パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

彼女がその名を知らない鳥たち★★★・5

2017年10月31日 | アクション映画ーカ行

「九月が永遠に続けば」「ユリゴコロ」などの沼田まほかるの人気小説を実写映画化。同居する相手の稼ぎに依存しながらも彼を嫌い、家庭のある別の男性とも関係を持つ身勝手な女と、彼女に執着するさえない中年男の関係を軸に、究極の愛とは何かを問い掛ける。メガホンを取るのは、『凶悪』などの白石和彌。クセの強い二人を、『アズミ・ハルコは行方不明』などの蒼井優と『殿、利息でござる!』などの阿部サダヲが演じる。

あらすじ:15歳年上の佐野陣治(阿部サダヲ)と共に生活している北原十和子(蒼井優)は、下品で地位も金もない佐野をさげすみながらも、彼の稼ぎに依存し自堕落に過ごしていた。ある日、彼女は8年前に別れ、いまだに思いを断ち切れない黒崎に似た妻子持ちの男と出会い、彼との情事に溺れていく。そんな折、北原は刑事から黒崎の失踪を知らされ、佐野がその件に関係しているのではないかと不安を抱き……。

<感想>聞けばラブストーリーだというこの映画、原作を知らずにタイトルだけをなぞれば、それに女優は蒼井優とくれば、これまでと毛色の違う作品なのかもと思って見ると、不意を突かれる。「R15+」の刻印が刻まれているではないか。舞台は大阪、開幕そうそうに片づけられない女は、関西弁でネチネチと電話でクレームをまくし立てる。厄介なヤツ・・・蒼井優のイメージを覆い隠すそのセリフ回しに、面倒極まりないセリフ自体にうんざりすると同時に、画面全体から繰り出されるけったいな雰囲気に飲み込まれてしまう。

ホラーでもありコメディでもある。でも、みんなが頷くよくある話。彼女が演じるヒロインは、竹野内豊扮するかつての恋人黒崎に再会し、嬉しさいっぱいの表情を見せ、とんでもない頼まれごとをするのだが、つまり黒崎が金に困って叔父に借金をし、それを返さないで困っているので、その叔父とホテルで寝てくれないかという頼み事なのだ。初めは嫌だと言っている内に、黒崎を愛する余りに、自分の身体を借金の肩代わりに差し出すことになるわけ。黒崎のDVによる顔の半分の骨を折り、手足も骨折という大怪我をしたのに、未だに黒崎を忘れられずに、渡された黒崎との楽しい思い出の動画のDVDを観ている十和子。こういう女っているんだね。

別れた男が忘れられず怠情な日々を過ごす女を中心に、そんな彼女をひたすら愛する年上の男、次々と女を手玉に取る妻子持ちの男、女を足蹴にする野心満々の男という“最低な男女”が織りなす愛欲ミステリー。

沼田まほかるの小説を、「日本で一番悪い奴ら」、『凶悪』などの白石和彌監督が映画化している。主人公の十和子を演じる蒼井優さんをはじめ、一緒に暮らしている年上の男陣治に阿部サダヲが扮して、女を騙す男二人には竹野内豊に松坂桃李が熱演しています。

ある日、時計を修理に出していたデパートの売り場から電話が入る。その男が家に時計を持ってくるというのだ。その男は黒崎の面影を感じる水島、松崎桃李くんだ。安物の白いバンドの時計(3000円)をプレゼントされ、ホテルで情事に溺れて行く。彼が情事のときに「あっあ~」と声を出してくれと、注文するのに笑ってしまった。そこまではよくある展開だが、嫌~な空気感がじわじわと観ている者の脳内を刺激し初め、痛切なリアリティを醸し出していくんですね。

何よりも蒼井優の人物造形が凄まじく、主人公十和子になり切って、原作の嫌らしさをそのまま演じきりつつ、どこか可愛くて憎めないキャラクターに昇華させてしまうのだ。水島は妻子もいて、十和子だけでなく他にも不倫をしている女がいるようだ。十和子が金を持っていない女だと知ると、水島は別の女を見つけて十和子とは別れを切り出す始末。

そんな十和子のことを、後を付けて何でも知っている同居人の男・阿部サダヲ。十和子が他の男とホテルに入るのを見ても、家に帰ってくれば食事の世話をして、疲れていれば体のマッサージまでしてあげる。自分だって、昼間働いてクタクタなのに、それに十和子に体の関係を求めても応じてくれない。そんな女でも、愛しくて可愛くて守ってあげたいと思うのだろう。

阿部サダヲは、下劣さの中に誠実さが垣間見える名演であり、松崎桃李と竹野内豊は、女を吸い寄せる甘ったるくてゲスな男を怪演している。十和子を訪ねて警察が来る。黒崎が5年前から行方不明だと聞かされる。回想シーンにいつの間にか夢想が混濁する演出も巧みであり、悲しい過去が次々と暴き出された末に、阿部サダヲへの疑念を深め錯乱した十和子が喪失していたある記憶を取り戻すや否や、物語は驚くべきラストシーンへと傾れ込みます。

ラストの十和子が黒崎を殺したのは同居人の佐野陣治であると告白するも、頭が少し緩んでいる十和子、水島から別れを告げられ他の女とホテルに入るのを見つけて、出てきた水島をナイフで刺す、刺す、そこへ阿部サダヲが来て、水島に言うのだ。十和子にこんなことをされるのは、お前が悪いからだと。刺したのは俺だと、俺がお前を刺したのだと警察へ言うのだと。

その時に、十和子の頭に走馬燈のように駆け巡ったのが、黒崎を土砂降りの雨の夜に自分が刺し殺したことを。その時も、佐野陣治が駆けつけて来て、黒崎の遺体を処分してくれたのだ。今回もそう、十和子はとっさに気が狂ったように、自分を弄んだ男を殺すという衝動に駆られる。

阿部サダヲが、全部俺が殺したのだ、お前は悪くないといい、後ろ向きに落ちて死んでいく。これは十和子の妄想なのか、それは定かではない。これは究極の愛なのか、もしかして究極の呪いなのではないのか。深い感動と共にそんな怖すぎる問いを突き付けられてしまった。

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ブレードランナー 2049★★★★

2017年10月30日 | アクション映画ーハ行

巨匠リドリー・スコット監督によるSF映画の金字塔「ブレードランナー」の35年ぶりの続編となるSF超大作。前作から30年後の荒廃した未来世界を舞台に、ブレードランナーとして活動する捜査官“K”を待ち受ける衝撃の運命を、圧倒的な映像美とともに描き出す。主演はライアン・ゴズリング、共演にハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス。リドリー・スコットは製作総指揮に回り、監督は新たに「プリズナーズ」「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴが務める。

あらすじ:荒廃が進む2049年の地球。労働力として製造された人造人間“レプリカント”が人間社会に溶け込む中、危険な。前作の主人公デッカードレプリカントを取り締まる捜査官“ブレードランナー”が活動を続けていた。LA市警のブレードランナー“K”は、ある捜査の過程でレプリカントを巡る重大な秘密を知ってしまう。

一方、レプリカント開発に力を注ぐウォレス社もその秘密に関心を持ち、Kの行動を監視する。捜査を進める中で次第に自らの記憶の謎と向き合っていくK。やがて、かつて優秀なブレードランナーとして活躍し、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消した男デッカードの存在に辿り着くが…。

<感想>1982年に制作され、近未来SFの在り方を完全に変えた伝説の映画「ブレードランナー」。アンドロイド=レプリカントの行方を追う捜査官“ブレードランナー”の姿を、驚異のビジュアルで描いた傑作であります。

そして「メッセージ」の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴを迎えて35年ぶりの続編が完成。ダークで混沌とした「ブレラン」世界を継承しつつ、30年後を舞台に、前作が提示した「自我を持ったロボットと人間に違いはあるのか?」というテーマをさらに掘り下げるのである。

主演は「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング。前作の主人公デッカードをハリソン・フォードが再演する。ゴズリング扮する捜査官Kとデッカードという新旧“ブレードランナー”が織りなすドラマは、驚くほどエモーショナルで、スタイリッシュな映像世界は圧巻である。最初から最後までサプライズが満載の1本となっている。ですが、前作に物語を解く重要なカギがあるので、しっかりと見直して準備万端で劇場に向かうことをお勧めします。

これは良く出来た続編映画であります。冒頭部分が大きな眼球のアップから始まります。それに空から見た広大なカリフォルニアの姿で、それは前作よりも荒廃としたイメージである。地表を覆い隠す蓄電パネラが覆い隠す。それが幾何学模様のような感じがした。

凄腕のブレードランナー、デッカードが姿を消して30年。新興のウォレス社がより従順なレプリカントを開発し、旧型のレプリカントは廃棄されるか、逃亡して追われる身となっていた。Kは農夫として暮らしていた旧型のレプリカントのサッパー(ディヴ・バウティスタ)を発見し、射殺する。住居の庭にある枯れ木の下に不審な箱が埋められているのを発見する。箱に収められていたのは、埋葬されたと思われるレプリカントの骨と毛髪だった。Kは死ぬ前のサッパーから「奇跡を見た」と聞かされる。

ウォレス社には退役したレプリカントが展示されている。Kの上司ジョンは、その骨が人間とレプリカントが共存する社会のバランスを崩壊させる危険性を察して、Kに関係者の処分を命じる。Kは調査のためウォレス社を訪れ、デッカードという元ブレードランナーが骨と関連があることを突き止める。

さらにKは、サッパーの家で木彫りの馬と、馬の底に彫られている「6・10・21」という数字を発見する。奇妙なことに数字はKの誕生日と同じだった。Kは謎を解き明かすために、自らの記憶の深層をさぐろうとする。Kの行動をウォレスの部下のラヴは、何かを嗅ぎまわっていることを知り、行動を監視する。もちろん探知機もつける。

そして、LAでは、街に立つ娼婦たちもレプリカントだ。Kを誘惑するも急いで家へ帰ると、家にいるホログラムの恋人ジョイが、良き相談相手となってくれ、彼にとっては理想の恋人。ですが、抱くことはできない。それで、ジョイが考えたのが、LAの街に立っている娼婦に来てもらい、その娼婦の身体を自分に取り込むという、そうしてKと愛を交わることが出来るのだ。

その後、Kが子供の頃孤児院育ちだったことを記憶していて、そこへジョイと二人で行くのだが、砂塵に包まれたゴーストタウン。LAの廃墟ビルというよりも、たくさんのレプリカントがいて、それに子供たちも大勢囲われており、廃品の部品を組み立てる作業に従事させられていた。

それに、もっと奥へと行くと、デッカードが住んでいるというラスベガスのホテル。遊技場もあり、まだ綺麗に内装が残っているホテルか何かだ。廃墟と化したホテルで暮らす元ブレードランナーは、過去の亡霊たち、ホログラムのプレスリーやモンローを召喚し、自らもまた生きる屍然としている。

そこへ、デッカードを探しに行くのだが、もちろん、ハリソン・フォードがデッカードなので、年寄りだがまだ元気でいた。ですが、Kの身体に追跡装置が付いていて、そこにラヴとその手下が現れ、二人は捕らえられてしまう。

ですが、そこでK=ジョーは、意外な真実を知ることになるとは。レイチェルという母親の名前と写真も、自分が赤ん坊だったころの写真もあった。ちなみにレイチェルは、ショーン・ヤングが演じていた。

そして、自分を捕え

られて実験台にされないようにと、女の子を産み、その娘を差し出したのだ。あのガラスの建物の中にいる少女がK=ジョーの妹なのだ。

LAは気候変動により海抜が劇的に上がり、巨大な海壁で保護されている。街は貧困と病気が蔓延し、植民星に移住できない不健康な人間たちばかりだ。居住者はウォレス社の遺伝子組み換え植物で生きながらえている。

レプリカントの革新者:ニアンダー・ウォレスには、ジャレッド・レッドが扮していて、現在の支配者でもあり、新型のレプリカントを生み出した盲目の社長。人類発展のためにレプリカントは不可欠だと考えている。

前作ではレプリカントの寿命は4年だったが、本作ではオーナーの思い通りに設定でき、感情もしだいに芽生えるのではなく標準装備である。人間にとことん従順に作られている。

世界観も進化していくはずだが、2022年の大停電による文明停滞の歴史の設定がされており、生態系崩壊後の太陽のない薄暗い、雨と雪と砂漠が偏在する未来都市で、新型製造のレプリカントである捜査官Kが、旧型のレプリカントを追跡し、処理するかたちで前作の物語大枠も再演される。

FSノワールらしく、あらたに宗作すべき人物をいかに探すか、その正体は何者か?・・・と謎を解いていくミステリー色が強められたものの、数々の場面状況や、カットの構図で前作を踏襲しつつ、予測できない事態へと突入して行く様は、いわば再演!・・・歴史は繰り返すのだ。

尋ね人を探して自身の正体を探ることになるKを軸に、昔のブレードランナーのデッカードと、現在のブレイドランナーのKが捕まり、その二人を連れ戻して、また新たな人間の世界を作る指導者になって欲しいと願うレプリカントたち。海壁の外に船が不時着したデッカードの乗っている船が攻撃され、操縦手も銃で撃たれ、デッカードは手錠で椅子に繋がれていた。波にさらわれる寸前にKが助け出し、娘のいるガラスのビルへと連れて行く。兄であるジョーが、父親のデッカードを娘に合わせて上げようと、体には銃弾が撃ち込まれており、最後は雪の降るLAで一人死んでいくジョー。初めて知った命のリアル、その悦びを悲しく解き放つKの笑みの澄んだ美しさ。Kの命が、魂の消える美しさが、それが人間なのだということを。切なくも美しく、ロマンチックなお伽噺のような終わり方が良かった。

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あゝ、荒野 後篇★★★★

2017年10月29日 | アクション映画ーア行

 演劇実験室「天井棧敷」を設立した劇作家で歌人の寺山修司の小説を映画化した青春ドラマの後編。ボクシングを通じて絆を育んできた二人の男の姿を描く。『二重生活』などの岸善幸が監督を担当。主演を『セトウツミ』などの菅田将暉と『息もできない』などのヤン・イクチュンが務め、でんでん、木村多江、ユースケ・サンタマリアらが共演している。

あらすじ:プロデビュー戦を終えた後、トレーニングに打ち込む沢村新次(菅田将暉)と二木建二(ヤン・イクチュン)。因縁のある山本裕二(山田裕貴)との試合が決まって一層トレーニングに励む新次は、建二が自分の父親の死に関わっていたことを知る。一方の建二は図書館で出会った君塚京子(木村多江)に心惹(ひ)かれるが、孤独を消せずにいた。そんな自分を変えようと、彼は兄弟のような絆で結ばれてきた新次と決別することを心に誓う。

<感想>前篇も長かったが、後篇も長いときてる。しかし、後篇の方が面白かったし、熱くなって観れた。前篇では、新宿新次役の菅田将暉とバリカン建二のヤン・イクチュンの二人を初め、原作と対照的にスタイルのいい芳子役の木下あかり、そして片目のトレーナ、ユースケ・サンタマリアにでんでんと言ったベテラン勢が頑張っていたのが見られるも、場面としては力不足のような気がした。

その点では、後篇のボクシングの試合に集中していく新次の菅田くんと建二のヤンの、肉体が画面に躍動感を与えていくのも見ものでした。密度がぎゅっと濃くなる後篇では、海洋拳闘クラブのスポンサーである高橋和也が、ジムの資金集めに苦労するも、結局はオーナーの二代目に葬儀屋の倉庫にすると言われて、最後に新宿新次とバリカン建二の試合でジムをたたもうと決める。バリカン建二は、二代目の口利きで別のジムへ移籍して、新次と別々の道を歩むことになります。

そして、新次の母親も高橋和也の愛人のような存在で、二人はいい関係を築き新次の試合に楽しみを覚えます。新次の宿敵の山本裕二との試合に向けて、特訓の真っ最中、そして試合では、「ぶっ殺す」と言っていた新次も、裕二のボクシングのテクニックに倒れることもあり、必死で顔面喪失になりながらもKOではなく、最後まで二人の試合が続き、最終ラウンドの新次のパンチが決まり、判定で新次が勝利を収める。

自分を子供の頃に捨てた母親の君塚京子には、木村多江が扮しており、いつも白いスーツ姿で決めて高橋和也の傍に付き添い、新次の試合を応援している。

バリカン建二は、初戦で負けてしまい、それからは試合の度に名を挙げていく新次に対して、ここにいては新次とは対戦できないと、仲良くいつまでも親友でありたいと思っている建二だが、自分の父親が、昔、新次の父親を自殺に追いやったことがあり、それを苦にしている。そんな時に、バリカンが図書館で妊娠をしている女性を助けて病院へ運ぶのだが、お腹の子供は助からなかった。彼女のお腹の子供の父親は、あの前篇で「自殺防止研究会」のリーダーで、演説をしていた男が父親だと言うのだ。

新次と芳子の関係は、芳子はあの東北大震災の津波の被害者であり、母親は足を怪我しており、被災地の仮設住宅に置いて一人東京へ出てきたというのだ。3人で海へ行くシーン、芳子にとっては海は家族や友人を、自分のものを全部持って行った憎い海、幼い頃に母親に買ってもらったひまわりの刺繍がしてある赤いズック靴を海に捨てる。

大事に取って置いたものだが、これからは、もう自分には必要ないと、だが、海は残酷なものだ、引き潮と戻る潮の流れがある。何もなかった被災者の芳子にとって、この赤い靴だけが砂浜に打ち上げられていたもの。それを捨てたのに、今度も自分の傍に戻ってきた赤いズック靴。新次がたまにふらっと、芳子の身体を求めて部屋に来るが、新次のことを愛しているわけではなく、これからの自分のことを考えて部屋を出て行く。だから、能天気やの新次が、芳子の部屋へいくともぬけの殻の状態に驚く。

そして、片目のトレナー、ユースケ・サンタマリアがいつも言っている居酒屋で、足の悪い女性と仲良くなるのだが、実はその女性が芳子の母親だったとは。

そして、クライマックスの新次と建二の試合が決まったと連絡が入ります。後篇の見どころ、新次と建二の試合が始まり、手に汗をかきながらもどちらにも勝て欲しい願い、この試合はまるで「あしたのジョー」で、ジョーと力石とが対戦をしているような状態でした。お互いに、打ち合い殴られながら血反吐を吐き、それでも立ち上がり戦うポーズをする。殴られても、殴られても、「新次と繋がりたい」と思う建二が、フラフラになりながらも新次に殴られるのだ。

そこへ、目が見えなくなっている建二の父親が試合を観に来るんですね。湧き上がる歓声と、その声を聴き分けながら、父親として息子の最後を知る。この後篇の中心となるボクシングのシーンでは、俳優がある程度トレーニングをして演じているのですが、その限界をどう打ち破るのか、俳優だから可能な限りの躍動感を見せ、カメラ、編集との三位一体で組み立てた迫力が凄かった。

るで本気で殴っているのでは、これはそうだ、やっぱり本気で殴っているのだと、思わずにはいられませんでしたね。ラストが哀しい結果になるとは、この二人は、最後まで繋がることは出来なかったんですね。

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夜明けの祈り★★★★

2017年10月27日 | アクション映画ーヤ行

 42回セザール賞で、作品賞、監督賞などにノミネートされた、実話をベースにしたドラマ。第2次世界大戦終結後のポーランドで、ソ連兵からの陵辱が原因で妊娠してしまったシスターたちの苦悩と向き合ったフランス人女性医師の姿を追う。監督は『ボヴァリー夫人とパン屋』などのアンヌ・フォンテーヌ。『待つ女たち』などのルー・ドゥ・ラージュ、『ハミングバード』などのアガタ・ブゼク、『イーダ』などのアガタ・クレシャらが出演する。

あらすじ:第2次世界大戦の傷痕残る、194512月のポーランド。赤十字の医療活動で慌ただしい毎日を送っていたフランス人女性医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)は、一人のシスターから助けを求められてある修道院に向かう。そこで彼女が目にしたのは、ソ連兵によって妊娠させられた7人のシスターだった。信仰と現実の間で板挟みになっている彼女たちと、宿している命を救おうと決意するマチルド。何とか時間を作ってシスターたちと向き合うマチルドだったが……。

<感想>実在の女性医師をモデルにした重厚なドラマであり、6月に開催されたフランス映画祭で観客賞を受賞した話題作である。1945年、終戦直後のポーランドの修道院。ソ連に占領されたポーランドの村で、ソ連兵に襲われ身ごもった修道女たちの命を救う赤十字の医師の姿を、じっくりと描き、その高潔な姿を浮き彫りにしていく。

彼女たちを救おうと奮闘する女医。その障害物が修道院長であり、カトリックの戒律であるというところが興味深いですよね。戦時中より戦後、暴力により信仰の方がより過酷だったという皮肉。そこにキリスト教批判、というよりも、神に仕える者、その中にある偏狭さへの抗議が嗅ぎ取れる。

いくつかある修道院映画の如く、この作品も静謐なたたずまい。そこに人間の血の温もりをさらりと通わした演出ですが、少し型にハマリ過ぎな物足りなさを感じます。

ですが、被占領国の女性であり、なおかつ神に仕える修道女という立場から、すべてを耐え忍び闇に葬らざるをえなかった彼女たちの姿を通して、この映画はヒューマニティについて、見る者に大きな問いかけを投げかけるのであります。

何故なら、残念ながらここに描かれている問題は、普遍的なものであり、今も世界のどこかで起こり得る悲劇と言えるのだから。この時代では、宗教的な戒律もあり中絶は出来なかったのでしょう。それにしても、修道院長が生まれた子供を自分の手で殺して、闇に葬るということが衝撃でしたね。

女医のヒロインに扮したルー・ドゥ・ラージュは、フランスではただいま上昇中の若手の女優さん。どこか純真さと気品さを感じさせる横顔が若きころのイングリッド・バーグマンを彷彿とさせる面影である。

そんな彼女の瑞々しい魅力や、修道女たちの凛とした姿、寒々しいポーランドの風景を見事にとらえているのが、フランス映画界を代表する撮影監督カロリーヌ・シャンブティエのカメラ。翻案・台詞パスカル・ポニゼール。

J・L・ゴダールやレオス・カラックス作品で知られる彼女が紡ぐ映像は、戦後の混乱期ポーランドの、雪に覆われた修道院にカメラを向ける。修道女たちを襲った悲劇は、筆舌に尽くしがたいほどに、本作に一層の清廉さを付け加えていると思います。

2017年劇場鑑賞作品・・・249アクション・アドベンチャーランキング

 


ウィッチ★・5

2017年10月27日 | アクション映画ーア行

低予算のインディーズ作品ながら、サンダンス映画祭監督賞受賞をはじめ各地の映画祭で評判を呼んだミステリアス・ダーク・ストーリー。17世紀のニューイングランドを舞台に、宗教上の理由から共同体を離れ、荒れ果てた原野で自給自足の生活を始めた敬虔な一家が、次々と不可解な現象に見舞われ、魔女への恐怖で次第に崩壊していくさまを、不気味さを静かに漂わせる抑制の利いた巧みな恐怖演出で描き出していく。主演は本作の演技で一躍ハリウッド期待の新星として注目を集める存在となったアニヤ・テイラー=ジョイ。監督もまた、長編デビューとなる本作で高い評価を受けた新鋭、ロバート・エガース。

あらすじ:1630年、ニューイングランド。信仰に篤いウィリアムは妻キャサリンと5人の子どもたちと入植地での生活を始めたばかりだったが、住民と衝突して共同体を追われてしまう。そのため一家は、森の近くの荒れ地に居を構え、厳しい自給自足生活を余儀なくされる。ある日、年ごろの長女トマシンが子守りをしていた赤ん坊が忽然と消えてしまう。その後も一家には説明のつかない不幸が次々と降りかかる。いつしか家族は魔女の仕業に違いないと思うようになり、恐怖に支配された彼らは次第にトマシンに疑いの目を向け始めるのだったが…。

<感想>だいぶ前に観たものですが、忘れないうちに。B級映画というべき、しょうもないホラーもので、敬虔なキリスト教徒の家族が、どういうわけか村八分みたいに住んでいた土地を追われて、森の中の荒れ果てた一軒家で暮らし始めます。それにしても、こんな閑散とした場所で、家族が多い、子供が長女のトマシンを始めとして、長男のケイレブ、それに双子の女の子次女と三女が、そして生まれたばかりの赤ん坊という、なにしろ家族が多くて、どうやって食糧を賄うのだろうなんて思ってしまった。

それでも、貧しいながらも山羊とかニワトリとかいるので、畑の野菜をとって粗末な食事をする家族。絵本があるわけでもないし、長女のトマシンに下の子供たちの世話を押し付ける母親。作り話を寝物語にしたりして、それでも長男のケイレブは姉のトマシンに懐いており、いつも森へ木の実かなんかを取りにいくのか、一緒に出掛ける。川のほとりでケイレブとお喋りをして楽しむ兄弟。

ある日のこと、トマシンが赤ん坊の子守をしている時、「いない、いない、ばぁ~」と自分の顔を手で隠して赤ん坊をあやしていた時、手で顔を隠した時に、赤ん坊が連れ去らわれてしまう。まるで神隠しにでもあったように。もしかして、狼にでもさらわれたのかもと思っているも、父親と母親は、森の中にいる魔女がさらっていったのだという。

そのころ、森の中では魔女らしき老婆が、裸で赤ん坊らしきものを潰して、血を体中に塗り付けて騒いでいた。実は本当に森の中には、この家族と同じようにコミュニティを追放された女たちが、群を作って暮らしていることが分る。

家族は、赤ん坊が連れ去らわれたのは、家族の中に神様に背いた者がいるということになってしまう。それは誰なのか?・・・家族の中で自分たちの小さな子供たちにそんな疑いの目を向ける両親っているんだね。大人の心の中が貧しさと、疎外感で自分の子供たちにまでそんな懐疑心を向けるとは、家族はバラバラになってしまうだろう。

そんな時に、貧しさから長女を奉公にだして口減らしようと両親が考え、長女のトマシンが家を出されることになる。それに、長男のケイレブが、森の中へ行って、彼は男の子なのに小心者で、いつも長女のトマシンを頼りにしていた。だから、長女が奉公に出されると、今度はケイレブが一家の稼ぎ頭となることになり、森へウサギとか狩りに行かなければならなくなる。

裸のケイレブが森から帰って来て、精神的におかしくなり発狂する。ケイレブも年頃になり、長女の悩ましい裸を見て妄想したようで、本当だったら、そういう男の生理を父親が教えなければならないのに。それを見た両親は、長女のせいだと、赤ん坊をさらわれたのも長女のせい、何でも全部悪いことが起こると長女のトマシンに疑いを掛けられ、可哀そうにいたたまれなくなる。精神的にも落ち込んでしまうだろう。

次の朝、ケイレブの容態が悪化して、しまいには死んでしまう。母親は全部長女、トマシンのせいにして、悪魔が乗り移ったと怒り狂い、トマシンの首を絞めて殺そうとする。「あんたは、父親にまで色目を使って誘惑するのねと」母親が、長女に憎しみを込めて襲い掛かるのだ。

必死で母親が自分の首を絞めるのを止めるも、傍にあったナイフで母親を刺し殺してしまうトマシン。もう、この家にはいられないと、自分の心に悪魔が棲みついたのだと思ってしまうトマシン。

 

殺されると思った長女は、急いで外へ出ると、今度は父親が襲って来る。だが、黒山羊が突進して来て父親に襲い掛かり、父親は死んでしまう。それを見たトマシンは、自分がもしかして魔女になってしまい、家族を殺していくと思い込んでしまう。誰にも相談できないし、両親は自分を憎んで追い出そうとしているから。

家を出て森の中へ消えていくトマシン。森の中では、コミュニティを追放された女たちが気が狂ったように裸で踊り出し、まるで魔女になったかのように空を目指して登っていく。トマシンも裸になり、その魔女らしき女たちと共に空へと昇っていくという最後。

長女のトマシン役のアニヤ・テイラー=ジョイが、殆ど一人舞台で演じているような映画。本当に魔女なのかどうかは分からないが、精神的に追い詰められていき、都会ではないので、暗い森の中へと、まるで集団自殺でもするかのように、そんな最後に見えました。家族からヒステリックな魔女疑惑をかけられる長女トマシン役は、これがM・ナイト・シャマラン監督作品「スプリット」の主演へとつながる出世作となったアニヤ・テイラー=ジョイちゃん。思春期特有の感情の揺らぎを表現するとともに、少女特有のアンバランスな色気を匂わせる存在感は、まさしく作品の中の魔女といっていいかも。

2017年劇場鑑賞作品・・・248アクション・アドベンチャーランキング



ミックス。★★★

2017年10月26日 | アクション映画ーマ行

TV「リーガルハイ」の人気脚本家・古沢良太のオリジナル脚本を、主演の新垣結衣、瑛太に加え、広末涼子、瀬戸康史、永野芽郁、蒼井優、遠藤憲一、小日向文世をはじめとする多彩なキャストの豪華共演で映画化した痛快スポ根・ラブコメディ。失恋の傷を抱え田舎に戻った元天才卓球少女のヒロインが、妻子に捨てられた元プロボクサーとタッグを組み、人生のリベンジを懸けて男女混合(ミックス)ダブルスに挑む姿を、傾きかけた実家の卓球クラブに集う一癖も二癖もある個性豊かなメンバーたちと織りなす笑いと感動の人間模様とともにコミカルに綴る。監督は「リーガルハイ」「エイプリルフールズ」に続いての古沢良太とのタッグとなる石川淳一。

あらすじ:幼い頃の母のスパルタ指導がトラウマとなっている元天才卓球少女の富田多満子(新垣結衣)。母の死後は平凡な人生を送っていた彼女だったが、会社の卓球部のイケメンエース・江島(瀬戸康史)に告白され付き合い始める。しかし喜びも束の間、新入社員の美人卓球選手・愛莉(永野芽郁)に江島を寝取られてしまい、逃げるように田舎に帰った多満子。その実家ではひとり暮らしの父(小日向文世)が、赤字続きの卓球クラブを畳もうか悩んでいた。そんな中、江島と愛莉のラブラブな姿を見せつけられ、復讐心に火が付いた多満子。2人を見返すべく、全日本選手権のミックス・ダブルス部門への出場を決意する。そんな多満子がパートナーに選んだのは、新入部員で妻子に見捨てられた卓球ド素人の元プロボクサー・萩原(瑛太)。こうして多満子は、クラブの再建と打倒江島・愛莉ペアを目標に、欠点だらけの部員たちと猛特訓を開始するのだったが…。

<感想>卓球の男女混合・ミックスを組む二人の“大人キュン”な恋模様がポップに描かれている本作だが、実際の二人も初共演とは思えないほど息はぴったりであり、演技の幅も数段上がっているように見受けられました。

監督が「リーガルハイ」の石川淳一であり、脚本は古沢良太さんと息のあったタッグを組み、古沢良太さんの脚本にはクセのある登場人物ばかり出て来るんですが、今回も、どの役者さんもベテランであり、ドタバタ喜劇になってなくて、面白くて共感を呼ぶんですよね。

ガッキーが演じている富田多満子は、幼いころから母親の真木洋子に特訓をうけて、卓球の天才少女として、まるで“卓球愛ちゃん”のように厳しく母親から卓球の指導を受ける。母親が若くして亡くなり、卓球をすっぱりやめた多満子は、普通のOLへと。そこで会社の卓球部へ入りイケメンエースの江島(瀬戸康史)に告白されて幸せの絶頂だった彼女。彼との結婚を夢見ていたら、ほどなく新入社員の美人卓球選手・愛莉(永野芽郁)に江島を寝とられてしまい、故郷へ舞い戻る。

田舎で待っていたのは、母親が経営していた倒産寸前の「フラワー卓球クラブ」。それからは荒れ放題で、父親の小日向さんが優しいので、甘えて酒を呑んで荒れてしまう娘。しかし、江島を見返したい一心で、再びラケットを握った多満子は、卓球クラブを復活させる。

集まった村人、ミニトマト農家の遠藤憲一夫妻に、セレブ妻の広末涼子に不登校の高校生の佐野勇斗くん、激辛の麻婆トーフしか出さない、中華食堂の変な中国人役の蒼井優が「休むときは死ぬときヨ!」と、叱咤激励する元気溌剌ぶりにシビレました。この中で一番卓球が上手いのが、中国人役の蒼井優だというから、世界的にも中国卓球には敵わないということなの。

そして、新人部員の元プロボクサーの萩原に瑛太が、多満子とペアを組みミックス・ダブルス大会への出場を決意するわけ。最初は喧嘩ばかりの二人だったが、クラブメンバーの支えもあり少しずつ息の合ったペアになっていく二人。

それに、敵の・江島(瀬戸康史)と小悪魔女子・愛莉の永野芽郁のキャピキャピぶりには閉口するが、ガッキーの破壊的な好感度には負けている。

 

そして見どころが、やっぱり卓球の全日本選手権のミックス・ダブルス部門大会ですね。勝ち抜いて決勝まで持ち越して欲しいと願いつつも、相手の江島と愛莉ペアが強くて、いいところまでいくのですが、最後には負けてしまう。

瑛太が演じる訳アリの男は、高速道路の高架建設現場で働いている。その光景は未完成という要素を暗喩させており、高速道路建設には年月が要するが、徐々に完成に向かって行くゆく後景も映し出され、今は未完成でも時が経てば完成するというもの。つまり卓球クラブも、未完成でもいいのではないか?・・・という、人生そのものについて語りかけているようでもあります。

ですが、何よりも、絶頂期にある新垣結衣の魅力が全開であり、観ていて笑顔になりますね。広末さん、他の作品にもちょい役で出演しているが、ここでは医者の奥さん役で、セレブの妻たちにいびられ虐げられる役柄ですが、広末さん張り切ってましたね。それに、生瀬勝久さんがフランス人の卓球選手で、吉田鋼太郎さんも出てましたよ。他にも、あれ、この俳優さん誰だっけ、なんてちょい役でね。

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月と雷 ★★★

2017年10月25日 | アクション映画ータ行

 

角田光代の同名小説を「海を感じる時」「花芯」の安藤尋監督が映画化。かつて子連れの愛人によって家族を壊された過去を持つヒロインが、大人になってその母子と再会したことで、地道に築いてきた普通の生活を狂わされていくさまと、その中で葛藤しながらも自らの人生を見つめ直していく姿を描き出す。主演は「ノルウェイの森」「終戦のエンペラー」の初音映莉子、共演に高良健吾、草刈民代。

あらすじ:幼い頃に母が家を出て行って以来、普通の家庭を知らずに育った泰子。亡き父が遺してくれた家に暮らす彼女は、職場であるスーパーで知り合った男性との結婚を控え、これからは普通の人生を送っていけるものと信じていた。そんなある日、泰子の前にひとりの青年・智が現われる。20年前、智とその母で父の愛人だった直子が家に転がり込んできて、半年間だけ一緒に暮らしていたのだった。当時は仲良く遊んでいた泰子と智。普通の生活を願っていたはずの泰子だったが、突然の智の登場で、思わぬさざ波が立ち始める。やがて、当の直子もふらりと現われ、おまけに異父妹・亜里砂の存在も判明するなど、激変していく日常に戸惑いを隠せない泰子だったが…。

<感想>置き去りにされた時間が、私の中で動き出す。田舎の田園風景や日本家屋には風が通る道があるようだ。だだっ広くて、何もないことで構図てきな奥行きが生まれ、映像からは「誰もいない」感じが引き出されている。

この抜けのような構図は度々登場し、土地や家屋、そして人間も空っぽであることを導いているのだろう。

幼少期に母が家出し、普通の家庭を知らぬまま大人になった泰子(初音)の前に突然、20年前に半年だけ共に暮らしていた亡き父の愛人の息子・智(高良)が現れ、“普通の生活”を求めていた泰子の人生が変わり始めていくさまを描いている。

映像は、20年ぶりに再会した泰子と智が寝床に就く模様を映し出している。うとうとと眠っていた智に、泰子は「あれ、したいな。子どもの時、してくれたやつ」と背中を預ける。そして2人は、離れていた時間を埋めるように、距離を縮めていく。今作にはラブシーンが数度登場するが、ここでも美しい濡れ場を作りだしている。その結果が、泰子の妊娠である。

職場で知り合った青年の婚約者がいながら、毎日働かないで寄生虫のように泰子に頼ってこの家に棲みついている智。妊娠していることが婚約者にバレてしまうも、うやむやにしてその後会わないようにしている。智に妊娠のことを告げても上の空。

他人同士なのに主人公の男女、親たちの因果で兄妹以上、恋人未満というややこしい関係に、実母が生んだ「知らなかった」妹の佐伯亜里砂(藤井武美)も、まるで最初から知っていたように受け入れる優しさ。というか、きっと一人住まいが寂しかったのだろう。

ただ、実家で一人暮らしをしている泰子を含め、どの人物にも共通する浮遊感が、映画自体を浮遊させてしまっているようで、いまいち捉えどころがなかったのが残念でなりません。

それに、泰子の血の繋がった母親以上の、何者かを演じた草刈民代も、野良猫の如き浮遊を感じさせ、始終ぼんやりとしているだけに見えて、それでも凄い存在感があるのに驚く。彼女の歩く姿の引きの画面は、海の上の船のような帆船の如くでもある。

その智の母親、直子も一緒に暮らす、本作でもまた血縁関係に頼らない、家族的な関係、疑似家族的に描いているが、人があえて不幸である側に魅せられてしまう所似も考えて見せている。だから、泰子のお腹が大きく膨らみ始めると、一人、また一人と家から出て行ってしまい、泰子はまた一人ぼっちになってしまう。

人生に本気になれない人たちの押したり引いたりと言う、ローカル色のあるロケ地も、人物たちをさらに浮遊させ、何だか観終わったらそれっきりって感じがした。

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レゴ(R)ニンジャゴー ザ・ムービー★★・5

2017年10月24日 | アクション映画ーラ行

 

世界中で愛されるデンマーク発組み立てブロック玩具LEGO(R)を題材にした人気テレビアニメシリーズの劇場版。若くて正義感あふれる忍者ロイドが、師匠であるウー先生の指導のもと、仲間たちと力を合わせてニンジャゴーシティの平和を守るために立ち上がる姿を描く。香港が世界に誇るスーパースター、ジャッキー・チェンが師匠の声を担当する。

あらすじ:ニンジャゴーシティは、悪の帝王ガーマドン率いる軍団の襲撃を受け窮地に立たされる。師匠のウー先生のもとで修業をしてきた、師匠のおいのロイド、炎の力を持つカイ、イナズマの力で敵に立ち向かうジェイ、大地の力を使うコール、カイの妹ニャー、チタン式ニンジャのゼンら特殊な能力を持つニンジャたちが世界を守るため、巨大なメカと共に悪に立ち向かう。

<感想>ポイントが溜まって無料ということで、観ないと思っていたがつい前作を観て面白かったので鑑賞。レゴの製品に、忍者をモチーフにしたシリーズ、いきなりジャッキーチェンが出てきたので、ファンとしては驚いたね。『グレムリン』の老店主キャラでジャッキー・チェン(ご本人)登場! 香港が世界に誇るスーパースター、ジャッキー・チェンが師匠の声を担当する。

動画のURL=https://youtu.be/1DQw1GIvIn4

そのフィギュアをキャラクターに用いた連続TVアニメの、スピンオフ映画版がこれだ。ジャッキー・チェンの案件でもあるせいか、忍者というより中国武術みたいだが、日本のロボットアニメが触発する想像力という点でも興味深い。つまり、中でも気合が入ったのが、「トランスフォーマー」ばりに変身しているし、レゴの巨大ロボが街中を縦横無尽に動く所とかは、テンション上がりかっこよかった。


でも、そんなことよりもまず、モンティ・パイソンか、マルクス兄弟かという斜め上をいくナンセンスふうな展開が可笑しくてたまりません。レゴならではの動きの面白さと背景美術の美しさにも注目してくだされ。

そこで語られるように、TVシリーズの設定を“一度忘れてもらう”というような展開すらを許せる暴走っぷりなのだ。

いきなりジャッキー・チェンが出て来るので、ファンとして嬉しいのですが、彼のガイドで始まるニンジャーゴーシティは遠近感もあり、きめ細かく出来ているので、もっと見ていたいくらい。ですが、悪の帝王ブラックガーマドンが、シュールなまでに破壊しまくるんです。

しかも、その男が主人公ロイドの父親だというのだから。それに、ウー先生は叔父さんで、笑おうが笑うまいがお構いなしで、のべつまくなし連射されるギャグ、とにかくキビキビとした語り口調に乗せられっぱなし。それでいて、親子の絆、リーダーのかくあるべき姿をめぐるドラマもしっかりと機能している辺りは、感心することしきりです。

レゴの映画ではあるが、オモチャのアニメ化として相当に手が込んでいて、子供の番組というよりは、大人が観ているのかもしれない。

前作の「LEGOムービー」は世界を滅ぼす究極のアイテムというのが、レゴ世界を固める「瞬間接着剤」だったというのが皮肉だったけれど、今回の究極兵器もすごいのだ。ミサイルのように見えて、実はレーザーポインターなんだけど、それを点灯させたらばレゴ世界に何が襲って来ると思いますか?

それに、この映画は「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーの父と、ルークばりの子供の確執を描いているといっていいだろう。レゴの世界なんだから、父親は五月人形みたいな鎧兜を着て、手が4本あり悪忍者の親分ガーマドンなのだ。

ニンジャゴー市を舞台にしているだけに、仕事にかまけて家庭をなおざりにしたものの、もう自分は若くないと知り、家族の愛が欲しくなった男の物語なのであります。

しかし、父親っていうのは気持ちを伝えるのに不器用で、そもそも俺は暗黒大将軍ガマードンであるぞ!と威張り散らしてみても、息子のロイドの母親、ガーマドンの元妻も出て来るので、最後には悪忍者ガーマドンの心の揺らぎには泣けてきますよ。

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斉木楠雄のΨ難★★★

2017年10月23日 | アクション映画ーサ行

 

麻生周一の人気ギャグ漫画を「銀魂」「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一監督、「四月は君の嘘」「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」の山崎賢人主演で実写映画化。様々な優れた超能力を持ちながらも、目立たず平凡な生活を望むクールな高校生が、その意に反して風変わりなクラスメイトたちのせいで次々とトラブルに見舞われていくさまをギャグ満載に描く。共演は橋本環奈、新井浩文、内田有紀、田辺誠一。

あらすじ:生まれながらにしてテレパシーやサイコキネシス、テレポートはじめあらゆる超能力を自在に操る高校生、斉木楠雄。そんな彼が何よりも願っていることは、普通に暮らしたい、ということ。しかし、彼の周りには、学園のアイドルを自認し、上から目線で斉木に言い寄る勘違い美少女・照橋心美、バカすぎて斉木が唯一心を読めない燃堂力、筋金入りの中二病患者・海藤瞬はじめ変わり者ばかりが集まり、ことあるごとに斉木の平穏な日常を踏みにじっていく。そんな中、毎年恒例の文化祭を迎え、無事に終わらせようと奮闘する斉木に、案の定次々と災難が降りかかるのだったが…。


<感想>やれやれ、たかが文化祭で、滅亡の危機とはな。「週刊少年ジャンプ」で連載され、独特な世界観が支持されている麻生周一の人気ギャグ漫画を実写映画化。生まれながらに最強の超能力を持ってしまったばかりに、日々災難に巻き込まれてしまう16歳の高校生・斉木楠雄の学園生活を描く。

主人公は、最近映画に出すぎの山崎賢人くん。ヒロインは橋本環奈で、脇陣には両親に内田有紀、田辺誠一が、そして同級生には新井浩文が燃堂力に、吉沢亮が海藤瞬を、笠原秀幸が灰呂杵志と賀来賢人が窪谷須亜蓮に扮している。そして福田作品常連のマジシャン役のムロツヨシ、校長の佐藤二朗といった個性的なキャストが集う。

ピンク色の髪の毛に無表情、殆どのセリフが脳内発言で終わる山崎賢人の謎のハマリっぷりに“おっふ”。しかしこの言葉は、ちょっと驚いた時ならいつでも使える。

作中では、才色兼備の完璧美少女、照橋心美を目にした男子が、思わず口にしてしまう言葉として登場する“おっふ”橋奈本環ちゃん可愛いですね。

1000年に一人の美少女・橋奈本環の超絶変顔コメディエンヌっぷりにおっふだ。歩くイケメン彫刻・吉沢亮が内なる中二病を卍解してハジケまくる姿におっふ。笹原秀幸の半ケツにおっふ。新井浩文のケツアゴにもおっふ。

ムロツヨシのマジシャンにおっふ。校長の佐藤二郎におっふ。そうなんですね、この映画「斉木楠雄のΨ難」を観ているだけで笑いと“おっふ”が溢れ出すスーパーハッピー・コメディであります。

楠雄の気を惹こうとする照橋の思い込みに対する彼のツッコミなどは、まさにそれ。いまじゃあ、これがお笑いの常道なのか?動きを含めた芸で笑わせる喜劇も、遠くなりにけりかい。まぁ、この映画で唯一面白かったのが、楠雄の超能力で、高校生が次々と石像になり、兵馬俑のようになる場面だった。

これは、コンセプトの勝利であり、文化祭を穏便に過ごす、そのためにだけ超能力者が瞬間移動して大活躍という物語を、だれでも可笑しいと思えるか、他人事ながら心配だった。

それでも、ポーカーフェイス少年と腹黒い美少女の取り合わせも良かったし、両者の心の声バトルみたいな構成と、どんどんと氷の世界になっていく体育館の武具室が、クライマックスで宇宙ものにスケールアップする、これが楽しかった。ですがこの映画から得ることなんか何一つなくたっていい。何もかも忘れて、ただ笑い、ただ“おっふ”するというシンプルなエンタメなのだから。

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バリー・シール/アメリカをはめた男★★★・5

2017年10月22日 | アクション映画ーハ行

 

トム・クルーズがCIAの極秘任務を請負いながら、麻薬密輸で巨万の富を築いた実在の天才パイロットを演じるクライム・アクション。類い希な操縦テクニックで政府ばかりか、麻薬王からも雇われた男の破天荒な人生をコミカルなタッチで描き出す。監督は「ボーン・アイデンティティー」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のダグ・リーマン。

あらすじ:1970年代後半のアメリカ。大手民間航空会社のパイロットして働くバリー・シールは、愛する妻子とともに何不自由ない暮らしを送っていた。そんなある日、彼の天才的な操縦技術に目を付けたCIAが、彼をある極秘作戦にスカウトする。こうしてCIAの汚れ仕事を手伝ううちに、巨大麻薬組織“メデジン・カルテル”の伝説の麻薬王パブロ・エスコバルにもその腕を買われ、麻薬の運び屋としても大活躍するバリーだったが…。

<感想>この男、天才パイロット、CIAエージェント、そして麻薬の密輸王。CIA、麻薬組織、さらにはホワイトハウスと通じ、大金を荒稼ぎした男バリー・シール。彼らを騙したようで、実は米ソの東西冷戦のうねりに翻弄された実在のパイロットを、トム・クルーズが怪演した犯罪ドラマである。

制作にはロン・ハワードが参加して、「エキス・マキナ」のドーナル・グリーソンが、CIA局員・シェイファー役で出演している。悲惨だけども笑える“悲喜劇”にして、スリリングな娯楽作でもあります。

実在したパイロットのバリー・シールとは、1939年生まれ。麻薬の運び屋をして数十億円を荒稼ぎし、家にもオフィスにも溢れるほどのお金があったとか。頼まれると「NO」と言えない性格で、周囲からの信頼も厚かったようだ。46歳の若さで殺された。

1978年、CIAから任されたバリーの仕事は、中米諸国の共産系ゲリラの基地を偵察&盗撮すること。最新の小型飛行機をあてがわれ、銃弾をかいくぐりミッションをこなすが、意外と薄給で、それで、1980年南米コロンビアの麻薬カルテルの大物から、密輸の仕事をオファーされる。バリーはヤバイと思いつつも、1キロにつき2000ドルの高報酬に目がくらみ、請け負うことになる。

CIAのスパイ、武器の密輸人、麻薬の運び屋だったバリーが、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルらと親交を築き、米大統領・ロナルド・レーガン政権下のホワイトハウスをも動かした仰天エピソードを映像化。冗談のようにスケールのでかい実力ドラマなのだから驚いた。

1983年、4人のパイロットを雇い、ビジネスを拡大する。どんどん金持ちになり、バリーを怪しんでいた妻も豪邸暮らしを満喫し始める。だが、そこへ妻の弟が現れ、それが問題を引き起こすバカ者で手がつけられない。屋敷の中や、納屋、事務所にと札束がぎっしりとあるのに目を付けて、金と使い始める弟。その弟が警察に捕まり、屋敷にも事務所にも金がたんまりあると白状し、困ったバリーは、金を渡して遠くへおっぱろうとするも、車に爆弾を仕掛けてあり、弟は車ごとしんでしまう。それをもみ消しするバリー。それに、FBIや麻薬取締局に目をつけられてしまうバリー。

時代の異端児と言えるバリー・シール、マジかつて思えることを、時代の波に乗りやってのけたこと。それがいかに歴史的で壮大かは気づきもせずにね。喜びも悲しみも閃光のスピードで駆け抜けた、アンチヒーロー的な生きざまに憧れる人は多い。しかし、子だくさんであり愛妻家なのもそうで、妻に対してはとても誠実で、妻も彼を信用しており夫と共に、歩く人生を謳歌していたようにも見えた。最後が妻と子供だけでも亡命するようにと、しかしFBIが豪邸に押し入り、根こそぎ持っていくのを見て、夫の死の後は、つましくウェイトレスをして生活していた。

55歳のトムも、監督のダグ・リーマンも操縦資格があるため、飛行のシーンはスタントを一切使っていない。飛行機の操縦はもちろん、バリーと妻の無重力シーンの他、随所に盛り込まれた低空飛行シーンなど、コックピットから後方座席へ移動して、急降下しながら、ブツを落とすという危険なシーンもすべてトムによるもの。高度操縦テクニックでスタッフを驚かせたというから凄い男だ。監督はヘリコプターで追いかけながら撮影したというの。

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アトミック・ブロンド★★★★

2017年10月21日 | アクション映画ーア行

 

「モンスター」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のシャーリーズ・セロンが美しき最強女スパイを演じるサスペンス・アクション。冷戦体制崩壊直前のベルリンを舞台に、極秘ミッションに臨むヒロインが、次々と現われる刺客相手に壮絶な戦闘アクションを繰り広げるさまを、リアルかつスタイリッシュに描き出す。共演はジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ。監督はスタント畑出身で、「ジョン・ウィック」では共同監督を務め、「デッドプール」続編の監督にも抜擢されるなどハリウッドで注目を集めるアクション演出のスペシャリスト、デヴィッド・リーチ。

らすじ:冷戦末期の1989年。英国秘密情報部“MI6”の凄腕エージェント、ローレン・ブロートンは、何者かに奪われた極秘リストの奪還と、二重スパイ“サッチェル”の正体を突き止めよという密命を帯びベルリンに降り立つ。早速現地で活動するスパイ、デヴィッド・パーシヴァルと合流するが、彼女の行動は敵側に筒抜けとなっていた。誰が敵か味方かまるで分からない状況の中、次々と襲いかかる殺し屋たちを、強靱な肉体と圧倒的戦闘スキルでなぎ倒していくローレンだったが…。

<感想>本作の特長のひとつが、激しいアクションとファッショナブルなローレンのギャップ。場面写真では、黒のロングコートに身を包み路地裏に立つロレーンの姿や、華やかなドレスでバーを訪れたシーン、白のコートを着こなし、任務に当たる様子が描かれている。

シャリーズが美しき女スパイ役というから、てっきりお色気たっぷりの華麗でスタイリッシュなアクション映画を期待していたら、観てびっくり、本作のシャー子さんは、激しいアクションとファッショナブルなローレンのギャップの二つを演じていました。

確かに冒頭のブルーに染まった画面とか、全裸で氷が浮かんでいるバスタブに浸かったシャー子さんが、ウォッカをがぶ飲みしてタバコの煙がたなびき、そこにデヴィッド・ボウイの歌声が流れるあたりは、鳥肌が立つぐらいにカッコよかった。ですが、よくよく見ると、彼女、顔も体も傷だらけなんですよ。

そして、事件が終了して帰国した彼女が上司から尋問を受け、その証言が回想シーンとして描かれるという設定で展開。いかに凄い戦いだったのかを暗示しているわけですね。

今回のシャー子さんのアクションは、正面から殴り合ったりして、結構やられる展開もあるので観ていて痛々しくなっちゃうぐらいで、男の腹をグーで殴るとか、肘でド付くとか、あとは背負い投げとか、面白かったのが、ゴムホースを武器にして、ホースを男の首に巻き付けて、窓から下の階へとダイブするシーンも凄かった。

拳銃の使い方も、ナイフの使い方も男みたいな仕草で、さすがに「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で演じたフュリオサのシャー子さんも凄くカッコ良かった。今回のアクションは男らしくて、頼もしく見えましたよ。

殺し屋たちを相手に階段で繰り広げる約7分間の戦いなんて、まるでワンカットみたいに撮られているから、観ている方も力が入って疲れてしまうほど。

ともかくシャー子さん扮するローレンが、男前なんですよ。ベッドシーンの相手も女だし、つまりレズってこと。「キングスマン」や「ザ・マミー」でさんざん強い女を演じていたソフィア・フテラが、妙に可愛い役で笑ってしまうけど、やはりシャー子さんの前では貫禄負けってことなのかもね。

徹底的にシャーリーズ・セロンをカッコ良く美しく描くということに神経を集中させたような画面作りで、MI6の諜報部員ということなので、女王陛下とご対面式典があるとかで、ラストで着ている、ディオールの真っ赤なコートには、さすが女優と言う美しさで、何より輝いて見えましたね。彼女のプロモーション映画といっていいかも。

映画の中での音楽が、80年代を知っている人なら、当時のヒットナンバーが次々と流れてくるから、長いPVとしても楽しめるはず。

ローレンの上司に、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズが出てます。それに、イギリスの諜報部員として、デヴィッド・パーシヴァル役にジェームズ・マカヴォイがスキンヘッドで出ているし、彼は不審な行動の多い男で、スパイといっても、裏切りやこさん臭さを漂わせながら、物語をかき回す男を演じている。だから単純なアクション映画だと思っていると、最後にあっと驚く仕掛けが用意されているし、ひねりも充分ですよね。クールでポップな“女性版ボンド”を心底楽しそうに演じるシャー子が最高!

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ロスト・イン・パリ ★★★

2017年10月20日 | アクション映画ーラ行

              

再登場となったもの。高い評価を受けてきた現役道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベルご夫妻による風変わりなコメディです。『アイスバーグ!』『ルンバ!』でも組んだドミニク・アベルとフィオナ・ゴードンが製作、監督、脚本、主演を務めたコメディー。おばを助けにカナダからフランスにやって来た主人公が、思いがけないトラブルに遭遇する姿をキュートに描く。『愛、アムール』などのエマニュエル・リヴァがおばを好演。カラフルでポップな映像、夏のパリで巻き起こる珍事件の数々が見どころ。

<感想>フランス映画社が弱体化していたため、まったく話題にならなかったが、今回、めでたく再登場となったもの。高い評価を受けてきた現役道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベルご夫妻による風変わりなコメディです。

物語は、雪ばかり降るカナダの小さな村。図書館司書のフィオナ(フィオナ・ゴードン)は、ある日雪パリに住むおばのマーサ(エマニュエル・リヴァ)から手紙を受け取る。「パリを愛しているのに、みんなが私を老人ホームに入れようとするの、助けて!」。これを読んだフィオナは、はじめてのパリ行きを決意し、出発。しかし、パリに着いてもマーサには会えず、フィオナはセーヌ川に落ちて荷物を丸ごと流されてしまう。一方、その荷物を拾った謎のホームレス、パリジャン・ドム(ドミニク・ベル)は、偶然フィオナと巡り会うことに。数々のトラブルに巻き込まれながらも、フィオナはマーサおばさんを探し出そうとして…。

過酷な現実を描いた作品の後に、こういうのに出会うとホッとしますよね。もう、肩の力を抜いて楽しんだ方が勝ですって。この夫婦のニヤニヤ、クスクスの演出スタイル。まるでチャップリン映画のようにも思えた。

これが3回目のおめもじとなると久しぶりねと、声を掛けたくなる。J・タチ、R・デリーを思わせる道化的な笑いが良かったです。

冒頭での事務所には、お腹を抱えて笑ったが、カナダの雪の多いところが舞台なのか、吹雪でドアが閉まらなかったりして大騒ぎ。それに、パリに来てからは、お上りさん状態で、写真を撮ったりしてウキウキして、おばさんのアパートを探しても、留守で表で待ちぼうけ。このアパートだと分かっているんだから、中へ入ってオバサンの部屋で休めばいいものを。

パリで暮らす老叔母に、はるばる会いに来たカナダ人の女性が、異国で珍道中を繰り広げる。ヒロインと、彼女が出会うホームレスの男性を演じたのは、本作の監督の夫婦コンビであります。

以前の話題を呼んだ映画『アイスバーグ!』『ルンバ!』は未見ですが、この映画の中での、原色あふれるパリの風景を背景に、豊かな色彩で絵本のような映像美を楽しませながら、人生と自由の素晴らしさを、ユーモアたっぷりに描いているのが良かった。

パントマイムを素地にする二人のユニークな身体。すごくよく似た体つきも。身体表現は、もうそれだけで映像を支える高度な芸風ですから。仄かなお色気感もあってよろしいかと。それに、監督の夫のホームレスは、もしこういうパリ人がいたら、観光客は嫌な思いをするのではないかしら。

写真を撮って、重いリュックとハンドバックがセーヌ川に落ちてしまい、その中にパスポートもお金も全部入っていたとは。拾ったお金で、女をナンパして食事をご馳走するホームレス。そのハンドバックは、私のよと、騒いでも後のまつり。

おばさんは、認知症でエッフェル塔によじ登ってたとはね。後は、同じホームレスの爺さんと、ベンチで足のステップでダンスを踊るところも、彼女、エマニュエル・リヴァは、そのコメディエンヌとしての魅力を存分に発揮して2017年に亡くなったそうです。

ですが、全体的には、少し上品すぎて物足りなさを感じてしまった。ドタバタ喜劇の飛躍とまでは言わないが、もう一つ弾けたギャグも欲しくなります。ちょっと、計算しすぎの感もするのではないかしらね。とはいえ、この楽しさは貴重ですよね。

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ハローグッバイ★★★

2017年10月19日 | アクション映画ーハ行

 

「ディアーディアー」で長編デビューを飾った菊地健雄監督によるデビュー2作目となる青春ドラマ。売り出し中の若手、萩原みのりと久保田紗友を主演に迎え、性格も境遇も対照的な女子高生2人が、認知症のおばあさんを介して近づき、衝突を重ねながらも次第に心を通わせていく姿を見つめる。共演はもたいまさこ、木野花、渡辺真起子。

あらすじ:はづきと葵は、同じクラスにいながらもまるで接点のない対照的な高校2年生。いつも多くの友だちに囲まれ、中心的存在のはづきに対し、いつも一人ぼっちでいる優等生の葵。しかし、それぞれに誰にも言えない秘密を抱えていた。はづきが元カレの子どもを妊娠したかもしれない不安に怯える一方、葵はやり場のない苛立ちから万引きを繰り返していた。そんなある日、ひょんなことから一緒に認知症のおばあさんを自宅まで送り届けた葵とはづき。やがて2人でおばあさんの初恋の人探しを始めるのだったが…。

<感想>友達ってなんですか?・・・心に残るメロディーが紡ぐ、淡く繊細な青春模様。若手女優の萩原みのりと久保田紗友がダブル主演し、同じクラスでも全く交わることのないタイプの異なる2人の女子高生が、ひとりのおばあさんとの出会いをきっかけに交流を持ち、ぶつかり合いながらも次第に認め合っていく姿を描いた青春映画。

認知症のおばあさんと知り合い、初恋の人にラブレターを渡したいというおばあさんのため、一緒に初恋の相手を探すことになる。ドラマ「表参道高校合唱部!」で注目を集めた萩原がはづき、NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に出演した久保田が葵を演じ、2人が知り合うおばあさん役でもたいまさこが共演。自分のキャラクターをしっかりと演じている、このお二人さん、彼女たちは何と、5回も互いに立ち聞きをし、盗み聞きして相手の秘密を知るというこれにはびっくりです。1度目は偶然で、2度目はたまたま、3度目も偶然ですが、さすがにこの辺りからこちらも“立ち聞き”しているみたいな、頭にしっかり回数をメモしたりと。

いずれにしても、立ち聞きが不自然でないような場面を用意しているし、少女たちの演出も、認知症の老女のエピソードも悪くはないんですが、つまりは、この映画の友達になろうという言葉は軽い。

優等生の葵は、一人っ子で家では母親も医者で家にはいない。寂しさのあまりに、万引きでうさばらしをする。それを見ていたはづきが、彼女を責め立てるも、はづきも元カレの子供を妊娠しているかもしれないのだ。

教室で、生徒のカバンから盗みを働く葵、妊娠検査薬を盗んでしまう。それは、はづきが元カレとの間にできた子供かもしれないと、検査するため。女の子は、そういう男女関係の激しい女子は、特に妊娠をしてしまう。そして、悩み、相談する人もなく、葵が万引きをしたところを見て、金持ちの葵から中絶費用の10万円を脅し取るのだが、バカにされてしまうはづき。お互いに傷つき、本音を語れるともだちがいないことに気づくのだ。

ですが、認知症の老女の手助けをしようと、その家の承諾もなしに勝手に老女を引っ張り出すのはどうかと思いますね。確かに、昔の恋人へのラブレターを届けるのに手助けをする女子高生の二人ですが、認知症になると昔の思い出ばかりが気になり、現在の自分の年齢も忘れてしまう。

手紙の主の彼は、亡くなっておりその瓜二つの息子がいて、老女の想いでの曲をピアノで弾いてくれた。その旋律の調べにのせて、昔の親友宛に手紙をかいたもので、恋人ではなく、その恋人と思っていた淡い片思いの男性へ、しかし、手紙はその男性の妻、つまり老女のともだち宛に書いた手紙だったのだ。

最近は、他人と直接対面せずに、なるべく衝突を回避してと。SNSは容易に人間同士を繋げているかのように錯覚させるが、そのことを“ともだち”という言葉のニュアンスが象徴しているようだ。

だが、二人の女子高校生は、罵り合い、ぶつかり合う。それは“ともだち”でも何でもないからだ。そうすることで、接点のなかった二人がやがて、“ともだち”のような関係になり、「友達ってなんだろう?」とおもわせるようになる。

物言わぬ久保田紗友の存在感が素晴らしいし、主演ふたりの堂々たる演技に拍手したい。そして認知症の老女役のもたいまさこさんも、丁度いい年齢の役柄で、素で演じているようでした。

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ローサは密告された★★★

2017年10月18日 | アクション映画ーラ行

 

各地の映画祭で注目を集めるフィリピンの俊英ブリランテ・メンドーサ監督が、フィリピン・マニラのスラム街を舞台に、生活のために麻薬の販売も手掛ける雑貨店店主夫婦の過酷な日常と警察組織の腐敗ぶりをドキュメンタリー・タッチのリアルな描写で描き出した社会派ドラマ。主演は本作の演技でカンヌ国際映画祭で女優賞に輝いたジャクリン・ホセ。

あらすじ:マニラのスラム街で怠け者の夫と雑貨店を営むローサ。生活の苦しい夫婦は、家計を支えるために少量の麻薬も扱っていたが、ある時警察のガサ入れに遭い、逮捕されてしまう。そして警察署に連行されるや、多額の見逃し料を要求される夫婦だったが…。

<感想>フィリピンの鬼才、ブリランテ・メンドーサ監督の新作である。ヒロインのローサを演じたジャクリン・ホセは、第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得している。ある意味、女優の頂点に立った彼女がどういう演技者なのか、興味津々でもある。実際に本作を体験すると、予想以上に凄くて圧倒されっぱなしだった。

このリアリティは、一体何なのだ?と息を呑む。描かれているのは、マニラのスラム街で起きたある出来事である。貧困層がひしめきあって暮らす街で、ローサは夫と小さな雑貨屋を経営している。

店舗兼住居で、可愛い子供たちが食事もするし、あまり商売熱心ではない夫は、二階で覚醒剤を打っている。この店では、麻薬販売もしているのだ。だから売人も普通に出入りするわけ。

近所の少年が“アイス”という隠語を使い麻薬を求めて来る。善悪の感覚が麻痺するリアルな光景。その雨降る夜に、ローサらは警察に連行される。どうも誰かに密告されたらしいのだ。

警察署は、テナントの店が潰れたような貸しビルみたいなところ。警察へ着いたら着いたで、展開されるのか警官たちの賄賂要求である。警察はヤクの売人以上にヤクザであった。20万ペソと法外な金額を払うか、売人を売るか迫られ、ローサはあっさりと売人に電話をかける。

すぐに捕まった売人のバックから大量の麻薬と金が出て来て、喜ぶのは警官なのだ。正義に向かえるからではない。金と麻薬を山分けできるからだ。この場での臨場感や生々しさが尋常ではなく、観ていて辛くなる。

その後、また金(5万ペソ)を要求されたローサらは、面会に来た子供たちの助けを得る。疎遠な親戚に頭を下げる娘、テレビを売ろうと街を歩く長男、中年男に体を売る次男ぼう。しかし、長男は家を売ろうと提案するも、ローサは「家を売るのはいや、路上生活なんてまっぴらよ」と、強く主張する。その後も同じ場所で生活を続けるつもりであったのだ。おそらくは、これまでもずっとその場しのぎでやってきたのだろう。壮絶な世界だが異を唱える者はいない。

みんな必死に生きているのだから。仲間を売り、自分を守るしかない。一時釈放されたローサが、切羽詰まった状況にありながら、屋台で食べ物を買って食べ始める姿を見て泣けて来る。その後の暮らしはどうするのか、売人の報復をおそれないのだろうか、正義など、ぬるま湯に浸かったやつらの戯言なのだから。経済発展、グローバル化が進むフィリピンの裏側を覗き見したようであります。

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アナベル 死霊人形の誕生★★★

2017年10月17日 | アクション映画ーア行

ホラーシリーズ『死霊館』に登場する人形アナベルに迫るスピンオフの第2弾。手にした者を怪現象に引きずり込むアナベルの生まれた経緯が明らかになる。メガホンを取るのは『ライト/オフ』などのデヴィッド・F・サンドバーグ。『バッド・ウェイヴ』などのステファニー・シグマン、『ヴェンジェンス』などのタリタ・ベイトマン、『ウィジャビギニング ~呪い襲い殺す~』などのルル・ウィルソンらが出演する。

あらすじ:ある田舎の町に住む人形師の一家。可愛い娘が居て、とても可愛がっていました。ある日、教会へ行った帰り道、車が故障してしまい、父親が修理をしています。そこへ通りかかった車の前に娘が飛び出してしまいます。一瞬で亡くなってしまった娘・アナベル。

12年前に最愛の娘を亡くして以来、悲しみから立ち直れずにいる人形師のサミュエル・マリンズとその妻エスター。そんなある日、夫婦は孤児院の少女6人とシスター・シャーロットを受け入れる。家の中が賑やかになり、元気を取り戻していくエスター。しかし孤児たちは不気味な現象に遭遇し不安を募らせる。足の不自由なジャニスは特に敏感で、何者かの気配に怯えるあまり、夫婦の亡き娘の部屋に忍び込み、図らずも恐るべき力を秘めた人形アナベルの封印を解いてしまうのだったが…。


<感想>少女6人の孤児たちとシスターシャーロットを家に引き取り、家の中が賑やかになるも、屋敷の主人が2階にある亡くなった娘アナベル部屋には絶対にはいらないことと、妻は体調を崩しているのでみんなには会えないと伝えたのに、孤児の中で足の不自由なジャニスとその親友のリンダが、いつも一緒だと友情を深める2人が。しかしある晩のこと、2人は入ってはいけない部屋に入ってしまう。そこには、山のようなオモチャと一緒に“あの人形”が置いてあったのですね。

こで彼女たちは、恐ろしい存在を見てしまう。それは果たして不慮の事故で死んでしまった職人夫婦の娘アナベルの亡霊なのか?・・・それとも異世界からやってきたものなのか、そして怪異は容赦なく孤児たちを襲い始めた。果たして誰が生き残るのか、何が残されるのか?21世紀のホラーのアイコンとなった“呪いの人形アナベル”、その正体が遂に判明する。木彫りで不気味な顔立ちの女の子の人形には、いったいどんな因果があると言うのだろう。

手を替え品を替えて、怖がらせにかかった「死霊館の人形」に対して、こちらは野原の一軒家が舞台だから、一見オーソドックス。その分、少女たちのカyラクターがクローズアップされ、取り分け、足の不自由なジャニスを気遣うリンダが悪霊と戦うのは、胸が張り裂けんばかりの想いで応援したくなります。

意地悪そうな年長の少女?・・・たちが、思いがけず友情を示すのも印象的であり、将来のスター候補をパッケージした作品かもしれないですよね。

アメリカン・ゴシックの建物を舞台にして、悪魔人形の霊力により、美しい尼僧シャーロットが、天井まで浮かび上がる光景。美少女たちが怖れおののくホラーは新鮮でした。ステンドグラスの窓から射し込む微光で、仄かに見える人形アナベルは、静止したままでも怖いのだ。

前作を観たファンから人形の誕生秘話を知りたいという要望があって作られた映画だそうだけれど、こんな話なら、もっと早くに怪奇現象へ、というファンも多いはずですよね。人形細工部屋のたたずまいや、小道具が魅力的でした。

明かりが消えると化け物が襲って来る。その化け物を産んだ呪われた実験、そして超常現象が起こっているド真ん中に警官隊が突入してくるのだ。

映画では、冒頭のある少女の事故死からクライマックスのオカルト・アクション、そして、「アナベル死霊館の人形」(14)に繋がっていくエンディングまで、実にしっかりと構成されている。

アナベル人形は、何故におぞましい存在なのか、その恐ろしい正体が現れるまで、時としてJホラーを連想させ、また時としてシャラマン風に語り口を変えながら、クライマックスでは「ライト/オフ」で見せた瞬殺モンスター描写がよりパワーアップされますから。まるで超常現象がぎっしりと詰まった状態である。

曰く付きの屋敷へやってきた孤児の少女6人の中で、ポリオを患い歩くのが不自由な少女ジャニスが、アナベル人形を触媒した悪霊に狙われのは、ある意味お約束のように思えた。だから、ジャニスが辿る恐ろしい運命は、アメリカのトラウマとなったある事件と密接に繋がっている恐怖映画なのです。

ジャニスの親友のリンダが、アナベル人形を庭にある井戸へ投げ込むシーンにもドッキリですから。真夜中なのに、リンダって子は勇気があるよね。でも、ジャニスに悪霊が取り憑き、どうみても様子が変なのに誰も気づかないなんてね。

その中で、孤児の面倒を見ているシャーロットシスターが持っている心霊写真(ルーマニアの修道院)が次の続編と思われる鍵となっているようです。ラストのエンディングの後に、そのルーマニア修道院が映し出されて、・・・怖いですよね。とにかく、暗闇と音響がオドロオドロしくて、悪魔も出て来るし、観客を怖がらせる演出が上手い。一大サーガに展開するので、続編に彼女たちの再登場もありそうですね。

[ 死霊館](14)

[死霊館 エンフィールド事件](16)

[アナベル死霊館の人形](15)


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