自民党の勝利は経済対策、すなわちアベノミクスへの期待感の表れだと、概ねメディアなどの共通の認識のようである。内容はともかく、期待感という意味では、ネーミングといい3本の矢といい、一般国民には解り易かった。そうした意味での成功であるが、内容的には大きな問題を先送りにしている。
2本目の矢は、「機動的な財政出動」と表現されているが、土建屋が泣いて喜ぶ公共事業の復活である。野党時代に打ち出した、国土強靭化計画はいかにもネーミングが悪かったのか、最近は持ち出さない。
この国が財政破たんをきたしたのは、多くの理由はあると思われるが主に、公共事業投資である。土木事業によるバラマキは、地方の自然環境を破壊して、政・官・業の癒着を生み出している。
公共土木事業は、本来地方になくてはならない産業の形を、大きく変えてしまた。自らの力で生きることができない、産業ばかりになってしまった。そうした自立性を失った、地方の産業は何時も公共事業が降って湧くのを待つことになる。降って湧かなければ、陳情をするのである。
政治家たちはそれを待って、おもむろに土木事業を地方に持ってくる。田舎に来てよく見ていただきたい。使われることがほとんどない得体のしれない構造物が、立ち並んでいる。
アベノミクスの第2の矢は、単なるバラマキである。
この国の累積財政赤字は、GDP比220%になっているが、2020年までは財政再建には取り組まない方針である。バラマキを行って景気回復をするのは、一時のものでしかない。バラマキをやって財政再建に取り組めるわけがない。2030年には、GDP比で270%になると予測されている。
日本は貯蓄率が高く、国債の90%は国内企業などが購入しているため、安定しているとされているが、アベノミクスの第1の矢の金融緩和によって、国債の金利が高くなれば、この予測も一気に加速し悪化することになる。
赤字を減らすには質素な支出と、謙虚な事業計画がなされなければならない。デフレが困った困ったと言うのは、企業家や投資家ばかりである。デフレは財政に健全であるといえるし、謙虚な姿勢で臨むのが基本にもなる。
アベノミクスは真逆のことに取り組もうとしている。防御姿勢をとらないボクシングのようなものであり、大変危険である。困ったことに、そうしたツケは次世代の問題として先送りして、安倍は突き進むばかりである。そのエネルギーを今回の選挙で国民は与えてしまったのである。