パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ゆずの葉ゆれて ★★・5

2016年09月16日 | や行の映画
コピーライターとしても活躍する作家、佐々木ひとみの児童文学「ぼくとあいつのラストラン」を基にしたドラマ。苦楽を共にしてきた夫婦の深い愛と絆を、一人の少年との触れ合いを交えながら映し出す。監督は、『蛇女』などの助監督を務めてきた神園浩司。ベテランの松原智恵子と津川雅彦が中心となる妻と夫を演じ、その脇を西村和彦、小林綾子、芳本美代子らが固める。舞台である鹿児島県喜入地区の牧歌的風景に注目。
あらすじ:鹿児島県喜入の小さな町。走るのが大好きな小学4年生の武(山時聡真)は、隣家に暮らす老夫婦をジイちゃん(津川雅彦)、バアちゃん(松原智恵子)と呼んで実の祖父母のように慕っている。だが、寝たきりになってしまったジイちゃんの姿を見るのがつらくて会いに行かなくなっていた。そんな中、ジイちゃんが亡くなってしまう。人の死というものを初めて経験すると同時に、彼を避けてしまったことを悔やむ武。そこへヒサオと名乗る見知らぬ少年が現れ、競争しようと武を誘い出して速く走るコツを教えてくれるが……。

<感想>ロケ地の全面協力を取り付けての、鹿児島の山村、ご当地映画としても過不足のない作品だと思います。ですが、物語の焦点が今一つ定まらない弱さが難点ですね。
主人公の少年の家族と、隣家に住む老夫婦との絆を軸にして、老人の突然の死、お通夜、お葬式と進む中で、残されたお婆さんの回想へと展開していく。

葬式で集まってくる知人や親族は、駅伝選手で監督だった爺ちゃんの武勇伝を語り始め、婆ちゃんも古いアルバムを開いて思い出にふける。セピア色として紡がれる、夫婦の若き頃の出会いと、駆け落ちをして結ばれる2人のラブ・ストーリー。

次々と現れる登場人物に、映画自体が溺れかけているような、そんな感じがしないでもない。走るのが好きな少年が、津川雅彦演じる爺ちゃんの過去を知って奮起するというお話と、松原智恵子が演じるバアちゃんの夫婦愛の物語とが、根っこのところできちんと結び合わさってないので、エピソードを並べただけにしか見えなかった。

これは少年がただ走る映画にすれば良かったのに。走りが得意なのに、1位になれない主人公ながら、原作がしっかりとしているせいもあるのだろう、破たんのない丁寧な作りになっている。
空撮もそっち方面にたくさん効かせてくれたら、ずっと楽しかったと思いますね。彼に走り方の手ほどきをする謎の少年、実はという構成なのに消化不良になっていた。
それから、謎の少年が宝探しをしようといい、老夫婦ゆかりの柚子の木の根元を掘る。すべてがかけがえのない記憶となってよみがえる。
ですが、その少年が始終ウジウジとしているところがいいので、そのためお姉さんや同級生少女のしっかりぶりが光っているのがいいですね。男はウジウジ生きてこそ良いという教訓なのであろう。

確かに芸歴55年の松原智恵子には“おめでとう”と言いたい。彼女のベテランの存在感が、往年の児童映画を思わせるような、華やいだ空気にさせるのだ。彼女の語りに頼るだけでは、なんとも弱すぎるのに、諸事情もあろうが、構成が半分に削れると思うのですがね。

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雪の轍 ★★★

2015年10月09日 | や行の映画
第67回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した、現代トルコ映画界をけん引するヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督による人間ドラマ。世界遺産カッパドキアを舞台に、ホテルのオーナーで元舞台俳優の主人公と美しい若妻との生活、出戻りの妹との愛憎、家賃を滞納する聖職者一家とのいざこざを描く。『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』などのハルク・ビルギナーらが出演。雪に閉ざされたホテルの中で、次第に明らかになっていく登場人物たちの感情が観る者を作品の世界に引き込む。
あらすじ:世界遺産カッパドキアの「オセロ」というホテルのオーナーである元舞台役者のアイドゥン(ハルク・ビルギナー)は、若くてきれいな妻と、離婚して出戻ってきた妹と生活していた。思い通りに暮らす毎日を送っていたものの、冬が訪れ雪に覆い尽くされたホテルの中でそれぞれの内面があらわになっていき、互いに感情をぶつけ始める。さらに、アイドゥンへの家賃を払おうとしない聖職者一家との関係が悩みの種で……。

<感想>トルコの観光地として知られるカッパドキアだが、一度は観光で訪れて見たいものだ。ユネスコの世界遺産にも登録されているカッパドキアは、自然と人工の見事な合作といわれる。太古の昔、この地方に降り積もった火山灰が、広大な地域にキノコの群生のような奇岩怪石郡を生んだのである。

そこに、迫害を逃れてやってきたキリスト教徒たちが住みつき、岩山を掘って住居や教会をつくった。火山灰でできた岩山は掘りやすく、洞窟内は、冬は暖かく、夏は涼しくと好都合だったのだ。

二十世紀になって「自然と人工の融合」カッパドキアは、世界有数の観光地となったが、今でも洞窟住居で暮らす人もいる。近年は岩山を掘った洞窟ホテルも多く作られ、早朝、夕暮れ時には、ホテルのテラスから眺める岩山郡は、異なる星に舞い降りたかのように幻想的な光景であります。

物語は、主人公のアイドゥンは舞台俳優として脚光を浴びた後、後の半生をカッパドキアの洞窟ホテル「オセロ」のオーナーとして生きることを選んだ男である。カッパドキアの土地や家屋は父親の遺産だから、彼は若く美しい妻と、出戻りの妹と、夫婦者の使用人とともに、安楽に暮らせる身分なのだ。

外は銀世界が広がり、宿泊客も減ってくる冬の洞窟ホテルの一室で、アイドゥンは若い妻と出戻りの妹と、長い話を続ける。長い会話は退屈なようでいても、いつしか引き込まれていく。
3時間16分という大作は、仕事とは、結婚とは、財力とは、慈善活動とは、そして人生とは何かという重いテーマを投げ掛けて来るのだが、重苦しい気分にならないのは、まばゆいばかりの銀世界のせいであろう。

ホテルの客として登場する一人旅のライダーや、わさびについて語る日本人カップルも軽い息抜きとなる。

物語の中に絶望的なバイプレイヤーも登場する。それは、主人公アイドゥンの借家人で、世をすねた男は、夫の資産で慈善活動に熱中するアイドゥンの若い妻の甘ったるい善意を、札束を火に投げ入れることで踏みにじるのだ。こんな付き合い難い人物と遭遇するのも人の世の現実である。

要キャラクターとなる男女3人が、とにもかくにも鼻持ちならないタイプ。
夫婦そして妹との間で激しく口論が繰り返される。そんな連中が揚げ足取りに精を出すのだ。ああ言えばこう、相手の全存在を否定するごとき言葉、会話を196分に渡って延々と聞かされる。ただただ圧倒されます。
しかし、そうした闇がジワジワと見ているこちら側にも伝わってくるのだ。部屋に閉じこもって罵り合ってばかりいる3人を、煙を焚いて炙り出したくなる。
亡びゆく有閑階級の閉塞感、鬱屈はまさにチェーホフの世界である。彼らが外部の人間と接した時に、ドラマは思わぬ展開を見せるのです。
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ゆずり葉の頃 ★★★.5

2015年07月19日 | や行の映画
過去を封印して生きてきた年老いた女性を主人公に、日本を代表する名優である八千草薫と仲代達矢が共演した感動的な人間賛歌。思い出の絵を捜す旅をする主人公を通して、彼女の人生と戦後の貧しい状況の中で胸にしまっておいた思いをつづる。共演は、風間トオル、岸部一徳、竹下景子ら。『日本のいちばん長い日』などの故岡本喜八監督の妻で、プロデューサーである岡本みね子が旧姓の中みね子で監督を務める。繊細な物語と、美しい着物や日本画家・宮廻正明による劇中画なども見どころ。

あらすじ:母の市子(八千草薫)を訪ねた進(風間トオル)だったが、市子は軽井沢に行っており、部屋には宮謙一郎(仲代達矢)という画家についての新聞記事の切り抜きが残されていた。そのころ、市子は宮の展覧会が開催されている美術館を訪れていた。彼女は目当ての絵について職員に聞いてみるも、展示されるかわからないと言われてしまう。

<感想>年老いた市子が一枚の絵にこだわりぬき、その作者である老画家と出会うまでを綴るのだが、軽井沢の風景に、古い珈琲店や食事屋、飴玉などを効果的に配して、一人の女の戦後史を織り上げている。着物の切れ端で作った手縫いの袋に、丸い飴玉を親切にして貰った人々に、お礼として上げる市子の人柄が忍ばれます。

お寺の奥にある龍神池の実写風景も凄いです。水鏡のように澄んでいる池の水に浮かぶ自分の姿。池というのは巡り逢う場所か、または別れの場所なのか。それは、観る人の解釈に任せることにして、問題なのは、物語りに無駄があること。息子とのすれ違いの度がすぎて、時間稼ぎのような気もした。

子供の頃の初恋の人が、今は世界的にも有名な画家となって軽井沢で個展を開いている。その画家に一目逢いたいのだが、自分の子供のころに子守をしていたのを描いた1枚の絵を見たくて、軽井沢までやってきた。だが、その絵は個人所有とのことで、観ることはできなかった。
しかし、軽井沢に暫く滞在していると、街の人たちの温かい親切と触れ合いで、市子は思いがけずに画伯に再会することが出来た。

特に珈琲店(珈琲歌劇)のマスターの岸部一徳の穏やかなこと。私も軽井沢に言った時、この珈琲店に入ったことがあります。今でも営業しているのだと、感慨深くなりました。

ですが、目が緑内障で見えないという画伯。フランス人の奥さんの心づかいで長居をして、オルゴールから聞こえる「キラキラ星」の音色でダンスを踊る二人。それでも、彼には子供の頃の市子を思い出してもらえず、帰り際に奥さんに手渡した飴玉で、老画伯は昔の龍神池の市子を思い出すという。

半世紀を隔てての飴玉の受け渡しという、コンセプトには素直に泣けましたね。老女には、歳月は、ダンスをするつかの間に過ぎたのかも、と思わせて秀逸でした。何とも、戦中派というか、恋愛に臆病な時代の男女の片想いとでもいうのでしょうか。それでも、年老いてから、自分の想いを叶えるという素晴らしい勇気を持ち、強い女としての生き方を教わったような気がしました。

八千草薫には老女という言葉は似合わない。もちろん若くはないけれど、透明な柔らかさがあって、年齢を重ねた女性としての豊かさと気品、美しさが感じられ、だから、監督が彼女に託したこの作品が、静かで慎ましいのに、さりげなく大胆なのも、自分の人生を自分なりに生きてきた女性の肩肘を張らない強さを描きたかったのかもしれませんね。

主人公市子の八千草薫の演技の飾らなさと気品、画伯の仲代達矢が、今は盲目という設定も作品の素朴な佇まいが穏やかでいいですよね。そこに、岡本喜八監督を支えてきた妻の岡本みね子プロデューサーの、年輪を見ているようにもとれた。

軽井沢を追憶的に歩き回る彼女が、着物の店や珈琲店など地元の人々をかわす些細な会話からも、それぞれの生き方を肯定する善意が伝わってきて実に心地が良かったです。
ゆずり葉とは:太平洋側の暖地の林中などに生える、背の高い木。庭木などに使われる。
新葉が生長して古い葉が落ち、新旧交代がはっきりしていることから「譲る葉っぱ」、それが「譲葉」になった。
新しい葉が出てくると古い葉を落とす植物のうちの代表的な木。正月の飾りにも使われる。葉っぱと樹皮は薬用にもなる。
別名「親子草(おやこぐさ)」とも言われる。


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42~世界を変えた男~★★★★

2013年11月23日 | や行の映画
黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの伝記ドラマ。白人の世界だったメジャーリーグに飛び込み、偏見や差別に屈することなく奮闘した彼の姿を描く。監督は、『L.A.コンフィデンシャル』の脚本家としても知られるブライアン・ヘルゲランド。テレビドラマ「FRINGE/フリンジ」などのチャドウィック・ボーズマンが、ジャッキーを快演。親身になって彼を支えたドジャースの重役ブランチ・リッキーを、名優ハリソン・フォードが徹底した人物リサーチと特殊メイクを施して演じ切っている。
あらすじ:1947年。ブルックリン・ドジャースのゼネラルマネージャーを務めるブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、黒人青年ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)と契約、彼をメジャーリーグ史上初の黒人メジャーリーガーとして迎える。だが、白人以外には門戸を開かなかったメジャーリーグにとって彼の存在は異端なものでしかなく、チームの選手たちはもちろん、マスコミや民衆からも糾弾される。そんな状況ながらも、背番号42を誇るようにプレーするジャッキーの姿は次第に人々の気持ちを変えていく。

<感想>みなさんの評判がいいようなので、終わらないうちにと鑑賞した。メジャーリーグ全球団で永久欠番となっている唯一の背番号「42」。この背番号を背負っていたのが、近代メジャーリーグ初の黒人選手となったジャッキー・ロビンソン。
ウィキペディアで調べて見るとたくさんの選手の番号が載ってましたね。
そうはいっても、余りメジャーリーグに興味がない私には、初めて耳にすることばかり。日本の野球界で知っているのは、王貞治の1番と、長嶋茂雄の3番、沢村栄治の14番、川上哲治の16番、金田正一の34番くらいなものです。
いや、ここ数年の映画に出演した中でハリソン・フォードの演技がすこぶる良かった。球団職員には、「すべてお金のためさ」とビジネスマンとしての顔を貫き、ベンチ裏でロビンソンと2人きりになると、元野球少年の素顔をのぞかせ擁護してくれる。
それに、彼が演じたオーナーのバックアップにより、第二次大戦直後のアメリカ野球界の黒人選手差別の問題を、声高に叫ぶことなく忍耐と努力で乗り越えたジャッキー・ロビンソンの姿が神々しく見えました。

人種隔離制度が廃止されるのは1964年になってから。ロビンソンが球界入りしたのは、人種差別バリバリの時代で、黒人は白人と一緒にホテルに入れず、トイレも使用できなかった。野球場の中でも別に設置したトイレを使用した。これは以前に観た「ヘルプ 心がつなぐストーリー」でも、黒人差別で酷かったですよね。
400人もいたメジャーリーガーたちは全員白人選手で、彼のメジャー挑戦がいかにどれだけ画期的なことだったかが分かります。天才興行師として鳴らしていたブランチ・リッキー会長の「1ドル紙幣は白でも黒でもない、緑色だ」という言葉が最高に奮っています。だから、ロビンソンを入団させることでチーム力がアップし、黒人層の観客動員が見込めることも頷けますね。そして、人種差別のない社会づくりに野球界が率先して取り組んでいることをアピールしているようでもあります。
実は、リッキー会長と契約を結ぶ前に、ロビンソンが所属していたのは黒人のリーグ。時速170キロの豪速球を投げた超人級のスター選手がゴロゴロしていたが、ロビンソン選手の温厚な性格も考慮しての抜擢だった。

UCLAにに在籍し、陸軍将校も務めたロビンソンなら、球場内外で起きるトラブルに絶えうる理性を持っているだろうと。実際に、フィールドに足を踏み入れたロビンソン選手は四面楚歌状態になる。対戦チームに観客は「ニーガ」の大連呼。デッドボールを投げられ、審判は不利な判定を下す始末。
チームメイトもファンもマスコミまでブーイングをする孤立無援のなかで、彼はみんなが、自分にも納得する結果を残さなくてはならないのだ。
一挙に盛り上がりそうなところを、ぐっと抑えて淡々と描いていくところなど、知的な脚本と、10年ぶりのブライアン・ヘルゲランド監督の演出が素晴らしいですね。
しかし、実際の差別はこんなものではなく、それは今日まで延々と続いていると言われていることで。永久欠番の「42」こそ、彼らが犯した行為がいかに罪深いかを示している証なのです。

野球映画独特の快楽もちゃんとあるのだが、「偉人伝を見た」という印象を受けた。人種差別をするのは悪人だし、差別に負けず地位を築いていく人は偉いし、差別心なく支える理解者は善い人。そういうズバリな演出で描かれている。
人種差別主義者は憎々しげに卑劣な行為をして、偉人の主人公は怒り返すこともなく、強い精神力で乗り越え理解者を増やしていく。忍耐と努力の人ですね。
ジャッキー・ロビンソン選手の得意技がリード、というところに目を付けたのが、何より成功の鍵になったのだろう。差別や迫害があり、打席では危険球を投げつけられるが、塁に出てしまいさえすればルールに守られ自由を謳歌できる。彼のガッツはその不敵な走塁術に託して表現されたのだ。
球場の外で描かれる彼の偉人伝的物語は、教科書的な再現映像として見えてしまうリスクもあったが、感動するシーンの方が断然強く印象に残ってしまった。
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横道世之介 ★★★

2013年03月10日 | や行の映画
原作は、「パレード」や「悪人」など、著作が次々と映画化されている吉田修一の「横道世之介」。第23回柴田錬三郎賞、2010年本屋大賞3位を受賞した“青春小説の金字塔”と呼ばれる長編小説だ。
『南極料理人』、『キツツキと雨』の沖田修一監督が、不器用ながらも真っ直ぐに生きる世之介と周りの人たちを、優しさとユーモアに富んだ演出で包み込む。映画が幕を閉じても、観客全員にとって世之介は、思い出すたびにニヤニヤと微笑んでしまう大切で愛しい存在になっているだろう。監督:沖田修一主人公に高良健吾恋人の与謝野祥子に吉高由里子、世之介の友達に池松壮亮、綾野剛、朝倉あき、世之介の初恋の人に伊藤歩、その他祥子の父親に國村隼、世之介の両親にきたろうと余貴美子と脇役もベテラン揃い。

あらすじ:長崎県の港町で生まれた横道世之介(よこみちよのすけ)は、大学進学のために上京したばかりの18歳。嫌味のない図々しさ、頼み事を断れない人の良さ、底が浅いのか深いのか測りかねる言動が人を惹きつける。
本作で描かれるのは、お嬢様育ちのガールフレンド・与謝野祥子をはじめ、世之介と彼に関わる人たちの青春時代とその後の人生。そして、35歳になった世之介がある出来事でこの世を去ってしまった頃、その愛しい日々と優しい記憶の数々は鮮やかにそれぞれの心に響きだす……。(作品資料より)

<感想>日本に、一番人と物と金が溢れていた時代。その最後の輝きが映画の幕開けの87年であったと、今なら言える分けだが、当時はそんなこと知る由もなく。
80年代に学生時代を過ごした人々が17年後、愛すべき男「横道世之介」との出会いや、いささか個性的ではあるが、ごくごく平凡な一人の若者と、彼を取り巻く人々のありふれた日々を綴った群像劇である。
平穏な生活が揺らぐような大事件も天変地異も起きなければ、といって入学式で声をかけられた倉持と、アイプチが印象的な阿久津唯が恋人同士になり、彼女が妊娠して倉持が大学を中退する出来事とか、友達になった加藤がゲイだったということや、中でもサンバサークルでの派手な衣装に踊りが可笑しくも楽しそうだった。

17年後に横道世之介って名前聞いたことあると、つぶやくあたりから、これは普通の若者賛歌じゃなさそうだと観客は気付かされる。二つの過去がジグザグに進行して、ある事件の悲しい顛末を静かに物語っているのだ。
横道くんがとてもいい人なのはよく分かる。十分に分かったのに、あれやこれやのエピソードを更に上乗せして、いい人ぶりを強調する。これでは褒め殺しじゃないかと思っていると、やっぱり死ぬ。そうか死ぬ人だから、これだけいい人に描いたっていいのだろう。

そのような優しさや勇気を発揮した人ってどんなヤツなの、こんなふうだったのか。実際にあった忘れがたい事件から、人物像がフィクションとして立ち上がってきている、というお話のサプライズがある。それには結構唸らされたが、それが結論やオチではない。まさに横道世之介を彷徨わせるかのような、主人公の半生、ことの連なりはいいと思う。
時代の風俗や音楽など丁寧だし、特に街の風景や人物の衣装、メーク、フィルム撮影による画面の質感で、見事に時代を表現しているのには驚きました。それに、どのエピソードも、特に与謝野祥子との出会いで、二人が和気あいあいと、まるで高校生のような純な青春が初々しくて、くすぐったい感じがした。

良家のお嬢様を演じた吉高由美子、鼻にくる甲高い声ともすれば人から嫌われそうな役かもしれないけれど、吉高由美子が演じるとそれが自然ですごく好意的に映るという不思議なキャラクターでした。ですが160分の長いダラダラとした演出は、沖田監督のやりかたなのだろうが、ちと長すぎた気がする。
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夢売るふたり      評価★★★

2012年09月14日 | や行の映画
『ゆれる』や『ディア・ドクター』など、人間の深層心理に肉薄し、人間の心の闇をえぐり出すような作品で定評のある西川美和監督作。ある夫婦が火事で全てを失った事から始めた結婚詐欺を繰り返すうちに、本人ですら自覚していなかった己の深層心理と、お互いが知らなかった相手の本性に気づいていくさまが、可笑しくて恐ろしい。物語の軸となる夫婦を演じるのは松たか子と阿部サダヲ。松演じる気立てのよい妻が、心の奥に眠っていた悪意に目覚める瞬間の背筋が凍るような恐ろしさは、彼女の演技力の賜物だ。田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江らが結婚詐欺の“対象”となる女たちを演じるという、キャストの豪華さも本作のウリのひとつ。

あらすじ:東京の片隅で小料理屋を営む貫也と妻の里子。店は小さいながらも繁盛していたが、調理場からの失火が原因の火事で全てを失ってしまう。絶望して酒びたりの日々を送っていた貫也はある日、常連客だった玲子と再会、酔った勢いで一夜を共にしてしまう。その事を知った里子は、結婚詐欺で金をだまし取る事を思いつく。店を再開するための資金を稼ぐために貫也は、出版社OL、重量挙げ選手、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近する。(作品資料より)

<感想>松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺を働く夫婦を演じた異色ラブ・ストーリー。西川美和監督のオリジナル脚本で、女性を騙すうちに人生を狂わせていく夫婦と、だまされる女たちの心の闇を浮かび上がらせる物語。
こんな夫婦なんて現実にはいないだろう。だが、この作品の甘い言葉に翻弄され、結婚詐欺にだまされる女たちの弱さ、その夫を操る妻の本音も嘘も全て受け入れて、愛憎ともとれる感情を無表情に凛としたたたずまいで表す松たか子の演技が上手い。

夫役の阿部サダヲの演じる結婚詐欺師も、言葉巧みに女を騙し金を奪い取る。それもこれも、妻の手の平で転がされているような感じがしてならない。この世で一番強くて怖いものんは、やっぱり女なのかもしれない。
最後に夫がスカイツリーのタワーの見える場所に、小料理屋を開く予定だったのが、最後の女、木村多江の家族に自分の未来の家族が見えのめり込んで行く。妻の里子には、その女の亡くなった夫の保険金目当てにといっていたけれど。

そこへ探偵の鶴瓶が訪ねてきてもめて、そこに女の息子が包丁で後ろから鶴瓶を刺してしまう。警察がくるが、男の子を庇って自分が刺したと罪を全面的に認めて捕まってしまい、結婚詐欺が明るみになる。
やはりこういうことって、いつかはバレてしまうのに。それに、このシーンの前に、妻が夫に嫉妬をして相手の女か、夫を殺そうと包丁を持って階段を下りる時、雨で滑って包丁を落としてしまう。その階段の下にあった包丁が、夫婦のこれまでの関係を終わらせるけじめとなったのかもしれない。
上手い具合に結婚詐欺を繰り返してきた夫婦だが、二人の関係はすでに壊れていたような、冷たい溝が出来ていた気がする。夫は刑務所の厨房で働き、カモメの鳴き声が聞こえ、妻は地方の漁港で働きながらカモメを見る。何かこの二人、また寄りを戻して夫婦関係を繋げることが出来そうな予感で終わるのだが。
監督の以前の作品で出演していた「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶が、背中に刺青してヤクザまがいの私立探偵役で、「ゆれる」の香川照之は、最初に不倫していた上司の役で死んでしまい、その弟の役と2役で出演。
騙される女に木村多江、田中麗奈、鈴木砂羽など豪華な脇役陣が良かった。その中でも、ソープ嬢の元彼の男で、いきなりドアを蹴り破って部屋へ入って来る暴力男。もしかして伊勢谷くんでは、とやっぱり的中。彼の大ファンだけにちょっと勿体ない役だと、出なくてもよかったのに、やはり監督の作品に出たかったのよね。
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ヤング≒アダルト ★★★

2012年03月01日 | や行の映画
「JUNO/ジュノ」の監督・脚本コンビ、ジェイソン・ライトマンとディアブロ・コーディが再びタッグを組んだヒューマンドラマ。仕事も恋愛もうまくいかない30代女性が、妻子のいる元恋人と復縁しようとする様を描く。出演は「ザ・ロード」のシャーリーズ・セロン、「インシディアス」のパトリック・ウィルソン、「レミーのおいしいレストラン」のパットン・オズワルト。

あらすじ:37歳になるメイビス(シャーリーズ・セロン)は自称作家だが、現在はゴーストライターとして“ヤングアダルト”(少女向け小説)を執筆中。バツイチで恋人ナシ、心の友はアルコールと愛犬という彼女はある日、一通のメールを受け取り、故郷へ帰ることに。昔の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)と再会するメイビス。いつまでも大人になれない、そんな規格外の彼女が大騒動を巻き起こした果てに見つける“真実”とは……。(作品資料より)

<感想>負け犬が故郷で大暴れって、これはホラー?・・・それとも喜劇なの。
R30の独身女性たちを恐怖のるつぼに陥れる、シャーリズ・セロン主演の超辛口コメディ。主人公のメイビスを演じるシャーリーズ・セロン、この女優さんは化粧映えがするし、スタイルがいいのでどんな服を着ても似合う。いつもこんな性格のキツイ女を演じさせたら上手い。本作でも彼女はいかにもアバズレ女ふうにメイクし、服装も胸を大きく開けた服にミニスカート。設定は37歳というが、本人は肌が皺が多くて老けて見える。

自分が一番輝いていた高校時代のパワーを取り戻そうと、久しぶりに故郷に帰省。家庭を築いて幸せそのものの元カレを呼び出して、ヨリを戻すべく猛アタックするのだが、・・・。
だけど、高校時代はモテモテの女王様だったことが心の支えなので、今でも自分はずっとイケてると思い込んでいるのはメイビスだけ。田舎で疲れた主婦になってる同級生たちより、都会で磨がかれた自分の方がずっとイケているはずよ!
同級生は高慢ちきな負け犬が帰ってきたと、冷笑しているのに。
それでもメイビスは、自分に自信満々の女で負けを知らないイケスカない女。実際こういう女性もいることはいるのだが、自己中で嫌われるタイプ。それに回りが何と言おうと気にしないし、相手が困っていても自分のことしか考えていないからへいチャらだ。困ったちゃんのオバサン。

しかし、神経太いんだね。元彼のバディは今でも自分を忘れられないと思い込んでいるのだから。高校時代の彼がプレゼントしてくれた音楽テープを今でも毎日繰り返し聴いている彼女。それが心の栄養剤なのだからして、彼も私のこと忘れられないに決まっているわって、勝手に思い込んでいる。
ネイルを完璧にして厚化粧すれば、洗練された女性に見えると思っている。バディの家で開かれる赤ちゃんの命名パーティには、キメキメのドレスにメイクもバッチシで登場。みんながびっくりして私を見ているわ、やっぱり私は女王様!・・・ふだんはキティちゃんのTシャツを着古しているメイビスが、元彼を振り返らせようと懸命にメイクアップにドレスアップする姿が苦笑を誘う。涙ぐましい努力だよね。
昔の恋人バディ、パトリック・ウィルソンを呼び出して、まだ自分のことを好きだと思い込んでいるずうずうしさ。これは頂けないし、彼の家へ行っても、奥さんに暴言を吐くし、自分の都合のいいように考えてきっとまた元のように恋人関係に戻れると勘違いしている。

そこへ、同級生のデブでさえないマットが現れて、元彼の幸せな家庭を壊すなと忠告されたけど、家庭に縛りつけられているバディを助けなくちゃと、メイビスは彼の家へ押し掛ける。そこには、可愛い赤ちゃんと優しいパパの姿の彼がいた。
でも、ダメだと諦めてマットに慰めてもらおうとベッドインするところは、シャーリーズのヌーブラを貼り付けた胸にゲンナリした。そこまでヤルのか、女優根性見せたりの彼女の奮闘記ですね。
大人になりきれない負け犬女が、元彼を略奪しようとあがく様をユーモラスに、かつ辛辣に描いている。一歩間違えば、サイコとなりがちな暴走ヒロインが絶妙なさじ加減で演じているシャーリーズ・セロンがいい。
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