○…戻ってきたが、まだ休養モードである。前に見た浮世絵展が日曜で終わるのでまだ買ってなかった図録を市美術館まで、キイロイトリとともに買いに行き、近くの日本庭園の新緑を見て少し歩いたり、ソラリアで映画「アメイジング・グレイス」を見たりする。
湯治中に旅館でちょうど木田元『反哲学入門』(新潮文庫)をぼーっと読んでたから、「所詮、黒船だ列強だなどといってても、おまえらの産業革命は奴隷制度で成り立ってて、結局グローバリズムの拝金主義なぞ根本的にはその延長ではないか?」てな気分が残っていて、そのまま映画を見始める。これは時代劇(確かに、江戸時代後期の話)である。派手ではない淡々とした地味なドラマが少しずつじわじわと展開していくが、単に子供っぽいお涙頂戴や恋愛と感動なんてな安い映画ではない。奴隷船の悲惨な実態(それに近い劣悪な労働条件で使い捨てられていく労働者群のことは、今現在進行形で起こっている事態でもある)や、金権利権にまみれた(というか、そういう財界が政治献金を送っているからその「国民の」代弁者である)国会議員群など、非常に21世紀の現代の衆愚政治や拝金主義の問題に通じるシニカルな部分の多い映画で面白い。「知らないために、見えないために、人は人に対して平気で残虐になる」という問題。前々回の映画同様、これも英国ドラマ的におなじみな俳優も出てくるので楽しめる。時代劇に喩えると、ヨアン・グリフィズが杉良太郎か役所広司みたいに粘り強く闘う(殺陣でも特撮でもない)。小ピットの役のBenedict Cumberbatchは絶対何かで見たことあるのだが、ぱっと思い出せなかった。しかし、他にもなんか見たことあるぞ、と思ったら典雅に登場、ユッスー・ンドゥール先生じゃないですか(俳優出演なんて初めて見ましたよ!北島三郎友情出演的な勢いでびっくりっすよ)。また、こないだジョージ5世もやってた恒例のマイケル・ガンボン先生はいろんなおいしいところにいつも出てくる大滝秀治のような人だ(あの「にやり」がいいね)。いい味出してるRufus Sewellはやっぱり、こういう風に使わないともったいないよね♪という役である(って、「ツーリスト」の方に言ってやりたい気分なのでございます^^だいたい、そういうのって欧英圏でないとウケないんじゃないか、と思ったもんねツーリスト)。それに、田口計みたいなToby Jonesがnoblesse oblige、なんざあ憎いさね。その他にもいろいろ名言ありで、面白かったのは18世紀後半から19世紀初めにかけての、独立戦争とフランス革命とナポレオンとくるくる変わる英仏米の状況とか、議員席の男性の髪型がちょっとずつ変化していくところ(^^;;)とか、ウィルバーとピットの若者期と中年期のメイクの分け方とか(※さすがにフォックスは、若い時代でも若くなかった・笑)、などなど。
当然、今日のBGM: Amazing Grace / John Newton この歌を聴くと、これからはこの映画を思い出しそうだなあ、というのがいい。(20110508)