田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

世界で一番ゴッホを描いた男(中國梵高 China's Van Goghs)

2018年12月02日 16時22分03秒 | 日記

「中國梵高 China's Van Goghs」の画像検索結果

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 中国・深セン市近郊の町でフィンセント・ファン・ゴッホの複製画を描き続けている男が「本物のゴッホの絵を見る」という夢を実現するため、アムステルダムを訪れるまでを描いたドキュメンタリー。中国・深セン市近郊にある「大芬(ダーフェン)油画村」。ここでは世界の有名画家の複製画制作が産業として根付いており、世界市場の6割ものレプリカがこの地で制作されていると言われている。出稼ぎでこの町に来たチャオ・シャオヨンは独学で油絵を学び、ゴッホの複製画を20年間も描き続けている。そんなシャオヨンは、いつからか本物のゴッホの絵画を見たいという夢を抱いていた。ゴッホが実際に描いた絵を自身の目で見てゴッホの心に触れ、何か気づきを得たいという思いは日増しに強くなり、その夢を実現するため、シャオヨンはゴッホ美術館があるアムステルダムの地を訪れるのだが……。(映画.comより)

 

 

 

 

 こんな世界があるのですね。そもそもは1989年、香港の画商が20人の画工を連れてきたのがこの村の始まりなんだそう。今では一万を超える画工が、日々複製画の制作に取り組んでいます。主人公の趙小勇は、出稼ぎでこの街にやって来て職を得、独学でゴッホの複製画10万点以上を家族とともに描いてきました。元々才能があったのですね。本物を見たこともないのに、写真だけを見て絵を描くのです。映画では、たくさんの若者が、暑い中ランニングシャツ一丁で絵を描く姿が何度も映ります。はっきり言って、職にあぶれて流れ着いた者もいるわけです。それでも、彼らは写真だけを見て、より早く、よりきれいに仕上げ、挙句に買いたたかれたりもするのです。

 もちろん、どんなに教えても描けない奴もいます。教えるほうも、教えることに慣れてないのか、どこをどう直せという具体的な指示が出せないまま「描き直せ」などと言うものですから、結局同じものが出来上がってしまい、また叱られる、という繰り返しになることだってあるようです。しかしながら、ただの素人がこんなに描けるのか、と感嘆するほど、やっぱり皆上手に描けるようになってゆくのです。すごいですねぇ、凡人な私はただただ驚きました。こんなことが、まったく絵の教育を受けてない集団において、可能なのですね。

 複製画を描かれるのは、ゴッホだけではありません。ここではありとあらゆる複製画が制作され、世界中に売られてゆくのです。そんな中、リーダー格の趙小勇は、いつか本物のゴッホを見てみたいと夢を描くようになります。取引先ブローカーの「アムステルダムまで来ればいいよ。案内するよ」の誘いもあり、妻に「お金がないわよ」と言われつつの決心。仲間とともにとうとう念願の訪問となります。

 しかし、どこかにそれなりに展示されていると思っていた自分の作品が、路上の土産物屋で雑多に売られていたことにまずショックを受けます。よくわからないような安いリュックなどと同等に並んでいる・・・。ブローカーもこうして地元で見ると、スウェットみたいなのを着た普通~のおじさんだったり。そして、実際に美術館でゴッホを見てみると、根本的に筆遣いから違うじゃないですか。少なからずショックを受けるわけです。

 そして、中国の一つの村の現実を描いた前半とは打って変わって、後半はアムステルダムでの趙小勇の「ゴッホと自己を見つけるための幻想旅」となります。夢で逢えたのはゴッホだったのでしょうか。これほどの違いがわかった今、自分は今までと同じように描けるのだろうかと。しかし、当時のゴッホは貧しかったため、ふんだんに絵の具を使っていたわけではなかったことを理解していた趙小勇は、絵画そのものだけではなく、展示や保存の方法にまで感動していたのです。

 街全体がアートなアムステルダム。いっぱしの芸術家として、ゴッホの幻まで見た趙小勇はしかし、いろんなインスピレーションを受けて前を向くのです。

 すごい映画でしたね。贋作と言えども、これだけ描こうと思ったらかなりの才能が必要とされるはず。自負する気持ちもわかるような気がします。いや、私才能ないので、わかってないかもしれませんけれど。ただ、この幻想体験は、凡人にはうらやましい限りです。趙小勇、今はどうされているのでしょうか。

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