パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

空母いぶき★★★★・5

2019年05月31日 | アクション映画ーカ行

かわぐちかいじの大ヒット・コミックスを西島秀俊、佐々木蔵之介をはじめとする豪華キャストの共演で実写映画化したポリティカル・サスペンス大作。近未来の日本を舞台に、国籍不明の武装集団によって日本の離島を占拠されるという事態が発生する中、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦“いぶき”の乗組員たちを中心に、政府やメディア関係者を含む全国民が、それぞれの立場で未曾有の危機に立ち向かっていく姿を壮大なスケールで描き出す。監督は「沈まぬ太陽」「柘榴坂の仇討」の若松節朗。

<感想>日本が他国から軍事攻撃を受けたらば?・・・戦後から80余年、日本が経験したことのない未曽有の事態を描いた「空母いぶき」。近未来。東南アジアに東亜連邦という武装勢力が台頭し、アジア各国を脅かす存在に。クリスマスイブ前日、沖ノ鳥島沖の群島にその武装集団が突如侵略。

現場に急行した海保巡視船は拘束されてしまう。日本が初めて直面する専守防衛の局面に自衛隊、政治家らはどのように対処するのかである。本作で描かれるのは、何者かによって日本の領土が侵略された“あってはならない”未来。民衆はパニックに陥り、国内は大混乱……当たり前の日常が瓦解したとき、自分だったらどうするだろう……? 

かわぐちかいじ氏のベストセラーコミックを、西島秀俊と佐々木蔵之介の共演で実写映画化した本作は、“日本占領”というショッキングなテーマを壮大なエンターテインメントに落とし込んだ「今、見るべき」1本です。

日本国民、1億2000万の命を守るため、決死の覚悟で戦う者たちの熱いドラマと、手に汗握る攻防の連続。まるで世界第3次大戦が始まったような錯覚を覚えた。

その他にも豪華俳優陣たちが出演しており、藤竜也、玉木宏、高嶋政宏、市原隼人……戦う男たちの“生きざま”に惚れ惚れしますから。

精鋭ぞろいの自衛隊員を、豪華メンバーが見事に演じ切っていた。始めに藤竜也が威圧感漂ういぶきの司令官、玉木宏がクールな護衛艦の艦長、高嶋政宏が血気盛んな潜水艦の艦長、市原隼人が使命感に燃える飛行隊の隊長など、それぞれの特性を生かした「完璧な配役」にも、ぜひ注目を。

そして、日本の命運を託された総理大臣の重責を、抜群の演技力で体現するのは名優・佐藤浩市。加えて、本田翼がネット通信社の記者役として、力強く成長していくヒロインを体当たりで演じていて、お人好しのコンビニ店長役を務めた中井貴一は、店の裏でクリスマスのブーツの中に詰め物をしている。耳栓をして仕事に集中しているため、横で大きな声で言っても聞こえないのだ。

本田翼が満を持して、現在起きている事をユーチューブに上げる。日本が攻撃を受けている一大事と護衛艦が襲撃されて炎上している映像も。

すわ大変だと、民衆がコンビニへ蓄えの為に水やトイレペーパー、缶詰、パンや食料を大量に買っていく。お客さんでごった返すコンビニ、品物はどんどん棚の上から無くなっていくわけ。倉庫の店長は疲れて寝てしまうし、物語全体の“緩急”のバランサーを見事にこなしていた。

クリスマスプレゼントの長靴の中に、小さなメモが添えてあった。「世界中の人たちが仲良くして、平和に暮らせますように」

ニュースサイト編集長の斉藤由貴、コンビニ店員など、多様なキャラクターが数多く登場していた。その中でも、むしろ女性の方が共感できるシーンも多数用意されていた。本田翼、斉藤由貴、土村芳、深川麻衣と、各世代の女優陣が見せる、リアルな演技にも注目です。

「ホワイトアウト」「沈まぬ太陽」「柘榴坂の仇討」など骨太な作品を多数手がけてきた若松節朗監督が“エンタメ”と“社会性”を奇跡的な配分で両立させ、アクション部分も破格のスケールを追求。

“空母いぶき“をはじめ、護衛艦が多数登場し、海中では潜水艦、空中では戦闘機が壮絶なバトルを繰り広げる!空母いぶきの甲板の地下には、最新のミグ戦闘機がずらりと並び、ミサイルの格納庫に艦内やコクピットも忠実に再現されている。自衛隊・政府・マスコミ・一般人といった“4つの視点”で描かれる点も秀逸であり、物語への没入感が半端じゃない。

敵のミサイルで襲撃されるところ、日本側は、敵が襲撃すれば迎え撃つか、攻撃に対して対空ミサイルを発射させるというやり方。手に汗を握る攻防戦、国の内部では内閣総理大臣が、自衛隊へ出動要請するのにすぐには返答せずに、出し渋るのだ。どうしても、戦争に発展させたくないのが日本のやり方。

しかし、日本の自衛隊の日頃の訓練のたまものであり、見事な対処法でありました。最後の方では、もはや戦争になりかねない事態に直面するも、アメリカや国連に連絡をして、お伺いを立てる総理大臣のやり方も仕方がないというもの。この辺りは、イライラしてしまうが、その我慢のしどころが良かったのかもしれません。

それに、艦長の西島秀俊が見事な采配をするシーンも、戦闘機のパイロットが海へ落下し救助に向かうヘリには、敵のパイロットもいて同じように救助する。いぶきの甲板に降りた2人のパイロット、敵国のパイロットが、日本軍の自衛隊の拳銃を奪い取り、救助した秋津パイロットを拳銃で撃って殺してしまう場面。すかさず敵国のパイロットに銃を向ける日本の自衛官。すると艦長が「やめろ、拘束をして国連に引き渡し審判をするから」と言って拳銃を取り上げるのだ。

紛争の火種がくすぶり、国際情勢が不安定な今、この「もしも」は鑑賞者の心にダイレクトに突き刺さり、ただのバトルアクションを超えた壮大かつ骨太な「クライシス・エンターテインメント」へと変貌する。

平和を願う新時代を迎えた日本だが、世界は戦争や侵略などの脅威に脅かされ続けている中、自衛隊の存在意義や戦争観など、現代日本人が考えなければならない問題は山積している。そんな状況だからこそ、この作品は映画化されたといっても過言ではない。近い未来に何が起きるか分からない。改めて、平和の大切さを感じました。劇場の大スクリーンで見れば、より高い満足度を得られると思います。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・82  アクション・アドベンチャーランキング

 

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マイ・ブックショップ★★★

2019年05月30日 | アクション映画ーマ行

ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの『ブックショップ』を「死ぬまでにしたい10のこと」「しあわせへのまわり道」のイザベル・コイシェ監督が映画化。保守的な時代のイギリスの田舎町で、激しい妨害に遭いながらも、町で初めての本屋を開こうとした女性の奮闘の物語を丁寧な筆致で綴る。スペインのゴヤ賞では、みごと作品賞・監督賞・脚色賞の3冠に輝いた。主演は「メリー・ポピンズ リターンズ」のエミリー・モーティマー、共演にビル・ナイ、パトリシア・クラークソン。

あらすじ:1959年、イギリスの海辺の小さな町。戦争未亡人のフローレンスは、夫との夢を実現するために動き出す。それは、これまで町に一軒もなかった本屋をオープンさせるというもの。精力的に準備を進めるフローレンスだったが、保守的な町ではそれを快く思わない人も少なくなかった。そして地元の有力者ガマート夫人の執拗な嫌がらせを受けるフローレンス。それでもどうにか開店にはこぎ着けたものの、なおも続くガマート夫人の妨害工作で、次第に経営が立ち行かなくなっていく。そんな中、町外れの邸宅に40年も引きこもっている読書好きの老紳士ブランディッシュ氏が、フローレンスの本屋経営を支援し始めるのだったが…。

<感想>1959年イギリス。まだまだ女性が一人で店を持つなんてことは無理な時代であり、お金があってもどうにもならない地域での嫌がらせや、男女平等の時代ではないので、女性が一人で店を持つことに偏見を持っている時代でもある。だから、主人公のフローレンスが自分の力で、それも知らない土地で店を開くことは並大抵の努力では上手くいかないと思った。

長い間、放置されていた「オールドハウス」を買い取り、夫との夢だった書店を開く。店の看板には、「THE OLD HOUSE BOOKSHOP」と描かれていた。店は小さくても古い家を内装して、地下室もあるのでそこで寝ているようだ。本には湿気が一番の悩みなのだが、それもなんとかクリアしているみたい。始めたばかりの店は、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」など、先進的な作品を精力的に紹介し、書店はもの珍しさもあり多くの村人が詰めかける。

予想以上に賑わいをみせ、それに店の手伝いをしてくれるのが、10歳くらいの村の少女クリスティーン(オナー・ニーフシー)が、安い給料で店の手伝いをしてくれる。

観ていて、やっぱりね、意地悪をしてくる土地の有力者であるガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が、書店を廃業させるべく、さまざまな策謀をめぐらせ、彼女を窮地に追いやっていくのです。どうやら、彼女が店を始めた場所に、芸術センターを構想するのですが、それにしても、どうしてそんな小さな土地を芸術センターにしようとするのか理解できない。本当に嫌がらせとしか思えないのですね。

そして、フローレンスには嬉しい知らせが舞い込んで来る。40年も邸宅に引きこもっている読書家の老紳士ブランディッシュ(ビル・ナイ)が、小さな本屋に目を付けてやってくるのです。それからは、その老紳士とフローレンスとの麗しいまでの書物愛の交友が深まってゆくわけなんですね。

このふたりを、親密に結びつけるきっかけとなるのがレイ・ブラッドベリの「華氏451度」であることは興味深い。それ以外にも、重要な役割を演じているナボコフの問題作「ロリータ」である。彼女が場違いな本を選び、たくさん仕入れてしまい経済的に困難に陥るのです。

老紳士に相談を持ちかけて、彼の屋敷にお菓子を持って通う彼女の嬉しそうなことといったらない。そのことも村の評判になり、妬みや嫉妬から土地の有力者であるガマート夫人の耳にも入ることになる。そしてガマート婦人が、村のプレイボーイを彼女の本屋へと向かわせて、店の様子や営業内容をチクイチ報告させるのですね。

それからほどなくして、ガマート婦人が嫌がらせを始めるのです。自分の屋敷で行われるパーティにフローレンスを招き入れ、客人たちに紹介でするのですが、こういう派手なパーティは苦手の彼女、屋敷の中でうろうろと自分の居場所がないことを知らされます。それに、パーティへ行くために新しくドレスを新調するのに、ガマート婦人に相談をして真っ赤な生地のドレスを仕立てて、いそいそと出かけます。しかし、真っ赤なドレスは、余りにも目立ちすぎて派手であり、場違いの色でありました。

たくさん新書を仕入れた、「ロリータ」という本は少女愛の内容なので、村人たちの反撥を受けて、書店は経営難に陥ります。そして、老紳士のブランディッシュは彼女を救おうとして、心臓が悪いのにガマート夫人の屋敷に行き、抗議を申し込みに行き、その帰り道に心臓発作で亡くなってしまうのです。

結局は、ガマート婦人の策略により、書店は村のためにならない、本屋にするには、湿気が多いなど難癖をつけて、村の役場から立ち退きを命じられ、フローレンスは泣く泣くその土地をカバン一つで立ち去ることになるのです。

ヒロインのフローレンスを演じたのは、最新作「メリーポピンズ リターンズ」(19)のエミリー・モーティマー。意志の強さと柔らかな雰囲気、はにかんだ笑顔をバランスよく配合し、誰もが共感し応援せずにいられないヒロイン像を見事に演じていました。

世の中に、こんなにも理不尽で、悔しくて悲しいことってあるのか、・・・店で働いていた女の子、クリスティーンがフローレンスの仇を見事に果たしてくれる、意表を突く最後でありました。

2019年劇場鑑賞作品・・・81  アクション・アドベンチャーランキング

 

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ベン・イズ・バック★★★・5

2019年05月29日 | アクション映画ーハ行

「エイプリルの七面鳥」のピーター・ヘッジズ監督が施設を抜け出し、家に戻ってきた薬物依存の息子と、周囲の懸念を押し切り、更生を信じて彼を迎え入れた母親の愛と絆を、緊迫感あふれるサスペンスフルな展開で描いたヒューマン・ドラマ。主演はジュリア・ロバーツと監督の息子でもある「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「ある少年の告白」のルーカス・ヘッジズ。共演にコートニー・B・ヴァンス、キャスリン・ニュートン。

あらすじ:クリスマス・イヴの朝。19歳のベン・バーンズが薬物依存症の治療のために入所していた施設を抜け出し、実家に戻ってきた。母親のホリーは笑顔で迎え入れる一方、妹のアイヴィーは不信感をぬぐえず、継父のニールも何か問題を起こす危険があると、ベンを施設に送り返すべきだと主張する。それでもホリーがずっと監視することを条件に、ベンは一日だけ家族と過ごせることに。しかし、そんなベンの帰還をかぎつけた昔の薬物仲間たちは、決して彼を放っておいてはくれず…。

<感想>救えるとしたら、私しかいない。医療ミスによって薬物中毒に陥ってしまった息子を、どんな手を使っても救おうとする母親。ジュリア・ロバーツの、“キャリアハイ”ともいえる名演が、本作には収められていた。この女優さんなら“安心”して観ていられる。と言うジュリア・ロバーツの名演と“最適”役どころ、映画ファンにおいては、本作での彼女の圧倒的な“女優力”の数々を、魅せつけられる。

薬物依存が周囲を及ぼす影響力、家族が味わう苦悩、疑心暗鬼にならざるを得ない信用など。愛する家族をどこまで信じられるのか、愛せるか、諦めないか。たった1日の出来事をサスペンスフルに綴り、深い余韻を残す内容。

主役のベンを演じたのは、ジュリア・ロバーツの息子でもあるルーカス・ヘッジズであり、脚本・監督はジュリア・ロバーツと結婚をして、「アバウト・ア・ボーイ」などの脚本を手掛けた、ルーカス・ヘッジの実父でもある、ピーター・ヘッジズであります。

注目すべきは、ロバーツが演じるホリーが、ただの献身的な母親ではないということ。常識やルールをなぎ倒し、息子のために生きる――。ロバーツのパワフルな演技が、役をことさら力強くしている。最近では『ワンダー 君は太陽』も良かった」。本作については「正直、自分が同じ立場だったら、こんなお母さんでいられるか」……悩んでしまい専門の医療施設に入れてしまう。

そして、やはりこのオーラは、ただ者ではない。“貫禄”ともいえるロバーツの存在感は、全編を通して見る者の目と心をクギ付けにし、決して消えない強烈な印象を残す。見終えた後の満足感とポジティブな衝撃、これこそが本物の女優の“底力”だ思わせるのだ。

よくある“親子もの”だと思っていたら、それが《衝撃のサスペンス》だった。淡々とした“良い話”かと思っていたら、10分に一回《急展開》が起きるのだ。息子は自らドラッグに溺れたのかと思っていたが、それが医療ミスの《被害者》だったとはね。

母親が何らかの事情で離婚して、自分も2人の兄妹の子供を連れて、会社経営者の黒人男性と結婚した。そして二人の黒人の子供を産む。問題は自分が産んだ息子だからだろうか、誰が息子のことに本当に向き合って薬物依存症を治療させるだろうか。再婚相手は、ホリーの息子が薬物依存で治療を受けていること。それが突然クリスマスの日に帰ってきたから、さぁ~大変なことに。楽しみにしていた1年に1回の待ちに待ったクリスマスの日にだ。家族で楽しそうに準備を進めていたのに。

教会から帰ったら、家の中が荒らされ、飼い犬がいなくなっていた。警察へ知らせるという父親。待って、と母親のホリーが止める。きっと息子の薬物中毒の仲間がやってきた仕業だと思ったからだ。そこからが、ベンが一人で犬を探しに行くと言うし、母親が一緒に息子と友達のところとか、薬物の元締めのところへ行くも、知らないと言うのだ。

ところが、やはり息子のベンが家に帰って来ていることを知った、売人たちとか悪人たちがベンを利用しようとやってくるのだ。売人の所に一人でベンが行き、犬がいることを突き止め、売人が言うには、ベンに1度だけでいいからコカインを売人に渡してくれという仕事を頼まれる。

それをやらないと家族に乱暴をすると言うのだ。勝手に母親の車に乗り、売人の所へいき、仕事をこなすベン。心配でならない母親は、ベンが薬物を売ってその薬物で死んでしまった女の子の家に助けを求める。本当ならば憎んでも仕方がないのに、優しくお金や車を貸してくれる。それもこれも、同じように子供を持つホリーの母親として真剣さを知っているからだ。

ラストのホリーが取った手段は、自分の息子だったら、こんなにも迷惑をかけてしまい、自分はもうこの世の中では生きていけないと、自殺を図るのでは。そう思って薬物の解毒剤を手にしたホリーが息子を捜し出すところ。既存の概念からは逸脱したホリーの母親像、過度の薬物治療の“被害者”であるベンの複雑な心境、両者が織りなす「自己犠牲」の親子愛が、観客の涙腺に訴えかけるのですね。

鑑賞後にもう一度、本作の中に宿る「大事な人にどう接するのが、正解なのか?」という問いは、見る者の感情を揺さぶり、鑑賞後も心をとらえて離さないと思います。

2019年劇場鑑賞作品・・・80  アクション・アドベンチャーランキング

 

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愛がなんだ ★★・5

2019年05月27日 | アクション映画ーア行

直木賞作家・角田光代の同名ベストセラーを「サッドティー」「パンとバスと2度目のハツコイ」の今泉力哉監督が映画化。どんなに邪険に扱われてもなお好きでいることをやめられないヒロインの滑稽ながらも切実で切ない一途な恋の行方と、そんな彼女を取り巻く人物たちのままならない恋愛模様を描いた群像ドラマ。主演は「おじいちゃん、死んじゃったって。」の岸井ゆきのと「チワワちゃん」の成田凌。共演に深川麻衣、若葉竜也、江口のりこ。

あらすじ:28歳のOLテルコは一目惚れした男マモルを愛しすぎるあまり、全てがマモル最優先の日常を送っていた。そのせいで仕事にも支障をきたし、会社もクビ寸前。それほど尽くしているのに、実はマモルにとってテルコは恋人ではなかった。そこのことを十分自覚しているテルコだったが、それでもマモルが大好きで、幸せだと思っていた。親友の葉子は、そんな都合のいい女で良しとするテルコの恋愛観に呆れるばかりだったが…。

<感想>全部が好き。でもなんでだろう、私は彼の恋人じゃない。一途すぎるアラサー女子の一方通行の恋を、彼女と関わる4人の男女の想いを絡めて描いている恋愛ドラマでした。

人を好きになる、ということはそれは素敵な体験ではあるが、自分をどんどん見失い、底なし沼にハマってしまう場合もある。恋愛映画の形を借りて、これまで再三「人が人を好きになる」甘酸っぱさと面倒くささの“シーソーゲーム”を考察してきた今泉力哉監督。

新作では、一目惚れしてしまったマモルに常軌を逸した愛情を捧げるテルコの暴走ぶりを描き出し、男女問わず観る者の感情を激しく揺さぶるのだ。

完全なる一方通行の恋、片思いを極めてゆくタフなヒロイン、テルコに岸井ゆきのが演じていて、「こういう女の人っているよね」なんて思ってしまった。デートもセックスもするが、付き合っているわけではないと言うマモル。もし妊娠でもしたらどういうふうに打ち明けるのだろう。きっと「俺の子供じゃない」ときっぱりと言われそうだ。酷い言葉で、「ウザイ、君とは恋人じゃないから」なんてキツイ言葉を浴びせられても、テルコは一途に電話を待っているのだ。

自分はテルコとはまったく違うタイプなので、相手のマモルが自分本位な行動でテルコを翻弄する男を演じた成田凌くん、自分のことを好きになっている女を利用するというか、都合のいい時だけ寝て、ご飯食べて、後は好きになってしまう女が出来るとポイと簡単に捨ててしまう男。始めっからこういう男とは付き合いませんし、好きにもなりませんね。

テルコもそれで諦めればいいのに、電話がくるとすぐに飛んでいくし、いいようにあしらわれているということに気が付いていないのだ。まじ可哀そうな女で、テルコみたいな女性でも好きになってくれる新しい男が現れるハズなのに、諦めきれずに一途に待っているなんてね。

すみれというライバルにムカついたときに、テルコがラップ調に唄うシーンが大好きです。負けるなテルコ、きっと自分に見合った男がきっと現れるはずだから。すみれも大人の女で、テルコの心情を知ってか知らずか、マモルがしつこく付き合おうとすると、やんわりと態度をひるがえす魅力的な大人の女。だからこそ、マモルもテルコも振り回されてしまうのが説得力ありですよね。

「愛なんて」明確な答えなんて出せないものですからね。

友人の自由奔放な葉子と、邪険な扱いをされながらも彼女に好意を寄せるカメラマン志望のナカハラくん。想いを寄せている葉子の言いなりになっている心の優しい青年であり、葉子の家に居候をしている。でも、自分の気持ちを葉子に伝えようとはしないのだが、写真展で葉子の素顔を撮った自然なポーズが素敵でした。それを見て、葉子の心が搔き乱されてゆく。ナカハラくんも、だからテルコの一途な恋の気持ちも充分に理解しているのだ。

それにマモルが恋に落ちるキーパーソン、年上の女性すみれを演じた江口のりこは、大人の女って感じで中々良かった。こういう人いる、って思わせるリアルな人物を出演陣が的確に体現しているのもいい。

片思いとは、誰でもが通る恋愛の感情を、濃密で瑞々しく、リアルで生々しくもありそれで痛々しい。“愛されてはいない“と、頭では分かっているのに感情が追い付かない一方通行の苦しさ。そんな人間のどうしようもなさを、突きつけられる恋愛映画です。

 

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サンセット★★★

2019年05月26日 | アクション映画ーサ行

デビュー作「サウルの息子」でアカデミー外国語映画賞を獲得したハンガリーの俊英ネメシュ・ラースロー監督による注目のデビュー2作目。第一次世界大戦前夜のオーストリア=ハンガリー帝国を舞台に、高級帽子店に職を求めた一人の女性が辿る数奇な運命を、謎を秘めたストイックな筆致で描き出していく。主演は「サウルの息子」にも出演していたヤカブ・ユーリ。

あらすじ:1913年、オーストリア=ハンガリー帝国。ブダペストにある高級帽子店にやってきた若い女性イリスは、ここで働くのが夢だったと語る。しかしオーナーは迷惑顔。そこは、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した店だったのだ。やがて、失踪している兄の消息を追い始めるイリス。一方、華やかな帽子店に隠された大きな闇も次第に浮かび上がってくるのだったが…。

<感想>世の中にこんなにも似ている人がいるもんだと、イリス・レイターを演じたユーリ・ヤカブがエマ・ワトソンにそっくりだったものでね。演技は、もちろんエマ・ワトソンの方が巧いに決まっている。それによくよく見れば、エマの方が美人でした。

映画の冒頭で「ベールを上げましょう」という言葉が画面の外から聞こえてくる。帽子の下からイリスの顔が見えるのだ。この映画はまさにベールに隠された闇の世界を少しずつ見せる。イリスはレイター帽子店に就職しようとトリエステからブタペストまでやってきた。

そこは死んだ両親が作った店であり、今は使用人であったブリッルという男が経営をしていた。ブリッルは彼女を追い返そうとするが、イリスは兄の消息を聞いて、街の中を探し始める。兄について何かを知っている人、兄が殺したという伯爵夫人や、婦人に襲い掛かるオーストリア人の男。

ボートに乗ったイリスを襲う男など次々に謎の人物が現れては消える。帽子店は創立30周年記念で、ウィーンからオーストラリア皇太子と妃殿下が店にやってくるが、どうも帽子店はウィーンの王室に女を提供しているらしい。

一方で兄は、帽子店に火をつける暴動を率いているようだ。手持ちカメラは、彷徨うイリスを執拗に追いかけるのだ。長回しに見える彼女の周囲は、ボケたり鮮明に見えたりと、まるで幻想のようである。

観客は混沌とした都会の現実の中から、イリスが置かれている状況や、両親と兄と彼女に起きた過去を想像しながら観ることをうながされる。

ラースロー監督の「サウルの息子」は、観たことは観たのだが、何だかユダヤ人迫害のようなそんな内容だった。イリスが兄のことを調べて行くうちに、兄がまだ生きていると感じた。

イリスが両親の死後、移住したトリエステは、イタリアの街だが、当時はオーストリア=ハンガリー帝国の領土。その街はユダヤ人が多かった。イリスも彼女が務めた帽子店「シュワルツ」もユダヤ名のだった。

帽子店に働く女性のお針子たちは、住み込みで働いており、ブリッルが客の好みに合わせて売春をしているように見えた。女の子たちも、選ばれていくのを喜んでいるようにも見えたのだが、その辺がよく解らない。創立30周年記念パーティでは、暴漢たちに店が襲撃に遭うという恐ろしいことが起きる。

さらにドイツ語を話すオーストラリア人に、奴隷のように扱われるハンガリー人の問題も見える。20世紀初頭の中央ヨーロッパの抱える矛盾が映画全体を覆うようであった。ラストに、イリスが従軍看護婦となって戦地へ行っている様子が映し出された。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・78  アクション・アドベンチャーランキング

 

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コンフィデンスマンJP★★★★

2019年05月25日 | アクション映画ーカ行

人気脚本家・古沢良太のオリジナル脚本、長澤まさみ、東出昌大、小日向文世の主演で好評を博した同名TVドラマの劇場版。コンフィデンスマン(=信用詐欺師)のダー子、ボクちゃん、リチャードの3人が香港を舞台に繰り広げる大胆不敵な詐欺計画の行方を、二転三転するストーリー展開で奇想天外に描いた痛快エンタテインメント・コメディ。共演に小手伸也、竹内結子、三浦春馬、江口洋介。監督はドラマ版に引き続き田中亮。

あらすじ:美しきコンフィデンスウーマンのダー子が次なるターゲットに選んだのは香港マフィアの女帝ラン・リウ。狙いは彼女が持つと言われている伝説のパープルダイヤ。さっそくボクちゃん、リチャードとともに香港へと降り立つが、ランはなかなかエサに食いついてこない。そうこうするうち、同じくランを狙う天才詐欺師のジェシーが現われ、何やらダー子との過去も絡んで計画は波乱含みに。おまけに、かつて一杯食わされたダー子への復讐に燃える日本のヤクザ赤星の影もちらつき始め、いよいよ窮地に陥るダー子だったが…。

<感想>嘘はいつだって真実より魅力的。史上最大の騙し合い<コンゲーム>が始まる。信用詐欺師としてその世界では知られたダー子、ボクちゃん、リチャードのトリオ。さまざまな変装を見せる、コンフィデンスマンの3人。

ビジュアルと合わせて、それぞれの人物の細かい設定や、成り切った上でのクセの強いキャラクター描写も大いに見どころであり、1つのエピソードだけでも姿から中身まで何役もの人物に変化する長澤まさみに、東出昌大、小日向文世を楽しめますからね。今回もダー子のカラフルでポップな普段の衣装にも注目。

今回の騙しの手法の部分では、“恋愛もの詐欺“やライバルの詐欺師の登場といった断片的なアイデアが巧い具合につながって出来たのが今回の「ロマンス編」。

そして、オサカナの標的は、冷酷さから“氷姫”と称される香港マフィアの女帝ラン・リウ。彼女が所有する伝説のパープルダイヤを狙い、3人はダー子に弟子入りしたモナコと共に香港へと飛んだ。

ですが、敵もそう簡単には引っ掛からない。ところが“氷姫”は占いに弱いということで、真っ白なワンピースを着た2人の姉妹に変装した占い、予知能力師に成り切り、「緑色には気おつけろ」と注意しろと、すると目の前をバイク便の緑色の男が車を停止させる。それからも、占いによる計画で、仲間たちが要領よく立ち廻り、ラン・リウを納得させるのだ。

ダー子たちが、騙しと脅しのプロたちが結集し香港で絡み合う相関図。果たして笑うのは誰? スピーディーな展開のお宝争奪戦です。それが、毎回TVのシリーズを見ていたので、予想通りの終わり方でした。

でも、ラストのドンデン返し的な演出は、またまた子猫ちゃんとか、ポリスたちとかに金がかかって赤字じゃないの、なんて思ってしまった。

長澤まさみのダー子 ちゃん最高です。それに東出昌大のボクちゃん は、いつも甘えん坊キャラで、今回はダー子が好きなのに、元彼の三浦春馬くんのジェシーに取られるんじゃないかと心配で仕方がない。

ジェシーの美貌と愛の言葉についほだされのが、“氷姫”と称される香港マフィアの女帝ラン・リウの、竹内結子の美しさと気位の高い性格にぴったりでした。

最後のボクちゃんが、「ダー子が好きだ」の叫びは本物なのか?・・・いや、演技なのかは観てのお楽しみ。

それと小日向文世さんのリチャード は完璧に役をこなす演技派であり、小手伸也さんの五十嵐 に、その中でも光っていたのはモナコ役の新人・織田莉沙さんですね。モナコは可愛いけど、実は三浦春馬くんのジェシーの子分でしたということに。でも、最後にはダー子に付いてくるという利口なところもあり。

悪役の江口洋介のヤクザの赤星栄介役も、前回での20億円を取り返したいので、誰でもいいからあの3人を捕まえてくれというわけ。いつも思うのですが、最後に必ずダー子に騙されて悔しがる江口洋介の顔が夕日に映えて良かった。

そして後半。どこかで見たような、一瞬登場するんだけど、偽造ダイヤを造った中国人が小栗旬くんとか、小出しネタも入っていて面白かった。

それに、とことん観客も騙すテクニックには、ラストでも香港の女帝ラン・リウの本物は、ボロ服を着て掃除をしているオバサンであり、左目にパープルダイヤを入れ込んでいましたね。騙しの仕掛けもスケールアップしてましたです。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・77  アクション・アドベンチャーランキング

 

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レプリカズ★★★

2019年05月24日 | アクション映画ーラ行

キアヌ・リーヴスが愛する家族のために禁断の再生技術に手を染めてしまう天才科学者を演じるSFサスペンス。共演にアリス・イヴ、トーマス・ミドルディッチ、ジョン・オーティス。監督は「デイ・アフター・トゥモロー」の脚本家ジェフリー・ナックマノフ。

あらすじ:死んだ人間の意識をコンピュータに移す実験が成功へと近づいている神経科学者のウィリアム・フォスター。ある日、突然の自動車事故で最愛の妻と3人の子どもたちを失ってしまう。悲しみのあまり科学者の倫理をかなぐり捨て、家族の身体をクローン化し、意識を移し替える禁断の研究を強行してしまうのだったが…。

<感想>キアヌの暴走が、止まらない――。愛する家族を守るため、科学者の戦いが今、始まる!その発明は、[大罪]か[奇跡]か?・・・クローン人間なのか、それとも現代版の「フランケンシュタイン」なのか。

神経科学者ウィリアム・フォスター(リーブス)は、激しい雷雨により見通しが悪いなか、家族を乗せた車を運転中のウィリアムはアクセルを全開。案の定事故に遭い、家族全員を死なせてしまう。科学の発展と倫理観のせめぎ合いを大きなテーマとしているはずなのだが、科学者キアヌは妻子のクローン製造を即決するわけ。

物語的にも未来科学の展開にも、クローン妻子になんらかの悪しき変調が起きてもいいものだが、それがないのが変です。とにかく全てがイージーなのだ。しかし、クローン製造のむずかしさよりも死んだ妻子に代わって、キアヌが欠席・欠勤の連絡、メールの返信、SNSのコメント対応する方が難儀に描くあたりは笑うしかなかった。

一人“ぼっち”で頭を抱える、哀愁漂うキアヌの姿をとらえている。本作は、神経科学者ウィリアム・フォスター(キアヌ・リーブス)が、事故で亡くなった家族をよみがえらせようとし、倫理に反した暴走を加速させていくさまを描く。「デイ・アフター・トゥモロー」で脚本を担当したジェフリー・ナックマノフが監督を務め、リーブス自身も「トランスフォーマー」シリーズのロレンツォ・ディ・ボナベンチュラらとともに、製作に名を連ねている。

リーブスといえば、米ニューヨークのソーホーにあるベンチでひとりランチを食べる姿や、46歳の誕生日にひとりでカップケーキとコーヒーでお祝いをしている姿を撮られたことで有名。ネット上では「サッド・キアヌ」と呼ばれ、“ぼっち”な姿が公開される度にファンからいじられ、愛されてきた。

本作でも、家族を失い悲しみのどん底に陥り、さまざまな表情を見せるサッド・キアヌが登場する。公開された場面写真は、ポットが3つしかないので、機材不足のため家族全員をよみがえらせることが不可能だと判明し、頭を抱える“がっかりキアヌ”など全4枚。1番幼い娘を冷凍庫の中にでも保管したのかな。キアヌのぼっちメシをする姿や、膝を抱えて考え込む場面も披露され、リーブスの見せるリアルな表情にも注目だ。

愛する家族を失ったことをきっかけに、“暴走”に手を染めてしまう科学者を描いた今作。ビジュアルは、静かな狂気をはらんだリーブスの表情を活写し、「その発明は、[大罪]か[奇跡]か」というコピーが大胆に配置されている。

そして、研究所から車でポッドを屋敷に運び入れ、悲しみに暮れるフォスターは、自らの研究をもとに、クローン化した家族の体に意識を移し替え、完璧なレプリカとして再生させるというタブーを犯す。怪しげなポットのなかには人影が浮かび、息苦しそうにあえぐ女性の姿も。謎が謎を呼び、物語のスリルに期待が高まる。

あらゆるモラルとルールを無視し、家族を無事復活させたウィリアムだが、政府組織が研究対象として家族を奪おうと一家を襲撃……。迎え撃つウィリアムの“作戦”は、「そんなのアリなの?」っていう内容なんですね。 

これまたB級な作品ですが、装いは最先端科学なんですよ。とはいえ、それが説得力増大に繋がっているかはまた別問題である。前半部分の面白さは、家族がいない理由をどう取り繕うのかとか、電源をどう確保するかにある。ところが後半では、物語的に重要と思われる部分が、何故かはしょられていて突然の方向転換に戸惑ってしまう。

さらには、スリルが最高に盛り上がるはずの部分では、演出の生ぬるさにびっくり仰天する。シリアスにやってもそうでなくても、もっと面白くできたはずの映画なのに、惜しいですね。

基本的にはフランケンシュタインの物語だが、神経科学が発達している現代なので、科学者キアヌが倫理の壁を越える暴走をしても、とりわけ異常な人間像には見えない。

研究所の上司であるジョン・オーティスが金儲けの目的で、医療開発企業をやっている設定にし、キアヌは家族愛のためにクローン人間を造る学者にしているからです。主人公がロボットやクローン人間に感情移入する娯楽作品なので、最後が過去を忘れたクローン人間でも、成立すると思いますね。忘れられたわけではなく、末っ子の娘が最後にクローン人間として蘇って来るシーンは良かった。

キアヌファンとしては、過去の出演作と似ているような物語に懐疑心ありです。ですが、「ジョン・ウィック」第3弾、10月に日本公開決定ので、今から楽しみです。

2019年劇場鑑賞作品・・・76  アクション・アドベンチャーランキング

 

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居眠り磐音★★★★

2019年05月21日 | アクション映画ーア行

佐伯泰英の人気時代小説シリーズを「孤狼の血」「娼年」の松坂桃李主演で映画化。藩の抗争に巻き込まれ、全てを失い、江戸の長屋で浪人として生きる心優しき剣士が、江戸下町の人々と心を通わせていく人情模様と、大切な人を守るために再び剣を手に立ち上がる姿を描く。共演は木村文乃、芳根京子、谷原章介、中村梅雀、柄本明。監督は「超高速!参勤交代」「空飛ぶタイヤ」の本木克英。

あらすじ:故郷・豊後関前藩で将来を嘱望される藩士だった坂崎磐音は、ある悲劇的事件によって2人の幼なじみを失い、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒とも別れざるをえなくなる。脱藩し、心に深い傷を抱えたまま、江戸で長屋暮らしを始めた磐音。長屋の大家・金兵衛の紹介で、両替屋・今津屋の用心棒として働くことに。その穏やかで誠実な人柄と、確かな剣の腕前で、次第に長屋の人々から信頼され、いつしか金兵衛の娘おこんからも好意を持たれるようになる。そんな中、田沼意次が発行した新貨幣を巡る陰謀に巻き込まれてしまう磐音だったが…。

<感想>この男、切ないほどに、強く、優しい。磐音は人情に厚く穏やかな性格で、人を包みこむように優しくほほ笑む普段の姿。しかし、悪と対峙するとその様相は一変し、別人のように鋭い眼差しで剣を構える鬼気迫る姿を見せており、本作の見どころである本格的な殺陣にも期待が高まるビジュアルとなっていた。欲を言えばだが、もう少し殺陣の練習をすれば、岡田准一のような素晴らしい武士の役も掴めるかも。

不条理な理由で故郷の友人2人を亡くし、挙句に許嫁の奈緒の兄である琴平を斬って死なせてしまった辛い過去がある。夫婦になる誓いを結んだのに、お家断絶のために江戸の吉原へ奉公に出る奈緒。

そして彼は、脱藩することを決意。すべてを失い、江戸へ出た磐音も長屋暮らしで、うなぎ屋で調理しとして下働きをし、また両替屋の用心棒を務める磐音が、刺客の毘沙門の統五郎らが難癖をつけに現れる。

今津屋を守るため刺客たちと戦い、そこで負った背中の傷をおこん(木村)が手当てするシーン。

磐音はひた隠しにしていた自身の“悲しい過去”について、ポツポツと打ち明け始める。彼女を心から信頼しているからだ。壮絶な出来事、そして故郷に残してきた許嫁・奈緒(芳根京子)の存在……。おこんは「それではあまりに奈緒様がおかわいそうです」と涙を流し、彼を思うからこそ、自身の気持ちを抑え陰ながら支えることを決意する。

そんな折、今津屋が南鐐二朱銀をめぐる騒動に巻き込まれ、磐音は用心棒として今津屋を守るために立ち向かうー。

奥田が演じた豊後関前藩・国家老の宍戸文六は、麻薬で捕まったピエール瀧の代役となって、琴平(柄本佑)が起こした事件を受け当人を討ち取るよう藩に命じる役どころ。劇中カットでは、磐音(松坂)の父・坂崎正睦(石丸)、藩の目付頭・東源之丞(和田聰宏)らに囲まれ、琴平を討ち取るように命じる場面を捉えた鋭い眼光が強烈なインパクトを放っている。そして、老中田沼には西村まさ彦が扮していた。

後半の新貨幣をめぐる陰謀は、何となく解るものの、少し急ぎ足のような展開で、老中・田沼意次の改革を進める今津屋と、それに反対する阿波屋の対立という構図であり、柄本明の阿波屋が雇った刺客が今津屋を狙い、それに磐音が立ち向かっていくという展開。

しかしながら、磐音の素晴らしい知恵が一枚上手だったということで、最後はあっけなく両替商「阿波屋」の主人・有楽斎の陰謀がすべてバレてしまい、磐音による裁きによって、有楽斎の凄まじい最後と迫真の演技でさすがの柄本明さん、お見事でした。

また、杉野は琴平の義弟・河出慎之輔、佐々木は磐音の剣の師匠・佐々木玲圓、陣内は遊郭「三浦屋」主人・庄右衛門、谷原は両替商「今津屋」の主人・吉右衛門、梅雀は磐音が住む長屋の大家・金兵衛に扮している。ほか石丸謙二郎、財前直見、西村まさ彦、橋本じゅん、早乙女太一、中村ゆり、波岡一喜、川村ゆきえらの出演。

主題歌が、MISIAの「LOVED」であり「あなたを好きになれて良かった」「それぞれ今を生きてゆくよ」という歌詞が、磐音と奈緒による互いを思いながらも別れを決断した切ない恋模様とリンクしているバラード。

吉原で花魁になり、練り歩く菜緒の晴れ姿が後ろを向く時に、群衆の中に磐音がいるのを知ってか知らずか、エンドロールでなく、このシーンで「LOVED」が流れてくれれば良かったのに。吉原で生きる彼女の運命に涙が溢れてならない。それと、笑顔の裏に悲しい過去を隠す浪人・磐音の姿が、切なくも凛々しく包み込んでいた。

 

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轢き逃げ 最高の最悪な日★★★・5

2019年05月15日 | アクション映画ーハ行

「TAP THE LAST SHOW」で監督デビューを飾った水谷豊が、今度は脚本も自ら手がけて撮り上げた長編第2作。一つの轢き逃げ事件を巡り、現場から逃走してしまった加害者の葛藤と恐怖、突然最愛の娘を奪われた被害者家族の悲しみと怒りを、二転三転する真相の行方とともに描き出す。主演は「アノソラノアオ」の中山麻聖、共演に石田法嗣、小林涼子、檀ふみ、岸部一徳。また水谷豊自身も被害者の父親役で出演。

あらすじ:大手ゼネコンに勤める若きエリート・宗方秀一は、白河早苗との結婚式を3日後に控え、その打ち合わせへと車で向かっていた。式の司会を務める親友で同僚の森田輝が助手席に座る中、急ぐあまり不慣れな抜け道で若い女性をはねてしまう。しかし周囲に誰もいなかったことから、秀一と輝はその場を立ち去り、そのまま打ち合わせへと向かってしまう。警察の捜査に怯えながらも、結婚式の準備を進めていく秀一だったが…。一方、突然の轢き逃げ事件で一人娘を失い、悲しみに暮れる時山光央と妻の千鶴子。ある日、遺品の返却に訪れた2人組の刑事、柳公三郎と前田俊から“娘さんの携帯電話が見あたらない”との報告を受けるのだったが…。

<感想>俳優・水谷豊が、自ら脚本も手掛けた監督第二作目である。轢き逃げ事故を起こしてしまった親友二人と、事故の被害者家族の人間模様を、若手俳優たちを起用して描いた作品。繊細な人物描写にこだわった水谷監督の演出が見事でした。映画の設定ある地方都市だが、実際は18年春にほぼ神戸市内で撮影されたもの。

冒頭シーンから友人の森田輝が遅刻をしてきて、主人公の宗方秀一が運転するブルーのジープに乗り、ややスピードを上げて走り出す。結婚式を3日前に控えており、結婚式場での最後の打ち合わせという事らしいが、遅刻を気にしている運転手は、裏道を行こうと一方通行の狭い道をスピートを挙げて登ってゆく。目の前に女性が出て来て、轢いてしまったのだ。茫然としながらも、自分が人身事故を起こしてしまったことに、これからの人生が真っ暗になってしまうと考える男。

本当だったら、どんなことがあろうと、一度車から降りて轢いてしまった人を見て救急車を呼び、警察へ電話を入れるべきである。それから、保険会社へ電話するなり、そして、待ち合わせをしている女性にも遅れることを知らせるべきだと思います。主人公・中山麻聖が、結婚式を目前に控えながらもひき逃げ事件を起こしてしまう秀一役を、石田法嗣がその親友・輝役。物語の鍵を握る加害者側2人は、オーディションで抜てきされた。さらに小林涼子が秀一の妻・早苗役に扮している。

ところが、この2人の男性は、後ろを前を、周辺をチラ見して誰もいないかを調べて、逃げるのですからね。これは絶対にやってはいけないことであり、いくら結婚式を控えているからといっても、事故を起こした責任としては、人間としての責任を取るべきです。ですから、びくびくしながらも上手く逃げおうせたと思っている、加害者の主人公宗方秀一のこれからの人生は、お先真っ暗状態なんですから。家へ戻り車を見て塗料を指で塗り、バンパーのナンバープレートが曲がっているのを治す。

この男に良心の呵責はないのか。同乗者の遅刻男・森田輝は、小心者らしく怖れおののいて、大丈夫さと空元気。そして、TVのニュース番組では、早速轢き逃げ事故のニュースを取り上げていた。

次の日会社へ行くと、2人は喫煙室へ行き、これからどうするかを話し合うつもりだったが、社員の仲間たちは、副社長の娘と結婚する玉の輿の宗方秀一を虐める人たちもいるのだ。これでは、この二人が轢き逃げ事故のことを知らぬふりするのが当然のような感じもするでもない。

友達の森田輝が、郵便受けに脅迫めいた張り紙が送られてきたことにびくつき、秀一の所にも同じ脅迫が来ていた。しかし、後2日で結婚式だし、その後は新婚旅行へ行ってしまう秀一に対して、どうにかして轢き逃げ事故のことを上手く処理できないか相談する輝。二人で、夜の海岸へ行き、裸ではしゃぎまわる。この風景は何か意味があるのか。何かの伏線とみたのだが。

やっと被害者宅の様子が映し出され、一人娘を轢き逃げ事故で亡くした夫婦の姿が。父親は、娘の幼いころのビデオを涙を浮かべて、酒を飲みながら見ている。そして寝てしまうのだった。父親に水谷豊さん、檀ふみがその妻・千鶴子役で共演している。

それが、突然犯人が捕まってしまうという早急な展開。岸部一徳さん扮する刑事に、犯人の一人である同乗者の森田輝が白状するには、秀一とは子供のころからの仲良しで、いつも頭のいいイケメンの秀一の金魚のフンのごとく、後ろにぴったりくっ付いていた輝。自分が出来ないことを、いつも羨ましく嫉妬をしていたと言う。

友人の.嫉妬による悪戯の仕込みは要らないのでは、「それじゃ、被害者女性があまりにも報われなさ過ぎて可哀想だ」と思われた。父親に土下座をして謝る森田輝。

脚本も執筆した水谷豊さんがこだわったのは、犯人探しではなく登場人物の“心の軌跡”だ。否応なく運命に翻ろうされる人々が、いかにして悲劇の先にある“人生の答え”にたどり着くのかを追っていく。

父親が亡き娘のために素人探偵よろしく真実に迫ろうとする姿に、内容的にはビックリする展開なんですね。被害者の父親役の水谷豊が、目星をつけた森田輝のアパートに、強盗みたいにベランダから侵入して、部屋の中を物色する。娘が付き合っていたと思われる男の白いジーンズと、野球帽がクローゼットの中から出て来て、それに娘のケータイ電話も出て来る。そこへ森田輝が帰って来て、父親と揉み合いながらベランダから下へ転落するのだ。被害者である父親が、終盤で犯罪を犯しても逮捕されてないのが不思議でした。

しかし、不満だったのが、加害者が簡単に逮捕され、サスペンスの要素も少なかったし、それに友人の轢き逃げ工作は嫉妬によるものだったので、何だか支離滅裂な映画化と思えば、ラストシーンでの救いを感じたあのシーンがあってよかった。

 

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名探偵ピカチュウ★★★・5

2019年05月11日 | アクション映画ーマ行

日本が世界に誇る大人気コンテンツ“ポケモン”をハリウッドがシリーズ初の実写映画化したミステリー・アドベンチャー大作。同名の人気ゲームソフトを原作に、行方不明になった父を捜すため、父の元相棒だったポケモンの名探偵ピカチュウとコンビを組み、父が巻き込まれた事件の謎に立ち向かっていく青年の姿を、ミステリアスかつ迫力のアクション満載に描き出す。主演は「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のジャスティス・スミス、共演にキャスリン・ニュートン、渡辺謙、ビル・ナイ。また見た目はカワイイけれど中身は“おっさん”の名探偵ピカチュウの声を「デッドプール」のライアン・レイノルズが担当。監督は「シャーク・テイル」「グースバンプス モンスターと秘密の書」のロブ・レターマン。

あらすじ:ある日、青年ティムは敏腕刑事だった父ハリーが事故で亡くなったとの知らせを受け、荷物を整理するためライムシティにあるハリーの部屋へと向かう。するとそこでハリーの元相棒だったという名探偵ピカチュウと出会う。彼は事故の衝撃で以前の記憶を失っていたが、ハリーはまだ生きていると確信していた。そこで2人は協力してハリーの行方を追うのだったが…。

<感想>世界中で愛されている日本生まれの“ポケモン”がついにハリウッドで実写映画化された。人間とポケモンが共存する街“ライムシティ”を舞台に、ピカチュウたちが新しい表情を見せる楽しい作品。

主人公はもちろんピカチュウなんですが、ここでは保険会社に勤めるティムと言う青年であり、離れて暮らしている父親が事故死をしたという連絡を受けて駆けつける。荷物を整理するために父親の部屋を訪れたティムの目の前に、父親のパートナーだった名探偵ピカチュウが現れるのだ。

この見た目はふさふさとした毛並みと可愛らしい瞳、ティムにしか聞こえないおっさんの声(ライアン・レイノルズ)で話す言葉にギャップがある。もちろん、コダック、バリヤード、ミュウツー、フシギダネにルンパッパといったポケモンたちが、ストーリーにどう絡むかにも注目であります。

青年ティムとピカチュウは、人間とポケモンたちが共存するライムシティへと向かうのだが、・・・。そこで起きる事件の謎とは?新米記者のルーシーの力も借りて手がかりを追って行く内に、大事件の衝撃的な真相に辿り着くのです。

他にもティムの父親ハリーの同僚だったライムシティの刑事、ヨシダ(渡辺謙)と出会い、彼は残されたティムのことを気に掛けているのだ。ですがあまり出番は少なかったです。それと、悪役にビル・ナイが出ていました。

いやぁ、驚いたのがピカチュウの声が“ピカピカ”というTVアニメなどで慣れ親しんだ声ではなく、おっさんの声であること。TVアニメでしか観たことのないファンには、しょうがないところだが、この設定は本作のベースとなるゲームに則っており、ゲームのピカチュウも中年男性の声なのだそうです。

誰もが夢見たポケモンと人間が共存する世界を現実にするため、ロンドンをメインにして、主にイギリスで撮影を敢行。市街地でカメラを回した場面もあれば、スタジオに建設された街並みを収めたシーンもあり、そのビジュアルは実に多彩です。スコットランドでも行われたロケでは、高原や湖、森の場面も収められ、辺境の様子もリアルに映し出されていた。ライムシティは、バラエティに富んだルックを持っているのだった。

自分の大好きなキャラのポケモンが、いつも傍にいるなんて最高ですよね。それに、事件を調べて行くうちに、父親が最後に行ったポケモンの遺伝子研究施設へと。そこでは、ハワード(ビル・ナイ)が捕まえたミュウツーから、自分の頭に精神を移してミュウツーの頭脳の能力をハワード自身に宿そうとしていた。

その遺伝子研究施設へ行き、ピカチュウが窮地に追い込まれて、体が動かなくなるような、死んでしまうようなシーンもあります。心配しながら、ライムシティへ運び、どうなるかと思っていたら、なんとあの“ミュウツー”が現れて、ピカチュウの身体に電流を流し入れて、無事に元どおりに回復するシーンは、感激でした。

ミュウツーがまたもやハワードの息子ロジャーに捕らえられてしまい、ハワードの頭脳を宿して人間やポケモンたちを襲うシーン。ハワードがライムシティでは、火を吐くラドン型のモンスターを使って、ポケモンたちと戦わせるという決闘シーンもあります。しかし、ティムとルーシーたちが、ハワードの頭のバンドを取ると、操られていたミュウツーが自分を取り戻すのです。

やはり何と言っても“ミュウツー”が強いのなんのって、可愛いモフモフでぬいぐるみのピカチュウが戦うのも見どころですね。

少しずつ強まっていく彼らのバディ感が、父親捜しのミステリーを盛り上げていて、お馴染みのポケモンたちが、次々と登場するライムシティの臨場感やアクションのスケール感は、ハリウッド映画だからこそですね。

5,6歳ころに母親が亡くなり、お婆ちゃんと暮らすか父親と暮らすかの選択に、お婆ちゃんと暮らす方を選んだティム。仕事に没頭していた父への、複雑な想いを抱えるティムの心の旅も描かれており、親子の物語としても見ごたえのある作品になってました。ラストは、ティムが父親へのわだかまりも消えて、仲良くなるのが良かったです。

2019年劇場鑑賞作品・・・73  アクション・アドベンチャーランキング

 

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ザ・プレイス 運命の交差点★★★

2019年05月08日 | アクション映画ーサ行

アメリカのTVドラマ「The Booth ~欲望を喰う男」を「おとなの事情」のパオロ・ジェノヴェーゼ監督が、ヴァレリオ・マスタンドレア、マルコ・ジャリーニ、アルバ・ロルヴァケルらイタリアを代表するキャスト陣の共演でリメイクした不条理ドラマ。ローマのカフェを舞台に、そこに居座り続ける謎の男が、訪れる相談者たちの不可能と思える願いを聞き入れ、それを叶える条件として途方もない課題を与えるさまと、次第に交差していく相談者それぞれの運命の行方をミステリアスな筆致で描き出す。

あらすじ:ローマにあるカフェ“ザ・プレイス”。そこに分厚い手帳を手にした謎の男が居座り続けていた。男のもとには、入れ代わり立ち代わり9人の訪問者がやって来る。男はどんな願いでも叶えることができるという。ただし、そのためには男が与える課題を遂行しなければならなかった。ところがその課題は、息子を癌の病気から救いたいと願う父親には見ず知らずの少女を殺せ、アルツハイマーの夫を助けたいという老婦人には人が集まる場所に爆弾を仕掛けろ、視力を取り戻したいという盲目の男には女を犯せ、といったあまりにも支離滅裂で非情な無理難題ばかりだったのだが…。

<感想>欲望の代償は、他人の運命。舞台はあるカフェ(ザ・プレイス)の店内のみである。しかも主人公は座席から一歩も動かないのだ。どうしてわざわざ映画でこんな無謀な試みをするのか?・・・TVドラマでもいいだろうに。

しかし、よくよく観れば、この状況って、何かに似ていないか?・・・。それは映画館の座席と観客である。上映中の観客は基本的に限られた空間に留まり、席を立たないからだ。

それぞれの声をセリフにすれば会話劇だって成り立つと思うのだが。問題は主人公の男を演じる居心地の悪さなのだ。正体不明の男の抱く嫌悪感は、無名の傍観者でいることによって、高みからスクリーンを見物している、自分自身へのそれと同じなのだから。

現代演劇の良くできた戯曲かと思ったのだが、米国のテレビドラマが原作ということで驚いてしまった。相談者に課題を与えて、望みを叶えてやる主人公の男は、いったい何者なのか。どうして相談者たちは、カフェに座っているこの男に相談をしに来るのか。

この男の説明がないので、いろいろと余白を想像で埋めることができる。カフェに限定されている空間を描くために、スタジオセットかと思うほど考える限りのアングルやフレームサイズ、人物の動線を駆使していて、映像を演出する側の挑戦が感じられた。

生きている限り、人間は何らかの欲望や願望から逃れられないと思っている。けれども、それが叶えられるとなると、そのために強盗をするだろうか?・・・。

人が集まる場所に爆弾を仕掛けるだろうか。もちろん、謎の主人公が次々とやって来る相談者に課すこれらの課題は、殺人やレイプ、爆弾テロなどの犯罪行為ばかりではなく、すべては伏線である。まるで悪魔の囁きのようにもとれる。

カフェの店員である女、アンジェラは名前の如く天使を象徴しているのだろう。だから、主人公の男が相談者に無茶な課題を与えるのは、実際に言われた通りにすれば地獄へ落ちるということなのか。天使がいつもその男を見守っているので、その課題を与える男は悪魔ではなさそうだ。

ワン・シチュエイションで紡ぐこの会話劇は、人生の哲学書の趣があると思った。誰もが楽しめるとは言えないのが難点なのだが、伏線の読み解きに没頭する至福をたっぷりと堪能できるのであります。

2019年劇場鑑賞作品・・・72  アクション・アドベンチャーランキング

 

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アガサ・クリスティー ねじれた家★★★

2019年05月07日 | アクション映画ーア行

アガサ・クリスティーが自作の中でもっとも好きな作品の一つと語る同名ミステリーを「サラの鍵」「ダーク・プレイス」のジル・パケ=ブランネール監督が映画化。出演は「天才作家の妻 -40年目の真実-」のグレン・クローズの他、マックス・アイアンズ、テレンス・スタンプ、ジリアン・アンダーソン、クリスティナ・ヘンドリックス。

あらすじ:一代で巨万の富を築いた大富豪レオニデスが毒殺された。私立探偵のチャールズは、かつて恋人だったレオニデスの孫娘ソフィアから依頼を受け、事件解決にあたることに。大邸宅にやって来たチャールズは、さっそく家族たちへの聞き込みを開始する。しかしレオニデスの前妻の姉イーディスや若い後妻ブレンダをはじめ、誰もが一筋縄ではいかない個性の持ち主ばかり。しかもその全員に殺害の動機があるという状況の中、捜査が遅々として進まないチャールズだったが…。

<感想>華麗なる一族の大富豪が毒殺された。残されたのは“心のねじれた”家族と巨額の遺産。嘘をついているのは、誰?・・・原作は未読ですが、犯人をあれこれ想像しながら観ると、終盤まで飽きさせない展開で楽しめました。

アガサ・クリスティーの作品というと、名探偵エルキュール・ポアロやミス・マープルが登場するのが定番ですが、ここには2人は登場しません。

このミステリーで、事件を解決する若きチャールズ探偵。演じているのが「天才作家の妻/40年目の真実」で、作家の息子を演じてグレン・クローズとは、立て続けの共演となるマックス・アイアンズ。あの有名な父が俳優のジェレミー・アイアンズの息子です。このマックス・アイアンズの演じる探偵が情けなくてよかった。孫娘ソフィア(ステファニー・マティーニ)が、かつての恋人だった私立探偵チャールズ(マックス・アイアンズ)を訪ねて犯人捜しを依頼する、というのが始まり。

屋敷で大富豪の毒殺事件があり、容疑者はそこに暮らす一族郎党という、王道の“館もの”です。イケメンの私立探偵マックスが、一人一人の部屋を訪ね歩き、その動機を掘り下げていくわけ。

ハードボイルドでも、変人でも、ヒーローでもなく、単身アウェーに乗り込んで、老人から子供まであらゆる容疑者に翻弄されまくり、探偵という職業が本来持つ孤独の属性が、ロマンではなしに浮彫になるのだ。

レオニデスの大きな屋敷に住むのは、レオニデスの前妻の姉(グレン・クローズ)、と愛人がいるらしい若い後妻。破産寸前で女優の妻の映画を作る資金が欲しいレオニデスの長男。無能で事業に失敗した次男夫婦。長男の上の娘がソフィアで、息子は姉ソフィアが祖父を殺したと思っている。生意気少女の次女は大人たちの話を聞いて何でもノートに書きとめている・・・という中から見つかる意外な犯人像が浮かぶ。

一族は、巨額の遺産を巡って、疑惑と嫉妬、敵意と憎しみをぶつけ合っていた。そして、アリスタイドの遺言書が実は無効であることが発覚した。このことをきっかけに、チャールズには真相が見え始める。そう確信したチャールズだったが、彼の推理を覆す次の殺人が起こってしまうのであった。

マックスと、グレン・クローズは二度目の共演だが、やっぱりグレン・クローズは耐え忍ぶ妻役よりも、アクの強い方がよほど生き生きとしているのが、お似合いですね。

ここでもう少し推理やトリックを披露したいところですが、後ほどに。第二の殺人が起きて、予想外の犯人と、その動機が明らかになるあたりは、それをアクション場面に仕立て上げていて、演出にスピード感があり、謎が解ける痛快さが良かった。

大勢の登場人物のキャラが濃いので、彼らの個性が醸し出す不穏さがストーリーを支配してゆく。加えて、舞台となる富豪の邸宅の絵画や調度品も一代で富を築いた当主の背景を反映して、クリスティーの物語に特徴的な、上品な贅沢さとは趣を変えていた。

イギリスの古い邸宅と庭園のロケーションをドラマに生かした画つくりは、映画ならではの醍醐味ですね。犯人は中盤で予想できてしまうのだが、想定外の幕切れに驚愕します。

2019年劇場鑑賞作品・・・71  アクション・アドベンチャーランキング

 

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ザ・フォーリナー/復讐者★★★★

2019年05月04日 | アクション映画ーサ行

ジャッキー・チェンが「007/カジノ・ロワイヤル」のマーティン・キャンベル監督とタッグを組んで贈るクライム・アクション。スティーヴン・レザーの『チャイナマン』を原作に、過去を封印して生きてきた男が、最愛の娘がテロの犠牲となったことで冷酷な戦闘マシンとなり、犯人を追い詰めていく壮絶な復讐劇を描く。共演はピアース・ブロスナン。

あらすじ:ロンドンで中華レストランを経営し、高校生の娘と2人だけの穏やかな日々を送るクァン。だがある日、その大切な愛娘が無差別テロの犠牲となってしまう。犯人への復讐を誓うクァンは、やがてテロを実行した北アイルランドの過激派組織と繋がりのある大物政治家リーアム・ヘネシーにたどり着く。犯人の名を明かすよう迫るが、リーアムは平然としらを切りとおす。失うもののないクァンは、そんなリーアムに対し、彼のオフィスに小型爆弾を仕掛け、自らの固い意志を過激な行動で示す。クァンはかつてアメリカの特殊部隊に所属していた一流の工作員だったのだ。クァンはこれまで封印してきた戦闘スキルを駆使し、実行犯を突き止めるべくリーアムを追い詰めるとともに、テロ組織へと迫っていくのだったが…。

<感想>60歳を越えたジャッキー・チェン。年齢不詳のアクションも変わらずで安心しました。久しぶりのジャッキーに燃えましたね。さすがに60歳を超えたジャッキーは、体もぶよぶよのご老体ですが、アクションのキレは相変わらずで、超人と言わざるを得ないアクションスタントぶりで、もうこれだけでも充分ですからね。観ていて気持ちがいいほど頑張っていましたね。

いくら老いを前提にした役柄が近年増えていたとはいえ、ここまでしょぼくれていて、平凡な初老男に成り切っているジャッキーには驚かされた。

冒頭での爆破シーンがあり、娘をテロの爆破事故で亡くす、悲しいシーンについ涙で熱くなりました。これは絶対に娘の仇をとって復讐の鬼になると思った。彼が只者ではないことが明らかになっていく過程が最高にいい。

人間関係が相当に複雑になっているが、「007」シリーズを手掛けた監督だけに、狭い部屋でのアクションや爆弾テロの場面に手が込んでいて迫力満点。

怒らせてはいけない人を、怒らせてしまったのだ。普段は英ロンドンでレストランを経営するクァン。慎ましく平穏な生活を送るなか、高校生のひとり娘が無差別テロで命を奪われてしまうのだ。復しゅうの炎に焼かれ、激しく、しかし静かに身を焦がしていくクァン。犯人を探すうち、北アイルランド副首相のリーアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン)にたどり着く。

とは言え、話の重心はむしろこのピアース・ブロスナン側にあって、本格スパイスリラーを思わせる結構複雑な物語になっていた。ですが、ピアース・ブロスナンの若い女とのベッドシーンも旺盛で、中々元気な叔父様ですから。

夫が浮気をすれば、妻も甥っ子のイケメンのショーンと不倫関係になっているとは。ショーンのロリー・フレック・バーンズ君、彼も特殊部隊あがりの優れもので、森の中でジャッキーと戦うのが面白かった。

 

ターゲットの北アイルランド副首相のヘネシーは、官僚時代に抱えた“ある問題”におびやかされていた。クァンの犯人を追うあくなき執念が、かつてアメリカの特殊部隊に身を置いていたことを浮き彫りにする。次第に明らかになる2人の過去。敵か、味方か、孤独な男たちの戦いは、想像もしない結末へと向かっていく。

ジャッキーが狭い部屋の民家で暴れまわる様子は、いつもの自分の作品のアクションだ。カンフーに飛び蹴り、自由に動き回る身のこなし方、一人で何人もの敵と戦う姿はいつもと同じでした。

ジャッキーが徐々に復讐の鬼と化すありさまが、見どころですね。アイルランドへと行き、ヘネシーの屋敷の中へ潜入し、屋敷の森の中へと逃げ込むジャキーは、まるで屈強な戦士。ブービートラップを用いたゲリラ戦を仕掛けたり、ワイヤーで罠を仕掛けて、敵の足を奪う。すかさず拳銃をぶっ放し、森の中を走り抜ける。枯れ葉で身の隠し処にするなんて、日本の忍者顔負けでしたね。

ジャッキーが、コツコツと爆弾を作る姿には、ショックを受けるが新鮮でもある。トイレに仕掛ける爆弾は、火炎瓶のような瓶が3本にマッチを付けて、火を付けるだけで物凄い威力があるのだ。

ただし、IRA敵組織内のゴタゴタが非常に多く描かれており、スクリーンを追うのがしんどくなる。ジャッキーの使い方も布陣も悪くないのに、いくらでもハードボイルドなタッチに出来そうなのに、明朗な雰囲気がどことなく漂うのは、ジャッキーの身体が生理的に持つ、個性が生かされていないのも惜しい出来でした。

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バイス ★★★

2019年05月03日 | アクション映画ーハ行

「ダークナイト」「アメリカン・ハッスル」のクリスチャン・ベイルがジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領(バイス・プレジデント)を務めたディック・チェイニーを演じた実録政治ブラック・コメディ。9.11同時多発テロを受けてイラク戦争へと突入していったブッシュ政権の驚きの内幕を、チェイニーの知られざる実像とともに過激かつ皮肉いっぱいに描き出す。共演はエイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル。監督は「俺たちニュースキャスター」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケイ。

あらすじ:1960年代半ば。酒癖が悪くしがない電気工に甘んじていた若きチェイニーは、婚約者のリンに叱咤されて政界を目指し、やがて下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治のイロハを学び、次第に頭角を現わしていく。その後、政界の要職を歴任し、ついにジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の地位に就く。するとチェイニーは、それまでは形だけの役職に過ぎなかった副大統領というポストを逆用し、ブッシュを巧みに操り、権力を自らの元に集中させることで、アメリカと世界を思い通りに動かし始めるのだったが…。

<感想>ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われ、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック・チェイニーを描いた社会派エンタテインメントドラマ。

これまでも数々の作品で肉体改造を行ってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増力し、髪を剃り、眉毛を脱色するなどしてチェイニーを熱演した。

妻リン役に「メッセージ」「アメリカン・ハッスル」のエイミー・アダムス、ラムズフェルド役に「フォックスキャッチャー」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスティーブ・カレル、ブッシュ役に「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェルとアカデミー賞常連の豪華キャストが共演。

副大統領にスポットを当てた政治劇ということだけでも興味深いが、ジョージ・W・ブッシュのような大統領だと、クリスチャン・ベールの迫力ある演技もあってか、イラク戦争も始めた黒幕はやはりチェイニーに違いないと思える。

チェイニー夫妻の演技にはシリアスさがあるが、しかし、しょっぱなのライス国務長官のそっくりさんぶりに笑ってしまった。コリン・パウエル(ライスの前任)の国務長官なんてもうそのまんまですから。タイラー・ペリーという俳優さんですが、もろ激似ぶりですからね。

もっと凄かったのが、スティーブ・カレルがラムズフェルド国防長官に見えて来ることです。さらには、あのサム・ロックウェルが、まさかのブッシュ大統領にしか見えなくなってくるという奇跡。

でも「バイス」はごく最近の出来事で、かつチェイニーを始めほぼ存命中の人物たちを描いているにもかかわらず、その限界を軽々と超えてきます。史実であり、実在の人物なのに、思わず大笑いをするコメディでもある。おふざけよりも怒りの気持ちが勝っているから、最終的には軽やかさを志向しながらも、そうなれずにいるみたいな映画になっていた。

しかし、イェール大学を素行不良で放校された男が、リン夫人の支えがあったとはいえ、どうしてアメリカを動かす人物になれたのか。新保守主義を支えたディック・チェイニーの思想や信条が、どのように生まれていったのかには触れてはいない。ワイドショー的手法では、判然としないのだ。

それでも、なにかと夫をけしかける妻の背景は短いが、パシッと理解できるように描かれていた。憶測でもいいから彼なりの大義や価値観について踏み込まないと、この手の政治家はただの悪玉にしか見えなくなってしまう。まぁ、けっして善人ではないだろうが。

というわけで、アメリカが嫌な感じになっていく家庭を追った実録ものとしては問題なく観られます。

2019年劇場鑑賞作品・・・69  アクション・アドベンチャーランキング

 

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