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パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

苦役列車 ★★★★

2012年07月21日 | か行の映画
お金も学歴もなく、彼女もいないダメ男だけど、どこか人間臭くて放っておけない19歳の日雇い労働者の主人公、北町貫多のバイト生活をユーモラスに描いた青春映画。芥川賞受賞小説を、山下敦弘監督が、森山未來、高良健吾、前田敦子と旬のキャストを揃えて映画化。

まず森山未來の凄まじいずば抜けた演技力に圧倒された。
大ヒット「モテキ」の後に、本作を選んだ彼が、タバコや酒の匂いが漂ってきそうなダメっぷりがスゴイ。それに「あそこが臭い」などのお下劣卑猥な言葉が次々と飛び出して、稼いだ金も風俗通いですぐに使ってしまう。挙句に家賃をため込んでアパートを追い出される日に、部屋に○○○をお土産に残す仕草にも驚かされ、その変身ぶりが素晴らしかった。

これは私小説だから、主人公貫多を演じることは作者の西村さんを演じていることになるわけで、淡々としたお話の中で世界観としては暗いけれど、どこかで19歳という年齢を感じさせ、ねじれてはいるんだけれど青春の一区切りとしての若さが感じ取れた。
父親の事件がきっかけで一家離散するなど、10代のころの貫多は情状酌量の余地がある。溜め込んだ負のエネルギーを、プラスに転化できる日がくるのか。

同じ日雇い労働者の仲間に、高橋という歌が上手い中年のおっさんがいる。彼の夢は歌手になること。高橋が現場で足を骨折し指を切断という大怪我するが、貫多とは似た者である高橋のその後にも注目したい。それは貫多を導いてくれる役回りだから。

親友とはお金を貸してくれる、女友達は、セックスさせてくれる、と言う短絡思考のために、次々とトラブルを起こす貫多。原作にはない、古本屋でアルバイトをしている大学生の康子と握手したら、いきなり手を舐めるとか行動が唐突です。

貫多は、友達という関係が分からないんですよね。女性と出会って食事したり、映画を見たり遊びに行くというプロセスを知らないから「友達として」という関係をイメージしても、風俗まみれで経験も知識もない。だからああいう行為にでてしまうのではないかと。
3人でボーリングに繰り出し、高良さんと前田敦ちゃんと季節外れの海へ出かけてはしゃぐシーンは、思わず「青春だなぁ」と甘酸っぱい気持ちにさせ、貫多の青春にとってはピークでしょうね。本当に楽しそうでした。バカ丸出しで、自分にとことん正直な生き方は以外と気持ちいいかもですよね。
AKB48からの卒業を控えた前田敦ちゃんが、下着姿やキスシーンに挑んでいるのも見どころ。だが貫多とはキスは敦ちゃんの頭突きで破れるのだ。明るいハッピーエンドとは異なるが、芥川賞を受賞した男のサクセスストーリー、見終わった後に前向きな気持ちになれる。
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