パピとママ映画のblog

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アルマジロ  ★★★★

2013年04月24日 | アクション映画ーア行
アフガニスタンの最前線アルマジロ基地に派遣された若きデンマーク兵たちの7カ月に密着し、若者たちが体験する恐ろしい戦争の現実を映し出していくドキュメンタリー。

2009年、アフガニスタン南部ヘルマンド州のアルマジロ基地に、デンマーク人の青年メス、ダニエル、ラスムス、キムらが派兵される。アフガニスタン駐留の国際治安支援部隊支援国として、デンマークはイギリスとともに最も危険なエリアを担当。タリバンの拠点までわずか1キロという死と隣り合わせの戦場で、若者たちは数回の戦闘で極度の興奮状態を経験し、敵味方の区別もつきにくい戦争中毒に陥っていく。2010年・第62回カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリ受賞。(作品資料より)

<感想>国際治安支援部隊という名のもとに、アフガン紛争へと派遣されたデンマーク軍の行軍を、特に数人に絞り生々しく記録していく。タイトルの「アルマジロ」とはアウガンの基地のこと。監督のヤヌス・メッツとカメラは銃撃戦の最前線にも飛び込んでいき、兵士のヘルメットに搭載されたカメラの映像は銃弾が横をかすめるのをとらえている。常時4台のカメラで撮影された圧倒的な映像。あまりに臨場感あふれる衝撃映像は、まるで「戦争映画」というエンターテイメントを体験しているようで、フィクションなのか現実なのかの区別もつかない。

なぜそんな危険なところへ行くの?・・・という家族からの問に、若い兵士はこう答える。「たくさんのことを学べるから、大きなチャレンジだし、冒険でもある」と。彼らはキャンプ内でいつもと変わらない日常を送る。食事をし、冗談を言い合い、バイクで遊び、川で泳ぎ、PCでポルノを見たり、戦争ゲームをする。
フィクションではない実際の戦場に身が凍りつく。兵士のヘルメットに装着されたカメラが、激しく揺れるばかりで何も映してないのがかえって恐ろしく感じた。戦闘の後の、兵士たちの気の高ぶりには狂気にさえ見える。そして何よりも恐ろしいのは、彼らが、かのフィクション映画「ハート・ロッカー」のように、実戦という麻薬を知って戦争中毒に陥る現実だろう。

やはり現実はフィクションほどドラマチックではない。脚本や伏線や物語の文脈に沿ってドラマを盛り上げるのではなく、いきなりぶっきらぼうに事実が挿入される。タリバンと住民の区別がつかないとあせる兵士たち。
戦場での兵士たちの、誤解を恐れずに言うなら、やや退屈な日常会話に慣れたころ、いかにも何気ない感じで彼らの“片付け”の模様が映される。思わず目をそむけたくなるが、観たものを認識した後で感情が時間差でやってくるのだ。この目をそむけたくなるような光景として映ってしまった、タリバン殺害と死体処理の映像、その後の隊員たちの昂奮や高揚感にも迫る。

この行為を隊員の誰かしらが家に帰って家族に話し、軍内部で問題になっていると、小隊長の困惑にまで迫る。これが、国際治安支援部隊として派遣された平和の国、デンマークの兵士たちの話であることを、日本にいて映画を見ているだけではいかないと思う。日本でも憲法9条の歯止めがなくなれば、この映画のような大切な人を戦地へと送り出すことになるのかもしれない。戦争とは人を殺すこととは、正義とは?・・・ゲームでもフィクションでもない「戦争」を突きつけるドキュメンタリー。
このような事実を知るということだけでも、私たちは深く肝に銘じておかなければ戦争はなくならないのだから。
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