田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

海と大陸(TERRAFERMA)

2013年04月29日 15時42分42秒 | 日記

 

 イタリアの俊英エマヌエーレ・クリアレーゼ監督が、地中海の小さな島を舞台に、将来に不安を抱えるある家族と、島にやってきた難民の母子の心の交流を描いたドラマ。かつて漁業で栄えたリノーサ島も衰退の一途をたどり、父を海で亡くした20歳の青年フィリッポも、伝統の漁師を続けようとする祖父や、漁業に見切りをつけて観光業に転じた叔父、本土で新生活を始めたいと願う母との間で戸惑っていた。そんなある日、フィリッポはアフリカからの難民を乗せたボートを発見し、幼子を連れた妊娠中の女性をかくまう。しかし、この出来事がやがて波紋を呼び、フィリッポの家族はそれぞれの人生を見つめなおすことになる。第68回ベネチア国際映画祭では審査員特別賞を受賞した。(映画.comより)

 

 

 う・・・ん、短くまとまった映画でしたが、いろいろ考えさせられましたね。

舞台はイタリアでも、本土よりずっと南の小さな島、リノーサ島。昔は漁業で栄えたこの島も、今やすっかりすたれ、漁業を営むのは主人公フィリッポの祖父一人となってしまいました。ボロの漁船は傷むばかりで、フィリッポの母ジュリエッタは、今なら補助金を受けて廃業することができるから、街へ移ろうと言います。しかし、頑固者の祖父は聞く耳を持たない。フィリッポは海で父を亡くしていますが、叔父はさっさと観光業に乗り替え、夏のバカンスシーズンともなると大忙し。

ある早朝、まだ薄暗い頃。漁に出ていたフィリッポと祖父は、見なれぬ船から海へと飛び込み、溺れかけている人々を発見。ともかく、海の男の掟として“溺れている人は助ける”と、船に乗れるだけの人を救助。しかし、彼らは言うまでもなく違法難民。陸に着いた途端、皆逃走。フィリッポたちの元には、臨月の若い母親と幼い息子のみが残ってしまいます。

どうすることもできずかくまうフィリッポたち。島は一番の観光シーズンだというのに、難民取締官が目を光らせる事態となり、ピリピリした雰囲気が漂います。

そのうち、若い母親サラは出産。助けてもらったサラは感謝の言葉をカタコトで述べますが、どうも息子の様子が変です。生まれたばかりの赤ちゃんを目の敵にし、時には手をかけようともします。

ある日、ジュリエッタとサラが二人だけの時、サラがカタコトで言います。「私、ここまでで二度、捕まった。刑務所、長く、入る。女、みな同じ建物。夜、警察官、来る」・・・そうです、若い女性はみな弄ばれていたのです。

やっと息子の行動が腑に落ちたジュリエッタ。これまでは「迷惑だから早く出て行って」などと言って来ましたが、もうそんなことは言えません。

観光客の女性と仲良くなりかけていたフィリッポも、彼女と夜、ボートで海に出て難民に遭ってしまい、振り払って逃げ帰ったため彼女と気まずくなってしまいます。

ともかく、倫理と法的な制裁の板挟みとなったフィリッポたち家族。しかし、悶々とばかりはしていられません。みなで母サラと息子を逃がす決心をします。

さて、その決行日。しかし、妙に、いつにも増して警備とチェックが厳重です。聞くと、また難民騒ぎがあったとか。ジュリエッタと祖父はあきらめて帰途に就きます。みなと一緒に帰途に就いた、いつもはおとなしいフィリッポ。

しかし、最後に彼が一人で取った行動は・・・。

 

もちろん、結果まできちんとは示されません。その後、どうなったのか、誰にもわかりません。でも、希望がないと言えば嘘になると思います。

難しいですね、本当に。産業が廃れると、仕事もお金もない、するとますます人が減る。観光に数日だけ来る人が、島のことを理解できるわけはなく、でもサービスに徹しないとお客すら来なくなる。

ましてや、海の男でなくても、溺れる人がそこに居たら、助けるのが人の道。ましてそんな理由で赤ちゃんを産んだ女性をどうして見捨てることができようか。本当につらい。

そして、そんな思いをしてまで母国を離れて来なくてはならない人たちが、そんなにいるということも、重ねてつらい。

この映画でサラを演じた女性も、本当にリノーサ島の近くのランペドゥーサ島に流れ着いた難民だとか。2009年当時、80人を乗せ、3週間漂流したそのボートに、生存者は彼女を含め3人だったと言います。なんということ・・・。

日本に生まれたことの幸せ、もちろん生きるにつらいことは一杯ありますが、こんな事実を突き付けられると、世界はもっと平等でもいいんじゃないか、と思ってしまいます。

コメント
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