同級生少女のしっかりぶりが光っているのがいいですね。男はウジウジ生きてこそ良いという教訓なのであろう。

確かに芸歴55年の松原智恵子には“おめでとう”と言いたい。彼女のベテランの存在感が、往年の児童映画を思わせるような、華やいだ空気にさせるのだ。彼女の語りに頼るだけでは、なんとも弱すぎるのに、諸事情もあろうが、構成が半分に削れると思うのですがね。

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きみがくれた物語 ★★★

2016年09月15日 | アクション映画ーカ行
『きみに読む物語』などの原作者として知られるニコラス・スパークスの小説を実写化したラブストーリー。交通事故で昏睡(こんすい)状態となった女性と彼女を懸命に支える夫に降り掛かる試練、それによって強いられる過酷な選択を描く。メガホンを取るのは、製作者として『マリー・アントワネット』などを手掛けてきたロス・カッツ。出演は、『白鯨との闘い』などのベンジャミン・ウォーカー、『魔法使いの弟子』などのテリーサ・パーマー。運命に翻弄(ほんろう)される中で、愛をより強いものにしていく主人公たちの姿に胸を打たれる。

あらすじ: ノースカロライナ州の海沿いにある小さな町で、父の経営する動物病院を手伝う獣医の青年トラヴィス(ベンジャミン・ウォーカー)。気ままな独身生活を謳歌していたある日、隣に若い女性ギャビー(テリーサ・パーマー)が引っ越してくる。最初は何かと衝突していた2人だったが、いつしか恋に落ちて結婚。2人の子どもにも恵まれ、幸せな家庭を築いていく。ところが、トラヴィスが久々のデートに遅れてしまった日、ギャビーは交通事故に遭い意識不明の重体に。生命維持装置に繋がれたままのギャビーだったが、彼女はあらかじめ残された家族を苦しめたくないと3ヵ月を超えての延命措置を拒否する書類にサインしていた。悲しみに暮れる中、決断の時が迫るトラヴィスだったが…。

<感想>アメリカの南部の小さな町で獣医をしているトラヴィスに、「リンカーン/秘密の書」(2012)11月1日で、ヴァンパイア・ハンターのリンカーン大統領を演じたベンジャミン・ウォーカー。「白鯨との闘い」(16)では金持ちの息子を演じていた。その隣に犬を飼って住んでいる医学生のギャビーには、「ライト/オフ」で娘レベッカを、「ウォーム・ボディーズ」(13)のテリーサ・パーマーが、引っ越しして来て、爽やかな青春気分で物語は始まります。

あの「きみに読む物語」のベストセラー作家、ニコラス・スパークスの、いかにも恋愛映画化というだけあって、プロットを気にしないで書いたせいか、行き当たりばったりのような展開になっていた。「運命のいたずら」という話が多いけれども、獣医が主人公だから、愛犬家にはお薦めできるし、米国南部の湿地帯のロケーションが素晴らしい。

原題が「選択」となっているだけあって、人生はちょっとした選択で決まってしまうという、古典的なハリウッド映画を思わせる「喧嘩友達が恋に発展する」という展開の話になっている。しかも、女性を婚約者から奪い取るという黄金のパターン。

主人公が困難な選択を迫られる後半部分の方が、この映画を薦めたい部分なのかもしれないが、私には、前半部分での二人のエピソードの方こそが捨てがたいですね。だって、二人には恋人がいたのですもの。

それを、彼女の恋人の医師が出張中に、トラヴィスが自分にも恋人がいるのに、ギャビーに夢中になり強引に近づき肉体関係を築くという。この出会いはあまりにも二人の恋人たちには辛くて許せない関係だと思う。

だからというわけでもないが、二人が結婚して子供が二人生まれ幸せな生活を送っているけれど、そこに神様は二人に試練を与える。つまり、彼女が交通事故に遭い、記憶が戻らなく延命措置を拒否する彼女に、死神が近づいて来る。

出てくる人たちが殆ど人畜無害で、泣いて笑ってフォーリングラブという展開と、どこを切ってもニコラス・スパークスの世界観で溢れている。この映画のキャスティングに、チャニング・テイタムや、レイチェル・マクアダムズとか、ライアン・ゴズリングだったら、うっとりしてハマってしまうし、感動も倍になるに違いないのに。

今作の主演の男女は、スラッシャー・ムービーの序盤で殺されるような風貌にオーラが漂っているような気がした。こうなると、途端に陳腐に見えてくるから、キャスティングって、大事ですよね。

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四月は君の嘘 ★★★

2016年09月14日 | アクション映画ーサ行
第37回講談社漫画賞に輝き、アニメ版も放送された新川直司による人気コミックを実写映画化。母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった天才ピアニストの少年と、自由奔放なバイオリニストの少女が、互いの才能を認め合い成長していく姿を切ない恋模様を交えて描く。『海街diary』などの広瀬すずと、『ヒロイン失格』などの山崎賢人が主演を務める。監督は『潔く柔く きよくやわく』などの新城毅彦、脚本をテレビドラマ「砂の器」や『ストロベリーナイト』シリーズなどの龍居由佳里が手掛ける。
あらすじ:類いまれな才能を持つ天才ピアニスト有馬公生(山崎賢人)は、母親が他界してから演奏できなくなってしまう。高校2年生のある日、幼なじみを通じて彼は勝ち気で自由奔放なバイオリニスト宮園かをり(広瀬すず)と出会う。その独創的な演奏に触れたことで、公生は再びピアノと母との思い出と向き合うようになる。一方のかをりは、ある秘密を抱えており……。

<感想>「月刊少年マガジン」に連載されアニメにもなった漫画を実写化したもの。どちらも未読ですが、湘南を舞台に、音楽活動をきっかけに惹かれあっていく男女のせつない青春ラブストーリーが綴られています。
「ちはやふる」でも元気いっぱいの広瀬すずちゃんを観て、今作でも彼女の感情が赴くままに役をいきていく姿勢に感動します。主人公の宮園かをりは、勝ち気で自由奔放なバイオリニストであり、友達の椿を通じて友達になり強引に二人っきりになるように、ピアノの伴奏をしてくれと頼む彼女。

しかし、天才ピアニスト有馬公生は、母親の死後ピアノを弾くことが出来なくなった。そのことを知っているのか、かをりは強引に自分のバイオリンコンテストの伴奏をしてくれと願います。この辺からして、彼に恋していて、ピアノが弾けなくなった公生をなんとか弾けるようにと、彼女は頼みます。

しかし、公生を好きな女の子、椿がいることも忘れてはならない。椿はかをりの友達でもあり、公生との間を取り持ってくれた人。だからいつも、かをりの陰にいて、自分の想いを伝えられないもどかしさを表している、石井杏奈も良かった。

天才ピアニスト有馬公生を演じている山崎賢人くんは、いつもより控えめなおとなしい役を演じており、母親がピアノの先生をしていて、小さい頃から母親に厳しくピアノを練習させられ、天才ピアニストと有名になる。それが、母親に向かって「お前なんか死んじゃえばいい」と言ってしまった後、母親の病気が悪化して亡くなってしまう。母親の死は、自分が殺したと心に想い、母親の叱咤激励の声が聞こえなくなり、精神的にピアノを弾く気力がなくなるのだ。

その彼女の猛烈なアタックに負けてしまい、やっと公生もピアノの練習に励むようになるも、やはり途中でピアノの音が聞こえなくなり、音符が見えなくなり、ピアノの音が止んでしまうのだ。それでも、かをりはバイオリンを弾き続ける。

そんな公生を、かをりは自分のペースに巻き込んでいく自由奔放な女の子。もう一度ピアノを弾かせるためにも、彼に対する溢れるばかり熱量と態度が強烈すぎるのだ。それは、猪突猛進のような、かをりの川に飛び込むシーンとか、特にバイオリンの弾き方も強弱の付け方とか、個性的というか普通じゃない弾き方。

かをりにすれば、他の人とは区別をつけて自分らしく弾きたいというのだ。そんな彼女のバイオリンの弾き方にも、文句をいうわけでもなく、彼も自分らしく、昔を取り戻したいと思ってのことなのだろう。

かをりが幼い頃に、同じ年の男の子の天才ピアニスト有馬公生の、リサイタルを父親と聴きに行き感動して、自分もバイオリンを始める。それが、同じ高校に通っていることを知り、近づく機会を狙っていたわけで、でも、かをりは不治の病にかかっており、高校生になって病状が悪化して、最後は帰らぬ人となる。

そうか、愛した人が難病で亡くなるなんてね、有馬公生が精神的ストレスでピアノが弾けなくなったのを、彼女の励ましと愛情でまたピアノが弾けるようになったことに感謝して、手紙を読みながら彼女の本当のことを知るという物語。
かをりが、子供のころからの病気に苦しんでいることを秘密にして、表面的には明るくその日を精いっぱい生きている。かをりは公生と演奏がしたい、彼にもう一度ピアノを弾かせたいという想いが真っ直ぐで、何かを目指す彼女の最後の願いが胸に響きます。
またかと思いながら観てしまった。難病に天才ピアニストの苦しみ、そして若いっていいなぁと思わせる青春ラブストリー。原作が漫画だものね、仕方がないっていえば嘘になる。
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超高速!参勤交代 リターンズ★★★★・5

2016年09月12日 | アクション映画ータ行

幕府の陰謀で5日以内の「参勤」という難題を突き付けられた東北の弱小貧乏藩が、知恵を絞って危機に立ち向かう『超高速!参勤交代』の続編。前作で行きの「参勤」を果たし藩の取り潰しを免れた湯長谷藩一行が、彼らへの復讐(ふくしゅう)に燃える老中が仕掛けた謀略により、帰りの「交代」でさらなる大ピンチに見舞われるさまを描く。主演の佐々木蔵之介をはじめ、深田恭子、伊原剛志ら主要キャストが続投するほか、古田新太、渡辺裕之、中尾明慶、宍戸開ら多彩な面々が新たに参戦する。
あらすじ:江戸時代、幕府から5日以内の「参勤」という無茶な難題を、知恵と工夫で何とか果たした湯長谷藩。藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)率いる一行は帰途に就く「交代」の道中、湯長谷で一揆が起きたという知らせに仰天する。彼らに敗北した老中・松平信祝(陣内孝則)の逆襲によるもので、一揆を鎮めるため大急ぎで帰郷した政醇たちだったが、城は奪われており……。
  2014年超高速!参勤交代

<感想>参勤交代はまだ終わっていなかった。前作では、行きの参勤交代も、金もなく人手もなく、10日の道のりをわずか4日で走り切った東北の弱小貧乏藩が、帰りの参勤交代でもさらなるピンチに襲われるという物語。前作よりも面白可笑しく、危機迫るシーンもたくさんあれども、最後まで面白かった。

復讐に燃える彼らに敗北した老中・松平信祝の策略にかかり、城まで奪われた彼らが、藩と故郷の民を守るために行きの倍の速さで、帰ることを余儀なくされる。果たして彼らはどんな知恵と工夫で、新たな試練を乗り切り、巨悪に立ち向かうのか?・・・湯長谷藩の家来には、寺脇康文、上地雄輔、知念侑孝、柄本時生、六角精児、西村雅彦、石橋蓮司、陣内孝則、市川猿之助など。

前作のメンバーが再結集しており、さらには、南町奉行の大岡に古田新太、寺脇の妻に富田靖子、柳生の剣士に渡辺裕之、中尾明慶らが参戦した痛快時代劇になっていた。

湯長谷藩藩主、内藤には佐々木蔵之介が扮して、お人よしだが、民に愛される人情に厚い殿様であり、だが、厠も扉を開けて入るほどの閉所恐怖症でもある。前作では、幼少時代に閉所恐怖症になる事情が描かれていた。

帰りの旅費稼ぎに奔走する湯長谷藩一行に、故郷で一揆が勃発したとの知らせが入り、幕府の目付が来るまでに一揆を収束できなければ、藩の取り潰しは確実のこと。かくして一向は、行きの倍の速さで帰ることになるのだが、飲まず食わずで、不眠不休で走っても無理なこと。しかし、家老の西村雅彦の知恵袋にて、何とか計画して、時間短縮のため川を渡る一行だが、カナヅチの家老西村が船から落ちてしまい、助けようと川へ飛び込む知念くん。そこへ流木が流れてきて、知念の頭に当たりそのまま気絶をして流されてしまう。あいつなら泳ぎも達者だから、後で追いついて来ると先を急ぐみんな。

ですが、帰り道の参勤交代の大名行列を披露しなければならず、集まったのは30人足らずで、道具もボロボロ、家老の西村さん、さぁ、どうするの?って、ことで、考えたのが竹竿に3人分を案山子のように着物を着せて、さも家来に見せかける知恵。普通は2人か3人揃っての行列なのに、5人組の行列とは。バレるのを恐れて、関所の番人に裸体のちらしを見せて、それは相撲取りの押絵だったとは。猿を放して将軍様から献上された大事な猿、菊千代さまだといい、猿が暴れるので偽の行列が前を通るのを上手くかわせるという作戦成功。

しかし、復讐に燃える老中・松平信祝の恐ろしい陰謀と策略に遭遇し、宿場に着くと、「湯長谷藩の者、謀反人なり。通すべからず」との手配書が。そこでは何と、棺桶の中に死に装束で入って、死人に化けて何とか宿場役人チェックを切り抜けるというシーンも。これは、ハラハラよりも死人の演技が上手くて大いに笑ってしまった。

さらには、松平信祝と手を組んだ尾張柳生の刺客に襲われるという、何とも、次から次と待ち伏せされて、体が休まる暇がない。やっと、湯長谷藩に辿り着くも、田畑は荒らされ収穫した米は奪われ、挙句に城まで尾張柳生に奪われてしまった。しかし、藩主・内藤政醇は、民を守るために、松平信祝率いる1000の幕府軍とわずか7人の家来で、迎え討つことになるとは。

まさかの速さで続編が公開されるとは、本作では、1作目のいいところを受け継ぎつつ、新しい魅力も加わりスケールも大きくなっていた。金なし、人なし、時間なしに加えて、故郷では一揆が起こり城もないという内容。さらには、敵も1000人になるなど、負荷が大きいのだ。

それでも、主人公の佐々木蔵之介を先頭にして、前作の倍を走り、3倍もの立ち回りと。綺麗な着物を着ているのは最初だけで、後は髪の毛ボサボサにドロドロの着物を着て鎧を付けての立ち回りと、もう大変だったと思います。

奥方になる深田恭子さんと佐々木蔵之介の、敵と戦いながらの愛を確かめるシーンとか、家来の奥方たちの長刀の立ち振る舞いとか、知念が好きな女が実は年増女だったとか、柳生相手に家来たちの剣術の見事な殺陣さばきも披露され、チャンバラシーンも楽しく見られた。

大岡裁きとは良く映画で観ていますが、奉行役の古田さんの演技も光って良かったです。
撮影現場のいわき市の小浜海岸を、早朝から走るシーンとか、最後がいわき市の青年団のみなさんと伝統芸能の“じゃんがら念仏踊り”を一緒に踊るというシーンも良かった。

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