田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

マーサ、あるいはマーシー・メイ(Martha Marcy May Marlene)

2013年03月25日 08時04分25秒 | 日記

 

 メアリー=ケイト&アシュレー・オルセン姉妹を姉に持つ若手女優、エリザベス・オルセンが主演し、カンヌ映画祭やサンダンス映画祭で高い評価を受けたサスペンス。カルト集団から脱走し、マインドコントロールから逃れようともがく若い女性の2週間を描いた。孤独で愛に飢えていた少女マーサは、山の上にあるカルト集団に入信し、マーシー・メイという新しい名前で生きることになる。それから2年後、マーサは1人で集団を脱出し、姉夫婦の別荘に身を寄せるが、マーシー・メイとして生きた2年間の記憶に苦しめられる。監督は本作が長編デビューとなるショーン・ダーキン。(映画.comより)

 

 

 この映画は、あるカルト集団に属していた女性がなんとかして立ち直るお話・・・ではありません。孤独を感じ、居場所を捜していた若い女性が、誘われるままに仲間(若い人たち)と集団生活をしていた。そこにはカリスマリーダーがいて、彼は絶対的な存在だった。そして、そこでの生活の記憶は、脱走し姉に保護されていても、常によみがえり彼女を悩ませるのだった・・・そんなお話です。結論から言うと、立ち直る(と、一般社会では言う)ための第一歩を描いたもので、なにかが解決したわけではありません。まだこれから続編があるのか、と思うほどなにも解決せずに尻切れトンボで終わります。

しかし、それを物足りなく感じるのは、単純明快なハリウッド映画に馴らされてしまった悪癖で、実際はそう簡単なものではないはずですよね。そこに気付かせてもらえる映画でした。

ここで主人公のマーサが所属するのは、宗教団体ではなく、カリスマリーダーを一人頂いただけのコミューンです。居場所を求める者や、自分自身の存在価値がわからない者(まぁみんなそうですが)など、若者を中心とした集まりで、自給自足を目指して集団生活をしています。

このリーダーがまた魅力的なんですね。優しくて、ほっとするような包容力を見せ、またギターを弾きながら新入り(今回の場合はマーサ。ただし、コミューン内ではマーシー・メイと呼ばれている)に捧げる歌を皆の前で歌ってくれる。女性はみな彼とのセックスを強要されるのですが(「浄化の儀式」などと呼ばれている)、きっとセックスも上手なのでしょう。

とにかく、観客の私が見ていても「あ~私でも落ちるかも」な~んて思ってしまいました。かの”マンソンファミリー”のリーダー、チャールズ・マンソンも女性に人気があったと聞きます。やっぱり、普通じゃないんでしょうね。

しかし、やはり多人数の人が食べていかなくてはならないとなると、どうしても行き詰まってきます。最初は毛布を売ったりしていたようなのですが、自給自足なんてそうそうできるものでもなく、そのうち窃盗などを繰り返すようになります。

そしてあるとき、一線を越えてしまいます。

耐えられなくなったマーサは脱走を試みるのですが、そこは単純な若い女性。すぐに仲間に見つかってしまいます。しかし、彼は帰って来ることを強要するでもなく、「まぁ、いいさ」と言ってそのまま行ってしまいます。

やがて彼女の身を案じていた(裕福な)姉に連絡し、彼女は広いアパートに居候を始めます。

しかし、人里離れたコミューンで生活していた彼女の行動は、やることなすこと奇妙で、姉夫婦はとまどうばかり。そのうち、いろんな記憶がフラッシュバックしたり、彼らが連れ戻しに来る幻覚を見たりし始めます。

ここで重要なのは、実際に彼らの姿が映るわけではなく、すべて彼女の妄想かもしれない、ということ。だって、あんなに簡単に見逃したのですもの、そう執拗に追ってくるでしょうか。

彼女がコミューンで過ごした期間は2年間。その記憶がまだまだ彼女を縛りつけているのです。

想像するに、彼女は大学を卒業してからコミューンにはまったように言われていたので、充分に大人だったはず。それまでの20ウン年の方がはるかに長いのだから、いくら強烈な体験でもたった2年の記憶から立ち直るのは、そう難しいものではないのでは。もちろん、今はまだ脱走してきてすぐだから、思うようにはいかないだろうけれど。

ま、人それぞれだからまったく違う意見もあるでしょうが。

いけない一線さえ越えなければ、社会の目を気にせず人里離れたところで、少人数でいたわりあって過ごすのは、俗に言う「普通の社会」で生きてゆくより人間らしく生きられるのかもしれません。リーダーは優しいですし。

マーサの場合は、その一線が許せなかったのと、コミューンでの体験がなんだったのかをはっきり理解していなかったこと・・・その辺が原因で、いろんな妄想を抱いてしまったのではないか・・・そんな気がします。

どちらにしても、なにをもって満足するかは人それぞれだから、許される範囲で模索して見るのもいいんだろうな、と思います。

 

 

 

コメント
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