ぶらぶら人生

心の呟き

黄色の目立つ日 その4 柿の実

2006-10-17 | 散歩道
 朝の散歩で、石蕗の花や泡立草の黄を存分眺めて、家近くまで帰ったとき、隣家の柿の実が黄色みを増しているのに気づいた。
 樹下に佇んで、青い空に映える柿の実を眺めた。

 「おばちゃん、かきが いっぱい さいてるね」
 遠い昔、幼い姪が柿の木を指差して言った言葉がよみがえった。
 私は、その言葉を訂正などせず、
 「ほんとだ! たくさん咲いてるね」
 と答えた。
 三歳の姪は嬉しそうに、
 「いっぱい いっぱい さいてるね」
 と繰り返しながら、飛び跳ねていた。

 幼児は、時に詩人だ。
 大人になれば、柿が咲いてる、とは言わないだろう。しかし、鈴なりの実を花と感じる感性は、もはや失われているのだ。
 実がなる、という言い方が正しい日本語だという常識的な知識は、理屈っぽく教えなくても、そのうちおのずから習得するであろう。
 私は、あえてそれを教えなかった。
 むしろ、「柿が咲いてる」と言えなくなった大人の感性を、そのとき私は寂しく思ったのだった。
 幼児は、巧まず詩人になれる。
 一般の大人は、いつの間にか、みずみずしい、柔軟な感性を失い、知性や常識でしか物事を判断できなくなってしまう。
 それはちょっと寂しいことではないだろうか、と今でも思う。
 
 姪も、今は平凡な大人になって、「柿が咲いてる」とは言わないだろうけれど……。
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黄色の目立つ日 その3 名を知らぬ花

2006-10-17 | 散歩道
 石蕗の花や泡立草の黄に見とれながら歩いていると、崖にひそやかに咲く黄色い花を見つけた。
 名前を知らない。
 「まあ、可愛らしいこと!」
 と、挨拶をし、カメラに収めて、行きすぎる。
 その気になって眺めると、名を知らぬ、この花は、小さいことを卑下もせず、崖のあちこちに、命を輝かせて咲いている。
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黄色の目立つ日 その2 アキノキリンソウ

2006-10-17 | 散歩道
 「アキノキリンソウ」は、「泡立草(あわだちそう)」ともいうらしい。
 よく似た花に、丈高く伸びる「背高泡立草」というのがある。こちらは外来種で、実に憎憎しげに蔓延る。
 「背高泡立草」の方は、かなり前から、黄色い花を大げさにつけ、目立ち始めていた。何しろ、大柄だ。優に二メートルはあるだろう。よほど生命力が強いらしく、野草としてはかなり頑丈なススキでさえ、生存競争には負けてしまうと聞いたことがある。

 在来の「泡立草」(「アキノキリンソウ」)は、「背高泡立草」に似てはいるが、背丈も、私の腰くらいで、姿形もずっと趣がある。「背高…」に少し遅れて、黄の花が目立ち始めた。道野辺が今朝あたり、急に黄色を増した感じだ。
 群生して咲きそろえば、かなり黄色の目立つ花である。

 今朝は、友人の宅に、旅の土産を届けるために、海に下りるのをやめ、久しぶりに平坦な旧国道を歩いた。
 違う道を歩けば、当然だが風景が変わる。
 一面黄色の田んぼに出会った。休耕田に「背高泡立草」が、わがもの顔に咲き誇っているのだ。時代の波だから仕方ないのだろうか、と思いながらも、農政のどこかが間違っているのでは……と考えた。父祖伝来の田んぼが、黄色い華やぎの奥で、泣いているように思えてならなかった。
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黄色の目立つ日 その1 石蕗の花

2006-10-17 | 散歩道

 散歩中、ひときわ黄色が目立つと感じる朝だった。
 画家の香月泰男は、「秋の色は赤」「赤は秋だ」と書いていることを、<水引草>についてブログに投稿したとき、引用し紹介した。
 今朝は、香月泰男の表現を言い換えて、「秋の色は黄」「黄は秋の色だ」と言いたくなった。

 まず目に入ったのが、石蕗の花だった。
 昨日も咲いていたかどうか。
 「あっ、ツワブキ!」と気づいて足を止めたのは、今日が初めてである。

 中・高の六年間、山陰本線の列車に乗って、H 市の学校に通った。
 沿線の崖には、この季節から初冬にかけて、石蕗の花が目だった。日本海の強い海風に耐えて咲く姿が、けなげに見え、気弱な私は、励まされているように思ったものだ。
 好きな花の一つである。
 路傍で見かけたので、わが家の庭にも咲き始めているだろう、と思いながら散歩から帰った。
 早速、前庭に回ってみると、まだこれからといった感じだが、開花したものもあったので、カメラに収めた。(写真)
 日ごとに、鮮やかな黄の花の数が増え、庭が静かな華やぎを見せるだろう。

 「石蕗の花」は季語としては、冬。寒さの到来を告げる花でもある。 

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