田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

パリ3区の遺産相続人(My Old Lady)

2015年12月14日 07時16分04秒 | 日記

 パリの旧市街マレ地区。疎遠だった父を亡くしたマティアス・ゴールド(ケヴィン・クライン)は、相続した遺産のアパルトマンを調べるためにニューヨークからやって来る。離婚3回、子どもはなく、持ち家を処分して借金だけが残った彼にとって、負け犬人生をリセットするチャンスだった。部屋数が多く、庭付きのアパルトマンは高く売れそうだと期待するが、誰もいないはずのそこには、英国生まれの老婦人マティルド・ジラール(マギー・スミス)が住んでいた。驚いたことに、フランス伝統の不動産売買制度“ヴィアジェ”によって、元の所有者であるマティルドが亡くなるまで売却できない上、毎月2,400ユーロを年金のように支払い続けなければならないという。頭を抱えるマティアスだったが、ニューヨークに帰る金もなく、マティルドから部屋を借りることに。(moviewalkerより)

 

 

 

 こう言う制度がフランスにあるってことを初めて知りました。文化の違いだとは思うのですが、ケビン・クライン同様、「人の命で賭けをするなんて」とも思います。

映画は、「人生ボロボロな男」や「ヴィアジェ」などという始まりに比べ、お話はどんどん複雑になってゆき、しまいには「それ、あかんのちゃう?」と思うほどの展開を見せます。なんなんでしょうねぇ。この出演者とこのアパルトマンに、この話は重すぎるんじゃないか、と思いました。

さて、いつも自分と母をほったらかしにしていた父親が死に、彼は唯一息子にパリのアパルトマンを残しました。これを売っていくばくかのお金を手にしたら、人生立て直せるかもしれないと、ニューヨークからパリへとやってきた冴えない男ケビン・クライン。パリ郊外の庭付き一戸建て。高く売れるはずのアパルトマンには、なぜか住民(マギー・スミス)が。

フランスの「ヴィアジェ」とは、こうです。例えば、まともに買えば高価で手が出ない様な物件があったとします。しかし、そこに人が住んだ状態のままお安く買い取り、住人には毎月いくばくかの家賃(?)を支払い続けます。不動産の所有権は買った人間に移り、住んでいる人は生きている限りそのまま住むことができます。住民が亡くなると当時にそのアパルトマンは買い手のものとなり、あとは自由に使うことができます。

しかしながら、予測できないのは住人の寿命です。実際、80歳や90歳だからと安易に買ったものの、老夫人がどんどん長生きして100歳を超え、買った人の方が先に死んだという事例もあるそうです。もちろん、逆に半年ほどで亡くなってしまい、とてもお安く住居を手に入れたという例もあるそうですから、これはまさにバクチですね。日本の「担保」のように、上限があるものではないですからね。フランス政府は、不動産取引の活性化と高齢者対策の双方で推進したようです。確かに、売ったほうにとっては、住まいと生活費の不安がないまま死ぬまで暮らせるのですから、万全の高齢者対策といえるのかもしれません。

ともかく、あてが違ったケビン・クラインは途方に暮れ、彼女たち(実際マギー・スミスは娘のクリスティン・スコット・トーマスと同居していた)に黙って家具や調度品を売りさばいたりしながら、こっそりマギーの主治医に健康状態をうかがいに行ったりも(笑)。しかしながら、彼女は健康そのもの、「あなたの方が先に死ぬわよ」と主治医に言われて返す言葉もありません。

またこの娘とやらも、すごくしっかりしていてまぁきついことこの上ない。フランス女性だから仕方のないところはあるのでしょうが。なんで所有者がこんなボロカスに言われなあかん、と慣れない私は少しむっとしたりもしました。

しかし、すべてに理由があったのです。なぜケビンの父親はこのアパルトマンを残したのか。そしてここにどうして老夫人が住んでいたのか。すべてが明らかになる過程は壮絶です。ちょっと話練りすぎでは?と思うくらい。

でも出演者たちはさすがの名演でした。小さなフランス人(不動産屋さん)のドミニク・ピノンも味のある存在感。バックは花の都(死語?)パリ。目には楽しい映画でした。疲れていない時にどうぞ。

コメント (2)
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