パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

アド・アストラ★★★・5

2019年09月29日 | アクション映画ーア行

ブラッド・ピットが人類の未来を託された宇宙飛行士を演じる近未来スペース・アドベンチャー・ドラマ。太陽系の彼方で消息を絶った父の行方と、彼をめぐる人類の存亡に関わる大いなる謎を追って自ら宇宙へと旅立つ主人公の姿を、静謐かつ圧倒的スケールの映像美で描き出す。共演はトミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド。監督は「エヴァの告白」「ロスト・シティZ 失われた黄金都市」のジェームズ・グレイ。

<感想>必ず、見つけ出す。太陽系の彼方に消えた父の謎――。ブラッド・ピットが製作・主演し、トミー・リー・ジョーンズと初共演を果たしたスペース・アクション大作「アド・アストラ」。ラテン語で「星の彼方へ」を意味するスペースアクション。未だ人智の及ばない謎と神秘に彩られた宇宙空間を舞台に、ブラッド・ピット扮するエリート宇宙飛行士の壮大なミッションを映し出す。

あらすじ:そう遠くない未来、地球外知的生命体の探策に人生のすべてを捧げた父クリフォードに憧れ、宇宙飛行士となったロイが、上官からの驚愕の事実を告げられる。約30年前に宇宙に発ったまま消息を絶ち、死亡したと思われていたクリフォードが、今も生きているというのだ。しかも彼は、太陽系全体に計り知れない脅威をもたらす極秘実験にかかわっていたという。

かくしてロイは、その危険な実験の目的を探るために、そして父が失踪した本当の理由を知るために、宇宙へと旅立っていく。プロデューサーを兼任したブラッド・ピットとハリウッドの一流スタッフが志したのは、荒唐無稽なSFではなく、緻密な科学的考証をベースにしたリアルなスペース超大作である。

監督は「エヴァの告白」、「リトル・オデッサ」など重厚なドラマで絶賛を博してきたジェームズ・グレイが務める。「未だかつて観たことのない史上最高のリアリティのあるスペース・アドベンチャーを作ることが私のミッションだ」と語るグレイ監督が、観る者のロマンや知的好奇心を掻き立てる映像世界を構築し、予想不可能かつ臨場感あふれるスペクタルシーンで興奮を呼び起こす。

またアカデミー賞に輝く名優トミー・リー・ジョーンズが父親のクリフォードを演じており、ピットの初共演が実現した。地球外生命体の研究の情熱を燃やした宇宙科学者のクリフォードは、何故に禁断の極秘実験に携わったのか。そんな父を英雄として尊敬するロイは、苦難のミッションの果てに、どのような真実を目の当たりにするのか。

宇宙空間に突き抜けるほど巨大なアンテナ塔が建つさまや、地球外の天体上で繰り広げられるカーチェイスは、まるで空想の世界だが、現代のリアルな宇宙開発事情をベースに構築されている。グレイ監督が追求した、かつてないほどのリアリティに満ちた映像世界が観る者を圧倒させます。

地球上では、各地で火災や飛行機墜落事故が相次ぐ異常事態が発生していた。その原因が、“リマ計画”で、父が使用していた反物質生成装置にある可能性が浮上。宇宙の彼方から飛んできた”サージ”の影響であると言うのだ。ロイは真相を確かめるべく、月と火星を経由して、父が姿を消したとされる、地球から遠く離れた「海王星」を目指す。

その距離、地球1周約4万kmを1万周するほどの途方もない遠さなのだ!。壮大すぎる海王星への旅。ロイが捜索に向かう海王星は、太陽系の最果てにある惑星。その距離=約43億km。

伝説的な宇宙科学者として知られた父クリフォードは約30年前に宇宙に発ち、その16年後、消息不明になる。彼が司令官として参加した“リマ計画」”とは、地球外の知的生命の探索を目的としていたが、その成果はどうだったのか?そして父の身にいったい何が起こったのだろうか?

途方もない宇宙の彼方へと、父親を探しに旅をする息子のロイ役のブラッド・ピット。中々の宇宙飛行士の任務をこなして、ドナルド・サザーランドが一緒に行くと月までは同行したが、身体の変調を訴えて脱落。月では、世界各国からの基地があり、火星へむかうロケット発射台へ行く途中で、略奪者に襲われる。月には国境が無いため、紛争が絶えず、ロイたちは兵士の護衛に守られながら、無事発射台まで到着する。

その後、火星からのロケットには、搭乗させてもらえずイライラし、ロイは一人で発射台のロケットまで無謀にも近づき、火星までゆくロケットに乗ってしまう。ロケットの中にいる搭乗員たちと喧嘩になり、それでも自分は「海王星」まで父を探しに行くと言い切るのだ。火星から父に向けてメッセージを送るロイだったが、反応は無い。ロイは地球帰還の命令を受けるが、基地の責任者であるヘレンからリマ計画、そしてクリフォードのことを知るのだった…。

そこへ事故が勃発し、救難信号が出ている動物実験が目的の宇宙船の探索へ、ロイとタナー船長が向かうが…宇宙船の中で狂暴化した動物(ゴリラ)に襲われたタナー船長が死亡する。

そして、海王星に向かう宇宙船には核爆弾が積まれていると聞かされたロイは地球帰還の命令を受けていたが、ヘレンに頼み込み、海王星へと向かう宇宙船に乗り込むことに成功。ヘレンにはリヴ・タイラーが扮しており、あまり出番がない。乗り込む際に、クルーに殺されそうになり、アクシデントによってロイのみとなってしまう。

その後は、ロイは宇宙船を操縦し、海王星へ。小さな探査機で海王星の近くに浮上している父親の宇宙ロケット“リマ“と接近する。そして父を見つけて、地球へ帰ろうと言うも、「自分は地球外の知的生命の探索に来たので、ここで死ぬと」と言う。決心は固い父に、”リマ計画“を破壊しなけれが、地球が危険にさらされるということを話し、父の乗っている宇宙船を核爆弾で爆破してしまう。

ロイもそこから自分ひとりで地球へと帰還する最後は、まさか映画だから無事に地球へ帰還出来たのだと思わずにはいられない。ブラット・ピットの感情がこもった演技の中でも、全体的にくたびれたような、顔に表出するやや深いしわが哀愁を感じさせる。それがなんとも味わい深く感じた。

本作での、人類の未来が懸かった壮大なスケールのストーリー展開の中に、父子の情愛を追求した人間ドラマが描かれ、ひと時も目が離せないでしょう。「ゼロ・グラビティ」、「インターステラー」、「オデッセイ」と、世界的な大ヒットを飛ばした近年の宇宙探究映画の系譜に、新たに名を連ねる本作は、想像を絶するビジュアルによって観る者に極限のスリルとエモーションを体感させる。果たして地球から43億km離れた“星の彼方”には、いかなる未知の衝撃と感動が待ち受けているのか、まさしく究極の映画体験がここにあります。

2019年劇場鑑賞作品・・・140  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30807142

 

 


北の果ての小さな村で★★★

2019年09月26日 | アクション映画ーカ行

グリーンランドに魅せられたフランス人監督サミュエル・コラルデが、人口わずか80人の小さな村を舞台に、デンマークから赴任してきた新米教師と村人たちの交流を、すべて本人たちを起用して撮り上げたハートフル・ドラマ。

あらすじ:グリーンランド東部にある人口80人の村、チニツキラーク。ある日、小学校にデンマークの新人教師アンダースが赴任してくる。しかし言葉や習慣の違いでまともに授業を進められず、村人たちともまったく打ち解けられないまま孤独感を募らせていく。そんな中、連絡もなしに一週間も欠席している児童アーサーを心配し、家を訪ねたアンダース。アーサーの祖母に話を聞くと、祖父と一緒に犬ぞりで狩りに出たとのこと。学校の大切さを力説してもまったく理解してもらえず、すっかり途方に暮れるアンダースだったが…。

<感想>人は分かり合いたいと願った時、もう分かり合えているのかもしれないね。まるでお伽噺のような真っ白に積もった雪原に建つ家々。赤や青の壁は白い窓枠のアクセントで目にも鮮やかで美しい。時折子供たちの弾けるような笑顔と屈強な犬ゾリが交錯して白銀の世界に微妙な変化をもたらしていた。

この世のものとは思えないほどに美しい島グリーンランド。そこの小さな村にデンマークから語学教師として、青年教師が赴任するのだ。

だが、彼は言葉や習慣の違いで打ち解けることができず、やがて主人公の少年の祖父母や村人たちから生活の知恵や人生哲学を学んでいくことになるのだった。そこで描かれているのは、子供たちとの交流だけでなく、町へ働きに出ている両親の代わりに孫の世話をする祖父母や、アザラシの解体作業、そして高齢者の葬式などの日常生活に焦点が絞られてゆく。

53年まではデンマークの植民地であり、現在は自治政府が置かれていることを知れば、このドキュフィクションの見え方が違って来る。「現地の言葉を覚える必要はない」と言う引き継ぎをする前任者の言葉。

主人公のナイーブすぎるまでの現地の人々の文化・伝統・暮らしへの溶け込み方に、同化政策に対する疑問がチラリと見える。現地と外来の人間の両者の眼差しが全編に注がれていた。

それでも中身はシンプルであって、一言で言えばこの青年教師がいかにしてグリーンランドの生活に溶け込み、そこで暮らすに至ったのかを監督のフランス人サミュエル・コラルデが、どう記録していったのかを見つめるものだ。もちろん撮影、脚本もサミュエルがやっている。

これは記録のようなドキュメンタリーのようで、どこまで実写で、どこからがフィクションなのか、その境目が漠然としないのが大きな特徴でもある。

最後にはそんな境目なんてどうでもよくなるのが、サミュエル監督の意図したところだろう。グリーンランドの村人たちの顔が、とにかくいい。顔が彼らの生きてきた土地の力を雄弁に物語っているからだ。

中でもまだ年齢の浅いイヌイットの少年アサーの顔は、その血を確かに受け継ぎながら、何物にもなれる未来を宿しているのだ。時には動物のように、無邪気なアサーと赴任教師アンダースとの交流には、神聖ささえ感じるのだ。

それにしても犬ゾリでの小旅行の楽しそうなことといったらない。どこまでも続く白銀、雪原を走る犬ゾリ。雪に囲まれ流氷の浮かぶ氷河を進むボート。

圧倒的なロケーションに言葉はいらない。雪の中に不意に現れる白熊の親子の姿は、息を呑むほどに美しく素晴らしい。とにかく、グリーンランドの魅力がいっぱいの作品ですね。

2019年劇場鑑賞作品・・・139  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30802271

 


人間失格 太宰治と3人の女たち★★★・5

2019年09月23日 | アクション映画ーナ行

妻子がいるにもかかわらず同時に2人も愛人をつくる破天荒な人生を送りながらも、すべてを作品に昇華させた天才・太宰治の晩年を「さくらん」「ヘルタースケルター」の蜷川実花監督が、太宰と彼を愛する3人の女性との関係を軸に極彩色の映像美で映画化。主演は「信長協奏曲」「銀魂」の小栗旬。3人の女性に宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ。

あらすじ:複数の女性と浮き名を流し、自殺未遂を繰り返す天才作家の太宰治。その破天荒で自堕落な私生活は文壇から疎まれる一方、ベストセラーを連発してスター作家となる。やがて身重の妻・美知子と2人の子どもがいながら、同時に2人の愛人、作家志望の静子と未亡人の富栄ともただれた関係を続けていく。それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、自分にしか書けない小説に取りかかる太宰だったが…。

<感想>死ぬほどの恋。ヤバすぎる実話。太宰治は、華奢な体の繊細な文学青年風のイメージでしたので、小栗旬はキャスティングとしてぴったりという印象でした。太宰治を愛している、女性たちの目線で彼を描いているのですから、太宰治は、美形でかっこよくないと説得力がないわけです。監督が蜷川実花さんなのですから、ヴィジュアルにはこだわるでしょう。監督の求める太宰像にピタリとはまったのが小栗旬さんだったのですね。

それに父親も大好きだった俳優の藤原竜也をはじめとして、蜷川実花さんの大好きな美形の俳優である成田凌 、瀬戸康史、千葉雄大などなど、彼女の目に叶った俳優さんたち。

それに、女性陣もやはり監督の蜷川実花さんの目に叶った美しく演技力のある女優さん方、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ等を集めているのも特徴ですね。太宰治の作品はどうしても暗くて難しいと考えがちですが、この映画の太宰治像は、明るさと豪快さがあった人なのではと思いました。

小説のネタになる女性との浮気は、小説家はみなさんが経験していることでもありますので。太宰治は金持ちの坊ちゃんだったようで、フランス文学を学んでいるせいもあり、ロマンチックな女性とのロマンスも小説の中にふんだんに描かれており、女性を口説く言葉には、優しいく女性をその気にさせる情熱もあったようですね。

しかし、家に変えれば糟糠の妻・美知子が家を切り盛りして、子供を育て、夫を立てて女房としては最高の奥様だったのではないでしょうか。女と遊び泊まって朝帰りをしても、ちゃんと家には帰って来るし、子供も可愛がるし、お金のことも家計が苦しければ自分が金の工面を何とかしなければと奔走する。そんな妻に甘える太宰治の姿が、やはりお坊ちゃん育ちだからではないかと。

遊び女の静子の日記を題材にした「斜陽」は、ベストセラーとなり社会現象を巻き起こすが、文壇からは内容を批判され、太宰は苦悩し自分にはまともな小説が書けないのかと悩み、“本当の傑作”を書きたいと苦悩する毎日。

そんなある日、未帰還の夫を待つ身の美容師・富栄と知り合った太宰治は、彼女との真っ直ぐな愛にも溺れていく。身体は結核に蝕まれ、酒と女に溺れる自堕落な生活を続ける太宰治を、妻の美知子は忍耐強く支え、やがて彼女の言葉が太宰を「人間失格」執筆へと駆り立てていく。

代表作「斜陽」のきっかけになったのは、1番目の女・静子は貴族の育ちで、彼女とも真剣に愛し、子供を産み、その子供の認知とともに、小説「斜陽」が、自分の日記を基にして書いたと思い、最後には自分の静子という名前を語尾に書くように説得する性格のきつい女である静子。

2番目の女性は富栄という女で、妻や静子にはない気持ちの優しい情熱的な女。一緒に死んで欲しいと言われて、太宰治は自分が結核でもう長くはないことを自覚していたのだろう。それに、文壇からも冷やかな目で見られ、あの後に有名な三島由紀夫に、強い言葉で自分の生き方を非難される。

最後にクレジットされるとおり、これは太宰治の実人生に想いを得たフィクションなのだが、最後の小説「人間失格」を最後の到達点に定めて、自分が今まで生きてきた人生を見つめて、もう命が長くはないと自覚して、最後の女である富栄と一緒に心中しようと決断したのだろう。

さすがにいつもながらの、蜷川実花監督の鮮やかな花、華、豪華絢爛に煌びやかに色彩豊かで彩られる映像に魅せられました。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・138  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30798373


風をつかまえた少年★★★・5

2019年09月19日 | アクション映画ーカ行

アフリカの貧しい国の少年が、独学で発電の仕組みを学び、風車で電気をおこして干ばつから村を救った奇跡の実話を綴った世界的ベストセラー・ノンフィクションを、「それでも夜は明ける」のキウェテル・イジョフォーが自ら長編初監督を務めて映画化した感動ドラマ。主演はマクスウェル・シンバ、その両親役でキウェテル・イジョフォーとアイサ・マイガ。

あらすじ:2001年、アフリカの最貧国のひとつであるマラウイを大干ばつが襲う。中学校に通う14歳のウィリアムは、飢饉のせいで両親が学費を払えず、退学を余儀なくされる。それでも何とか学校の図書館は利用できることになり、ウィリアムはそこで『エネルギーの利用』という本と出会う。風車で発電できれば地下水をくみ上げ、畑に水を送ることができると考えたウィリアムは、懸命に本を読み、発電する風車をつくるための研究に没頭していくのだったが…。

<感想>14歳の僕がどうやって風力発電で、未来を手に入れたのか。舞台はアフリカ南部のなかでもで貧しい国マラウイ。農村部における不作。飢餓、政治の問題や、主人公の少年の家庭における貧困や学問を掘り下げる物語である。

冒頭から登場するボロ布をまとった精霊信仰の神々が気になるし、族長を囲んだ大人たちの集会、必ず混乱に終わる政治集会など、TVや映画で観たアフリカと同じで頷いてしまう。

発明の陰に感動的なエピソードはつきものだが、学者でも研究者でもない、この映画の主人公の村を救った奇跡の実話は、少年の切実な願いがすべてであります。雨季と大干ばつが農作物を襲い、収入が途絶える。日々の食糧にも事欠くとなれば、子供たちは学校に行くことは出来なくなるのだ。

21世紀の世の中で餓死という人間がいることを知らねばならない。干し乾びた地面に、無駄と知りつつそれでも黙々と鍬を入れ続けるお父さん。その原因が、政府の腐敗、企業の森林伐採、はるか遠いアメリカで起きた9.11事件とは、何故に見も知らぬ大国同士の災いで、彼らが苦しまなければならないのか?

その強烈なメッセージと、そこで立ち上がった少年の勇気を。そういった物語に胸を締め付けられながらも、一方ではとても心躍らされたのは、この映画を描いているアフリカの大地の美しさだ。

ここまでは予想の範囲内のこと。素晴らしいのはここから先なのだ。図書館の本から独力で風力発電機で、畑に水を引くことを学び実現したのだから。現地のマラウイでの撮影が効果絶大に光っていた。感動と共に、教育の大切さを胸に刻まなければならない。

観ていて、風車と映画は相性がいい。とにかく絵になるのだ。しかも社会的にフックのある実話ベースであり、ドキュメンタリーのラインナップも充実しているネットフリックス作品ならではの、フラグは何本も立っている。

廃材を組み立てた装置は、DIY感あふれる見てくれだが、學校にも通えない中で、独学で風力発電を完成させたウィリアム少年は、いわば天才少年であります。ただし、親子ドラマに焦点が当たっているせいか、そのすごさが伝わりづらいのだ。

しかしながら、ゼロから始めた風車作りの過程を、もう少しじっくりと観たかったのも事実でありますが、ラスト、父親を超えてゆく息子の姿を眩しそうに見つめるキウェテル・イジョフォーの表情が、優しさと誇らしさに満ちていて、彼がこの映画で何を描きたかったのかが、分かったような気がしました。

それにしても、この作品を通して、どんな状況の中でも自力で解決策を見つける大切さを、改めて考えさせられました。

2019年劇場鑑賞作品・・・137  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30792083

 


アス★★★

2019年09月18日 | アクション映画ーア行

監督デビュー作となる前作「ゲット・アウト」でセンセーションを巻き起こしたジョーダン・ピール監督が贈る衝撃のサスペンス・スリラー。ごく普通の幸せな4人家族の前に、まったく同じ顔をした不気味な4人組が現われ、自分たちの命を狙って襲いかかってくる不条理な恐怖とその驚愕の顛末をスリリングに描く。主演は「それでも夜は明ける」「ブラックパンサー」のルピタ・ニョンゴ、共演にウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー。

あらすじ:幼い頃にふと迷い込んだ遊園地のミラーハウスで、自分とそっくりな少女に遭遇した、という恐怖体験がトラウマとして残るアデレード。今は夫と2人の子どもたちと幸せな家庭を築いていた。夏休みに家族と共に幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れた彼女は、ある出来事をきっかけにかつての恐怖が甦り、説明のつかない不安に襲われる。その夜、家の前に自分たちとそっくりな4人家族が現われたかと思うと、突如アデレードたちに襲いかかってくるのだったが…。

<感想>“わたしたち”がやってくる…! 新感覚の“骨まで凍りつく映画”何かがおかしい…? 最大の恐怖と驚がくの結末が、極限へと導く自分たちにそっくりな“わたしたち”とは、果たして何者なのか? どこからやってきたのか? 一体、何が目的なのか? 恐怖のなか張り巡らされた伏線は、驚がくの結末へと収束し、観客を興奮のうずへと導いていく。

午後11時11分。アデレード(ニョンゴ)ら一家4人が過ごす別荘に、自分たちと瓜二つの“わたしたち”が現れた。横一列に手をつなぎ、肌を粟立たせるような“うめき声”を発しながら近づいてくる。一家は、不可解な集団との対峙を余儀なくされる……。

奴らは、まるで儀式的な意味があるかのように、大事そうにハサミを抱えている。その服装は真っ赤なつなぎで、アデレードに似た女は意味不明の言葉をブツブツと繰り返している。根源的な恐怖は一家の思考を鈍らせ、やがて取り返しのつかない事態へ陥っていく。

物語は、ふたつの時代を行き来しながら展開してゆく。アデレードには、幼少期のトラウマがあった。1986年に、両親と移動遊園地を訪れた夜、ミラー・ハウスに迷い込んでしまったのだ。無数の鏡に取り囲まれた少女は、あまりの心細さに後退りする。ふと、背後に気配を感じたアデレードが、振り返って見たものとは、自分そっくりの「自分」と出会う。

映画の冒頭、“ハンズ・アクロス・アメリカ”のCMが映し出される。1986年、貧困層の救済を訴えるべく実施され、米西海岸から東海岸まで、約600万人が手と手をつないだ慈善イベントだ。“わたしたち”も、手をつないで現れた。この符合は何を意味しているのか……。

ピール監督は、前作の完成前からドッペルゲンガーに関する次回作の構想を練っていたという。人間にとって最大の敵は自分という着想から、アメリカとその国民性にも及ぶテーマのスリラーにしたかったとか。ロケ地はアメリカ西海岸のサンタクルーズで、ピールが愛するアルフレッド・ヒッチコック監督の映画「めまい」などの雰囲気を彷彿とさせ、観客にホラーの中でバカンス気分味わってもらうためだとも言うのだった。

本作でアデレードと彼女のドッペルゲンガーともいえるレッドの二役を演じ分けているルピタ・ニョンゴ。彼女が幼い時に、移動遊園地のミラー・ハウスに迷い込み、そこで自分とそっくりさんに遭遇する。ここがヒントだったのですね。もしかして、ここでもうすり替わっていたりしてね。

だから、真夜中に自分たちの家に、赤い服をきた自分たちとそっくりな人間が現れて、“わたしたち”が家に侵入したシーンにはどっきりとした。アデレードとそっくりのレッドが両手を広げると、それが何かの合図だったのか、白いマスクを被った子どもが床を這いつくばるように現れる。その白いマスクを取ると、顔の口の周りが火傷の後のように崩れていた。だからジェイソンはそんな傷跡はないので、ちょっと不気味だ。

 

その子供は息子のジェイソンにそっくりで、ジェイソンもいつも不気味なお面を付けていたからだ。子どもが暖炉に火をつけ、“わたしたち”が横に並んだ姿を見たジェイソンは、思わず「イッツアス(僕たちだ)」とつぶやくのだった。得体のしれない存在と初めて対峙する、緊迫感あふれるシーンになっている。

だからアデレードの家族たちは、自分とそっくりの赤い服を着た人間を殺さなければならなかったのだ。自分が自分を襲うという、先の読めないスリラーになっていた。壮絶な戦いの末にアデレードは、暖炉の火かき棒を手に自分そっくりな相手と闘い、生き残るのだが外へ出て見れば、赤い服を着た人たちが手を繋ぎ延々と長く続いていた。

ドッペルゲンガーの動きはある虫を参考にしたという。「レッドの動きを表現するうえで、ジョーダン(・ピール)が使った言葉の一つが“ゴキブリ”だった。レッドをゴキブリの生命力と関連付けるのはすごく有益な方法だったという。ゴキブリはあちこち動き回るし、素早いから退治するのが難しい。そうかと思えば、気付かれずにじっとしていることもできる。それに、驚異的な生命力と回復力を持っているの」と明かしている。

それと、劇中にはハサミが印象的なアイテムとして登場する。その理由について、ピール監督は「ハサミはこれまでにも古典ホラーで使用されているから、本作の中心的なイメージとして起用することで敬意を表したかった。ハサミには言葉のうれでも物質的にも二面性がある。2つの部分から成り立っているし、日用品と恐ろしい凶器という境界線上に存在する物でもあるからね」とアイテムのこだわりを語っている。

ドッペルゲンガーとは常に恐怖の源である。人間が感じている死の必然性と繋がっているからだと思う。あらゆる神話を通して、ドッペルゲンガーは悪兆や、自身の死の暗示として描かれているからだ。

果たして笑っていいものか、それとも怖がるべきなのか、その悩ましさの先にあるものは、現代のアメリカ社会の姿でもあるのかもしれませんね。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・136  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

  トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30790806


新聞記者★★★・5

2019年09月16日 | アクション映画ーサ行

“権力の監視役”としてのマスメディアの力が急速に弱まっている現代の日本で孤軍奮闘する現役新聞記者による同名ベストセラーを原案に、官邸とメディアの深い闇をリアルかつ赤裸々な筆致で描き出した衝撃の社会派ポリティカル・サスペンス。主演は「サニー 永遠の仲間たち」「怪しい彼女」のシム・ウンギョンと「不能犯」「孤狼の血」の松坂桃李。共演に本田翼、北村有起哉、田中哲司。監督は「デイアンドナイト」「青の帰り道」の藤井道人。

あらすじ:日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育った東都新聞社会部の若手記者・吉岡エリカは、記者会見でただ一人鋭い質問を繰り返し、官邸への遠慮が蔓延する記者クラブの中で厄介者扱いされるばかりか、社内でも異端視されていた。そんなある日、社会部に大学新設計画に関する極秘情報が記された匿名FAXが届き、吉岡は上司の陣野から調査を任される。やがて内閣府の神崎という人物が浮上してくるが、その矢先、当の神崎が自殺してしまう。神崎の死に疑問を抱いた吉岡は、やがて同じようにかつての上司であった神崎の死に疑問を持つ内閣情報調査室(内調)の若手エリート、杉原拓海と巡り会うのだったが…。

<感想>先に「記憶にございません!」をレビューしてしまった。政財界のことを、風刺劇のように面白く描いている三谷監督に、おおいに感心してしまった。政治を娯楽作品みたいに、喜劇仕立てに描くのはいいことです。「新聞記者」は、だいぶ前に鑑賞した映画だったが、どうしても書けずに日にちが過ぎ去っていく。難しい作品だっただけに、うやむやにしておくわけにはいかなかったのだ。

新聞記者の女性吉岡エリカと官僚の杉原拓海が、政府役人の自殺をきっかけに政権の恐るべき計画を暴くというもので、古めかしい社会派映画を一歩も出ないのだ。映画は、首相ご執心の「医療系大学の新設」の不正を内部告発するFAXが送られてくるところから始まる。続いて「文科相子息不正入学問題」で、引責辞任をした事の真相を知る元局長と女性議員との“不適切な関係”が暴露されたり、政権よりのジャーナリストのレイプ疑惑がもみ消されたりと、内部告発に走った役人が追い詰められて自殺したり。現実に似た事象が緊迫したタッチで展開されていくのだ。

描かれる事柄はフィクションでも、内調こと「内閣情報調査室の機能が過大に描かれていても、異常な緊迫感や切迫した空気はリアルに伝わって来たことは間違いない。

記者の吉岡エリカを演じるシム・ウンギョンも、内閣情報調査室員の松坂桃李も悪くはないが、まぁ普通程度のサスペンスはある。ですが、細部がそれを壊してゆく。

例えば内閣情報調査室員の広いオフィスがなぜか暗くて、あれでは「悪の組織」になってしまっている。劇場用パンフレットには「大胆でスタイリッシュな空間設計」とあったが、それがダメで普通に描いていればいいのに回避しているのだ。

松坂桃李が自殺をした先輩の隠蔽していた文書を入手して、真相が明らかになるという。安易な筋運びとあいまって、虚構の力が軽く見積もられているのである。

この映画の原案となった小説「新聞記者」は読んでいませんが、東京新聞記者望月衣塑子によるノンフィクション。「モリ・カケ」と呼ばれる騒動が明るみに出て、加計学園問題のことではないかと。獣医学部認可に関して安倍晋三首相の意向が強く働いたことを示す文部科学省の内部文書を描いていることだ。

だが、これはあくまで“フィクション”である。だから観る者は、描かれている登場人物のモデルを必然的に頭に思い浮かべてしまうのだ。ただし細かいところはフィクションであり、映画としての演出が加えられている。その意味で実在の人物を、TVモニターとはいえ登場させるのが得策だったかどうかは疑問である。

中でも松坂桃李の上司を演じた田中哲司が、なかなかの存在感でした。著名なジャーナリストを父に持ち、母は韓国人、アメリカで生まれ育ったという女性記者を演じたシム・ウンギョンは、難しい役に果敢に挑み、芯の強さを感じさせていて熱演でした。

観ていて期待外れのような感じがしてならない。松坂桃李は、主演のシム・ウンギョンに比べてキャラが弱すぎるからだ。逆に言えば、それだけウンギョンの演技が素晴らしかった。何と言うか、あのラストの走りっぷりなんかは、絵になり過ぎている。顔は可愛いのに、必死になって追い求めて、燃えている。本当だったら、彼女の役だって、日本人女優が演じるべきなのに誰もいなかったのだろう。

それに惜しかったのが、「新大学で生化学兵器研究」という一面トップのスクープ記事がボツになったこと。そう現在この国は、行政機構もマスコミも、深く病んでいるのだから。その原因が政治の現状にあるのは言うまでもないこと。この映画の中では、首相も官房長官も一人の政治家も登場させずに、その影響力の大きさを不気味に暗示させている。今の日本社会を覆う、闇の怖さを思い知らされた。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・135  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30788298


記憶にございません!★★★★

2019年09月15日 | アクション映画ーカ行

三谷幸喜の長編映画監督8作目で、記憶をなくした総理大臣が主人公の政界コメディ。史上最低の支持率を叩き出した総理大臣を中井貴一が演じるほか、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市ら豪華キャストが顔をそろえる。

あらすじ:国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれた総理大臣の黒田啓介は、演説中に一般市民の投げた石が頭にあたり、一切の記憶をなくしてしまう。各大臣の顔や名前はもちろん、国会議事堂の本会議室の場所、自分の息子の名前すらもわからなくなってしまった啓介は、金と権力に目がくらんだ悪徳政治家から善良な普通のおじさんに変貌してしまった。国政の混乱を避けるため、啓介が記憶を失ったことは国民には隠され、啓介は秘書官たちのサポートにより、なんとか日々の公務をこなしていった。結果的にあらゆるしがらみから解放されて、真摯に政治と向き合うこととなった啓介は、本気でこの国を変えたいと思いはじめようになり……。

<感想>三谷幸喜監督、待望の映画第8作目は、支持率2,3%の国民から総スカンの総理大臣が主人公の政治コメディ、もちろんフィクションである。なんと支持率49%を誇る安倍晋三首相もご鑑賞とのこと。感想を問われると、霞が関界隈では、流行語大賞殿堂入りのセリフ「記憶にございません!」と仰って笑いつつ、少しムッとされたという本作。もの凄く面白くて傑作間違いございませんから、どうかこの映画を一度はご覧になっても損ではありません。

まったくもって政治批判はなく、コメディ一色の喜劇になっており、国会中継や党首討論、首相へのインタビューなど、とにかく中井貴一首相の演技は主演男優賞ものですね。

この映画は、パロディでも、風刺でも、特定の政治家や党に対する批判でもなく、もっと広い意味での政治、政治家を描いていた。確かに今作で三谷幸喜監督が描いたのは「政界」という社会ではなく、政治家という人間であります。世にも愚劣な政治を行ってきた最低の権力者が、記憶をなくしたことをきっかけに、生まれ変わることができるのか。つまりは人間として再生できるかどうかが鍵であり、現実の政治や現代社会を揶揄する意図はないというのなら、まぁそうなのだろう。

俳優については、舞台好きとしては、総理のお友達としての梶原善、ダサすぎるクールビズ大臣の小林隆を始めとし、近藤芳正、阿南健治といった東京サンシャインボーイズ時代からの三谷組が映るだけでも嬉しくなる。

個人的にツボだったのが、ミュージカルを中心に活躍する宮澤エマで、本作では木村佳乃演じる米大統領の通訳で登場する。感情を押し殺した能面フェイスと抑揚のない声で体現する完璧な通訳ぶりには、大いに笑わせてもらった。

官房長官鶴丸には、草刈正雄が扮しており、黒田首相の記憶喪失を始めは信じていたが、なんか様子がおかしい黒田に、これを機会に陥れようと機会を狙っているのだ。

主人公は不測な事態へと直面して、その矢面に立つことになり、次々と起こるトラブルにドタバタと追い詰められてゆく。それに付随して綴られるのが、様々な人間模様、そして、決断の物語。佐藤浩市が、フリージャーナリストを演じていて、首相の家族の不祥事を暴き、金と交換に脅して来る。

佐藤浩市さんが、米大統領とのゴルフコンペでは、女装をしてキャディで出て来るのが笑えました。

物語は、史上最悪のダメ総理と呼ばれている黒田啓介が、病院のベッドで一人目覚めるところから始まる。自分が誰だかわからない。演説中に一般市民からの批判の証、投石が頭に当たり、記憶を失ってしまっているのだ。夜中に起き出し病院を抜け出して、無銭飲食をしたり、道路で右往左往して自分が何処へ帰るのか分からなくなる。その時の交番の巡査に、田中圭が扮していて、後に黒田のSPに雇ってもらうことになる。

前半ではこの国民の嫌われ者を中心に、それまでの経緯と、彼を取り巻く多彩な登場人物たちが紹介されてゆく。驚いたのが、吉田羊が野党の女党首であり、黒田総理とホテルで密会して、愛人関係にあると言う設定には笑ってしまった。

「果たして記憶喪失以前はどうだったのか」がフックとなり、ズレた会話、徐々に明らかになるチグハグな関係性が笑いに結びついて、映画を引っ張っていく。

総理のトップシークレットを取り扱う3人の直近の秘書官は、現実派、理想派、軽薄派に分類でき、ディーン・フジオカ、小池栄子、迫田孝也がそれぞれの役の個性をうまくデフォルメして演じていた。小池栄子が首相夫人のTV出演の代役で、踊りを踊るシーンがある。この女優さんは、何をやらせても上手いのに感心させられる。

それに、手を差し伸べる黒田の恩師役には、ベテランの山口崇の出演であり、小学校時代の担任であり近代民主政治の基本原理、三権分立から黒田に叩き込んでいく。本作ではキャラクター上、迷える男・黒田の精神的支柱となるのだ。

もはや笑いごとでは済まない今の政治を題材にしたコメディ、「記憶にございません!」にも通ずる提言なのではないかと。

終盤では、物語の到達点として家族の話に趣をおき、妻が秘書のディーン・フジオカと不倫(自分も野党の女性議員と浮気をしているので)をしていても許し、息子とも仲良く話し合い、絆を深めてゆくという終わり方に、ちょっと物足りなさを感じたのだが。しかしながら、家庭の中がぎくしゃくしては、家族を守れないのでは、日本国の首相は務まらないということなのだろう。

2019年劇場鑑賞作品・・・134  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30785656

 


ゴールデン・リバー★★★

2019年09月11日 | アクション映画ーカ行

パトリック・デウィットの小説『シスターズ・ブラザーズ』が原作であり、それをジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドの、実力派キャストの豪華共演で映画化した異色の西部劇ロード・ムービー。ゴールドラッシュに沸くアメリカの西部を舞台に、ボスの指令である男を追う凄腕の殺し屋兄弟と、彼らに狙われる化学者が織りなす欲望と暴力の人間模様をリアルなタッチで綴る。監督は「君と歩く世界」「ディーパンの闘い」のジャック・オーディアール。ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。

あらすじ:1851年、オレゴン州。兄のイーライと弟のチャーリーは誰もが恐れる最強の殺し屋、シスターズ兄弟。一帯を仕切る顔役の“提督”と呼ばれる雇い主から与えられた新たな仕事は、連絡係のモリスとともにウォームという男を探し出し、始末せよというもの。さっそく兄弟は、ゴールドラッシュに沸く西海岸のサンフランシスコを目指して南下していく。一方モリスは、一足先にウォームを見つけると、正体を隠して彼に近づくのだったが…。

<感想>「君と歩く世界」「ディーパンの闘い」の、フランス人のジャック・オーディアールの、初の英語作品であり、4人のハリウッドスターを迎えたサスペンス西部劇。冒頭の遠くで拳銃の火花が散る場面から、スタイリッシュであり、次々に予期せぬ事件があり、サスペンスもある。

ホアキン・フェニックスが主人公の殺し屋兄弟に扮し、連絡係のモリスにジェイク・ギレンホール、化学者ウォームにはリズ・アーメッドらが共演する。実は、黄金の見分け方を知る化学者ウォーム(リズ・アーメッド)を、“提督”から始末せよと命令される。しかし、ウォームは化学者であり、川の中の金を見分ける化学式を発見したので、それを聞き出して殺せという命令だった。

だが、連絡係のモリスはいつしかウォームの語る理想に魅せられ仲間になっていたのだ。つまり、掘り当てた黄金で独立国家を建設しようと夢見ていたウォーム。そして、兄弟もまた別の追手に対抗するため二人と手を組むことになる。黄金に魅せられ、手を組むことになった4人の男たちの、交錯する思惑と予測不能の運命を描いている。

川を堰き止めて、夜になると堰き止めた川の中に、アーメッドが発明した液体(かなり劇薬であり、取り扱い注意でもある)を、水で薄めて川に流し、少し時間が経つと黄金が光って見えると言う仕組み。それが、無知な弟のホアキン・フェニックスが、劇薬を素手でそのまま川に流したことで、自分の腕や足に液体がかかり炎症を起こして、両腕と両足が真っ赤に火傷のような状態になる。結局は、炎症のひどい片足を切断してしまうことになる。他の人たちは、ゴム長靴を履いたり、ズボンを履いたりしてなるべく劇薬が皮膚に付かないようにして作業した。

黄金がキラキラと川の水の中から見える美しい光景に見とれる。人間は欲を出すと、自分の身体をも傷つけて取り返しがつかなくなるのだ。それに、川の汚染ということも考えねばならない。

西部劇なのにガンアクションを、というよりもアクション自体を撮ることを全て回避している不思議な映画であり、描かれるのは、束の間の桃源郷を折り返し点として、追跡する。追跡される者たちの魂の軌跡といっていい。

彼らの桃源郷は、暴力的な父権を(および、もしかしたら女たちをも)排除したところにある。中でも兄役のジョン・C・ライリーが好演していた。この当時には珍しく、口の中を清潔にする歯磨き粉とハブラシが出て来る。兄のジョン・C・ライリーが、紳士のアーメッドの真似をして、朝の目覚めに歯を磨いているというシーンだ。だが、その前に、夜に寝ている時に毒蜘蛛が口の周りに這い出てきて、その蜘蛛を喰ってしまうのだ。翌朝にには、顔じゅうが腫れあがって、吐き気もするし重傷であるにもかかわらず、寝れば治るという呑気さに呆れる。だが、弟を守らねばという兄弟愛が強いのだ。

近年の西部劇映画には、珍しい豊かな色彩で描かれる西部の生活と自然が目に楽しいのだが、ただしロケ地はヨーロッパとのことだ。

殺し屋兄弟と化学式を握る者たちの、追いつ追われつが展開するのかと思いきや、西武開拓時代が舞台のスローライフ称賛ドラマとも言うべき、意外にもノンビリとした物語であり、二組を描く配分も何だかチグハグなのだ。

台詞も文学的であり、随所に笑わせるところもある。銃撃戦もあることにはあるが、まったくもって派手ではない。それでも引き込まれるのは、良い役者が揃い、各々がそれなりに魅せてくれるからだろう。

ラストで黄金を持って、オレゴン州の“提督”の元へ帰ると、“提督”のルトガー・ハウアーが亡くなっており、兄弟で葬式に参列する。その後は、母親の待つ故郷へと帰るところも良かった。

2019年劇場鑑賞作品・・・133  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30780809

 

 


家族にサルーテ! イスキア島は大騒動★★★・5

2019年09月10日 | アクション映画ーカ行

「幸せのちから」「パパが遺した物語」のガブリエレ・ムッチーノ監督がイタリアのイスキア島を舞台に、金婚式のお祝いのために集まった親戚一同が繰り広げる大騒動の行方をステファノ・アコルシ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ステファニア・サンドレッリをはじめとするイタリアを代表する俳優陣の豪華共演で描いた群像コメディ・ドラマ。

あらすじ:イタリアの美しい島、イスキア島に暮らすピエトロとアルバは結婚50年目を迎えたベテラン夫婦。その金婚式を祝うため、20人近い親族が一堂に会した。宴は和やかに進み、いよいよお開きになろうとした頃、天候の急変で帰りのフェリーが欠航となってしまう。思いがけない足止めで、そのまま夫妻の屋敷に全員が泊まるハメに。すると、それまでは抑えていた本音が少しずつ露わとなり、次々と家族の秘密が暴かれていき、いつしかあちらこちらで感情的な衝突が巻き起こっていくのだったが…。

<感想>乾杯のグラスに注がれたのは、美しき家族19人の甘い嘘と苦い真実。大人数のドタバタ家族劇ですね。両親の金婚式のため、実家に集まったのがその一族。リッチなステキ家族は、まるで絵に描いたように幸せな食卓を囲み、楽しむのですが帰ろうとすると、その夜のフェリーが欠航し、島で一晩を過ごすことになるのですね。

途端ににさまざまな事情、子供たちの仲のよさとか、夫婦喧嘩や姪と叔父の恋愛などと、本音が炸裂していくという展開になっていく。

私は、子供のころに、お正月に親戚一同が顔を揃えるという新年会が好きだった。大人になると、世代の異なる人々が集まり、酒で酔いがまわると隠されていた欲望や不満があらわになり、大人たちが醜聞を繰り広げはじまる。

本作では、イタリアの離れ島に祖父母の金婚式のために、大家族が集まって来る。認知症の夫を持つ娘、腹違いの子供を持つ娘、倦怠期の夫婦、そして不倫、初恋、仕事の妬みなど。

あるシチュエイションで集まった家族の暴露劇は、もやは一つのジャンルだと思う。悲劇でも喜劇でも、あるいはその両方でもいい。そこで差別化を決定づけるのは、イタリアというお国柄にほかならない。

ただでさえ、言葉数が多くダイナミックで、攻撃的にも聞こえるイタリア語のセリフの応酬は、それだけでパワフルだ。家族という奇妙な関係が孕む修羅場の普遍性と、その発露の仕方に表れる決定的な違いが面白いのだ。

イスキア島の美しくもワイルドなロケーションと同様、その場にいるよりは観る方が楽しい。娘を連れての離婚をした女が、子供のころから好きだった従兄弟に、恋をしていたことを暴露する。

そして、二人は抱き合いセックスをしてしまう。その後に起こる出来事などは、考えていない。その連れっ子と、おばさんが連れてきた男の子(いとこ同士)が、恋愛をしてセックスをしてしまう。

それに、妊娠をした嫁を連れてきた弟は、兄貴の店で働きたいと願い、借金の金の工面まで両親に相談するのだ。お目出度い集まりなのに、兄弟、姉妹が集まると、自分勝手に自己主張をして、兄弟の暮らしを妬み羨むのだ。

一見して、問題がなさそうな家族も、一皮めくればこんな当たり前の、それも浮気や介護や借金などと、一般人には身近なことばかりを、会話の応酬で展開するこのドラマは、島全体を舞台装置に使った一幕ものの舞台劇のようだった。

不満や怒りを爆発させる感情のぶつけ合いは、まるで爆竹の連続破裂音のように聞こえる。G・ムッチーノは登場人物に主役と脇役の序列をつけずに、全員をフラットに描き、かつ相関関係をはっきりと解らせている。その技量が、素晴らしい。加えて、味わい深い俳優の演技が話しを面白くしていた。

家族や親せき内でおこるあらゆる問題や、確執が噴き出して来る。監督はそれを滑らかに移動撮影して、群像劇として複雑で、解きほぐせなくなった人生や関係性を見せてくれるのだ。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・132  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30779122


引っ越し大名!★★★★

2019年09月09日 | アクション映画ーハ行

『超高速!参勤交代』シリーズの土橋章宏が、生涯に7度も国替えを命じられ“引っ越し大名”とあだ名された実在の大名・松平直矩のエピソードをベースに著わした時代小説『引っ越し大名三千里』を、星野源主演で映画化した痛快時代劇コメディ。共演は高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博。監督は「のぼうの城」「グーグーだって猫である」の犬童一心。

あらすじ:江戸時代の姫路藩。本の虫で書庫番を務める片桐春之介は、人と話すのが苦手で、いつも書庫にこもって静かに本ばかり読んでいた。ところが藩では姫路(兵庫)から日田(大分)への国替えという一大事が勃発。国替えは藩士のみならずその家族も含めた藩全体が引っ越しをするという桁外れの費用と労力を要する難事業。しかも藩の財政は逼迫しており、必要な予算をとても用意できない。そんな国の存亡の危機に、なんと全体を取り仕切る引っ越し奉行の重責を春之介が務めることに。すっかり途方に暮れながらも、幼なじみで武芸の達人・鷹村源右衛門と、今は亡き前任者の娘で国替えの手順に精通した於蘭の力を借りて、懸命にこの不可能とも思える一大プロジェクトに立ち向かっていく春之介だったが…。

<感想>引っ越しは戦でござる!「超高速!参勤交代」が面白かったので、同じシリーズもので、江戸時代は参勤交代の他に引っ越しまでさせられるという、皮肉なエピソードで大憤慨しながらも、幕府の命令であれば引っ越しをしなければならないという理不尽な決定。

現代でもサラリーマンは春になると転勤家族とやら、誰しもが愚痴をこぼしながらも、大変な物入りの大仕事が待っている。幕府の気まぐれで、国内をあちこち引っ越しさせられる藩の殿様や武士たち。藩全体が他の領地に引っ越しをする「国替え」を題材にした時代劇でありつつ、現代とも重なる要素が満ち溢れているのが、この作品の大きな魅力である。

時代劇にこんな豊かな発想力の賜物であり、それだけに、惜しいところもあり、悔しくもある。なんと引っ越しの手引書があるということも理解できるし、引っ越しのときは、“モノ減らし“断捨離決行だとばかりに、武士のお宝を売却して資金に回すというもの。以前の引っ越し奉行の娘(高畑充希)のきびきびとした振る舞いに感心した。映画というよりもバラエティのような作りで笑わせてくれる。色々なエピソードを笑いまぶした団子のように繋げている。

突然の配置転換、厄介な仕事を押し付け合い、手柄を横取りする上役や、人減らし、そもそも殿様が幕府の偉い人の男色の誘いを断ったのが、引っ越し命令の原因だというこの設定。喜劇と受け止めるべきなのだろう。

殿様が性的関係を拒絶したことを恨まれて左遷とは、劇中で起こる出来事はどれも現代の会社員が直面するものと、本質的に変わらないと思った。

そして、このような理不尽だらけの人間関係の渦に巻き込まれていくのが、星野源が演じている書庫番の主人公・片桐春之介なのだ。

人と話すのが苦手であり、薄暗い書庫の中に引きこもって書物ばかりを読んで過ごしている書庫番の春之介が、国替えの総責任者「引っ越し奉行」に任命されるところから物語が動き始める。

国替えに失敗したら、言い渡されるのは切腹だという。しかし、具体的に何をしたらいいのか分からない上に、藩は著しい財政難だった。頭を抱える春之介、右往左往する武士たちの姿は滑稽極まりないが、逆境に対して諦めず、腐らずに立ち向かい続けている登場人物たちの姿は、物語が展開するにつれて激しく我々の胸を打つようになる。

戦国武将を描いた作品のような勇ましさは皆無だが、軽妙なコメディになっており、刀や槍を振り回すのとは異なる形で、武士たちの戦を描いているという点では、正統派の時代劇に通ずる凛々しい人間像にも触れることができる作品だと思いますね。

四百年前の騒動に一喜一憂しながら、晴れやかな結末に救われるのも良かった。身体性の強さを発揮して、藩の大きな薙刀を振り回す豪快なキャラクターを演じている高橋一生が新鮮でいい。彼と、巻き込まれ型の主人公の星野源とのやり取りを、柔軟に連結する体の小さい財政を任されている勘定方の濱田岳が、グッジョブでいい仕事をしていた。必然性のある歌唱シーンにより、チャーミングな仕上がりになっていた。

それに、引っ越しに立ちはだかる大きな問題である、リストラ、武士の百姓落ち。それでも、最後の引っ越しに、藩の石高が増加して、リストラにあった武士が百姓落ちした者たちを向かい入れる策には感心しました。だが、長い年月の農業生活に慣れ親しみ、そのまま居残ると決意する武士もいた。

最後が泣けたね、最後の引っ越しでは石高が倍増して、リストラをした武士たちや、これまで行動を共にできなかった者たちの名前を刻んだ石碑を、殿様が見上げて頭を下げる藩主であればこそ、家来たちも長い旅路を付いてきたのであろう。それに、書庫番を務める片桐春之介が、国家老になったことも褒めてつかわすぞ。

2019年劇場鑑賞作品・・・131  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30778062

 


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド★★★★

2019年09月06日 | アクション映画ーワ行

「パルプ・フィクション」「イングロリアス・バスターズ」のクエンティン・タランティーノ監督が、1969年のハリウッドを舞台に、古き良き60年代アメリカへの愛を描いたノスタルジック・エンタテインメント。有名な“シャロン・テート殺人事件”を背景に、復活を期す落ち目のTV俳優と、長年彼のスタントマンを務めてきた男の友情の行方を、虚実を織り交ぜつつ郷愁あふれる筆致で描き出す。主演はこれが初共演となるレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。ヒロインのシャロン・テート役にマーゴット・ロビー。

あらすじ:落ち目のTV俳優リック・ダルトンは、なかなか復活の道が拓けず焦りと不安を募らせる。情緒不安定ぎみな彼を慰めるのは、リックのスタントマンとして公私にわたって長年支えてきた相棒のクリフ・ブース。固い絆でショウビジネスの世界を生き抜いてきた2人だったが、このままでは高級住宅地にあるリックの豪邸も手放さなければならなくなる。そんな彼の家の隣には、時代の寵児となった映画監督のロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・テートが越してきて、彼らとの勢いの違いを痛感するリック。一方クリフはヒッチハイクをしていたヒッピーの少女を拾い、彼女をヒッピーのコミューンとなっていた牧場まで送り届けてあげるのだったが…。

<感想>1969年8月9日、事件は起こった。この落ち目のTV俳優リック・ダルトンの二人にも――ラスト13分。タランティーノがハリウッドの闇に奇跡を起こす。それは自らが少年時代を過ごした時代と街へのラブレターであり、アメリカの“夢の終わり”への痛烈なカウンターパンチでもあった。

主演は本作が初共演となるレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。そしてマーゴット・ロビーが映画の都に降り立った美女、シャロン・テートを演じている。そして、驚いたのが、ご老体の、アル・パチーノ、カート・ラッセル、ブルース・ダーンといったベテラン勢の豪華版共演と相成った。

たとえアメリカの夢が終わっても、映画への夢は終わらない。そんなタランティーノの声が聞こえてきそうな、問答無用の2時間41分である。

もちろんCGは使ってない。建物やファッションや音楽はもちろんのこと、ポスターからバス停に至るまで、当時の再現でありそっくりそのままなのだ。

今作でもう一つ、大きな題材となっているのが、同じく1969年に起こったシャロン・テート事件である。当時26歳で妊娠8カ月であった女優のシャロン・テートが、チャールズ・マンソン率いるカルトの信者たちに惨殺された事件。今もハリウッド史上の悲劇として語り継がれるが、なぜ人々はこの事件にこれほど興味をそそられるのか。

どうしてマンソンが若い男女にあれほどまで信奏され、彼らを自在に操られたのか、まったく想像を絶するのだが、理解できないこそ、興味をそそられるんだと思う。

シャロン・テートの夫といえばロマン・ポランスキー監督だが、彼もスクリーンに登場する。あの当時ロマン・ポランスキー監督は、ハリウッドで、最もホットな映画監督だった。大ヒットした「ローズマリーの赤ちゃん」の収益が800万$だったそうだ。現在の金額に換算したら5600万$くらいかな。歴史的な大成功を収めた。その一方で、カルト教団のマンソン・ファミリーの描写は興味深いですね。彼らが生活をしているスパーン映画牧場(西部劇撮影用の牧場)の様子がていねいに描かれている。

リックは60年代後半のハリウッドに現れた新しい俳優の典型だ。マッチョでなく、女性的な面もあるタイプ。その彼が昔ながらのハリウッドの価値観のなかで、自分の将来に不安を感じているようす。ハリウッド文化のなかで生き延びられるだろうか?、そんな悩みを抱えながらも、どこかおかしい人間を描く時のクエンティンの演出がとても良く出来ていた。レオとブラピの友情を印象づける息の合ったコミカルな演技は、今作の見せ所の一つといっていい。

リックとクリフは、当時のハリウッドによくあった俳優と裏方のコンビだ。俳優というのは本来孤独な職業だと思う。だからこそ、裏方の制作関係者とは家族のような関係になっているようだ。クリフはリックの沈んだ心を明るくしてくれる相棒みたいな存在。二人はプロフェッショナルな関係だけれど、同時に家族のような絆で結ばれていると思う。

俳優として自信が持てず、ある映画の撮影中についにセットで泣き崩れるリック。その演技に対し、ブラッドもスクリーンの歴史に残る、メルトダウンの名演だと思うと称賛を惜しまない。子役に励まされるシーンも笑いを誘う。子供であるにもかかわらず、演技に真剣に取り組んでいるプロの女の子だ。

対してブラピが演じているクリフは、おんぼろトレイラーハウスに犬と暮らす楽観主義者だ。リックとクリフを一人の人間の、表裏だと考えているというのだ。リックは人生から理不尽な扱いを受けていると感じている。一方の、クリフは自分の居場所を受け入れて、心穏やかに生きている。何が起きても受け入れて、その時その時で何とか対処をしていけると分かっているようだ。クリフは体力自慢のスタントマンであり、身体にいくつもの傷をもつタフガイである。劇中では様々なファイトシーンを演じているが、中でもブルース・リー(マイク・モー)との格闘シーンは話題を呼ぶと思う。ブラッドは激しいアクションをこなすため、事前にトレーニングをしてきたと言うのだから、それくらいに凄かった。

特に最後のアクションも凄かった。リックの豪邸のお隣がシャロン・テートとロマン・ポランスキーの豪邸。そこへ、ヒッピーのカルトの信者たちが襲撃してくるのだ。リックはプールでプカプカ浮かびながら、ヘッドホンで音楽を聴いていた。だが、自分の家に強盗が襲撃すれば、納屋に隠していた映画用の火炎放射器を出してきて、半狂乱でプールの中にいる女性に、火炎放射器を浴びせかけるのだ。どうみても男らしくはない。でも、何だかんだいっても、その二人が見事にヒッピーたちを成敗してしまうのだから。

もちろん、隣に住んでいるクリフも、薬でラリってはいるが、戦場で培った度胸と反射で、いつのまにか敵と対峙しているではないか。女の顔をバンバンと壁に打ち付けるのが印象的だった。

車や自宅のラジオから、のべつ幕なしにおかまいなしの無神経さで音楽が流れ続けるのだ。これも60年代のハリウッドなので、土ぼこりと共に我慢するしかない。その我慢はやがて快楽へと変わるだろう。

ネタバレではあるが、しかしだ、タランティーノ映画の実物は、いつもそれらを軽々と上回っていて、圧倒的な大きさで観ている者を黙らせるのだ。

うっかりして気がつかなかったのが、デミ・ムーアとユマ・サーマンとアンディ・マクダウェルの娘が出演しているというのだ。1回観ただけでは分からない。二回目、三回目には必ずや見つけてやると、意気盛んで見届けたい。

2019年劇場鑑賞作品・・・130  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30773851 


さらば愛しきアウトロー★★★・5

2019年09月02日 | アクション映画ーサ行

ハリウッド屈指の美男俳優として人気を集め、「明日に向って撃て!」や「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」など長年にわたり活躍してきた名優ロバート・レッドフォードが俳優引退作と公言している最後の主演作。1980年代初頭からアメリカ各地で銀行強盗を繰り広げ、それによる逮捕と脱獄を繰り返した実在の人物フォレスト・タッカーを描いた。

あらすじ:強盗といいながらも、発砲もしなければ暴力も振るわないという紳士的で風変わりな犯行スタイルを貫いた主人公タッカーをレッドフォードが演じ、タッカーを追う刑事ジョン・ハント役を「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレックが担当。そのほか、シシー・スペイセク、トム・ウェイツ、ダニー・グローバーらが共演。監督は「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」のデビッド・ロウリー。

<感想>ハリウッドの伝説 ロバート・レッドフォード 俳優引退作!ポケットに銃を、唇に微笑みを、人生に愛を。「明日に向って撃て!」や「スティング」など数々の名作に出演し、60年近くに及ぶ役者人生を歩んできた名優ロバート・レッドフォードの主演最新作にして俳優引退作である。となると、鳴り物入りの監督兼主演作品になるのではと興味津々だったのだが、いざ蓋を開けてみれば、これが意外とコンパクトな仕上がりでいささか拍子抜けしたくらい。

ハリウッドスターというキャリアの最後の最後の役に、伝説の銀行強盗を選ぶのだから、これはもう常識を超えている。いやこのセンスの良さこそが、レッドフォ-ドという俳優の持ち味なのだと納得しました。

それで、彼の演じる高齢の銀行強盗なのだが、これが相当な変わり者。銀行を訪れては、ポケットに忍ばせた拳銃をチラリと見せ、微笑みながら札束をせしめてドrンと消えるのだから。当の銀行行員も、捜査にあたる刑事も打つ手がないのだ。そんな強盗が1980年代初頭のアメリカに実在したとは信じがたいが、レッドフォードはこの強盗を、ユーモアを込めて実に優雅にしゃれっ気たっぷりに演じているのだ。

そう、この引退映画のレッドフォードは、これまでになくリラックスしてカメラの前に立っているようで、気の合った仲間と映画作りを楽しんでいる風情なのだ。共演者も、旅先で知り合うトム・ウェイツとダニー・グローバーの二人を強盗仲間にして、それにロマンスのお相手・未亡人ジュエルにシシー・スペイセクが。タッカーを追う刑事ジョン・ハント役には、ケイシー・アフレックと、これまたセンスのいいキャスティング。脚本・監督は、レッドフォード主宰のサンダンス映画祭で頭角を現したデビッド・ロウリー。

もちろんレッドフォードの引退作品なので、彼の見せ場は盛りだくさん用意してあるのだが、中でもスペーシクの牧場で披露する乗馬シーンでは、そのオーラに圧倒されましたよ。

フォレスト・タッカーは実在した脱獄の名人で、83歳で亡くなる前の年、2003年にニュー・ヨーカー誌でフィーチャーされた時は、脱出王のフーディーニに勝るとも劣らないほどの人気者になっていました。映画の中に出て来る脱獄シーンのモンタージュを見れば分る通り、タッカーの脱獄には職人芸のような魅力があるため、犯罪関連のドキュメンタリーを専門に放送しているチャンネルでも、脱獄がテーマの番組ではよくタッカーが引き合いに出されています。

まずこれが実話ということで、最初は“ニューヨーカー”でフォレスト・タッカーの話を読んで、彼は17回逮捕されたが、アルカトラズも含めて17回脱獄している。きっと彼は逃げ切ることに興奮しているのだろうと思ったそうです。そこに興味をもち、生命の輝きと冒険心に溢れているとね。しかも、彼は銃を持っていても、一度も誰かを撃ったことがなかった。銃に弾を込めていなかったらしい。

ロバート・レッドフォードの最後のコメントでは:共演者では、刑事のケイシー・アフレックが実力を証明して、恋人のシシーは、長年見事な演技を見せている。相棒のダニー・グローバーの芸達者ぶりには感心した。それにトム・ウェイツは以前からファンでね、共演できるなんて神の恵みだよ。自分自身の心は30歳のつもりでも、体は80歳と言う現実を受け入れなきゃね。まぁ、21歳の時から演じてきたから、もう充分だろう。

ちなみに「さらば愛しきアウトロー」は、原題が「The Old Man &the Gun」=老人と銃で、アーネスト・ヘミングウェーの「老人と海」をもじったものだ、と知っているとこの作品をさらに深く味わえると思います。

現在82歳のレッドフォードは本作をもって俳優業から引退を宣言。一度は撤回をほのめかす発言もしたが、本作が最後の出演作となる可能性は高そうです。ただし監督業は今後も続けていくことを明言している。

 

2019年劇場鑑賞作品・・・129  アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 

  トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

  トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30767947