ぶらぶら人生

心の呟き

『私の小説教室』

2023-07-29 | 身辺雑記
  駒田信二(1914〜1994)著 
    『私の小説教室

 下掲の本は、昭和60(1985)年 集英社刊の文庫本。


    


 昔、求めた文庫本は、文字が小さすぎたり、紙面が黄ばんでいたりして、手に取ってみても、読む気になれないものが結構ある。
 が、この本は、その弊害がなく、先日、帰宅した際に、施設へ持参した本である。
 (幾箇所かに、ラインが入っているので、今回は再読ということになる。)

 駒田信二が、小説家、評論家、中国文学者であること、昔の旧制高校時代には、松江で、かなりの期間、教師を勤めておられたこと、後年には、朝日カルチャーセンター小説教室において、文章作法を指導しておられたことなど、活躍のあらましは知っている。
 が、それよりも、私が強く記憶しているのは、昔、文芸雑誌<文学界>の誌上で、同人雑誌評を書いておられたことである。

 70歳になるまで、私自身、地方の文芸雑誌の一員として、小説まがいの文章やエッセイを書いていた。
 そこで、<文学界>を、かなり長期にわたって購読し、掲載された小説を読むと同時に、巻末の「文芸雑誌評」に、関心をもっていた。

 時折、私の作品も取り上げてもらった。特選は得られなかったが、ベスト5に選ばれたことはあった。
 その作品は、朝日新聞の小さなコラム欄でも、時を同じくして取り上げられた。
 ペンネームで作品を発表していたので、親しい友達にも、職場の人にも、私の作品だと気づく人はなかった。
 ただ父だけが、朝日新聞の記事を読んで、私の作品かと尋ねた。
 親の不思議な勘に、私の方が驚いた。当時は、下宿生活をしていたので、私の日常を知るはずもない父が、どうして分かったのだろう? と、内心で思ったものである。

 大昔、同人雑誌評を書いておられた駒田信二に、私の作品も読んでもらったという経緯があり、その名前は、しっかりと記憶している。

 『私の小説教室』には、駒田信二自身の「作品」の一部が、引用の形で載っていた。生まれが大正時代の初めごろの方であるし、その小説の文体は、少々古風だなと思った。
 今日は、私の方が評者の立場に立って、作品の一部を読ませてもらったことになる。

 しかし、今日読んだ『私の小説教室』そのものは、決して古風な書き方ではないし、内容も充実している。
 特に、第二章の「私の文章心得十章」には、具体的に、悪しき例文も載せてあって、文章力を高めたいと思う人には、大いに参考になる。

 文章を多く書いても、自分の悪い癖や明らかな欠点などは、意外に自分では気づきにくいものである。
 再読しつつ、私自身、改めて反省することもあった。

 考えさせられたり、学んだり、楽しんだりしながら読了。
 


コメント
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