パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ロック・オブ・エイジズ ★★★

2012年09月30日 | ら行の映画
トニー賞で作品賞ほか5部門にノミネートされ、ブロードウェイを筆頭に世界各国でヒットを記録し続けているミュージカルを映画化。1987年のロサンゼルスを舞台に、音楽で成功することを目指して奮闘する青年と少女の恋と夢の行方が、1980年代のロック・ナンバーに乗せて映し出されていく。『バーレスク』のジュリアン・ハフ、本作で映画デビューを果たすディエゴ・ボネータが主演を飾り、伝説的ロック・スターにふんするトム・クルーズやキャサリン・ゼタ=ジョーンズら、実力派たちが脇を固める。ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズの指導を受けた、トムの堂に入ったロックン・ローラーぶりも見逃せない。(作品資料より)

<感想>物語の背景は、1987年のハリウッド。老舗ライブハウスで働くロック歌手志望のドリュー(ディエゴ・ボネータ)とシェリー(ジュリアン・ハフ)の恋と夢を描くサクセスストーリーになっている。これに併行して、というよりも実質的なドラマの軸となるのが、かつて一世を風靡したロック・グループのヴォーカルで、いまやアルコール依存症気味のロックスター、ステイシー(トム・クルーズ)の物語。
言ってみれば、ステイシーがどん底から華やかに復活するまでの背景とモチベーションに、ドリューとシェリーの恋物語がある、という展開。
舞台版や原作では、ドリューとシェリーの恋の行方とライブハウスの地上げ騒動が併行し
て描かれ、結局地上げは阻止されるものの、二人は結婚して故郷に帰って行ってしまう。二人の夢は叶わなかったけれど、代わりに愛を手に入れたと言うラストなのだ。
だから舞台版とは違って、ここでは、ステイシーはシェリーに手を出し、ドリューとの仲を壊す原因となるロックスターというだけの役なのだが。やがて、しっぺ返しを受けてフェイドアウトしてしまう、つまり適役のステイシー。

しかしだ、トムちん演じるステイシーを中心に据えた映画版では、彼のドラマがど真ん中を貫いている。さすがにハードなレッスンを摘んで、見事にガンズやデフ・レパードのナンバーを歌いこなす姿には、感動させられましたわ。

だから、彼を取り巻く人物も新たに加わって、ロック反対運動のリーダーとなる市長夫人(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)という適役と、彼を理解する雑誌記者コンスタンス(マリン・アッカーマン)という二人の女性は、映画オリジナルになっている。
コンスタンスの存在やドリューとシェリーの真っ直ぐな姿、そしてドリューが歌うロック魂溢れる「ドント・ストップ・ビリーヴィン」に刺激されたステイシーは、不死鳥さながらのごとく蘇えるのである。

ドリューもまたシェリーと共にロックスターの夢を掴み、破産の危機にあったライブハウスもステイシーによって救われる。ライブハウスのオーナーにアレック・ボールドウィンが、ステイシーが言うには「ロックの生き残りの同士」だと。つまり「ドント・ストップ・ビリーヴィン」そのまま、信じて突き進めば夢を掴めるという、舞台版よりも数倍ハッピーなエンディングになっている。
ほっこりとした幸せを見出す恋人たちを中心に描く、80年代グラフィティより、「ロックは死なない」という叫びが響いてくるような映画版の方が、ずっとロック・ミュージカルのように思える。だってROCKは、揺さぶると言う意味だから、おとなしく引っ込むなんて、ロックっぽくないではないか。
途中で歌手デビューするドリューが、ボーイズバンドを組まされて落ち込むエピソードも、皮肉が効いているし、現状に流されない意志こそがロック魂なのだ。だからこそ、一度はボーイズバンドを組んだドリューも、売れたいのではなくロックをやりたいのだという原点に戻って、反撃に転じるわけ。
ライブハウスのオーナーの相棒ロニー(ラッセル・ブランド)が、ロック反対デモに向かって「ウィ・ビルト・ディス・シティ」を歌い、やがてドリューも「ドント・ストップ・ビリーヴィン」に繋がるくだりは、まさにドリューの宣言「ロックは死なない」を具現化するようで、ちょっと感動的です。

それに、ボーイズバンドを企画し金儲けのためステイシーを堕落させてきたマネージャーのポール・ジアマッティは、80年代に幅をきかせ始めた拝金主義の象徴なのかもしれない。
「ヘアスプレー」であらゆる差別を軽やかに蹴飛ばしてみせたアダム・シャンクマン監督、作品自体も一つの時代の空気を切り取った趣きで、ちょっぴりノスタルジーも漂っている。ロックが嫌いな人でも「ロックがこんなにイっちゃってた時代があったのか」と、驚きと笑いを与えてくれるはず。
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最強のふたり ★★★★★

2012年09月29日 | さ行の映画
昨年の東京国際映画祭でグランプリと主演男優賞に輝いた、実話をベースにしたドラマ。揃って男優賞を受けた「PARIS」のフランソワ・クリュゼと「ミックマック」のオマール・シーの主演で、他には「ぼくの大切なともだち」のアンヌ・ル・ニ、「屋根裏部屋のマリアたち」のオドレー・フルーロらの共演。監督・脚本はエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの共同。

あらすじ:不慮の事故で全身麻痺になってしまい、車いす生活を送る大富豪のフィリップ…彼の日常をサポートする介護者はいつも長続きせず、その都度、新しい人を雇っていた。今回も新しい介護者を求めて、面接を開いていたのだが…そこに現れたのはスラム出身の黒人青年ドリスだった。
ドリスは不採用の証明書で貰える失業手当目当てで面接に参加しており、他の面接参加者と違ってかなり粗暴であったが、正直な物言いに惹かれるものがあり、フィリップは採用を決める。当然、不採用だと思っていたドリスは戸惑いながらも仕事に接し始め。
<感想>実話をもとにした映画のなんと多いことか。逆に言えばオリジナル脚本がいかに少ないかということだが、これも原作は実話。それも首から下は麻痺したままという重度の障害をかかえる大富豪と、彼を介護するために雇われた貧しい黒人の物語というから、実話とはいえちょっと身構えしてしまう。
障害者の介護を描いた映画で、こんなに笑っていいのかしらと心配してしまうほどユーモアたっぷりで、しかも泣けてしまう極上の実録ヒューマンドラマだ。笑いあり涙ありヨーロッパでは大ヒットに。
登場人物みんなが魅力的です。豪邸で働く使用人たちはそれぞれ個性的で、ドリスの出現をきっかけに、みんなフィリップの障害を“個性”として受け止め始める。初めての介護に戸惑うドリスだったが、雇い主のフィリップに媚びることなくフレンドリーに接するのが気に入られ、2人は車椅子をパワーアップ改造するなど大はしゃぎ。

自由奔放なドリスは豪邸内にコールガールを呼ぶわ、フィリップに大麻を勧めるわのやりたい放題。全身麻痺のフィリップも思わず吹き出してしまう。
フィリップはハングライダーの墜落事故で首から下が麻痺状態の障害者。もうハングライダーに乗って空を飛べないと思っていたら、ドリスが車で連れていって一緒に空を飛ぶ二人には感動が。
それにフィリップは奥さんにも先立たれて、でも楽しみは文通相手がいて、写真を送り逢うことを勧めるドリス。つい自分の身体のことを考えて、臆病になってしまっていたフィリップの後押しをしてお膳立てをしてあげるドリス。

この作品のいいところは、キャスティングの妙にあるのでは。介護する黒人役はオマール・シーというフランス人の人気コメディアン。この人がぴたりとハマっているから活きているのだ。冒頭での暴走を繰り返す運転手として登場すると、一気にスクリーンが引き締まる。助手席には全身麻痺の大富豪役のフランソワ・クリュゼが。この2人がパトカーに追われた揚げ句、奥の手を使ってそのパトカーに先導させ病院へ駆け込むエピソードに、この作品のすべてが集約されていると思う。
すなわち、重度の身障者の苦悩と悲しみを笑いで吹き飛ばし、一歩間違えば虐待に繋がるかもしれないブラック・ユーモアで包み込むのだから。この難度の高い演技は、オマールとフランソワという演技の達者な二人抜きには考えられない。

もちろん、一見自然体に映るが、時間をかけて練り上げられた台詞の面白さ、そこには身障者と介護人の関係とは思えない、あけすけの本音が飛び交うからだ。
差別と偏見をやすやすと乗り越えてしまう、その大胆な会話は、やがてこの映画の重要なテーマに行き着く。つまり、死を見つめる重病人が、何よりも待ち望む生への実感なのだ。
フィリップが夜中に息苦しくなって困っている時、オマールがフランソワを車椅子ごと部屋から外へ連れ出し、夜の都会の大気に触れるシーンでは、見ていて込み上げるものがあった。
障害者の下ネタまでギャグにして笑い飛ばしてしまう、陽気さが何とも心地よい。ともすれば、介護問題を扱った作品と聞くと「真面目な映画か」と身構えてしまいがちだが、男2人の友情ドラマとして文句なしに素晴らしいできで、観たら絶対に好きになると思う。
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バイオハザードV:リトリビューション3D ★★★

2012年09月27日 | アクション映画ーハ行
日本発の大人気ゲーム「バイオハザード」、実写映画化第5弾。もちろん主演・監督は第1作目からこのシリーズに関わっているミラ・ジョヴォヴィッチ×ポール・W・S・アンダーソン監督という夫婦コンビ。世界各地の街角で『バイオハザード』の世界を再現している。本作の目玉は、過去4作に出演しているキャラクターやクリーチャーたち“バイオハザード・オールスターズ”が、様々な形で再び姿を見せていること。
1作目の特殊部隊員・レインを演じたミシェル・ロドリゲスや、カルロスを演じたオデッド・フェールの登場は、ファンにはうれしいところだろう。4作目で第一感染者を演じた中島美嘉も登場し、ミラ・ジョヴォヴィッチとのアクション対決を見せている。
(作品資料より)

<感想>前作が「バイオハザードⅣ アフターライフ」のラスト。LA沖合の船内でのバトルに勝利し、囚われの人々を解放したのもつかの間、アンブレラ社の攻撃機に包囲されてしまったアリス、今回のタイトルバックでは船上での激闘の末、海に投げ出されるアリスの姿が描かれている。
だが彼女が目覚めたのは郊外の平和な家庭のベッドの上。愛する夫や娘のベッキーに囲まれ、これまで見られなかった主婦のアリスが登場。アンブレラ社と関わる以前の姿なのか?もしくはパラレルワールドなのか?・・・様々な憶測が可能だが、今回の重要なパートになることは間違いない。

そこはラクーンシティ、郊外の平和な朝を打ち砕くようにアンデッドが襲来する。隠れて難を逃れた少女を救い出し、アリスは逃亡を図るが、そこには今や敵と化したかつての盟友ジルやレインらが立ちはだかり、たちまち壮絶な銃撃戦に。
戦いのステージは壊滅したはずの4つの都市。NY、荒れ果てたストリートで「Ⅳ」に登場した2体の処刑マジニに挟み撃ちにされそうになるアリス。彼女を導く謎の女エイダ(ビンビン)。2人は背中合わせになって銃で反撃する。アリスはマジニたちに追いつめられるが、秘策で切り抜けるのだ。

リー・ビンビン扮するエイダは、ゲームどおりのアジアンビューティとして登場。アンブレラ社幹部のウェスカーの部下らしいが、アリスに重要なアドバイスを与える。ビンビンの真っ赤なチャイナドレス姿は、セクシーですね。
東京、前作の冒頭と同じ渋谷のスクランブル交差点で、アリスは第一感染者の中島美嘉らアンデッドの群れに追われ、建物内に逃げ込みライトに照らされた廊下でバトルを繰り広げる。アクロバティックな動きとチェーンを使った戦闘は圧巻。

モスクワ、レオンら救出部隊と合流したアリスは、バイクを駆るアンデッド集団に追われ、車で逃走。地下鉄の入り口に突進し、エスカレーターを車で滑り降りホームへと。そこへ怪物リッカーが巨大になって登場する、怒涛のチェイスは迫力満点です。
さらにはアラスカの雪山や、ワシントンD.C.でも撮影が行われ、海上シーンもありと、過去4作とは比較にならない世界規模のスケールに注目したい。
そこの施設は、カムチャッカの雪原の地下深くにある旧ソ連の潜水艦ドックを改造したもの。地上からはレオン率いる特殊部隊がアリス救出に向かっていた。ホログラムで現れたウェスカーによれば、アンブレラ社の人工知能“レッド・クイーン”が全てを掌握、人類絶滅に向かって動いているというのだ。

それに、かつての敵が突然援助を申し出るという意外な展開。そして、死んだはずのアリスと共闘するヒロインで復活するレインは、1作目でアンデッド化してしまったのに、アンブレラ社の特殊部隊員として復活。寄生体プラーガの注入により不死身の戦士となったレインと夢のバトルが実現する。アリスと闘うが氷の海へ落とされても、6作目でまたもや復活の模様。

1作目で感染して死亡のジェームズ、3作目で爆死したはずのカルロスら、死んだとされたキャラが大量に戻って来る。敵か味方か、その復活理由とは今回の重要なテーマが隠されていた。
ゲームの人気キャラが続々参戦!過去4作に出て来なかったゲームの人気キャラが、初登場!・・・東洋系美女のエイダを始め、戦闘員のバリー、レジスタンスのリーダー役としてレオンが大活躍を見せる。アリスはゲームには登場しない映画版のオリジナル・キャラなのだが。

ゲームを完璧に再現したファイトやカーアクションもあり、各キャラの髪型や衣装は多少ゲームとは違うが、それを突っ込むのもファンのお楽しみ。アリスがアンブレラ社に操られたジルとガチンコ対決するなど、映画ならではの展開も面白い。
アリスと娘のベッキーは偽の記憶を植え付けられただけで、実の親子ではない。しかも今回最優先されるのはアリス自身の身の安全。しかしそれが分かっていてもベッキーを救わずにはいられないのだ。思えば過去のシリーズでも、アリスは常に弱い者を守るために闘い続けてきた。守るべきものがいる時ほど、戦士は強くなれるから。実生活でも母親であるミラだからこそ、そんなアリスの真の強さを体現することが出来たのではないかしら。もちろん肉体的な強さもバッチり、アクロバティックな格闘から、ガンアクションまで徹底的に見せつけてくれる。
いよいよこのシリーズも次回で完結の予定、アリスの闘いを最後まで見届けないわけにはいくまい。
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デンジャラス・ラン ★★★

2012年09月20日 | アクション映画ータ行
「グローリー」「トレーニング デイ」で2度に渡りアカデミー賞を獲得したデンゼル・ワシントンが、今では世界36ヶ国で指名手配され命を狙われている元CIAエージェントを演じたスリリングなアクション映画。デンゼル・ワシントンは本作の製作総指揮も務めている。CIAに投降してきた元エージェントを守るためにともに逃走する新米CIAを「グリーン・ランタン」「[リミット]」のライアン・レイノルズが演じる。ほか、「マイレージ、マイライフ」のヴェラ・ファーミガらが出演。監督は「Outside Love」(英題/07/未)で国際的に高い評価を受け、「イージーマネー」(10/未)では裏社会に生きる3人の男たちの姿をスタイリッシュに描いたダニエル・エスピノーサ。

あらすじ:南アフリカの米国領事館に、一人の男が出頭した。彼はかつてCIAの中でも屈指の腕を持つ伝説のエージェントでありながら敵国に機密情報を流したとされる、36ヶ国で指名手配を受けた世界的犯罪者トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)。CIAの隠れ家に連行された途端、鉄壁のはずの隠れ家が何者かにより襲撃される。壊滅状態にまで追い込まれる中、隠れ家を管理している新米CIAのマットは、フロストから選択を迫られ、やむなく隠れ家から脱出。敵の正体も目的もわからないまま、マットは危険すぎる男フロストの身柄を守るために彼とともに逃走を繰り広げる。
(作品資料より)
<感想>いつもデンゼル・ワシントンは「正義の男」を演じてきた。しかし役者人生たまにはウサ晴らしもしたくなるのだろう。それが彼にとっては「悪役に扮する」という代償行為によって、ガス抜きされてきたのだと思う。
クリーンなイメージが定着している俳優だからこそ、たまにワルを演じた時のインパクトの強さは、当人と映画によって絶好のセールスポイントになるのだから。デンゼルが初めて悪の部分を発散させた「トレーニングデイ」(01)は、そうしたギャップが功をそうして、黒人俳優として史上初となる2度目のオスカーをもたらした。1度目は確か「マルコムX」だったと思う。

これに気をよくしたのか次は、07年の「アメリカン・ギャングスター」ここでは、麻薬密売でのし上がるギャング王フランク・ルーカスを熱演。そして今年も、悪役を演じるのだが、本作の製作総指揮も務めている気の入れようだ。
本作で彼が扮したのは、元CIAのエージェントである国際犯罪者のトビン・フロスト。世界情勢を左右する極秘ファイルを闇密売し、あらゆる公安組織からマークされている特級の危険人物である。

そんな彼がCIAに身柄を拘束され、容疑を吐かせる隠し拷問部屋(セーフハウス)へと送り込まれる。だが、そこに配属されていた新人CIA工作員のマット(ライアン・レイノルズ)は、任務に不慣れなスキを突かれ、手練のフロストに心を掌握されてしまう。
さらにフロストが持つ極秘ファイルを闇に葬ろうと、謎の組織が彼を殺しにやってくる。マットは立場上フロストを保護しなければならず、この恐るべき犯罪者と、謎の暗殺組織との不幸な板挟みになるわけ。
かつては正義の側にいながら、今は不義に転じて悪事を遂行する男。そして、そいつに翻弄される新米のマット。

いまやクラウドで、データーがやり取りされる時代に、メモリにコピーされた極秘資料の争奪戦なんて成立するの?・・・という突っ込みはさておき、「ボーン」シリーズの撮影監督を起用しただけあって、ガンファイトやカーチェイスといったハードアクションの数々は、見応え十分です。
しかし、何となく絵ズラはまるっきりトニー・スコットの映画みたいだけど、また重要な取引の際には、5大シャトーの高級ボルドーワインを必ず相手に奢ってもらう。グラスで一杯たしなむという、デンゼルのワイン通アピールは、見なかったことにしようではないか(苦笑)

だが、今回のデンゼルは、これまで演じて見せたヒールに留まらず、善悪の二元論を超えたさらにミステリアスな存在となって、我々を驚かす。
しかも、そんな男のカリスマ性が、ダメダメだった新米工作員の意識を改革し、促していき男義を上げ、観ている者の魂を振るわせる最後がいい。何となく思ったのだが、「裏切りのサーカス」と少し似ている部分があると思った。
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天地明察  ★★★

2012年09月16日 | た行の映画
いつの時代も既得権益を侵すのは至難の業だ。江戸の昔、日々の暮らしに直結する暦を正しく作り直すために文字通り命懸けで挑んだ人々がいた。そのリーダーが実在の人物・安井算哲である。行く手を阻んだのは、幕府に利権を奪われるのを恐れた公家たち朝廷の圧力だった。幾度も挫折を繰り返しながら粘り強く使命を果たそうとする天文学者を演じるのは岡田准一、その妻えんに宮崎あおい。さらに、抜群のコンビネーションで笑いと涙を誘う笹野高史と岸部一徳をはじめ、ベテラン演技陣が脇を固める。原作は冲方丁の2010年本屋大賞受賞の同名小説。米アカデミー賞外国語賞に輝いた『おくりびと』以来となる滝田洋二郎監督作品である。

あらすじ:代々将軍に囲碁を教える名家に生まれた安井算哲は、対局よりも星と算術に夢中になり、時間を忘れてのめり込んでしまう事もしばしばだった。ある日、会津藩主の保科正之から日本全国で北極星の高度を測り、その土地の位置を割り出す北極出地を命じられる。一年半の任務を終え、暦のずれが判明すると、今度は新しい暦作りの総大将に任命される。天体観測と数理解析を重ねた結果、幕府は改暦を帝に請願するのだが…。(作品資料より)

<感想>江戸時代命をかけて金環日食を言い当てた男がいた、それは今から約400年前のこと。日本独自の暦を初めて作った安井算哲(後の渋川春海)の半生に好奇心を刺激された。囲碁や算術でトップになれなかった算哲が、人脈を活かして改暦の大事業を成し遂げるところに爽快感があると思う。

主人公を演じた岡田准一、挫折や失敗を乗り越え、まっすぐに生き抜く算哲を、爽やかに演じているのがいい。妻には宮崎あおいが、出戻り娘に見えないくらい上品で、彼女の演技はいつ見ても上手い。それから市川猿之助の放つエキセントリックさ、見水戸光圀の中井貴一、会津藩主の松本幸四郎など、役の分をはみ出させないまま、俳優の味をサラリと生かす監督の上品な芝居の演出にも感心した。

江戸時代の天文学や、算術の絵馬という文化が面白く描かれ、北極星観測の旅で、歩数で距離を測るため、岸部一徳が行進する姿が見られるのだが、膝を高く持ち上げて歩く姿に始めは驚いたが、そうしないと同じ歩幅が保つことが出来ないため。彼らの手には、算木という赤と黒の棒が計算用具に使われ、赤はプラスで黒はマイナスを表し、日本では算盤が普及されるまで用いられたそうです。
一緒に旅する武士を好演する笹野高史と岸部一徳のコンビが絶妙でいい。それだけではなく、滝田洋二郎監督は、近代囲碁の祖と呼ばれている本因坊道策や日本数学史上の英雄である関孝和など、個性の強烈な脇役の人間模様を生き生きと描いている。

主人公、算哲が示した暦は見事に日食を言い当てられるのか?・・・算哲の暦作成への意志、暦の解析能力が発揮されそれは概に果たされている。天が答えを出すのを待つというクライマックスの、待つという局面を大げさでなく、芝居じみてもなく、爽やかに描いているのが素敵です。
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白雪姫と鏡の女王 ★★★

2012年09月15日 | さ行の映画
ジュリア・ロバーツが初の悪役に挑んだ、女王様の視点で描いた「白雪姫」。美貌の衰えに焦る女王が白雪姫をいじめまくる。野心家のお妃は、国王が亡くなると自ら女王となり、ドレスや宝石で快楽を貪っていた。ある日、道に迷った若い王子が城に参上する。国の財政難に、老後を不安に思っていた女王は、お金目当てに結婚しようと策を練る。「白雪姫」のピュアな物語も、女王目線になると、途端に物欲まみれのコメディに。自分丸出しのわがままな女王は人間臭く、思わず「よく言った!」と拍手したくなる名台詞も。監督は、『ザ・セル』のターセム・シン・ダンドワール。彼の作品を手がけてきた石岡瑛子が衣装を担当しており、本作が遺作となった。

あらすじ:国王の死後、白雪姫の継母は、娘を部屋に閉じ込めて世間知らずに育て、自ら「おとぎの国」の女王となって、贅沢三昧の暮らしをしていた。おかげで国の財政は破綻し、国民は食べるものもない。外出を禁じられた白雪姫は、姿も心も美しい娘に成長したが、世間を知らない箱入り娘になっていた。ある日、女王の目を盗んで城の外に出てみると、そこにいたのは飢えに苦むたくさんの人々。「国民を救わなくては」。白雪姫は立ち上がった。(作品資料より)

<感想>春に公開された「スノーホワイト」に続いての「白雪姫と鏡の女王」。これは劇場で見なくてもと思ったのだが、かの有名な石岡瑛子さんの衣装が最後の作品となれば見ないわけにはいくまい。
女王役のジュリア・ロバーツによる「これは白雪姫じゃなくて、お妃の物語。この世で一番美しいのは、まぁ、当然私ね」という、お寒いナレーションで始まってどうなることやらと思いましたが、7人のリアルな小人たちや、舞踏会シーンでは石岡瑛子さんらしい奇抜な発想の衣装が動き始めると、一気に悪趣味スレスレな愉快さに包まれます。
本作でのコスチュームデザインが遺作となった石岡瑛子さんは、本来はファッションデザイナーではなく、幅広い美術の一分野として衣装も手掛けるアーティストなんです。小人俳優たちが魅力的にキャラ立ちしているのも、石岡さんのデザインによる狼の毛皮をかぶった小人や、ナポレオンをなぞらえた小人の衣装を楽しんで作ったからでしょう。

そして舞踏会のシーンにも目が釘付け状態になりますよ。鏡の女王の衣装にはスワロスキーが目いっぱい施された真っ赤なドレスに孔雀の羽根をあしらって、白雪姫には白鳥の頭をかぶせて、鹿やウサギといった様々な動物をイメージし、ナチュラルなきなり色で統一した森ガール的キュートさと共に、ぎょっと驚くセイウチの口元だけをモチーフにした破天荒な衣装のエキストラもいたり、美とグロテスクが象徴的だった石岡さんが、可愛らしさと笑いに展開した新たな世界がありました。

また王子様役のアーミー・ハマーの絵に描いたようなアホっぷりもいい感じで、鏡の女王に惚れ薬を飲まされものの、誤って子犬用の惚れ薬だったため、「キューン」と鳴きながら発情した犬芝居を堂々と演じてくれます。小人たちがその魔法を解こうとしても、王子様を小人たちがタコ蹴りにするなど、超ベタなギャグもてんこ盛り状態。
最初は、いつものターセムと違うと困惑しつつも、観ているうちにだんだん頭のチャンネルが合って来て、このベタさ加減が心地よく笑えてきた。そう、これはターセム流の吉本新喜劇だと思えば、皮肉などじゃなくて新喜劇に登場するギャグは、観る側が合わせればガチハマリする状態になる。間違っても「スノーホワイト」と比べてはいけません。だから、小人たちやハマーが何かする度に笑いが止まらなくなってくる。

また、リリー・コリンズ(フィル・コリンズの娘)演じる白雪姫が小人たちから、マーシャルアーツを学び、王子の助けを待つのではなく自分の力で、魔女の呪いを解きに行く鮮やかな女剣士になるのも楽しいですね。
まゆ毛の濃いリリー・コリンズは、まるでヘップバーンのような美しさと、元宝塚の大地真央のような雰囲気で、ラストで一気にインド映画のように、ハイテンションさで歌いまくる。やはりインド出身のターセム監督だからなの、これが上手いので違和感なし(苦笑)
もちろん最後まで、小人さんらしさを活かした活躍ぶりも、もち毒りんごのシーンも有りで、鏡の女王が婆さんになって黒いマントで現れてもどうってことないです。ハッピーなコメディ映画と思えば、騙されたと思って観てはいかがでしょう。
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夢売るふたり      評価★★★

2012年09月14日 | や行の映画
『ゆれる』や『ディア・ドクター』など、人間の深層心理に肉薄し、人間の心の闇をえぐり出すような作品で定評のある西川美和監督作。ある夫婦が火事で全てを失った事から始めた結婚詐欺を繰り返すうちに、本人ですら自覚していなかった己の深層心理と、お互いが知らなかった相手の本性に気づいていくさまが、可笑しくて恐ろしい。物語の軸となる夫婦を演じるのは松たか子と阿部サダヲ。松演じる気立てのよい妻が、心の奥に眠っていた悪意に目覚める瞬間の背筋が凍るような恐ろしさは、彼女の演技力の賜物だ。田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江らが結婚詐欺の“対象”となる女たちを演じるという、キャストの豪華さも本作のウリのひとつ。

あらすじ:東京の片隅で小料理屋を営む貫也と妻の里子。店は小さいながらも繁盛していたが、調理場からの失火が原因の火事で全てを失ってしまう。絶望して酒びたりの日々を送っていた貫也はある日、常連客だった玲子と再会、酔った勢いで一夜を共にしてしまう。その事を知った里子は、結婚詐欺で金をだまし取る事を思いつく。店を再開するための資金を稼ぐために貫也は、出版社OL、重量挙げ選手、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近する。(作品資料より)

<感想>松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺を働く夫婦を演じた異色ラブ・ストーリー。西川美和監督のオリジナル脚本で、女性を騙すうちに人生を狂わせていく夫婦と、だまされる女たちの心の闇を浮かび上がらせる物語。
こんな夫婦なんて現実にはいないだろう。だが、この作品の甘い言葉に翻弄され、結婚詐欺にだまされる女たちの弱さ、その夫を操る妻の本音も嘘も全て受け入れて、愛憎ともとれる感情を無表情に凛としたたたずまいで表す松たか子の演技が上手い。

夫役の阿部サダヲの演じる結婚詐欺師も、言葉巧みに女を騙し金を奪い取る。それもこれも、妻の手の平で転がされているような感じがしてならない。この世で一番強くて怖いものんは、やっぱり女なのかもしれない。
最後に夫がスカイツリーのタワーの見える場所に、小料理屋を開く予定だったのが、最後の女、木村多江の家族に自分の未来の家族が見えのめり込んで行く。妻の里子には、その女の亡くなった夫の保険金目当てにといっていたけれど。

そこへ探偵の鶴瓶が訪ねてきてもめて、そこに女の息子が包丁で後ろから鶴瓶を刺してしまう。警察がくるが、男の子を庇って自分が刺したと罪を全面的に認めて捕まってしまい、結婚詐欺が明るみになる。
やはりこういうことって、いつかはバレてしまうのに。それに、このシーンの前に、妻が夫に嫉妬をして相手の女か、夫を殺そうと包丁を持って階段を下りる時、雨で滑って包丁を落としてしまう。その階段の下にあった包丁が、夫婦のこれまでの関係を終わらせるけじめとなったのかもしれない。
上手い具合に結婚詐欺を繰り返してきた夫婦だが、二人の関係はすでに壊れていたような、冷たい溝が出来ていた気がする。夫は刑務所の厨房で働き、カモメの鳴き声が聞こえ、妻は地方の漁港で働きながらカモメを見る。何かこの二人、また寄りを戻して夫婦関係を繋げることが出来そうな予感で終わるのだが。
監督の以前の作品で出演していた「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶が、背中に刺青してヤクザまがいの私立探偵役で、「ゆれる」の香川照之は、最初に不倫していた上司の役で死んでしまい、その弟の役と2役で出演。
騙される女に木村多江、田中麗奈、鈴木砂羽など豪華な脇役陣が良かった。その中でも、ソープ嬢の元彼の男で、いきなりドアを蹴り破って部屋へ入って来る暴力男。もしかして伊勢谷くんでは、とやっぱり的中。彼の大ファンだけにちょっと勿体ない役だと、出なくてもよかったのに、やはり監督の作品に出たかったのよね。
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I'M FLASH! 評価★★★

2012年09月12日 | あ行の映画
藤原竜也と「青い春」「ナインソウルズ」の豊田利晃監督が初タッグを組み、宗教団体の若きカリスマ教祖が直面する衝撃的な運命を描いた人間ドラマ。
ボディガードの1人で、ルイの存在にひかれながらも対峙することになる新野風を、藤原とは初共演となる松田龍平が演じる。

あらすじ:新興宗教団体の3代目教祖・吉野ルイ(藤原竜也)は、ある日謎めいた美女に出会うが、彼が引きこした交通事故によって女は植物状態になってしまう。教団幹部であるルイの母(大楠道代)は事故をもみ消すべく、新野風(松田龍平)ら3人のボディーガードを雇いルイを南海の島へ避難させる。やがてルイは、教団の秘密を暴く重大な決断を下すが……。(作品資料より)

<感想>豊田利晃監督が、ロックバンド、シーナ&ザ・ロケッツの同名曲から発想を得て作りだした、生と死をテーマにしたスリリングなドラマになっている。内容は「ライフイズビューティフル」新興宗教団体の3代目教祖・吉野ルイが、彼は、「死がすべて救いである」という教えを説き、カリスマ的人気を獲得していた。だが、交通事故で死の恐怖を味わったことから、布教への意欲を失い教団の解散を決意する。
ところがである、教団の収入源で贅沢三昧な生活をしている母親や、ゲイ(オカマ)の兄と姉たちが画策して、ルイを亡きものにしようと3人の殺し屋を雇う。建前はボディーガードとなっているが、実は母親から殺しを請け負い、ルイを暗殺する機会を狙っているというお話。

藤原竜也が、豊田利晃監督作品への出演を切望していたという、竜也自身が主演を務め、今までの舞台での声を大にして大袈裟に演技することを、監督の演技指導によって、自然な演技で全編をストイックに演技している。
まぁ、それがいい方向へ向けば、この映画は竜也の飛躍の作品となったと思うのだが、彼のイケメン度は抜群に好感度大にはなっている。特に、教祖の彼が追い込まれ、苛立ちと憔悴感が顔に出てニヒルな竜也が見られてカッコいいと思った。
その他にルイが交通事故を起こし、一緒に乗っていた女性流美に水原希子が、用心棒に雇われた松田龍平、ルイの母親に大楠道代、姉に原田麻由が、そして教団の幹部に板尾創路が、それぞれ脇役に徹している。

内容に文句をいうわけじゃないが、事故を起こした時、バイクの若者が死亡。その若者の家に謝罪に行ったのか?・・・そんな場面はなく、それに死亡事故となると飲酒運転していたルイは、一応罰せられるのにそういう刑事的責任は一切お咎めなしで、母親の差し金で全部もみ消したような話だけ。実際ではそういうわけにはいくまい。
ルイが宗教団体を解散すると言うのに、収入源を失くすのが困る母親が、自分の息子を殺してしまう恐ろしさ。跡継ぎは姉の幼い息子だ。始めはルイの用心棒だったのに、300万円で殺しを依頼され殺人を犯す松田龍平。龍平の演技は、父親の血を引いているからと言えば嘘になるが、あまり父親の役者魂のような演技ではなく、飄々として淡々としたあまり悪のない、つまり悪役には向いてない。どちらかと言うと、弟の翔太くんの方が私は好きです。
ルイが祈りで閉じこもるドクロの神殿での銃撃戦、ルイの部屋の白いベッドのような大きなソファとか、ルイが来ている白い上下の服とか、海の青い色と対照的で美しい。
ルイは見るからに孤独を抱え、海の中では自己を解放することができるが、陸に上がれば自由のない現実に縛られ生きている。海の中は、現実離れした世界観があり、息が出来ないしあの世みたいなもので、そこで魚と心を交わして水中銃で撃つ。
竜也の海に素潜りして水中銃で魚を獲るシーンの繰り返しの映像や、沖縄の風景など、音楽もスタイリッシュで違和感なし。見る人によって感じ方が違うと思うが、監督のこの作品への思いれが見る側に伝わってこないのが残念です。
2012年劇場鑑賞作品・・・91
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Virginia/ヴァージニア       評価★★

2012年09月11日 | は行の映画
「ゴッドファーザー」で第45回アカデミー賞作品賞など3部門を獲得し「カンバセーション…盗聴…」「地獄の黙示録」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した名匠フランシス・フォード・コッポラ監督が手がける幻想的なミステリー。
ミステリー作家が訪れたエドガー・アラン・ポーゆかりの街で現在と過去に起こった忌まわしい2つの殺人事件の真相を紐解くうちに、彼自身の過去も浮かび上がってくる。「バットマン フォーエバー」のヴァル・キルマーが街の秘密を探るうちに夢とうつつを行き交う小説家を、「SOMEWHERE」のエル・ファニングが主人公を導くミステリアスな少女を演じる。「ドラキュラ」などに出演した吟遊詩人トム・ウェイツがナレーションを担当。

あらすじ:著作のサイン会のためにアメリカ郊外の片田舎に訪れた小説家のホール・ボルティモア(ヴァル・キルマー)。7つも盤面のある呪われた時計台が不気味にそびえたつその街では、折しも数日前に身元不明の少女がまるで吸血鬼が成敗されたかのように胸に杭を打ち込まれた姿で殺されているのが発見された。
ミステリー小説好きの保安官ボビー・ラグレインジ(ブルース・ダーン)は死体を見せ、一緒に捜査し小説を書かないかとホールに持ちかける。スランプに陥っている彼は乗り気ではなかったものの、妻(ジョアンヌ・ウォーリー)やエージェントから次回作を促され、仕方なしに題材を求めに街へ出る。
歩いているうちに、ホールはかつてエドガー・アラン・ポーが宿泊し今は廃屋となっているチカリング・ホテルに辿り着く。その夜、ホールは不思議な夢を見る。V.と名乗る少女(エル・ファニング)とともに他愛ない話をしながら散策していると、チカリング・ホテルの前に出る。
なぜか入ることを拒むV.。一人ホールがホテルの中に入り経営者と話をすると、ホテルの床下には12人の子どもが埋められており、13番目の子は地獄に落ちたと言う。ホールが表に出ると、殺された子どもたちの亡霊と子どもを抱えてその後を追う男の姿を目にする。男を罵るV.。地下室へ戻っていく子どもたちと男の様子を見ていたホールは、何を書くべきか手がかりを掴んだ気になる。

<感想>本格的なデビューは低予算の恐怖映画だった巨匠、フランシス・フォード・コッポラ監督が、原点に立ち返って撮ったゴシック・ミステリー。アメリカの田舎町を訪れたニ流作家が、現在と過去にそこで起きた2つの殺人事件の真相を知ろうとする。コッポラが敬愛するエドガー・アラン・ポーの小説の影響と、彼自身が見た夢や実体験が織り込まれたストーリーは、虚構と現実、現在と過去との境界があいまいで、幻想的なムードを醸し出している。
それは老境を超えたコッポラの新少女映画で、そこにはコッポラが長い間心の中に秘めた少女というより処女といったほうがいいかもしれない。処女には危険な魅力が潜み、特別な霊能力が宿ると思われ、そうした特別な少女たちの住む場所を“霧のかかった海に囲まれた魔法の島”と例えて。

主人公を不思議な世界へと導く、ゴス系美少女をエル・ファニングが演じているのだが、エルちゃんの姿は、歯列矯正ブリッジを付け、ゴスロリ・ファッションに身を包み、ピンクの口紅とシャドウを塗った青白いメイク。
エル・ファニングの妖艶さと優美さは、コッポラ監督の娘ソフィアが監督した「SOMEWHERE」で見て、とても好きになり、彼女を起用しての映画を作ったヴァンパイア・ホラーでもゴシック・ミステリーでもなく、人生の終章にさしかかってのコッポラ自身の奥深くにあるものなのでは、と感じた。
そしてホールの前に現れる謎の少女、2つの世界をつなぐ少女V.(ヴィー)ゴスふうメイクが特徴で、バンパイアで過去の殺人事件の目撃者を自称している。
ホールが酒に溺れ夢を見る廃墟と化したチカリング・ホテルで、12人の子どもたちが殺されていたことを知る。孤児の少年少女を13人世話していた牧師が、彼らをバンパイアから守るために虐殺し、一人の少女だけが逃げ出し湖の対岸にいる若者グループのリーダー・フラミンゴに助けられたという。

何の手がかりも掴めない保安官事務所の面々に、主人公の小説家ホールも加わり、霊界とチャネリングを試みると、彼女を殺した犯人は“B”と示される。老保安官ボビーは、唐突にフラミンゴが犯人だと叫ぶ。
急いでフラミンゴのところへ向かった二人は、彼から一人の少女が数日前から行方不明になっていることを知らされる。
そして呪われた時計台に向かったホール。少女はまるで吸血鬼がそうさせるように、胸に杭が打ち込まれて殺されていた。泣く彼女を見てうろたえたホールは、時計台の階段を転がり落ち気絶する。

そして、V.の正体、二つの事件の真相、さらにホール自身の問題が浮かび上がってくるのだが。三流小説家ホールが、創作意欲と人生に行き詰まり田舎町を訪れ、酒びたりの末夢で見た、大好きなエドガー・アラン・ポーを主人公の創作を助ける役割で登場させ、夢に見た幻想の世界を小説に書き、そこそこに売れたお話。
そこには、前に見たコッポラ監督の「コッポラの胡蝶の夢」(07)に似たような、夢か幻か妄想のようなそんな、コッポラ監督独特の探していたエンディングは自分自身だったという。
2012年劇場鑑賞作品・・・90
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踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 ★★★★

2012年09月10日 | アクション映画ーア行
1997年のテレビ放送開始以来圧倒的な人気を博しこれまでに3度の劇場版公開、2本のスピンオフ映画を輩出した刑事ドラマ『踊る大捜査線』シリーズ完結編。前作「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」で係長に昇進した青島に降りかかる最後の事件を描く。「アマルフィ 女神の報酬」の織田裕二、「ステキな金縛り」の深津絵里、「日輪の遺産」のユースケ・サンタマリア、「聯合艦隊司令長官 山本五十六」の柳葉敏郎らが出演。監督は、同ドラマテレビシリーズ演出や劇場版の監督を務めてきた「サマータイムマシン・ブルース」の本広克行。脚本は同シリーズスピンオフ映画「容疑者 室井慎次」ではメガホンを取った君塚良一。

あらすじ:警視庁湾岸署管轄内で開催されている国際環境エネルギーサミットの会場で誘拐事件が起こり、さらに数時間後には被害者が射殺体で発見されるという事件が発生。警察が押収した拳銃が使用されたと見られ、全ての捜査情報を文面にて管理官・鳥飼(小栗旬)へ報告すること、所轄の捜査員には情報開示されないことが捜査会議にて発表される。
異例と言える捜査方針が敷かれる中、第2の殺人事件が発生。さらに、今では湾岸署署長となった真下(ユースケ・サンタマリア)の息子が誘拐されるという第3の事件までも起こる。青島(織田裕二)は疑念を抱きつつも事件解明に向け懸命に捜査するが……。(作品資料より)

<感想>青島の負傷やすみれの被弾、さらに青島の重病疑惑・・・と互いのピンチを一番近くで支え、戦友のような絆を深めてきた2人。意識し合いながらも中々恋愛に発展しない2人だったが、今回は“若夫婦”に扮して冒頭で、商店街の惣菜店に張り込み捜査を、息のあった掛け合いで、同僚以上恋人未満の関係で良い感じだ。
そんな始まりから、一転して警察の保管庫から持ち出された拳銃で、活動家の銃殺死体が発見される。
みずからの保身のみを考え、権力争いを繰り広げてきた警察上層部。完結編では、誘拐銃殺事件を起こした警察官の久瀬(香取慎吾)の犯罪を隠蔽した上、罪のない人間を久瀬の身代わりとして逮捕。
これまで組織の官僚主義に対して、ひるまずに正義を貫いてきた青島が、この最悪な状況に真っ向から挑む。最後にふさわしくシリーズお約束シーンも、領収書紛失や神田所長の不倫メール流出など何かと物騒な湾岸署内。

今回は、中国人の王刑事が、捜査本部で配る飲み物の注文を間違え、大量の缶ビールを発注してしまう。注文ミスとはいえ、署の予算で酒を買ったとバレたら大問題。青島たちは必死で隠蔽工作に走るが、・・・。
湾岸署に捜査本部が設置されるも、本部長の鳥飼は、捜査から所轄を排除。そして第二の事件が起きるが、殺されていたのは、6年前の少女誘拐殺人事件の被告で、2週間前に無罪判決で釈放されていた男だった。

それに、石川を逮捕により捜査本部は撤収。だが青島は警察の隠蔽に加わえ、6年前の少女誘拐事件を久瀬以外にも担当していた人物がいたことに気づく。真相に近づく青島に対し、鳥飼は石川への不当捜査による誤認逮捕、自白強要を行ったとし、辞職を命ぜられ、さらには、新本部長に室井を指名して、責任をとるよう命令する。
最初は反目しあっていたものの、しだいに固い絆で結ばれていく青島と室井。青島は現場の刑事が正しいことができるよう、出世して警察を変えて欲しいと室井に訴え、室井も上層部からの圧力と闘ってきた。だが揃って、辞職勧告が出され、2人の約束は守られるのか?・・・。

ところが行方をくらましていた久瀬が、真下の息子を誘拐、それを知った青島は、鳥飼の制止も聞かずに捜索へと飛び出す。室井は本部長として指揮を執る。6年前と同じ日に、警察官を名のって少女を誘拐し、車で逃走、と当時を再現しているかのような久瀬の犯行。やがて衝撃の事実が明らかになる。
それは、誘拐された少女は鳥飼の姉の娘で、もっと早く警察が突き止めていれば殺されなくてすんだものを。鳥飼の悔しさが、今になって警察のズサンさと隠蔽工作を知らしめるべく、真下の息子を誘拐したのだ。
さて、最後の捜査は足で。自分たちの現場、お台場の土地勘には絶対的な自信を持つ青島ら所轄の面々。追跡、検問、張り込みなど彼らの地道な捜査スタイルは、亡き和久さんの“足”を使って捜査するという教えを思い起こさせる。
久瀬を追跡シーンでは、警察手帳を取り上げられ、警察車両が使えない青島が自転車で、それからはシリーズ史上もっとも走る映像が見られる。予告で道路でバタリと倒れた青島、決して銃弾に撃たれて倒れたのではありません。青島コートを着て走るのに、疲労困憊して転んだんです。

6年前の誘拐事件リミットの時間2時までに、真下の息子を探さないと。焦る青島、そうだバナナだ。バナナが入っている倉庫を見つけ、和久の甥っ子と入るも、久瀬はもう完全に悪人になっていた。そこへ、身体の不調を理由に退職届をだし、故郷へ帰ったとばかりおもっていたすみれが、帰郷のバスでバナナ倉庫へ突進してくるのには、口あんぐりで驚いた。
実は、やみくもに大型バスで突っ込んだ時、倉庫にいた誰かが怪我しないかとヒヤヒヤもんでした。映画だからなのか、みんな無事でよかった。最後も、青島がすみれに「帰るな」と照れながらボソっと言う言葉が最高にいい。
「THE FINAL」本当にこれで終わるんだと思うと、エンドロールに流れる昔の映像に涙がこぼれ、正直まだ終わって欲しくないなぁと思った。
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コロンビアーナ  ★★

2012年09月03日 | アクション映画ーカ行
リュック・ベッソンが生んだ『ニキータ』のタイトルロール、『レオン』のマチルダの系譜に連なる新たなる孤高のヒロインが誕生した。演じるのは、『アバター』でブレイクしたゾーイ・サルダナ。長い四肢を活かしたしなやかでセクシーな“仕事”ぶりが観客を魅了するに違いない。さらに、惨劇の中にあって大きな瞳をそらすことなく敵に対峙し、強固な意志で逃げ延びる少女時代を演じたアマンドラ・スティンバーグの存在も光る。ベッソンが製作と脚本を担い、メガホンを委ねられた『トランスポーター3 アンリミテッド』のオリヴィエ・メガトンが “ジェーソン・ボーン”張りのシャープなアクション・シーンを演出している。

あらすじ:南米コロンビアの首都ボゴタ。9歳の少女カトレアは目の前で両親を惨殺され、たったひとりでマフィアの一味から逃走する。父から教えられたとおり叔父エミリオを頼って米国シカゴへ向かう。いつか必ず父と母の仇を打つと心に決めて。15年後、美しく成長したカトレアは腕利きの殺し屋としてエミリオが手配した仕事を次々とこなす一方で、宿敵ドン・ルイスへの復讐も忘れてはいなかった。そして、再び悲劇が起きる。(作品資料より)
<感想>リュック・ベッソン制作・脚本の本作、「レオン」の続編だとか、「ニキータ」のその後だとかいろいろ言われていたが、オリジナルから20年以上も経てば続編のタイミングは完全に逸しているし、オリジナルのヒロイン再登場も不可能となれば、それぞれのいいとこ取りして別キャラでリメイクというのが本音ですよね。
ヒロインのアクション、ゾーイ・サルダナが暗殺者となって敵にリベンジしてゆく話なのだが、注目すべきは、幼少期を演じた女の子(アマンドラ・スティンバーグ)の運動神経の素晴らしさに驚く。

撮影時12歳だった彼女は、軽量感と柔軟性を活かした見事なパルクールを披露して半端じゃない動きを見せてくれます。少女期を描いた前半だけでも、充分見応えありですよ。
大きくなってのカトレアには、ゾーイ・サルダナが演じており、リュック・ベッソン好みのクールで強い女。しかも抜群なプロポーションに、褐色の肌が眩しいセクシーな美女。
少女だったカトレアの目の前で組織のマルコに両親を殺害され。カトレアも殺そうとしたが、逆に手の平にナイフを刺されて傷を負わされてしまう。その後裏稼業に従事する叔父に家で育ち、プロの殺し屋として成長。変装術、格闘術、狙撃術、相手の先手を打つ頭脳、とどれも超一級品だ。

大人になったカトレアと、麻薬組織のマルコとの一対一の肉弾戦があるのですが、相手の拳銃などの武器を瞬時に奪う場面で、タオルを使って敵の首を絞め殺すシーン、ところがそのタオルをとられてしまい反対に女の首を締め付ける。すかさず自分のベルトを外して首を絞めるもかわされる。敵が拳銃を手に、危く撃たれそうになるも、拳銃をバラバラに分解して相手の首に拳銃の破片を刺すとは。
しかし、彼女が余りにも両親の復讐に熱が入ったため、敵から彼女のことを調べられ、伯父さんやその母親までも殺されてしまう。それに、普通は殺し屋の女が彼氏なんて作らないでしょうに。ダニーという絵描きの青年と恋仲になり、恋人がカトレアの寝顔をケータイで隠し撮りして、その写真がパソコン上に流出。殺し屋であるカトレアの存在が発覚し、警察やそしてマフィアを相手に闘うはめになるとは。

カトレアを追いかけるFBIのロス、凶悪犯として追う始めるが、やがて彼女の標的が司法取引で身の安全を守られているマフィアだと分かる。この辺は見ていてイライラする。
それでも基本構成が自作の再利用なので、どっかで見たことあるようなシーンが多く、どれほど上手く演出されていてもオリジナルな発見はあまりないといっていい。殆ど「レオン」のリメイクだった「レッド・サイレン」や「トランスポーター3」のオリヴィエ・メガトン監督の手堅い演出には称賛に値するのだが、観客がベッソン作品を求めてやまない“修羅場の中に垣間見える無垢”という期待には達してないと思う。
しかしながら、一瞬だけそれはあったのよね。両親を目の前で殺され、必死の思いでギャングの追跡をかわし、米国大使館へ逃げ込んでも涙ひとつ流さなかった幼いカトレアが、アメリカの土を踏んで叔父のエミリオと抱き合った瞬間、涙があふれ出す名シーンだ。
9歳という設定のカトレアを演じたアマンドラが、総てをかっさらった作品でもある。確かにゾーイも無茶苦茶にカッコいいんだけど、美少女アマンドラの一撃には敵わないでしょうね。したたかな商売人に成長したベッソンならではのエモーショナルな復讐劇になってます。
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